不当解雇されたら裁判で慰謝料を請求!損害賠償の相場と相談窓口

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不当解雇と裁判慰謝料請求できる?

不当な解雇をされたら、会社に対してしっかり反論し、自分の正当な権利を訴えたいですよね。

不当解雇の撤回や慰謝料を請求する手段には、交渉・労働審判・裁判などがあり、それぞれに必要な期間や費用が変わってきます。

この記事では、不当解雇で請求できる慰謝料の相場や損害賠償請求の方法、相談窓口について詳しく解説しています。不当解雇の裁判などで慰謝料請求をお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。

不当解雇された!裁判で損害賠償請求できるお金は?

不当解雇で裁判を起こすことで受け取れる可能性のあるお金には、以下のようなものがあります。

裁判で受け取れる可能性のあるお金

  1. 慰謝料
  2. 未払いの賃金、残業代
  3. 未払いの退職金
  4. 解雇予告手当
  5. その他和解金、解決金

それぞれどのくらいの金額がもらえるのか、もらえる条件は何なのか、一緒に確認していきましょう。

①不当解雇でもらえる慰謝料の相場は?

不当解雇で請求できる慰謝料の相場は、10万円〜100万円程度のことが多いです。

ただし、解雇が無効だとしても、慰謝料が必ずしも認められるわけではないので注意してください。

不当解雇の慰謝料は、解雇の違法性・悪質性が高い場合に限って認められることが裁判所や判例の立場です。

もしも不当解雇にあたって、会社側から不法行為(民法709条)があった場合、会社に慰謝料を請求することが可能です。

以下のようなときに慰謝料請求が認められたことがあります。

慰謝料請求が認められた理由の例

  • 解雇の理由がまったく無い
  • 解雇に至る決定、通知の手続きに著しい不備があった
  • 労働組合員であることを理由とする解雇(不当労働行為)
  • 内部告発や残業代請求などに対する報復としての解雇
  • 解雇行為に伴い、労働者の身心や名誉権を侵害する行為があった

また、ヘッドハンティングに応じて転職したのに、その直後に不当解雇されたようなケースでは、慰謝料に加えて逸失利益の損害賠償請求が認められる場合があります。

②未払い賃金|解雇無効を主張するとき

不当解雇による解雇無効を主張する場合、一定期間の賃金を請求することができます。

もしも不当解雇が無効であったと認められた場合、和解や判決などで従業員の地位が確認されるまでの間は、有効な雇用関係が成立していることになります。

だとすれば、その期間に支払われるべきであった賃金も当然に請求できることになるためです。

既に再就職しておりそこで給与を受け取っていたりする場合には、就職後の期間において最大4割分の未払い賃金(賞与を除く)が控除されます。

また、就業中に賃金の支払われない残業があったような場合には、未払い残業代も同時に請求することができます。

③退職金|懲戒解雇でも請求できる?

不当解雇の裁判においては、第一次的には、退職金・解雇予告手当の支払いは請求しません。これらは解雇が有効なことが前提だからです。

もっとも、裁判が進む過程で解雇が有効となりそうな場合は、解雇が有効であることを前提に、退職金や解雇予告手当の支払いを請求することがあります。

とくに懲戒解雇の場合、就業規則にも「懲戒解雇のときには退職金を支給しない」という規定がよく置かれていますが、実際は退職金の一部支払いが認められた事例も多くあります。

これは、退職金に「長年の労働に報いる」という性格があり、仮に懲戒解雇されたとしてもそれまでの功労が全て帳消しとはなりにくい、と考えられているためです。

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④解雇予告手当|即日解雇の場合に支払われるべき?

会社から「明日から来なくていい」「すぐにクビ」などと指示される、いわゆる即日解雇の場合には、労働者は解雇予告手当を受け取れる可能性があります(労働基準法20条)。

解雇予告手当とは、解雇予告期間が30日未満のときに支払われる、30日に満たないぶんの平均賃金に相当する手当です。

ただし解雇予告手当を請求するということは、解雇された事実を認めるということですので、解雇無効を前提とする未払い賃金などとは同時に請求できないことには注意が必要です。

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⑤不当解雇の和解金・解決金は?

不当解雇の和解金・解決金の相場は、賃金の数か月〜1年分程度のことが多いです。和解が成立するためには、当事者双方が主張を譲歩して歩み寄る必要があります。

そのため、判決を得る場合と比べて、和解金・解決金の金額は低くなります。もっとも、早期かつ確実に解決できる点が大きなメリットです。

会社から労働者に支払われる慰謝料や未払い賃金、退職金などをすべてあわせて、和解金や解決金と表現されています。

この点、民事裁判を起こして、裁判に勝てば、過去の賃金(バックペイ)の支払いなどで解決金は高くなる傾向にあります。

しかし、裁判の場合は、裁判官の判断によっては敗訴する可能性があること、弁護士の着手金などある程度の初期費用が必要になる等の不確実なリスクを負うことになります。

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裁判で不当解雇による高額な慰謝料が認められた例

違法性の高い不当解雇は慰謝料が認められる可能性がある

不当解雇をされたからといって、常に慰謝料請求が認められるとは限りません。

裁判所の見解の傾向として、不当解雇された労働者の精神的苦痛は、未払い賃金の支払いなどで一定程度回復し、それに上乗せする形で慰謝料支払いを認めることに慎重となっているためです。

ですが、会社の不法行為の違法性・悪質性が高く、労働者の権利侵害が多大な場合は、高額な慰謝料が支払われる可能性があります。

では、実際にどのようなケースで慰謝料が認められたのか、高額な慰謝料が支払われるケースの特徴は何か、裁判例をご紹介します。

100万円以上の慰謝料が認められたケース

一般に、会社側の違法性が高く、労働者の受けた損害が大きいほど、慰謝料が高額になる傾向があります。

実際に極めて悪質なセクハラ・パワハラ・嫌がらせがあった場合、会社からの行為により精神疾患を患った場合、解雇理由に合理性がまったく無い場合などに、100万円以上の慰謝料が認められています。

100万円以上の慰謝料が認められたケース

  • 【100万円】退職時に会社から訴えられ、双極性感情障害を発症した(横浜地裁H29.3.30)
  • 【100万円】会社代表者から丸刈りにされる、長時間土下座させられるなどの著しいパワハラを受けた(福岡高裁H31.3.26)
  • 【120万円】報復の意図で、理由なく、著しく相当性を欠く手続きで懲戒解雇された(東京地裁H28.2.19)
  • 【180万円】長期の性的いやがらせや強姦未遂を受けたうえ不当に解雇され、PTSDを発症した(東京地判H12.3.10)

懲戒解雇でも慰謝料が認められるケースがある【70万】

懲戒解雇とは、従業員の服務規律違反行為に対する制裁として行われる解雇です。

具体的には業務に関連した犯罪行為、重大な経歴詐称、業務命令への繰り返しの違反などにより懲戒解雇となる可能性があります。

ですが、懲戒解雇を言い渡された場合であっても、その理由が不当であったり、また懲戒解雇に伴う不法行為があると慰謝料請求が認められます。

実際に、スーパーマーケットで商品の持ち帰りを理由に懲戒解雇された社員について、70万円の慰謝料請求を認めた事例があります。

これは、スーパーマーケット側が「従業員が窃盗行為に及んだ」という旨の掲示を多数の店舗に行ったことが不法行為と判断されたためです。

契約社員・アルバイトなども不当解雇の慰謝料が認められる?

契約社員の場合は?

契約社員の不当解雇でとくに問題になるのは、契約期間の途中の解雇です。

契約社員に関しては、労働契約法17条で「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間、労働者を解雇することができない」と定められています。

契約期間途中の解雇は、原則として無効です。

また、雇い止めに関しても、契約社員の契約更新に対する合理的な期待が保護されています。労働契約法18条で無期雇用契約への転換権が、同法19条で契約更新への申込みの権利が保障されています。

これらの権利を無視する会社の横暴に対しては、解決金に慰謝料を加えて請求できる場合があります。

アルバイトの場合は?

アルバイトの場合も、安易に解雇できないことは正社員や契約社員の場合と同様です。アルバイトの場合も、仕事や立場の性質に応じて、解雇規制の法律が適用されることになります。

会社から安易にクビを切られた場合は、法律に基づいて、地位を主張し、解決金や慰謝料を請求することができます。

内定取り消しの場合は?

内定取消しとは、内定通知により成立した雇用契約を、会社の側から一方的に解約することです。入社前の内定期間であっても、会社は一方的に雇用契約を解約できるわけではありません。

解約権の行使が認められるのは、従業員側に学歴詐称の落ち度があった等、一定の合理的な場合に限られます。

違法かつ悪質な内定取り消しに対しては、損害賠償として慰謝料を請求することができます。

たとえば、転職を勧誘されて内定を受領した後、一方的に内定を破棄され、雇用契約を解約された事案につき、慰謝料300万円の請求が認められたケースがあります。また、新卒の場合は、慰謝料請求が認められやすいです。

試用期間の場合は?

試用期間とは、一定の期間を「見習い」期間として、その間の評価をもとに本採用を決定するという制度です。

注意が必要なのは、試用期間がある場合でも、試用期間の最初から雇用契約自体は有効に成立しているという点です。試用期間だからといって、無制限の解雇が認められるわけではありません。

試用期間中であっても、不合理な解雇・解約は違法と評価されます。その場合は、法律にもとづいて、慰謝料を請求できるケースがあります。

たとえば、政治や宗教を理由とした差別的な解雇や、業績不振を理由とした強引かつ一方的な解約の場合は、違法性が高く、慰謝料の請求が認められる可能性が高いです。

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不当解雇の裁判のポイントと相談窓口は?

不当解雇を訴えることができる期間は?

不当解雇を訴えることができる期間は、とくに決まりがありません。ただ、解雇からできるだけ早い段階で訴えないと、訴えそのものが認められず、敗訴する可能性が高いです。

解雇を長期間放置している場合は、そもそも従業員側に就労の意思があるかどうかが疑わしいと判断されてしまうからです。

不当解雇を相談できる窓口は?

不当解雇を相談できる窓口は、弁護士がおすすめです。弁護士であれば、法律の専門家としての立場から、裁判や労働審判における勝訴可能性を踏まえた意見を聞くことができます。

ほかの窓口として労働基準監督署などの行政機関も候補に挙げられますが、労基署は「解雇の有効性」など法的な評価が必要な判断はおこないません。

そのため表面的な手続きに問題がない解雇については、弁護士に相談するよう指導されるだけの場合も多いです。

弁護士に相談すれば、「解雇の有効性」について法的な観点から判断してもらうことができます。

不当解雇につき、無料相談の窓口を提供している弁護士も多いです。無料相談であれば、費用面でも安心ですし、その後も依頼しないといけないわけでもありません。

日弁連の弁護士検索やGoogle検索などで、不当解雇の相談に対応する弁護士事務所を探してみてください。

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不当解雇の裁判にかかる弁護士費用は?

不当解雇の裁判にかかる弁護士費用は、「着手金」として数十万円、「成功報酬」として回収できた金銭の一定割合と定められることが多いです。

近年では着手金が完全無料で完全成功報酬型の弁護士費用を採用しているところも増えてきているので、ご自分に合う弁護士を探してみてください。

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不当解雇の裁判はどう進んでいく?

では、不当解雇の裁判がどのように進んでいくのか見ていきましょう。

裁判で有利になる証拠の集め方や、労働審判の申し立て方、訴訟の起こし方を解説します。

証拠の集め方&内容証明の送り方は?

不当解雇の証拠の集め方は、スマートフォンでの録音が便利です。会社とのメールやLINEのやり取りは必ず残すようにしておきましょう。

また、解雇通知書なども証拠として重要です。解雇通知書は、名前の通り解雇の理由が記載された書面です。労働者から請求すれば会社には交付する義務があるため、不当解雇された場合には必ず請求するようにしましょう。

不当解雇の内容証明の送り方は、解雇に対して異議があることと、引き続き就労の意思があること記載して、会社に送りましょう。

とくに、退職勧奨から強引に解雇が言い渡された場合などは、後日、言った言わないの争いが問題になることが多いです。

解雇の通告や会社側の脅し文句などについては、しっかりと形が残る方法で証拠化しておきたいところです。会社の会議室で録音したデータであっても、後日の裁判で証拠として使えます。

不当解雇の労働審判の申し立て方は?

不当解雇の労働審判の申し立て方は、最寄りの地方裁判所に行けば教えてもらうことができます。

労働審判は、地方裁判所(本庁又は一部の労働審判事件取扱支部)に労使トラブルの解決を申し立てることでスタートします。労働審判の申し立てには、申立手数料や郵便切手等が必要になります。

労働審判においては、原則として3回以内の期日で審理が終わることになります。シンプルな不当解雇のケースでは、1回目の期日から和解案が提示されることも少なくありません。

期日における審理は、労働裁判官や労働審判員が出席して行われます。審理は、調停成立か、労働審判が下されて終了します。

不当解雇の訴訟の起こし方は?

不当解雇の訴訟の起こし方は、弁護士に相談していただければ、詳細を教えてもらうことができます。訴訟は、弁護士を代理人として選任し、進める方法が一般的です。

ただ、当事者が自らで手続きを進めることも可能です。当事者が裁判を進める方法を本人訴訟といいます。不当解雇の訴訟も本人訴訟として進めることが可能です。

不当解雇の訴訟では、労働者としての地位が引き続きあることの確認を求め、解決日までの賃金(バックペイ)を請求することになります。

通常の金銭請求訴訟と比べ、「地位の確認」を求める点が特殊なため、訴訟の提起や進行は、弁護士を代理人として選任して進める方法をお勧めします。

不当解雇の訴訟の結果に納得がいかないときは?

もしも訴訟を十分行っても納得のいく結果が得られなかった場合は、判決に対する不服の申し立てである控訴を行うことが可能です。

最初の訴訟(第一審)で提出された資料をそのまま用いることができますが、何らかの労働者側に有利な証拠を提出しなければ、判決を覆すことは難しいでしょう。

現在不当解雇に悩んでいる方は、まず状況確認と証拠の整理が必要になります。

解雇を言い渡されたばかりの場合は、これから証拠を収集することも可能ですので、まずはすぐに無料相談ができる弁護士事務所にご相談ください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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