外国株式の相続税評価|評価方法・円換算ルール・注意点を解説

被相続人が米国株や欧州株などの外国株式を保有していた場合、相続税の申告にあたってどのように評価額を計算すればよいのか、迷われる方は少なくありません。
外国株式の評価には、国内株式と共通するルールもありますが、外貨建て資産の円換算や海外市場の終値の取得方法など、外国株式ならではの論点も存在します。
この記事では、外国株式の相続税評価の基本的な考え方から、上場・非上場別の評価方法、TTBレートを使った円換算のルール、申告時の注意点まで、わかりやすく解説します。
目次
相続税計算のために相続税評価額を決める
相続税を計算するためには、まず相続財産の「評価額」を確定させる必要があります。
この評価額のことを相続税評価額というのです。
相続税評価額は、財産の種類ごとに国税庁が定めたルール(財産評価基本通達)にもとづいて算出されます。
不動産、現預金、株式など、財産の種類によって計算方法が異なる点が特徴です。
外国株式の相続税評価は、財産評価基本通達と呼ばれる国税庁の定めたルールにもとづいて行われます。
なお、財産評価基本通達はあくまでも原則的なルールです。財産の状況や相続の内容によっては、通達によらない評価が認められる例外的なケースもあります。
疑問がある場合は税理士などの専門家に確認することをおすすめします。
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外国株式の評価方法
外国上場株式の評価方法|4つあり
外国の証券取引所に上場している株式(外国上場株式)の相続税評価額は、以下の4つの価額のうち最も低い金額を採用します。
- 課税時期(相続開始日)の最終価格
- 課税時期の属する月の毎日の最終価格の平均額
- 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の平均額
- 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の平均額
①は当日の終値そのものであり、②〜④がそれぞれの月における毎日の終値の平均額です。
この「4つの価額のうち最も低い価額を使う」という考え方は、国内上場株式の評価方法と基本的に同じです。
たとえば米国株を保有していた場合、ニューヨーク証券取引所やNASDAQなどの終値データを取得し、上記4つの価額のうち最も低い額を円換算した金額が評価額となります。
ただし、外国株式の場合、これらの価格はすべて外貨建てで取得したうえで、日本円へ換算することが必要です(換算方法については後述)。
課税時期に取引がなかった場合
相続開始日(課税時期)に外国の取引所で取引がなかった場合(現地の休日など)は、原則として相続開始日に最も近い取引日の最終価格を使用します。
ただし、課税時期前後で最も近い日が複数ある場合はその平均額を採用するなど、通達に定める取り扱いに従う必要があるので、注意しましょう。
詳細については取引金融機関や税理士に確認することをおすすめします。
外国非上場株式の評価方法
外国非上場株式は、原則として純資産価額方式に準じて評価を行います。
この際に、株式を発行する企業がある国で日本の法人税、事業税、住民税にあたるものが課税されている場合には、評価差額からそれらの税額を差し引くことが可能です。
非上場株式の評価方法として、類似業種比準価額方式というものも存在しますが、外国の株式を評価する際には利用できません。
外国非上場株式の評価は難しい|税理士に相談を
外国の証券取引所に上場していない外国株式(外国非上場株式)の評価は、以下のような理由から、上場株式よりも複雑です。
- 財務情報の取得が困難:海外の非上場会社は情報開示が限られるケースがある
- 現地会計基準の違い:日本の会計基準と異なるルールで財務諸表が作成されている場合がある
- 言語の壁:現地語で作成された書類を扱う必要がある
- 外貨換算が必要:純資産や利益なども円換算しなければならない
外国非上場株式を相続した場合は、早めに税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。評価方法の選定を誤ると、申告額に大きな影響が出る可能性があります。
外国株式の価格を円に換算する際のルール
外国株式の場合、すでに説明した方法により価格の評価を行ったうえで、日本円に換算する必要があります。
外貨建ての価格を日本円に換算する際には、TTBレートと呼ばれる為替レートを使用します。
TTBレートによる換算を
TTBレートとは、取引金融機関が公表する課税時期における最終の為替相場(対顧客直物電信買相場)で換算することをいいます。
財産評価基本通達にもとづき、外貨建て資産を日本円に換算する際の原則的な基準レートとして税務上の換算に用いられているのがこの方法です。
為替レートには以下の3種類があり、用途によって使い分けられます。
| レートの種類 | 英語表記 | 概要 |
|---|---|---|
| TTB | Telegraphic Transfer Buying Rate | 銀行が外貨を買うレート。相続税評価における外貨換算に使用 |
| TTM | Telegraphic Transfer Middle Rate | 仲値(基準レート)。 |
| TTS | Telegraphic Transfer Selling Rate | 銀行が外貨を売るレート |
相続税の申告では、外貨建て資産の円換算には原則としてTTBレートを使用するというルールになっています。
どの時点のTTBレートを使うか
使用するTTBレートは、課税時期(相続開始日)における最終の為替相場です。
取引金融機関が休日などの理由で課税時期に為替相場がない場合は、課税時期前の相場のうち、課税時期に最も近い日の相場によります。
この点は、取引金融機関や税理士に確認することをおすすめします。
相続人の取引金融機関の相場で換算する
TTBレートにより円換算を行う際には、相続税の納税義務者である相続人の取引金融機関が公表する相場で換算を行います。
相続人が複数人いる場合には、相続人ごとに取引金融機関が異なっていても問題ありません。
円換算を行った後は、相続税の評価額を算出する際に小数点以下を切り捨てます。
外国株式と国内株式の評価方法の違い
外国株式の評価方法は、基本的な考え方において国内株式と共通する部分があります。
一方で、外国株式ならではの論点も存在します。以下の表で主な違いを整理します。
| 比較項目 | 国内上場株式 | 外国上場株式 |
|---|---|---|
| 評価の基準 | 国内証券取引所の終値 | 外国証券取引所の終値(円換算) |
| 使用する価額 | 4種類の価額のうち最低額 | 4種類の価額のうち最低額(同様) |
| 為替換算 | 不要 | 必要(TTBレートを使用) |
| 評価の複雑さ | 比較的シンプル | 為替換算・海外市場データ取得が必要 |
国内株式の評価方法についてより詳しく知りたい方は、『株式の相続税はいくらかかる?上場・非上場株式の評価額と計算方法を解説』の記事もあわせてご参照ください。
共通するのは「4種類の価額のうち最も低い価額を採用する」という考え方です。一方、外国株式では外貨建ての価格を日本円に換算するプロセスが加わります。
評価に必要な書類・情報の取得方法
外国株式の相続税評価を行うためには、以下のような書類・情報を準備する必要があります。
必要な情報・書類の一覧
| 種別 | 内容 | 取得先 |
|---|---|---|
| 株式の保有状況 | 銘柄・株数・口座情報 | 証券会社の残高証明書 |
| 株価データ | 課税時期およびその前月・前々月の月間終値 | 証券会社・金融情報サービス・現地取引所 |
| 為替レート(TTB) | 課税時期のTTBレート | 取引金融機関(銀行)の公示レート一覧 |
| 配当情報 | 未収配当がある場合はその金額 | 証券会社の取引報告書 |
証券会社への残高証明書請求
外国株式を国内の証券会社(SBI証券・楽天証券など)を通じて保有している場合は、相続開始日現在の残高証明書を証券会社に請求することで、保有株数や評価額の参考情報を取得できます。
ただし、証券会社が提供する評価額と税務上の相続税評価額は計算方法が異なる場合があるため、あくまでも参考情報として活用し、最終的な評価額は上記のルールにもとづいて算出してください。
月間終値データの取得
課税時期の終値、およびその月・前月・前々月の毎日の終値が必要になりますが、これらは以下のような方法で取得できます。
- 国内証券会社の取引履歴・時価情報
- Bloombergや各国の取引所公式サイト
- 金融情報サービス(Yahoo! Finance 米国版など)
取得方法に迷う場合は、証券会社のカスタマーサポートに相談するか、税理士に依頼するのが確実です。
外国株式を含む相続申告の注意点
外国株式が相続財産に含まれる場合、申告にあたって特に注意が必要な点をまとめます。
国ごとに取引所・取引慣行が異なる
外国株式といっても、米国株(NYSE・NASDAQ)、欧州株(ロンドン証券取引所・フランクフルト証券取引所など)、アジア株(香港・シンガポールなど)では、取引所が異なり、終値の取得方法や公表のタイミングも様々です。
一律に同じ手順で対応できるとは限らないため、国ごとに確認することが重要となります。
時差による課税時期の取り扱い
外国市場は日本時間と異なる時刻に取引が行われます。
課税時期(相続開始日)に対応する外国市場の終値がどの日付のものか、時差を考慮して正確に把握する必要があります。
外国税額控除との関係
外国株式に係る配当について現地で源泉徴収税が課されている場合、所得税の外国税額控除が適用できる可能性があります。
これは相続税ではなく所得税(準確定申告・相続後の確定申告)の論点です。
なお、相続税にも外国税額控除制度はありますが、こちらは外国で課された相続税等がある場合に適用されるものであり、別制度となります。
いずれも相続税の計算とは異なる論点ですが、申告手続き全体に影響することがあるため、あわせて確認しておきましょう。
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申告期限に注意
相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。
外国株式の評価は書類収集に時間がかかることもあるため、早めに準備を始めることをおすすめします。
申告の際には、外国株式の評価額を第11表の付表2に記載する必要があります。
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まとめ|外国株式の相続税評価は税理士へ相談すべき
この記事では、外国株式の相続税評価について解説しました。重要なポイントを以下に整理します。
- 外国株式の評価は財産評価基本通達にもとづき、基本的には国内株式に準じた方法で行う
- 外国上場株式は4つの価額(①課税時期の最終価格・②課税時期の属する月の月平均額・③前月の月平均額・④前々月の月平均額)のうち最も低い価額を採用する
- 外国非上場株式は評価が複雑なため、早めに専門家へ相談することが重要
- 外貨建ての価格はTTBレート(対顧客直物電信買相場)を用いて円換算する
- 国ごとに取引所や慣行が異なるため、一律の対応ではなく個別に確認が必要
外国株式の相続税評価は、国内株式と比べて確認事項が多く、書類収集にも手間がかかります。
申告期限(被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)を見据えて、早めに準備を進めるようにしましょう。
外国株式の評価方法や申告手続きに不安がある場合は、相続税に詳しい税理士への早めの相談をおすすめします。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士