養子は代襲相続できる?養子の子(孫)が代襲相続できるケースも解説

養親が養祖父母(養親の親)よりも先に亡くなった場合、養子は養親に代わって養祖父母の遺産を代襲相続することができます。
また、養子がさらに先に亡くなっていた場合には、養子縁組の後に生まれた養子の子に限り、代襲相続が認められます。
このように、養子縁組が絡む相続では、誰が法定相続人になるのかが複雑になりがちです。
この記事では、養子が代襲相続人になれるケースとなれないケース、さらに養子の子(孫にあたる人物)が代襲相続できるかどうかを、具体例を交えながらわかりやすく解説します。
※本記事の情報は2026年4月時点の民法や税制をもとに作成しています。
目次
代襲相続とは?基本的な仕組みを確認しよう
代襲相続の意味
代襲相続(だいしゅうそうぞく)とは、本来相続人になるはずだった人(被代襲者)が、相続が開始する前に死亡していた場合などに、その人の子どもが代わりに相続人となる制度です。
具体的には、被相続人の子が、相続開始以前に死亡したとき、または欠格・廃除により相続権を失ったときは、その子の子が代襲相続します(民法887条2項)。
たとえば、祖父が亡くなったとき、本来相続人となるはずだった父がすでに死亡していた場合、父の子ども(孫)が父に代わって相続人になります。これが代襲相続です。

代襲相続が起きるケースとその範囲
代襲相続が起きるケースは3つ
代襲相続が発生するのは、以下の場合です。
- 被相続人より先に相続人が死亡していた場合
- 相続人が相続欠格(重大な不正行為などにより相続権を失うこと)となった場合
- 相続人が廃除(被相続人の意思によって相続権を奪われること)された場合
なお、相続人が自ら相続を放棄した場合は代襲相続は起きません(民法939条、民法887条2項)。放棄はあくまで本人の意思による辞退であり、制度上の扱いが異なります。
代襲相続できる範囲
代襲相続ができる関係は、民法上で限定されています。
| 被相続人との関係 | 代襲相続人 | 再代襲※ |
|---|---|---|
| 子(第1順位) | 孫・ひ孫…(直系卑属) | 可能 |
| 兄弟姉妹(第3順位) | 甥・姪 | 不可(1代限り) |
※代襲相続人がすでに亡くなっている場合に、代襲相続人の相続人が代襲相続すること
直系尊属(親・祖父母など)には代襲相続はありません。親や祖父母が相続人となる場合、代わりにさらに上の世代が相続するという制度は存在しないためです。
代襲相続について詳しく知りたい方は『代襲相続とは?読み方・意味・範囲・割合をわかりやすく解説』の記事をご覧ください。
養子は代襲相続人になれるか?
結論:養子も代襲相続人になれる
養子は、養親の親(養祖父母)が亡くなった場合に、代襲相続人となることができます。
養子は縁組により養親の嫡出子の身分を取得するため(民法727条、809条)、養親が養祖父母より先に死亡していた場合、養子は代襲相続人として養祖父母の遺産を相続できるのです。
注意点:代襲相続が認められない場合もある
以下の場合は代襲相続が認められません。
- 養親(代わりに相続されるはずだった人)が相続を放棄していた場合:放棄は代襲相続の原因にならないため、養子も代襲相続人にはなれません。
- 養子縁組が無効・取り消しとなった場合:法的な親子関係が存在しないため、相続権も認められません。
養子とは?相続における位置づけを確認する
民法上、養子は縁組により養親の嫡出子の身分を取得します(民法809条)。
つまり、養子は養親が亡くなったとき、実子と同じく第1順位の相続人となるのです。
養親から相続を受けられる立場にあるため、代襲相続人になることも可能といえます。
養子縁組の種類
養子縁組には、大きく2種類あります。
- 普通養子縁組:実親との親子関係を保ちながら、養親との親子関係も新たに結ぶもの。一般的な養子縁組はこちら。
- 特別養子縁組:実親との親子関係を断ち切り、養親との完全な親子関係を築くもの。主に子どもの保護を目的とした制度。
普通養子縁組の場合、実親との親子関係も続くため、実親の相続においても子として相続人になれます。
養親の兄弟姉妹についても代襲相続可能
養親の兄弟姉妹が亡くなり、養親が相続人となれるものの、養親がすでに亡くなっているケースでは、養子が代襲相続人となります。
養親が兄弟姉妹の相続人となれるのは、亡くなった兄弟に子供がおらず、直系尊属である両親や祖父母なども亡くなっている場合です。
このようなケースで、養親がすでに亡くなっている場合は、養子が養親の代襲相続人となります。
兄弟姉妹に配偶者がいる場合も代襲相続が可能ですが、原則として相続財産の4分の3が配偶者のものとなります。
兄弟姉妹の子が代襲相続人となれるかどうかについては『代襲相続で兄弟姉妹の子(甥・姪)が相続人になるケースを解説』の記事で詳しく知ることが可能です。
養子の子は代襲相続人になれるか?
ここが最も注意が必要なポイントです。「養子の子」が代襲相続できるかどうかは、その子が養子縁組の前に生まれたか、後に生まれたかによって結論が変わります。
縁組後に生まれた子なら代襲相続できる
縁組により養子は養親の子(嫡出子の身分)となります(民法809条)。
その結果、養子縁組の成立後に生まれた子は、養親から見て孫にあたる立場となり、養親との間にも法的な親族関係が生じるのです。
そのため、養子縁組後に生まれた子から見ると、養親の親(養祖父母)は「直系尊属」にあたります。養子が養祖父母より先に死亡していた場合、縁組後に生まれたその子(養子の子)は、養子に代わって養祖父母の遺産を代襲相続することができるのです(民法887条2項)。
【例】 祖父A・養子B(Aの息子の養子)・Bの子C(Bが養子になった後に生まれた子)という家族構成。
BがAより先に死亡した場合、CはAの代襲相続人になれます。
縁組前に生まれた子は代襲相続できない
一方、養子縁組の効力は原則として当事者(養親・養子)に及ぶものであり、養子縁組の時点で生まれていた養子の子どもは、養親の親族にはなりません。
代襲相続が認められるためには法的な親族関係が必要ですから、縁組前に生まれた子には代襲相続は認められないのです。
【例】 祖父A・養子B(Aの息子の養子)・Bの子C(Bが養子になる前に生まれた子)という家族構成。
BがAより先に死亡した場合、CはAの代襲相続人にはなれません。
| 養子の子の生まれた時期 | 養親(祖父母)との親族関係 | 代襲相続の可否 |
|---|---|---|
| 養子縁組後に生まれた子 | あり(民法809条、727条) | できる(民法887条2項) |
| 養子縁組前に生まれた子 | なし | できない |
この違いは見落とされがちなため、「養子の子どもが相続人になれるか」を確認する際には、必ず縁組の時期と子どもの出生時期を照らし合わせることが重要です。
養子の子が養子の兄弟姉妹を代襲相続する場合も同様
養子に兄弟姉妹がおり(養親の実子など)、養子が兄弟姉妹の相続人となれるもののすでに亡くなっている場合も、養子縁組の時点で養子の子供が生まれていないのであれば、養子の子は代襲相続人となれます。
養子縁組の後に生まれているため、被相続人である養子の兄弟姉妹との間に法的な親族関係があるといえるためです。
養子が代襲相続人になった場合の相続分
代襲相続人の相続分は被代襲者と同じ
代襲相続人は、本来その相続人が受け取るはずだった相続分をそのまま引き継ぎます(民法901条)。
養子が代襲相続人となった場合も同様です。養親(被代襲者)が受け取るはずだった法定相続分を、養子が代わりに受け取ることになります。
複数の代襲相続人がいる場合
養親(被代襲者)に複数の子がいる場合(たとえば養子と実子が両方いる場合)、養親が受け取るはずだった相続分を、代襲相続人全員で均等に分けます(民法901条1項ただし書・民法900条4号)。
【例】 祖父Aの相続で、息子Bがすでに死亡。Bには養子Cと実子Dがいた場合。
- Bの法定相続分(仮に2分の1)を、CとDで均等に分ける。
- C・Dそれぞれの相続分 → 2分の1 × 2分の1 = 4分の1ずつ
養子かつ代襲相続人である場合の相続分
孫を養子としている場合には、孫が相続人かつ代襲相続人という立場になることがあります。
つまり、祖父が亡くなった場合に孫が祖父の養子となっており、かつ、父親がすでに亡くなっているといったケースです。
このようなケースでは、孫は養子としての相続分と、代襲相続人としての相続分を合算した相続分を有することとなります。
祖父Aの子としてBとCがおり、Bの子供である孫DがAの養子になり、A死亡の時点ですでにBが亡くなっていた場合は、Dが養子としての相続人だけでなく、Bの代襲相続人にもなります。
法定相続分は、本来、子であるBとC及び養子となったDがそれぞれ3分の1ずつとなるところ、DがBの代襲相続人となるので、Dが3分の2、Cが3分の1となるのです。
ケーススタディ:よくある家族構成で代襲相続を確認する
ケース1:養子の親(養親)が先に死亡し、養子が代襲相続する場合
家族構成:祖父A 、 Aの子B(実子)、 Bの養子C
BがAより先に死亡した場合、CはBの代わりにAの相続人(代襲相続人)となります。
CはBの養子であるため「Bの子」として扱われ、代襲相続の要件を満たします。
ケース2:養子が養祖父母より先に死亡した場合
家族構成:祖父A 、Aの子として実子Bと養子C、Cの子にD
CがAより先に死亡した場合、Dが縁組後に生まれた子であれば、Cの代わりにAの代襲相続人となります。
DはAとの間でも親族関係が認められるので、代襲相続人となることが可能なためです。
ケース3:養子縁組前の子と縁組後の子が混在する場合
家族構成:祖父A 、 Aの子B(実子)、 Bの養子C 、 Cが縁組前に産んだ子D 、Cが縁組後に産んだ子E
CがAより先に死亡した場合
- D(縁組前に生まれた子):AとDの間に親族関係はなく、代襲相続不可
- E(縁組後に生まれた子):縁組による養子の身分取得(民法727条)の結果、AとEの間に親族関係があり、代襲相続可(民法887条2項)
このように、同じ養子の子どもでも、生まれたタイミングによって相続の権利が大きく変わります。
養子が代襲相続人になった場合の相続税の扱い
養子が代襲相続人として遺産を受け取った場合、相続税の計算においてもいくつか注意点があります。
特に基礎控除額の計算や、2割加算(通常の相続よりも相続税が2割増しになるルール)の適用有無については、確認が必要でしょう。
養子が代襲相続人となった場合の基礎控除額の計算方法
相続税を計算する際には、相続財産の総額から以下のように算出した基礎控除額を差し引く必要があります。
- 3000万円+(600万円×法定相続人の人数)
法定相続人に含まれる養子の人数には、以下のような制限があります。
- 被相続人に実子がいる場合:1人
- 被相続人に実子がいない場合:2人
しかし、代襲相続人となった養子や養子の子は、養子の人数制限の対象外として法定相続人にカウントされます(国税庁No.4170)。
つまり、代襲相続人である直系卑属がいる場合は「実子がいる」ものとして扱われるため、他の養子を法定相続人に算入できる上限が変わることがあるのです。
例えば、被相続人に3人の養子(A・B・C)がおり、Aには子供としてD・Eがいた場合、Aが存命であれば被相続人に実子がいないので、法定相続人は養子2人となります。
一方、相続の時点でAがすでに亡くなっている場合で、D・Eが代襲相続人となれるなら、被相続人に実子がいると扱われるため、法定相続人は3人(D・Eは代襲相続人として各1人、残りの養子は実子がいる場合の上限により1人、合計3人)となるのです。
代襲相続が起きることで、相続税の計算に違いが生じる可能性があることから、具体的な計算は専門家である税理士に相談することをおすすめします。
養子かつ代襲相続人の場合は1人の法定相続人となる
被相続人の孫が養子となっていたため、孫が相続人かつ代襲相続人となっているケースでは、孫は1人の法定相続人となります。
例えば、Aに子供B・Cがおり、Bの子供である孫DがAの養子となっていた場合に、Aの死亡時にBがすでに亡くなっているのなら、Dは相続人とBの代襲相続人の両方の立場を有します。
このようなケースでは、法定相続人の人数がDとCの2人となるのです。複数の立場を有しているDは1人として扱われます。
相続税の基礎控除額については『相続税は基礎控除以下なら無税!計算方法やその他の控除も解説』の記事で詳しく知ることが可能です。
代襲相続人に相続税が2割加算される可能性がある
養子が養親の兄弟姉妹を代襲相続した場合、代襲相続した養子の相続税は2割加算の対象となります。
これは被相続人(兄弟姉妹)から見て一親等の血族には該当しないため(甥・姪に相当する立場)です(相続税法18条、国税庁No.4157)。
一方、養子が養親の親を代襲相続した場合は、2割加算の対象とはなりません。
養親の親は子の立場で相続人となっていたため、その立場を代襲相続人として引き継ぐ以上、2割加算の対象とはならないのです。
ただし、養子が養親の親の養子となっており、養子の立場のみで財産を得る場合には、2割加算の対象となります。この場合は、子の立場を引き継いでいるとは言えないためです。
代襲相続が生じた場合の税務上の論点については『【代襲相続】相続税の基礎控除は?2割加算や法定相続分も解説』の記事で詳しく知ることが可能です。
代襲相続に関してわからない点があれば専門家に相談を
養子も原則として代襲相続人となれますが、なれないケースもあり、相続分や相続税の計算が複雑になることがあります。
このように、養子縁組が絡む相続は、通常の相続よりも法律上の関係が複雑になることがあるのです。
「誰が相続人となり、相続分がいくらになるのか」という点については弁護士や司法書士に、「相続税の計算がどうなるのか」という点は税理士にそれぞれ相談することをおすすめします。
専門家から適切なアドバイスやサポートを受けることで、正しい対応をすることが可能となるでしょう。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士