父親が亡くなったら相続はどうする?手続きの流れと相続税の基本を解説

父親が亡くなったら、まず死亡届の提出・遺言書の確認・法定相続人の確定から始め、相続放棄の要否(3か月以内)や相続税の申告(10か月以内)へと順を追って手続きを進めていきます。
悲しみの中でも「これから何をすればいいのか」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。手続きの種類は多く、期限が決まっているものもあるため、全体の流れを把握しておくことが大切です。
この記事では、父親が亡くなった後に必要な相続手続きの全体的な流れを、できるだけわかりやすく整理しました。まずは全体像をつかんで、ひとつひとつ確認していきましょう。
※本記事の情報は2025年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
父親が亡くなったときの相続手続き全体フロー|まず何から始める?
相続手続きは、期限のある手続きを中心に段階を追って進めていく必要があります。以下の表を参考に、今どの段階にいるかを確認してみてください。
| 時期の目安 | やること |
|---|---|
| 亡くなった直後〜7日以内 | 葬儀・火葬の手配、死亡届の提出、遺言書の確認、取引先金融機関への連絡 |
| 〜2か月程度 | 法定相続人の確定、相続財産の調査・財産目録の作成 |
| 〜3か月以内 | 相続放棄・限定承認の検討(必要な場合) |
| 〜4か月以内 | 個人に所得があった場合(給与所得・事業所得・不動産所得・一定額以上の年金収入など)は準確定申告が必要 |
| 〜9か月程度 | 遺産分割協議の完了 |
| 〜10か月以内 | 相続税の申告と納付(必要な場合) |
特に注意が必要なのは、相続放棄の期限(3か月以内)と相続税申告の期限(10か月以内)です。
なお、遺産分割協議自体に法定期限があるわけではありませんが、配偶者の税額軽減などの特例を活用するためには原則として申告期限内(10か月以内)に遺産分割が完了していることが望ましいため、目安として意識しておきましょう。
期限を過ぎると選択肢が大きく狭まることがありますので、焦らず、でも早めに動き始めることが大切です。

父親が亡くなったら誰が相続人になるのか|法定相続人の確認
相続手続きを進めるうえで最初に確認すべきことのひとつが、誰が相続人になるのかです。これを「法定相続人」といいます。
父親が亡くなった場合、一般的には以下のように相続人が決まります。
母親(配偶者)が存命の場合
- 母親(配偶者):常に相続人になる
- 子(あなたや兄弟):第1順位の相続人として、配偶者とともに相続人になる
母親(配偶者)が他界している場合
- 子(あなたや兄弟):第1順位の相続人として、子のみで相続する
法定相続分(遺言書がない場合の基本的な割合)
| 相続人の組み合わせ | 配偶者の割合 | 子全体の割合 |
|---|---|---|
| 配偶者+子 | 1/2 | 1/2(子の人数で均等に分割) |
| 子のみ | - | 子の人数で均等に分割 |
たとえば、母親と子2人(あなたと兄弟)が相続人の場合、法定相続分は母親が1/2、あなたと兄弟がそれぞれ1/4ずつとなります。
ただし、これはあくまで「遺言書がない場合の基本ルール」です。実際には遺産分割協議によって、相続人全員が合意した上で自由に割合を決めることができます。
なお、法定相続人を正確に確認するためには、父親の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せる必要があります。前婚の子や認知した子がいる可能性もゼロではないため、戸籍による確認は必ず行いましょう。
ちなみに、子がいない場合、父母(第2順位)や兄弟姉妹(第3順位)が相続人になるケースもあります。

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父親が遺した財産で相続対象になるもの|相続財産の調査
相続人が確定したら次に、何が相続の対象になるのかを調べる「相続財産の調査」を行います。調べた内容をまとめたものを「財産目録」と呼びます。
相続の対象となる財産(プラスの財産)には、以下のようなものが含まれます。
- 預貯金:銀行・ゆうちょなど
- 不動産:土地・建物
- 有価証券:株式・投資信託など
- 生命保険金:受取人が指定されている場合は受取人固有の財産となり、原則として遺産分割の対象外。相続税の計算上は「みなし相続財産」として課税対象となり、500万円×法定相続人の数の非課税枠がある。
- 車・貴金属・美術品などの動産
一方で、以下のようなマイナスの財産(債務)も相続の対象になります。
- 借入金・ローン:住宅ローン・カードローンなど
- 未払いの税金・医療費
- 保証債務:他人の借金の連帯保証人になっている場合
また、生前贈与された財産も一部相続財産に加算される場合があります。
- 暦年課税による贈与:相続開始前の一定期間内(2026年時点では相続開始前3年以内の贈与は原則加算対象。2024年以降の贈与から加算期間が段階的に延長され、2031年以降の相続開始分からは最長7年以内の贈与が対象。)に贈与された財産は相続財産に加算される
- 相続時精算課税制度による贈与:制度を選択した後に贈与された財産のうち、年110万円の基礎控除を超える部分が相続財産に加算される(2024年1月1日以降の贈与について、年110万円以下の部分は加算不要)

プラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は、相続放棄を検討する必要があります。相続放棄はプラス・マイナス両方の財産を受け取らない手続きで、原則として父親が亡くなったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。なお、相続財産の調査に時間がかかる場合などは、家庭裁判所に申請することで期間を延長できる場合があります。
財産の調査はできるだけ早い段階から始めておくことで、その後の遺産分割協議や相続税の計算がスムーズに進みます。
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父親が亡くなったら相続税はかかるのか
財産の全体像が見えてきたら、相続税がかかるかどうかを確認しましょう。
相続税には「基礎控除」という仕組みがあり、財産の総額が基礎控除額を下回れば、相続税は原則かかりません。
基礎控除額の計算式
3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例として、法定相続人が母親・子2人の合計3人の場合を計算してみます。
計算例
3,000万円+(600万円 × 3人)=4,800万円
つまり、相続財産の合計が4,800万円以下であれば、原則として相続税は発生しません。ただし、課税対象財産の計算方法や特例の適用状況によって異なる場合があります。
たとえば、実際の計算では以下の点にも注意が必要です。
- 生命保険金や退職金には別途で非課税枠がある
- 配偶者には手厚い税額軽減の特例がある
また、基礎控除以下であれば通常は申告不要ですが、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を利用する場合は、税額が0円になるケースでも申告が必要です。特例の適用を検討している場合は、申告が不要と早合点せず、専門家に確認することをおすすめします。
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父親が亡くなった場合の遺産分割協議の進め方
相続財産の全体像が明らかになったら、相続人全員で誰が何を引き継ぐかを話し合う「遺産分割協議」を行います。
遺産分割協議には、以下のポイントがあります。
- 相続人全員の参加が必要:1人でも欠けた状態での協議は無効。
- 合意内容は書面にまとめる:「遺産分割協議書」として書面化し、相続人全員が署名・実印を押すことで正式な書類になる。
- 遺言書がある場合は原則として遺言書が優先:相続人全員が合意することで遺言書と異なる分割が行われることもある。なお、相続人以外の受遺者がいる遺贈が含まれる場合などは、その受遺者の同意や別途の手続きが必要になることがある。
話し合いが円滑に進めば問題ありませんが、相続人の間で意見が対立したり、連絡が取れない相続人がいたりする場合は手続きが複雑になります。そのような場合は弁護士への相談を検討するとよいでしょう。
父親が亡くなった場合の相続税申告の流れと期限
相続税がかかる場合は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に税務署へ申告・納付を行う必要があります。
申告の大まかな流れは以下のとおりです。
- 財産の評価額を計算する(土地・株式などは評価方法が定められている)
- 遺産分割協議を完了させる
- 課税遺産総額を計算する(財産総額から基礎控除などを差し引く)
- 各相続人の税額を計算する
- 税務署へ申告書を提出し、納税する
申告期限を過ぎると「延滞税」や「加算税」といったペナルティが生じる場合があります。
また、「配偶者の税額軽減」などの特例は、申告しないと適用されません。特例を使って税額が0円になる場合でも申告は必要です。
なお、申告期限までに遺産分割が完了していない場合でも、申告自体は期限内に行う必要があります。
その場合は法定相続分に従って「未分割申告」を行い、遺産分割が成立した後に改めて申告をやり直す手続き(修正申告または更正の請求)が必要になります。
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専門家(税理士・司法書士・弁護士)への相談を検討するタイミング
相続の手続きは、自分で進められるケースもありますが、専門家のサポートが必要になる場面も多いです。
ただし、相続手続きは内容によって相談すべき専門家が異なります。税務面は税理士、不動産登記は司法書士、相続人間のトラブルは弁護士というように、状況に応じて適切な専門家を選ぶことが大切です。
以下に当てはまる場合は、早めに相談を検討しましょう。
税理士相談向きのケース
- 相続税の申告が必要かどうか判断できない
- 不動産や株式など、評価が複雑な財産がある
- 相続税の節税(特例の活用など)を検討したい
- 申告期限まで時間的に余裕がない
司法書士相談向きのケース
- 不動産の名義変更(相続登記)を進めたい(相続登記は2024年4月1日から義務化されており、原則として不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請が必要。正当な理由なく怠ると過料の対象となる場合がある。)
- 戸籍収集や遺産分割協議書の作成をサポートしてほしい
弁護士相談向きのケース
- 相続人の間でトラブルや意見の対立がある
- 遺言書の内容に納得できない(遺留分の問題など)
- 認知されていない子など、相続人の確定に争いがある
特に相続税の申告が必要な場合は、相続に精通した税理士に依頼することで、見落としのない申告・節税対策が期待できます。
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父親が亡くなった時の相続でよくある質問
Q.父親が亡くなったら銀行口座はどうなる?
金融機関が死亡の事実を把握すると、口座は原則として凍結され、入出金ができなくなります。もっとも、葬儀費用などの支払いに充てるため、一定額までの払戻しを受けられる制度(仮払い制度)があります。
その後は、相続人全員の同意や必要書類(戸籍・遺産分割協議書など)を提出することで、解約や払い戻しの手続きを行います。
Q. 父親に前婚の子や認知した子がいることが後からわかったらどうなる?
前婚の子や認知された子も、法律上は他の子と同じく法定相続人になります。そのため、相続人の人数や相続分が変わる可能性があります。すでに遺産分割協議を行っている場合でも、その相続人を含めて協議のやり直しが必要になることがあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、父親の出生から死亡までの戸籍を取り寄せて、相続人を正確に確認することが重要です。
不安がある場合は、専門家への相談も検討しましょう。
Q.相続税がかからない場合でも手続きは必要?
相続税がかからない場合でも、相続に関する手続き自体は必要です。
たとえば、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約・名義変更などは、相続税の有無にかかわらず行う必要がありますし、相続税が0円になる場合でも「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」を利用する際には申告が必要です。
まとめ|父親が亡くなったら、まずこの順番で動こう
最後に、この記事の内容をまとめます。
| ステップ | やること | 期限の目安 |
|---|---|---|
| ① | 死亡届の提出、葬儀の手配 | 7日以内 |
| ② | 遺言書の確認、法定相続人の確定 | なるべく早めに |
| ③ | 相続財産(プラス・マイナス両方)の調査 | なるべく早めに |
| ④ | 相続放棄の検討(必要な場合) | 3か月以内 |
| ⑤ | 相続税がかかるかどうかの確認 | 早めに |
| ⑥ | 遺産分割協議と協議書の作成 | 早めに※ |
| ⑦ | 相続税の申告・納付(必要な場合) | 10か月以内 |
※遺産分割協議そのものに法定期限はないが、配偶者の税額軽減などの特例を活用するためには、原則として相続税の申告期限(10か月以内)までに完了していることが望ましい。
父親が亡くなった後の手続きは決して少なくありませんが、優先順位と期限を把握した上で一歩一歩進めていけば、必ず乗り越えられます。
不安なことや判断が難しいことがあれば、一人で抱え込まずに税理士や弁護士などの専門家に相談することも選択肢のひとつです。この記事が、これからの手続きを進めるための第一歩になれば幸いです。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士