葬式費用は相続税で控除できる!どこまでが対象か、控除できる人は誰かも解説

葬式費用は、相続税の計算で相続財産(課税価格)から差し引ける「債務控除」の対象です。通夜・告別式の費用や火葬費用、お布施などは控除できますが、香典返しや49日法要、墓石・墓地の購入費用などは控除できません。
なお、葬儀費用を控除できるのは相続税の申告のみです。所得税の確定申告(準確定申告を含む)で葬儀費用を控除する制度はありません。
本記事では、葬式費用としてどこまでが債務控除の対象になるのか、控除できる人や控除できない費用との違いを、国税庁の取扱いに沿ってわかりやすく解説します。葬式費用を控除した場合の相続税の計算例や、相続税申告書第13表への書き方も紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
葬式費用は債務控除の対象|債務控除とは?
葬式費用は債務ではありませんが、相続税法上の債務控除として財産から差し引けます。
債務控除とは、借金や未払いの税金などの「債務」を財産の合計額から差し引くことです。
葬式費用を含めた債務控除が多くなるほど、相続税の対象となる財産の合計額が少なくなり、相続税が少なくなります。
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葬式費用を債務控除できる人は?
葬式費用を相続財産(課税価格)から控除できるのは、実際にその費用を負担した相続人や包括受遺者です。
また、相続時精算課税制度の適用を受けた人は、相続・遺贈により財産を取得しているか、取得していなくても相続開始時に日本国内に住所がある場合は、実際に負担した葬式費用を債務控除できます。
ここで注意したいのは、以下の点です。
【注意点】
- 例えば喪主であり葬式費用を負担したとしても、相続や遺贈、または相続時精算課税制度の適用対象となる財産を取得していない場合は、原則として債務控除の対象になりません。
- 遺言で特定の財産を取得した相続人ではない特定受遺者は、原則として葬式費用を控除できません。
- 相続放棄をした人も、原則として葬式費用の控除の対象外となります。ただし、例外的に控除が認められる場合もあります。
- 日本国内に住所がない相続人など(制限納税義務者)は、葬式費用を控除できません。
なお、葬式費用を複数の相続人で分担した場合は、それぞれが実際に負担した金額を控除できます。
喪主が一時的に全額を立て替え、後日ほかの相続人との間で精算した場合も、それぞれの相続人が最終的に負担した金額を控除できます。
領収書や支払いの記録は、相続税の申告に備えて大切に保管しておきましょう。
参考
葬式費用はどこまでが債務控除の対象?
葬式に関連する費用はさまざまありますが、そのすべてが葬式費用として債務控除の対象になるわけではありません。
葬式に関連する費用の控除の可否を一覧にすると、以下の通りです。
| 費用の種類 | 控除の可否 |
|---|---|
| 通夜・告別式の費用(会場費・料理代など) | ○ できる |
| 火葬費用・埋葬費用 | ○ できる |
| 遺体・遺骨の搬送費用(霊柩車・回送費等) | ○ できる |
| お布施(読経料・戒名料を含む) | ○ できる |
| 生花代(祭壇の花など) | ○ できる |
| 葬儀社への費用一式 | ○ できる |
| 死亡診断書の作成・取得に通常必要な費用 | ○ できる |
| 初七日法要の費用*(葬儀と同日開催の場合) | △ 区分状況による |
| 香典返しの費用 | ✕ できない |
| 位牌・仏壇・墓石の購入費用 | ✕ できない |
| 初七日法要の費用(別日開催の場合) | ✕ できない |
| 49日法要の費用 | ✕ できない |
| 参列者・遺族の移動交通費(タクシー代等) | ✕ できない |
| 葬儀に関する飲食費のうち過剰なもの | △ 社会通念上相当な範囲のみ |
*葬儀費用と区分できる場合は対象外です。区分できない場合、葬式に通常伴う費用(相続税法基本通達13-4(3))として一体的に扱われる実務例があります。
ここでは、以下の費目について詳しく解説します。
- お布施(読経料・戒名料)
- 生花代
- 火葬費用・遺体搬送費用
- 交通費・タクシー代
- 初七日法要の費用
- 49日法要の費用
- 位牌・仏壇・墓石
- 香典返し
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お布施(読経料・戒名料)
葬儀で支払うお布施(読経料・戒名料を含む)は、控除の対象になります。
お布施は領収書が発行されないことがほとんどですが、お寺の名称、所在地、電話番号、僧侶の氏名、支払った名目(戒名料・読経料など)をメモ(覚書)に記録しておけば申告に使えます。
金額や内容が社会通念上相当であり、実際に支払った事実が確認できれば、税務署に認められるのが一般的です。
生花代
祭壇に飾る生花や花輪の費用は控除できます。ただし、会葬者から贈られた供花の費用は、喪主側が支払ったものでなければ控除できません。
火葬費用・遺体搬送費用
火葬場への支払いや、病院・自宅から葬儀場への遺体・遺骨の搬送費用(霊柩車・回送費等)は控除できます。
交通費・タクシー代
参列者・遺族の移動にかかる交通費やタクシー代は、控除できません。
「人が移動するための交通費」と「遺体・遺骨の移送費用」は明確に区別されると理解してください。
初七日法要の費用
初七日法要の費用は、開催のタイミングによって扱いが異なります。
葬儀と別日に初七日法要を開催した場合、葬式に直接関係のない宗教行事とみなされ、控除の対象外になります。
葬儀当日に「繰り上げ初七日」として同時開催した場合でも、国税庁は初七日など法要の費用を原則として葬式費用に含めない考え方を示しています。
ただし、繰り上げ初七日の費用が葬儀費用と明確に区分されていないときは、葬式に通常伴う費用(相続税法基本通達13-4(3))として全体を一体的に扱う実務例があります。
この扱いは「繰り上げ初七日だから認められる」という意味ではなく、費用を区分できるかどうかで判断される点に注意が必要です。費用が区分できるかどうかで判断が分かれるため、申告前に税理士へ確認することをおすすめします。
49日法要の費用
49日法要(四十九日)の費用は、葬儀とは別の宗教的行事として扱われるため、債務控除の対象にはなりません。
混同しやすいポイントですが、相続税法が控除を認めているのは「葬式」に直接関係する費用に限られます。
位牌・仏壇・墓石
位牌・仏壇・墓石の購入費用は、控除の対象外です。
これらは「祭祀財産(さいしざいさん)」に分類され、もともと相続税の課税対象にもなりません(非課税財産)。そのため、控除の対象にもならないという整理になっています。
香典返し
香典返しの費用は控除できません。香典自体が非課税であることとセットで考えると理解しやすいです。受け取った香典は相続財産に含まれず、香典返しの費用も控除の対象外という扱いになっています。
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【補足】後期高齢者医療制度の葬祭費を葬式費用に充てても債務控除できる?
後期高齢者医療制度から支給される「葬祭費」や、健康保険の「埋葬料(埋葬費)」を受け取った場合でも、実際に負担した葬式費用については債務控除の対象になります
葬祭費や埋葬料を葬式費用の支払いに充てたとしても、控除できる金額が給付分だけ減るわけではありません。
なお、後期高齢者医療制度の葬祭費や健康保険の埋葬料は、受給者(喪主等)固有の給付と整理されており、相続税の課税対象(相続財産・みなし相続財産)には算入しないのが通常です。
個別の制度・給付要件によって扱いが異なり得るため、実際の支給根拠(条例・健康保険法等)と受給者を確認することをお勧めします。
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被相続人の口座の財産から葬式費用を支払う場合の注意点
葬式費用を被相続人の銀行口座から引き出して支払うことを検討する方も多いと思います。この点について、重要な注意点をお伝えします。
相続放棄できなくなることがある
被相続人の預貯金から葬式費用を支出すると、民法921条(単純承認)との関係で「相続財産の処分」と評価され、相続放棄が認められなくなるおそれがあります。
社会通念上相当な葬式費用の支出は処分に当たらないとされる可能性もありますが、いずれにせよ、相続放棄を検討している場合は被相続人の口座から葬式費用を引き出すことは避け、事前に弁護士や司法書士に相談することを強くお勧めします。
被相続人の口座は凍結されることがある
被相続人が亡くなったことを金融機関が把握すると、口座は凍結されるのが一般的です。凍結後は相続手続きをしなければ、原則として預貯金を引き出せません。
そのため、葬式費用は相続人自身の口座から一時的に立て替えるケースが実務上多くみられます。
なお、2019年7月1日に施行された預貯金の仮払い制度を利用すれば、遺産分割前でも「口座ごとの預金額×3分の1×法定相続分(同一金融機関につき上限150万円)」までであれば、他の相続人の同意を得ることなく単独で払い戻しを受けることができます(民法909条の2)。
ただし、預貯金の仮払いは遺産の一部分割による取得と同様に扱われるため、社会通念上相当を超えて仮払いを利用したり、葬儀費用以外の目的に充てたりすると相続財産の処分に該当する可能性があります。相続放棄を検討している場合は、仮払い制度の利用前に、弁護士や司法書士へご相談ください。
口座凍結前の引き出しリスクや預貯金の仮払い制度の使い方は、関連記事『相続で預金を引き出す方法は?死亡後のリスクと仮払い制度を解説』で詳しく解説しています。
葬式費用で債務控除する場合の相続税計算
葬式費用で債務控除する場合、正味の遺産額は以下のようになります。
債務控除後の正味の遺産額
相続財産の合計額 − 非課税財産 − 債務 − 葬式費用
たとえば、相続財産の合計が5,000万円、債務(借入金など)が500万円、葬式費用が200万円だった場合、正味の遺産額は5,000万円 − 500万円 − 200万円 = 4,300万円となります。
この金額から、さらに相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いたものが課税遺産総額であり、相続税はこれをベースに計算していきます。
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相続税申告書(第13表)への葬式費用の書き方
葬式費用を債務控除の対象にするには、相続税申告書第13表への記入が必要です。
具体的な書き方について見ていきましょう。
相続税申告書に記載する内容
葬式費用については、相続税申告書第13表の「葬式費用の明細」欄に以下の内容を記載します。
- 支払先の氏名または名称
- 支払先の住所または所在地
- 支払い年月日
- 金額
- 負担する人の氏名
- 負担する金額
領収書がない費用(お布施など)の記載方法
お布施など領収書がない費用は、支払ったことを証明するメモ(覚書)を作成しておきましょう。税務署から問い合わせがあった場合に備え、支払日・支払先・金額・支払った状況を記録しておくと安心です。
相続税申告書全体の書き方・記載例は以下記事で詳しく解説しています。第13表以外の記載方法も確認したい方はあわせてご覧ください。
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葬式費用の相続税控除についてよくある質問
Q. 葬儀費用は確定申告(所得税)で控除できる?
葬儀費用を所得税の確定申告で控除する制度はありません。
控除できるのは相続税の申告のみで、相続財産から差し引く債務控除として扱われます(相続税法第13条)。医療費控除などとも別の制度です。
Q. 葬儀費用は誰が負担すべきと決まっている?
葬儀費用の負担者について法律上の明確な定めはありません。実務上は喪主が負担する例が多いですが、相続人全員の合意により相続財産から精算することも可能です。
実際に負担した人が、その人の負担に属する金額について債務控除を受けられます(相続税法第13条)。
Q. 相続放棄した人でも葬式費用を控除できる?
相続放棄した人でも、遺贈により財産を取得するなど、例外的に相続税の課税対象となる財産を取得し、実際に葬式費用を負担した場合は、取得した財産の価額から葬式費用を控除できます(相続税法基本通達13-1)。
一方、財産を取得していない相続放棄者は、葬式費用を負担していても控除することはできません。
Q. 社葬の費用も相続税の葬式費用になる?
会社が負担した社葬費用は、相続税の債務控除の対象になりません。
社会通念上相当な社葬費用は会社側で法人税の損金となります(法人税基本通達9-7-19)。遺族が自己負担した部分のみ債務控除の対象です。
まとめ|葬式費用の相続税控除で迷ったら専門家へ
相続税では、通夜・告別式の費用や火葬費用、お布施、遺体搬送費用など、一定の「葬式費用」を債務控除として遺産総額から差し引くことができます。債務控除が増えるほど課税対象となる遺産額が減るため、相続税の負担軽減にもつながります。
ただし、葬式に関係する支出であっても、香典返し・49日法要・位牌や墓石の購入費用などは原則として控除の対象外です。
また、葬式費用を控除するには、相続税申告書第13表への記載や領収書・メモの保管も重要になります。判断が難しい費用がある場合は、税理士に相談しながら進めると安心です。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
