生前贈与とは?わかりやすく解説|メリット・手続き・注意点まで

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生前贈与という言葉を聞いたことはあっても、「相続とどう違うの?」「自分でできるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

生前贈与とは、生きているうちに自分の財産を他の人へ譲り渡す方法のことです。相続対策として活用されることもありますが、相続税の対象となるケースもあるなど、事前に仕組みを理解しておく必要があります。

この記事では、生前贈与の基本的な意味から、相続との違い、メリット・デメリット、具体的な手続き方法まで、初めての方にもわかりやすく解説します。

※本記事の情報は2026年3月時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。

目次

生前贈与とは?わかりやすく解説

生前贈与とは「生きているうちに財産を渡すこと」

生前贈与(せいぜんぞうよ)とは、生きているうちに自分の財産を他人に譲り渡すことです。相続が発生する前に財産を移転する方法のひとつとして、相続対策や資金援助などの目的で利用されることがあります。

民法上の「贈与」は、あげる側(贈与者)が財産を相手(受贈者)に無償で与える意思を示し、相手がそれを受け取ることで成立する契約です(民法549条)。

「生前」という言葉がつくのは、亡くなった後に財産が移転する「相続」と区別するためです。

贈与契約は口約束でも成立する

贈与契約は口頭(口約束)でも成立します。

ただし、書面によらない贈与は、まだ履行していない部分について取り消すことが可能です(民法550条)。

後のトラブルを防ぐためにも、贈与契約書を作成して贈与の内容を明確にしておくことが重要です。

贈与契約書の作成方法については、後述する「生前贈与の方法・手続き」で詳しく解説します。

生前贈与と相続の違い

生前贈与と相続は、どちらも財産を引き継ぐ方法ですが、行われるタイミングや手続き、課税される税金などに違いがあります。

比較項目生前贈与相続
実施タイミング生きている間亡くなった後
財産を渡す意思本人が自由に決められる遺言または法定相続のルール
主にかかる税金贈与税相続税
手続き贈与者と受贈者の合意相続人が中心となって手続き

生前贈与の大きな特徴は、財産を渡す側が生きているうちに「誰に・何を・いつ渡すか」を自分の意思で決められる点です。

相続では、亡くなった後に遺言や法律のルールに従って財産が分配されますが、生前贈与であれば、より柔軟に財産の承継をコントロールできます。

なお、贈与であっても場合によっては相続税がかかることがあります。この点については、本記事内で後ほど確認していきましょう。

生前贈与の対象者|誰に贈与できる?

生前贈与は、贈与者(あげる側)と受贈者(もらう側)の双方が合意すれば、原則として誰に対しても行うことができます。

実務上は、次のような親族間での贈与が多く見られます。

  • 親 → 子ども
  • 祖父母 → 孫
  • 夫婦間での贈与

法律上は親族に限られるわけではなく、友人や知人など第三者に贈与することも可能です。

ただし、のちに解説する相続時精算課税を適用する場合は、贈与者は60歳以上の父母・祖父母、受贈者は18歳以上の子・孫でなければなりません。

なお、贈与を受ける側が未成年の場合は、原則として法定代理人が契約手続きを行います。

生前贈与は相続の対象になる?3つのケース

「生前贈与をしていれば、その財産は相続とは関係なくなるのでは?」と考える方も多いかもしれません。

しかし実際には、一定の条件を満たす場合、生前贈与した財産が相続の計算に影響することがあります。具体的には、次のようなケースでは、生前贈与が相続財産に加算されたり、遺産分割の際に考慮されたりする可能性があります。

  • 相続開始前の一定期間に行われた贈与(生前贈与加算)
  • 相続時精算課税制度を利用した贈与
  • 相続人に対する贈与が「特別受益」とされる場合

それぞれの内容を順番に見ていきましょう。

(1)死亡前3~7年以内の暦年贈与(生前贈与加算)

暦年贈与とは、毎年110万円の基礎控除内であれば、贈与税がかからず財産を贈与できる制度です。

ただし、亡くなる前の一定期間内に行われた贈与については、相続財産に加算される場合があります。これを「生前贈与加算」といいます。

従来は、相続開始前3年以内の贈与が生前贈与加算の対象でしたが、令和6年(2024年)の税制改正により、この期間が段階的に延長されることになりました。

ポイント

  • 改正前
    相続開始前3年以内の贈与が生前贈与加算の対象
  • 改正後(令和6年以降)
    相続開始前7年以内の贈与が加算対象(段階的に延長)

この改正は令和6年1月1日以後に取得した財産に係る相続税から適用されます。加算対象期間は相続開始日に応じて段階的に延長され、2031年1月1日以降に相続が開始した場合に完全な7年加算が適用されます。

なお、延長された期間のうち「相続開始前3年超〜7年以内」の贈与については、合計100万円までを加算額から控除できる経過措置が設けられています。

(2)相続時精算課税制度を利用した贈与

相続時精算課税とは、贈与時に毎年110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除の範囲内であれば贈与税がかからない代わりに、将来相続が発生したときに、過去の贈与財産をまとめて相続財産として計算する制度です。

ただし、毎年110万円の基礎控除分は、相続財産に加算されません。

たとえば、親から子へ相続時精算課税制度を利用して財産を贈与した場合、その贈与財産の価額は相続時に相続財産へ加算され、相続税の計算対象になります。

そのため、相続時精算課税制度は「生前贈与による完全な節税」というよりも、贈与時点での課税を将来の相続時に精算する制度と理解するとよいでしょう。

(3)特別受益として扱われる場合

民法では、相続人の中に被相続人から生前贈与を受けていた人がいる場合、その贈与を「特別受益」として扱うことがあります。

特別受益とは、相続人の一部が生前に特別な利益を受けていた場合に、相続人同士の公平を保つために、遺産分割の計算に反映させる仕組みです。

たとえば、子どもの一人だけが住宅購入資金として多額の贈与を受けていた場合、その金額を考慮して遺産分割を調整することがあります。

このように、生前贈与は必ずしも相続と切り離されるわけではなく、相続税の計算や遺産分割に影響するケースがあります。生前贈与を検討する際には、相続との関係も踏まえて計画することが重要です。

生前贈与するなら暦年課税と相続時精算課税、どちらを選ぶべき?

生前贈与を行う場合、贈与税の課税方法には主に「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があります。どちらを選ぶかによって税金の仕組みや相続との関係が大きく変わるため、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。

まずは両制度の主な違いを整理してみましょう。

ポイント

【暦年課税】

  • 毎年110万円の基礎控除内であれば、贈与税なく贈与ができる
    ※上記を超えても、特例の適用で贈与税がかからないケースもある
  • 被相続人の死亡前3~7年前の贈与は、相続税の対象になる
    ※相続開始前3年超〜7年以内の贈与については、合計100万円を加算額から控除できる

【相続時精算課税】

  • 毎年110万円の基礎控除と、累計2,500万円までの特別控除の範囲内であれば、贈与税なく贈与ができる
    ※上記を超えても、特例の適用で贈与税がかからないケースもある
  • 贈与した財産は、相続時に相続税の対象になる
    ※毎年110万円分までは、課税対象外

それぞれの制度には向いているケースがあります。

暦年課税が向いているケース

長期間にわたり少額の贈与を続けたい

年間110万円の基礎控除を活用し、毎年少しずつ財産を移転する方法に向いています。毎年110万円の基礎控除があるので、相続までの期間が長いほど、相続財産を減らす効果が期待できます。

将来の相続財産を減らしたい

相続時精算課税とは違い、相続開始前の一定期間を除き、贈与した財産は相続財産に含まれません。そのため、相続税の課税対象となる財産を減らす対策として利用されることがあります。

制度を柔軟に使いたい

暦年課税は毎年の贈与ごとに課税される仕組みであり、制度の選択を固定する必要がありません。贈与額や贈与の有無を状況に応じて調整できる点も特徴です。

相続時精算課税が向いているケース

まとまった財産を早めに移転したい

相続時精算課税では、毎年110万円の基礎控除と、累計2,500万円の特別控除の範囲内なら贈与税がかかりません。

そのため、住宅資金の援助や事業承継など、暦年贈与の基礎控除内に収まらないような大きな金額の財産を一度に移転したい場合に利用されることがあります。

将来値上がりが見込まれる財産を贈与したい

相続時精算課税では、財産は贈与時の価額で相続財産に加算されるため、将来価値が上がる可能性のある不動産や株式などの贈与に使われるケースがあります。

ただし、不動産については相続するほうが、節税効果の大きい「小規模宅地等に関する特例」を適用でき、節税効果が大きくなることもあります。

相続税の課税対象になる可能性が高い

将来相続税がかかる見込みがある場合、早い段階で財産を移転しておくことで、相続時の財産管理や承継をスムーズにできることがあります。

生前贈与のメリット

生前贈与には、相続とは異なる特徴があり、状況によっては相続対策として活用できるメリットがあります。代表的なメリットを見ていきましょう。

相続税の節税につながる可能性がある

相続税は、亡くなった時点での財産総額に対して課税されます。そのため、生前に財産を移転しておくことで相続財産の額を減らし、結果として相続税の負担を軽減できる可能性があります。

特に、暦年贈与における贈与税には年間110万円の基礎控除(暦年課税)があるため、110万円以下の贈与であれば原則として贈与税はかかりません。この仕組みを利用して、毎年少しずつ財産を移転する方法は、生前贈与の代表的な活用方法とされています。

ただし、前述のとおり、暦年贈与でも死亡前3~7年の贈与は相続税の対象となります。また、相続時精算課税での贈与では、年間110万円の基礎控除を超える分は相続税の対象になります。

財産を渡す相手やタイミングを自由に決められる

相続では、遺言がない場合、民法で定められた「法定相続分」や相続人間で行う「遺産分割協議」に従って財産を分けることになります。

一方、生前贈与では、贈与者が自分の意思で「誰に・どの財産を・いつ渡すか」を決めることができます。

たとえば、孫の進学費用や子どもの住宅購入資金など、必要なタイミングで資金を渡すことができる点は、生前贈与の大きなメリットといえるでしょう。

資金の使い道を確認しながら渡せる

相続では、本人が亡くなった後に財産が移転するため、その後の使い道を確認することはできません。

一方、生前贈与であれば、贈与した財産がどのように使われているのかを自分の目で確認することができます。

子どもや孫の生活や教育、住宅購入など、目的に応じて資金を渡し、その使い道を見守ることができる点も、生前贈与の特徴の一つです。

非課税枠や特例制度を利用できる

贈与税には、一定の条件を満たす場合に利用できる非課税制度や特例があります。これらの制度を活用することで、税負担を抑えながら財産を移転できる可能性があります。

代表的な制度は次のとおりです。

主な非課税制度

  • 住宅取得等資金の贈与の非課税制度
    子や孫への住宅購入資金の贈与が、省エネ等住宅は1,000万円、それ以外は500万円まで非課税となる制度です。
    ※2026年12月31日まで
  • 教育資金の一括贈与の非課税制度
    子や孫の教育費として贈与する場合、最大1,500万円まで非課税となります。
    ※2026年3月31日まで
  • 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度
    子や孫への結婚・出産・育児費用の贈与について、最大1,000万円まで非課税となる制度です。
    ※2027年3月31日まで
  • 夫婦間の居住用不動産の贈与の配偶者控除(おしどり贈与)
    婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合、最大2,000万円まで控除を受けられます。

このような制度を組み合わせることで、生前贈与を相続対策の一つとして活用できる場合があります。

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生前贈与のデメリット・注意点

生前贈与には多くのメリットがありますが、税金や相続トラブルに関わる注意点もあります。制度を正しく理解せずに行うと、想定していた相続対策にならない場合もあるため、事前にデメリットやリスクを把握しておくことが重要です。

贈与税がかかる場合がある

生前贈与で受け取った財産には、贈与税がかかる場合があります。

相続税対策として贈与を検討する人もいますが、贈与税は相続税よりも税率が高く設定されていることが多く、まとまった金額を贈与すると税負担が大きくなる可能性があります。

贈与税がかかる主なケースとしては、以下があります。

基礎控除を超える贈与をした

例えば暦年贈与の場合は、1年間に受け取った贈与の合計額が110万円(暦年課税の基礎控除)を超えると、超えた部分について贈与税の申告・納税が必要になります。

非課税枠や適用できる特例を事前に確認し、計画的に贈与を進めることが重要です。

贈与税の税率・計算については、関連記事『贈与にかかる税金を計算|500万円を生前贈与するシミュレーションつき』をご覧ください。

定期贈与とみなされてしまった

毎年同じ金額を一定期間にわたって贈与する場合、税務上「定期贈与」と判断される可能性があります。

定期贈与とは、たとえば「毎年100万円を10年間贈与する」といった契約を最初から決めている場合などに該当しうるものです。

実際には毎年少しずつ贈与していたとしても、実質的には合計額をまとめて贈与したものとみなされます。

この場合、暦年贈与で毎年110万円の基礎控除以内で贈与していたとしても、合計額に対して贈与税が課税される可能性があるのです。

このようなリスクを避けるためには、毎年改めて贈与契約を行うことや、贈与契約書を作成して贈与の事実を明確にしておくことが重要です。

名義預金とみなされるリスク

親が子ども名義の口座を作り、その口座に貯金していたとしても、実際には親が管理・使用している場合、税務上は「名義預金」とみなされることがあります。

相続税対策で贈与をしていても、名義預金とみなされると贈与としては認められず、相続が発生した際に相続財産として課税される可能性があります。

生前贈与として認められるためには、次のような点が重要です。

  • 贈与契約書を作成する
  • 受贈者本人が口座を管理する
  • 贈与された財産を受贈者が自由に使える状態にする

このように、形式だけでなく実態として贈与が行われていることが重要になります。

詳しくは、関連記事『名義預金は贈与税・相続税がかかる?名義預金の認定の回避策も解説』をご覧ください。

不動産の贈与は税金や費用がかかる

不動産を生前贈与する場合、相続で取得する場合と比べて税金や費用の負担が大きくなることがあります。

たとえば、生前贈与では次のような費用が発生します。

  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 司法書士報酬などの手続き費用

登録免許税は贈与でも相続でも発生しますが、贈与の場合のほうが税率が高くなります。

また、不動産取得税は相続の場合は原則としてかかりません。

次に解説する小規模宅地等の特例が使えないことも含め、相続による取得と比べてコストが高くなるケースもあるため、不動産の生前贈与は節税になるかどうかを事前に確認することが重要です。

土地の贈与でかかる各種税金・費用については、関連記事『土地の贈与税はいくら?評価額の計算方法と税率をわかりやすく解説』で解説しています。

小規模宅地等の特例が適用できなくなる場合がある

自宅や事業用の土地を生前贈与すると、相続時に利用できる「小規模宅地等の特例」が適用できなくなります。

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たす土地について、相続税評価額を最大80%減額できる制度です。特に自宅の土地や事業用地では、相続税の負担を大きく軽減できる可能性があります。

しかし、生前贈与によって土地の所有権を移してしまうと、その土地は相続財産ではなくなるため、この特例の対象外になるのです。その結果、生前贈与をしたことでかえって相続税負担が増えるケースもあります。

不動産の生前贈与を検討する場合は、登録免許税や不動産取得税などのコストだけでなく、相続時に利用できる税制も含めて総合的に判断することが重要です。

小規模宅地等の特例については、関連記事『小規模宅地等の特例の要件をわかりやすく解説。計算方法や注意点もわかる』で解説しています。

相続より生前贈与が向いているケース

生前贈与はすべての人に必要な対策というわけではありません。しかし、財産の状況や家族構成によっては、相続対策として有効に活用できる場合があります。ここでは、生前贈与を検討する価値がある代表的なケースを紹介します。

相続財産が基礎控除を大きく超える可能性がある人

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人」の基礎控除があります。この金額を大きく超える財産がある場合、生前贈与で財産を分散しておくことで相続税の負担を軽減できる可能性があります。

収益不動産を保有している人

アパートや賃貸マンションなどの収益不動産を所有している場合、生前贈与によって所有者を次世代へ移すことで、将来の賃料収入を早い段階で移転できます。

例えば父が収益不動産を所有している間、家賃収入は父に入ります。そして父が亡くなった場合、その家賃収入は相続税の対象となります。

しかし、早い段階で収益不動産を子に贈与していれば、その後の家賃収入は子に入るため、父が亡くなっても相続税の対象にならないのです。

このような長期的な資産承継の観点から、生前贈与が検討されるケースも少なくありません。

特定の相手に財産を確実に渡したい人

生前贈与は、贈与者が生きている間に財産を渡すため、「誰に・どの財産を渡すか」を自分の意思で決めることができます。特定の子どもや孫に資金を渡したい場合などに活用されることがあります。

認知症リスクが高まる前に財産管理を整理したい人

高齢になると、認知症などによって財産管理や契約行為が難しくなる可能性があります。判断能力があるうちに生前贈与を行い、財産の一部を家族へ移しておくことで、将来の資産管理を円滑にするという考え方もあります。

生前贈与の方法・手続き|自分でできる?

「生前贈与の手続きは難しそう」と感じる方も多いかもしれません。しかし、贈与する財産の種類によっては、自分で手続きを進めることも可能です。特に、現金や預貯金の贈与であれば、基本的な流れを理解していれば個人でも対応できます。

生前贈与の主な手続きと、自分で対応できるかどうかの目安は次のとおりです。

  • 贈与契約書の作成
    ひな形を参考にすれば自分で作成することが可能です。
  • 現金・預貯金の振込
    銀行振込などで自分で対応できます。
  • 贈与税の申告(内容がシンプルな場合)
    国税庁のホームページや税務署の案内を参考にすれば自分でも可能ですが、複雑な場合は税理士に依頼するケースもあります。
  • 不動産の登記手続き
    自分で行うこともできますが、手続きが複雑なため司法書士へ依頼するのが一般的です。
  • 節税目的の贈与計画の作成
    相続税対策を含む複雑な贈与計画は、税理士など専門家に相談することが望ましいでしょう。

一般的な生前贈与の流れは、次の3つのステップで進みます。

ステップ1. 贈与契約書を作成する

まずは、贈与の内容を明確にするために贈与契約書を作成します。贈与契約書には、主に次の内容を記載します。

  • 贈与者の氏名・住所
  • 受贈者の氏名・住所
  • 贈与する財産の内容(現金なら金額、不動産なら所在地など)
  • 贈与の実施日
  • 贈与者・受贈者それぞれの署名・押印

贈与契約書は通常2通作成し、贈与者と受贈者がそれぞれ1通ずつ保管します。

また、毎年贈与を行う場合は、その都度契約書を作成することが重要です。同じ契約書を使い回すと、税務上「定期贈与」とみなされ、一括で課税される可能性があります。

ステップ2. 財産を実際に移転する

贈与契約を結んだ後は、実際に財産を移転します。財産の種類によって手続き方法は異なります。

  • 現金・預貯金の場合
    贈与者の口座から受贈者の口座へ振り込みます。手渡しよりも銀行振込の方が記録が残るため、贈与の事実を証明しやすくなります。
  • 不動産の場合
    法務局で所有権移転登記の手続きを行います。
  • 株式などの有価証券の場合
    証券会社で名義変更などの手続きが必要になります。

このように、贈与の実態がはっきりわかる形で財産を移転しておくことが重要です。

ステップ3. 贈与税の申告・納税

暦年贈与の場合

暦年贈与の場合、1年間に受け取った贈与の合計額が110万円を超えるなら、翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告と納税を行う必要があります。

贈与税の申告は、次のような方法で行うことができます。

  • 税務署の窓口で申告する
  • 郵送で申告書を提出する
  • e-Tax(電子申告)を利用する

相続時精算課税の場合

相続時精算課税制度を選択する場合、初年度は金額の多少にかかわらず「相続時精算課税選択届出書」の提出が必須です。

  • 初年度:
    贈与額が110万円以下の場合は、相続時精算課税選択届出書(および添付書類)のみを提出します。贈与税の申告書は不要です。贈与額が110万円を超える場合は、届出書と贈与税の申告書の両方を提出します。
  • 2年目以降:
    年間の贈与額が110万円以下であれば、申告も届出も不要です。110万円を超える場合のみ、贈与税の申告を行いましょう。

相続時精算課税制度を一度選択すると、原則として暦年課税に戻すことはできないため、制度の内容を理解したうえで選択することが重要です。贈与額が大きい場合や制度選択に迷う場合は、税理士など専門家への相談も検討するとよいでしょう。

相続時精算課税と暦年贈与については、関連記事『相続時精算課税制度と暦年贈与は併用できない|違いや選び方も解説』にて詳しく解説しています。

生前贈与を検討するときのポイント

生前贈与は相続対策として有効な方法ですが、制度の仕組みを理解せずに行うと、思わぬ税負担や相続トラブルにつながる可能性があります。ここでは、生前贈与を検討する際に押さえておきたいポイントを整理します。

贈与の記録を残す

生前贈与が税務上認められるためには、実際に贈与が行われたことを客観的に示せる証拠を残しておくことが重要です。

たとえば、次のような対応をしておくと、贈与の事実を説明しやすくなります。

  • 贈与契約書を作成する
  • 銀行振込で財産を移転する
  • 受贈者本人が口座を管理する

このように形式だけでなく、実態として贈与が行われていることを示すことが大切です。

老後資金が不足するリスクも考慮する

生前贈与を行う際には、贈与する側の老後資金にも注意が必要です。贈与は一度成立すると、原則として後から取り消すことができません。

そのため、早い段階で多額の財産を贈与してしまうと、将来介護費用や医療費が増えた場合に、自分自身の生活資金が不足してしまう可能性があります。

特に高齢期には、予想以上に医療費や介護費用がかかるケースも少なくありません。生前贈与を行う際は、自分の生活費や将来の備えを十分に確保したうえで、余裕資金の範囲で行うという考え方が重要です。

節税効果だけに注目するのではなく、将来の生活設計も踏まえて慎重に検討するようにしましょう。

家族全体への影響・遺留分トラブルも考慮する

生前贈与によって特定の相続人や第三者に財産を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害する可能性があります。

遺留分とは、配偶者や子どもなど一定の相続人に法律で保障された最低限の取り分のことです。

もし遺留分を侵害する贈与が行われた場合、相続開始後に他の相続人から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。生前贈与を行う際は、相続人間の公平性にも配慮することが大切です。

まとめ|生前贈与は「早めの計画」と「正しい手続き」が大切

生前贈与とは、生きているうちに自分の財産を他人へ譲り渡す方法で、相続対策として利用されることもあります。

相続とは異なり、誰に・何を・いつ渡すかを自分の意思で決められる点が大きな特徴です。

一方で、生前贈与した財産が相続税の計算に加算される場合や、贈与税が発生するケースもあるため、制度の仕組みを理解したうえで計画的に行うことが重要です。

贈与の手続きは自分でできる場合もありますが、高額の贈与や不動産の贈与を検討している場合は、税理士や弁護士などの専門家に相談しながら進めると安心でしょう。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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