養子の相続権とは?普通養子・特別養子の違いや相続分をわかりやすく解説

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養子縁組をすると、養子には実子と同等の相続権が発生します。

ただし、普通養子は養親・実親の両方から相続できる一方、特別養子は実親からの相続権がない点が大きな違いです。

この記事では、養子の相続権の有無と根拠、普通養子と特別養子の違い、法定相続分、相続税への影響まで、養子縁組と相続に関わる重要ポイントをわかりやすく解説します。

※本記事の情報は2025年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。

養子に相続権はある?法律上の根拠を確認しよう

養子縁組とは、血縁関係のない他人同士が親子関係を結べる制度です。

養子縁組をすると相続権が発生する

養子縁組をした養子には、法律上、実子(養親の血のつながった子)と同じ相続権が認められます。

民法では、養子縁組が成立すると養子は養親の嫡出子の身分を取得し、法律上の親子関係が生じると定められています。

養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。

民法第809条

この親子関係は戸籍上の実子と同等に扱われるため、養子は養親が亡くなったとき、法定相続人のひとりとして遺産を相続する権利を持ちます。

「養子は実子より権利が弱いのでは?」と心配される方もいますが、相続権の強さは実子も養子も変わりません。

養女の場合も相続権に違いはない

養女とは、養子縁組によって女性が養子となった場合の一般的な呼び方です。法律上、養女と養子(男性)の相続権に違いは一切ありません。

相続権の有無も、法定相続分(取り分の割合)も、性別に関わらずまったく同じルールが適用されます。

普通養子と特別養子で相続権はどう違う?

養子縁組には、生みの親である実親との親子関係が継続する「普通養子縁組」と、実親との親子関係が終了する「特別養子縁組」の2種類があります。この2つの大きな違いは、実親からの相続権の有無です。

普通養子は養親・実親の両方から相続できますが、実親との親子関係が終了する特別養子は養親からのみ相続でき、実親からの相続権はありません。

普通養子縁組特別養子縁組
養親からの相続できるできる
実親からの相続できるできない

普通養子|養親・実親の両方から相続できる

普通養子は、養親・実親の双方の遺産を相続できる立場にあります。

普通養子の場合、養親との法的な親子関係を新たに結ぶ一方で、実親との親子関係は継続します。そのため、普通養子は養親と実親の両方から相続する権利を持ちます。

  • 養親が亡くなったとき:養親の法定相続人として相続できる
  • 実親が亡くなったとき:実親の法定相続人としても相続できる

普通養子縁組は、家庭裁判所の許可が不要なケースも多く、比較的手続きが簡単な一般的な養子縁組の方法です。

特別養子|実親からの相続権はなくなる

特別養子は、養親からは相続できますが、実親からの相続権はありません。

特別養子の場合、養親との親子関係が成立すると同時に、実親との法的な親子関係は終了します民法第817条の9)。そのため、相続権の扱いは次のようになります。

  • 養親が亡くなったとき:養親の法定相続人として相続できる
  • 実親が亡くなったとき:実親との親子関係がないため、相続権はない

特別養子縁組とは、子どもの福祉を目的として設けられた制度で、家庭裁判所の審判によって成立します。原則として、対象となる子どもは養子縁組の申立て時に15歳未満であることが必要です(ただし、15歳未満から継続して養親候補者に監護されていた場合などには、例外的に15歳以上でも申立てが可能です)。また、申立て時に15歳未満であっても、審判確定までに18歳に達した場合は縁組が成立しない点にも注意が必要です(民法第817条の5)。

養子の法定相続人としての順位と相続分

養子の相続順位は実子と同じ「第1順位」

法定相続人には相続の優先順位(相続順位)が定められており、養子は実子と同じく「第1順位」の相続人です。

第1順位の相続人は被相続人(亡くなった方)の子どもであり、第2順位や第3順位の相続人(父母や兄弟姉妹など)よりも優先して遺産を相続します。

なお、配偶者は常に相続人となるため、相続順位は関係ありません。

相続税 法定相続人

養子の法定相続分(取り分の割合)も実子と同じ

養子の法定相続分(遺産の取り分の割合)も、実子とまったく同じになります。実子と養子で相続分に差はなく、子どもの人数で均等に分けるのが原則です。

たとえば、配偶者と子ども(実子1人・養子1人)が相続人の場合、実子・養子それぞれの法定相続分は4分の1です。

相続人法定相続分
配偶者1/2
実子1/4(子ども2人で1/2を均等に分ける)
養子1/4(実子と同じ)

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養子の代襲相続について

代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来、相続人となるはずだった人が被相続人より先に亡くなっていた場合などに、その子ども(孫)が代わりに相続することをいいます。

普通養子が先に亡くなっていた場合

普通養子にも代襲相続は認められており、養子が養親よりも先に亡くなっていた場合、養子の子(養親にとっての孫)が代襲相続人として遺産を相続できます。

代襲相続人が法定相続人になる例

ただし、代襲相続が認められるかどうかは、養子の子が養親(被相続人)との親族関係に入るかどうかによって左右されます。

一般的に、養子縁組の成立後に生まれた子(養親にとって孫となる子)は代襲相続人となり得ますが、養子縁組の成立前からいる子については原則として代襲相続人にならないと考えられていますが、個別の事情による判断が必要です。この点は複雑なルールが絡むため、詳しくは専門家への確認が重要です。

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特別養子が先に亡くなっていた場合

特別養子が先に亡くなっていた場合、養親側については普通養子と同様に代襲相続が認められます。

一方、実親側については代襲相続は認められません。特別養子縁組が成立すると同時に実親との法的な親子関係が終了するため、特別養子の子が実親側の遺産を代襲相続することはできません。

なお、特別養子縁組は原則として15歳未満の子どもを対象とする制度であるため、縁組成立前からの子が問題になるケースは実務上ないと考えてよいでしょう。

養子縁組が相続税に与える影響

養子は相続税の計算で「法定相続人の人数」に算入される

相続税は、法定相続人の人数が多いほど「基礎控除額」が大きくなるなど、税負担が軽くなる仕組みになっています。養子も法定相続人に含まれるため、養子縁組によって法定相続人の数が増え、相続税の節税効果が生まれる場合があります。

普通養子のカウントには上限がある

ただし、税務上(相続税の計算上)、法定相続人の数に算入できる普通養子の人数には上限が設けられています(相続税法第15条2項)。無制限に養子を法定相続人に加えて節税できないよう、以下のようなルールがあります。

実子の有無算入できる養子の人数
実子がいる場合養子は1人まで
実子がいない場合養子は2人まで

たとえば、実子が1人いる場合に養子を3人迎えても、相続税の計算上は「養子1人分」しかカウントされません。

なお、普通養子のうち一定の養子には人数制限がありますが、特別養子や配偶者の実子を養子とした場合などは、この制限の対象外となります。

  • 特別養子縁組による養子
  • 配偶者の実子(連れ子)を養子にした場合

養子は相続税の2割加算の対象になる場合がある

相続税には2割加算というルールがあります。2割加算は、被相続人の配偶者および一親等の血族(実子・父母など)以外の人が相続した場合に適用されます(養子であっても、孫を養子にした場合などは対象となることがあります)。

普通養子は法律上、一親等の法定血族として扱われますが、普通養子として「孫」を養子にした場合は2割加算の対象となります。孫を養子にする相続対策では、この点も考慮が必要です。

相続税の2割加算の対象となる人

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養子縁組で基礎控除額はどう変わるか

基礎控除額の計算式と普通養子の関係

相続税の基礎控除額は、次の計算式で求めます。

基礎控除額の計算式

基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

普通養子が法定相続人の数に算入されることで、基礎控除額が増加します。

たとえば、法定相続人が配偶者と実子1人の計2人の場合と、そこに普通養子1人が加わって計3人になった場合を比べると、次のようになります。

法定相続人の数基礎控除額
2人(配偶者+実子1人)3,000万円+ 600万円×2人=4,200万円
3人(配偶者+実子1人+普通養子1人)3,000万円+ 600万円×3人=4,800万円

普通養子を1人加えることで、基礎控除額が600万円増加します。

ただし、前述のとおり税務上の算入人数には上限があるため、実子がいる場合、普通養子は1人分しかカウントされません。基礎控除の詳細な計算方法については、以下の関連記事もご確認ください。

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養子縁組を活用した相続対策のポイントと注意点

養子縁組による節税効果

養子縁組を活用した相続対策としては、主に次のような節税効果が期待できます。

  • 基礎控除額の増加:法定相続人が1人増えることで、基礎控除が600万円増える
  • 生命保険の非課税枠の拡大:生命保険の非課税枠も「500万円 × 法定相続人の数」で計算されるため、養子が加わると枠が広がる
    ※相続人が保険金を受け取った場合に限り、この非課税枠は適用される
  • 死亡退職金の非課税枠の拡大:死亡退職金の非課税枠も「500万円 × 法定相続人の数」で計算されるため、養子が加わると枠が広がる
    ※相続人が退職金を受け取った場合に限り、この非課税枠は適用される
  • 遺産分割の柔軟化:特定の人に財産を渡したい場合に、養子縁組を通じて法定相続分を確保する方法もある

注意すべきポイント

一方で、養子縁組には次のような注意点もあります。

  • 税務上算入できる養子の人数には上限がある:相続税法第15条により、算入できる養子の人数は「実子がいれば1人、いなければ2人」までとされており、これを超えた養子は相続税計算上カウントされません。また、節税効果が過大と判断された場合は、税務計算上で算入を否認されるリスクもあります。
    ※養子縁組そのものの法的有効性は別途判断される
  • 養子縁組は家族関係に影響を与える:既存の相続人(実子など)の相続分が減少するため、家族間でのトラブルになる場合もある
  • 相続放棄や遺留分の問題:養子を含めた相続問題は複雑になりやすいため、専門家への相談が重要

養子と相続権でよくある疑問

Q.再婚相手の連れ子に相続権は自動的に発生しますか?

再婚相手の連れ子に相続権は自動的に発生しません。再婚相手の連れ子は、その親が結婚しても、法的な親子関係になることがないからです。

連れ子に財産を遺したい場合は、養子縁組をして法定相続人にする方法が最も確実になります。養子縁組が難しい場合は、遺言による遺贈や生前贈与といった代替手段も検討できます。ただし、遺贈の場合は連れ子が一親等の血族にあたらないため、相続税の2割加算の対象となる点に注意が必要です。

再婚家庭の相続は関係者が複雑になりやすいため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

Q.節税目的で養子縁組をした場合、税務上で否認されることはある?

節税目的の養子縁組は、税務上で否認されるリスクがあります。相続税法では、算入できる養子の人数に制限(実子がいる場合は1人、いない場合は2人)が設けられており、これを超える養子は相続税計算上カウントされません。

また、例外的に相続税の負担を不当に減少させると認められる場合には、人数制限の範囲内であっても算入が認められないことがあります。

なお、節税目的であっても養子縁組自体が直ちに無効とはならないとした最高裁判例(平成29年1月31日)があります。しかし、縁組が有効であっても、税務計算上は養子を人数にカウントしてもらえないケースがある点は別途注意が必要です。

「養子縁組をすれば必ず節税できる」とは言い切れないため、実行前に必ず税理士へ相談することを強くおすすめします。

まとめ|養子の相続権は実子と同等、ただし種類によって異なる点も

この記事のポイントを整理します。

  • 養子は民法上、実子と同等の相続権を持つ。養女も同じ扱いで違いはない。
  • 普通養子は養親・実親の両方から相続できる。特別養子は実親からの相続権がない。
  • 養子の相続順位は第1順位、法定相続分も実子と同じ。
  • 相続税の計算上、算入できる普通養子の人数は「実子がいれば1人、いなければ2人」まで。特別養子・配偶者の連れ子を養子にした場合はこの制限の対象外。
  • 普通養子縁組は基礎控除や生命保険非課税枠を増やす節税効果があるが、孫を養子にした場合は相続税の2割加算の対象となる点に注意が必要。

養子縁組と相続の問題は、税務・法律の両面から検討が必要です。特に相続税の節税対策として養子縁組を検討している場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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