解雇理由証明書を請求する方法は?請求するために知っておくべきことを解説
解雇理由証明書は、会社がどのような理由で労働者を解雇したのか、解雇理由を証明する書類です。
解雇の理由が分からないと困惑してしまいますが、解雇理由証明書の発行を会社に請求すれば、解雇の理由を知ることができます。
また、解雇された理由を客観的に把握でき、不当な解雇だと主張して争いやすくなります。
そこで今回は、解雇理由証明書の請求方法や、請求するために知っておくべきことなどを解説していきます。
目次
解雇理由証明書はどんな書類?
解雇の妥当性について会社と争いたい場合は、客観的な証拠となる解雇理由証明書を入手することが重要です。
しかし、そもそも解雇理由証明書が何なのかよくわからない場合も少なくないでしょう。
そこで、解雇理由証明書がどのような書類なのか、どんなことに役立つのかを解説していきます。
解雇理由証明書とは?
解雇理由証明書は、会社がどのような理由で労働者を解雇したのか、解雇理由を証明する書類です。
従業員は、解雇理由証明書から解雇された理由を知ることができます。
解雇理由証明書に厳密な書式はありませんが、一般的に記載されている項目として、以下のものがあります。
一般に記載すべき項目
- 解雇する従業員の氏名
- 解雇を予告した日付
- 証明書を発行した日付
- 事業主や使用者の氏名・名称
- 解雇理由
具体的な解雇理由について、厚生労働省の配布する雛形では、①天災その他やむを得ない理由、②事業縮小等当社の都合、③職務命令に対する重大な違反行為、④業務について不正な行為、⑤勤務態度又は勤務成績が不良である、⑥その他が挙げられています。
参考:解雇予告証明書雛形
就業規則があれば就業規則の解雇事由が記載される
会社に就業規則があり、就業規則違反を理由に解雇する場合は、先ほどの6つの項目にかかわらず、就業規則に記載された解雇事由のうち該当するものが記載されるでしょう。
たとえば、「勤務状況が著しく不良で改善の見込みがなく、従業員としての職責を果たし得ないと認められた場合は解雇できる」という規定が就業規則に規定されており、その事由に基づいて解雇するなどです。
解雇予告通知書との違い
解雇予告通知書とは、使用者(会社)が労働者に対して解雇を予告するための書類です。
解雇予告通知書はあくまで「解雇することを予告する書類」であるのに対し、解雇理由証明書は「解雇に至る理由を記載した書類」といった違いがあります。
解雇予告通知書を受け取ったものの、解雇にあたる理由に心当たりがない場合には、解雇予告通知書とは別に解雇理由証明書を請求する必要があります。
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解雇理由証明書は何の役に立つ?
解雇理由証明書があれば、自分がどんな理由で解雇されるのかを把握できるだけでなく、不当解雇として裁判などで争う場合に役立ちます。
解雇理由証明書があれば、解雇の理由を客観的に判断してもらいやすくなるため、解雇の無効を主張して争いやすくなります。
解雇が無効となり得るケースについて詳しく知りたい方は『解雇を無効にしたい!無効となるケースや対処法を解説』の記事をご覧ください。
解雇理由証明書を会社に請求する方法は?
会社に解雇されてしまうと、どのように対処するべきか悩んでしまいますが、まず解雇理由証明書を請求することが大切です。
解雇理由証明書を会社に請求するための方法を詳しく解説します。
解雇理由証明書を請求する方法
解雇理由証明書の発行を会社に請求するための方法は、特に法的な制限はありません。
会社が発行してくれるのであれば、口頭で請求するだけでも大丈夫です。
労働者が請求すれば、会社は解雇理由証明書を発行することが法律で義務付けられています(労働基準法22条2項)。
会社が解雇理由証明書を発行してくれない場合は、労働基準法の規定によって、会社は解雇理由証明書を発行しなければならないことを説明してみましょう。
それでも会社が応じなければ、解雇理由証明書の発行を請求する書面を、内容証明郵便で会社に送る方法もあります。
会社は解雇理由証明書の発行を拒否できない
労働者が解雇理由証明書を請求した場合、会社は拒否することはできません。
しかし、あやふやな理由で会社が従業員を解雇した場合、会社は解雇理由証明書を発行しないことがあります。
解雇理由証明書を発行してしまうと、どのような理由で従業員を解雇するのかを客観的に証明する必要が生じるからです。
何らかを理由に解雇理由証明書の発行を拒否されても、法的な根拠を基に請求しましょう。
不明瞭・虚偽・不当な解雇理由証明書が発行された場合
会社が解雇理由証明書を発行しても、理由などがきちんと書かれていなかったり、虚偽・不当な事実が書かれていたりする場合もあります。
たとえば就業規則において、どの規定に該当するかだけが記載されているなど、解雇に至った具体的な状況や理由が記載されていないケースです。
会社から発行された解雇理由証明書が不明瞭・虚偽がある場合は、理由などがきちんと記載された証明書を再度発行するように請求することができます。
不明瞭な解雇理由証明書では、なぜ解雇されなければならなかったかを客観的に明らかにすることが困難になります。
解雇の不当性を争うには、解雇にいたった理由などができるだけ具体的に記載された解雇理由証明書があるほうが有利です。
不明瞭・虚偽・不当な解雇理由証明書が発行された場合は、より具体的な記載のある証明書を発行するように会社に請求しましょう。
解雇理由証明書を請求するために知っておくべきこと
解雇理由証明書はいつまで請求できる?
解雇理由証明書は請求できる期間が決まっており、解雇の予告をされた日から退職の日までです(労働基準法22条2項)。
労働者としては退職の日までに解雇理由証明書を請求すればよく、会社が証明書を交付する前に退職日が到来したとしても、再度会社に証明書の発行を請求する必要はありません。
解雇理由証明書を請求できる期間を過ぎてしまったら?
退職日を過ぎてしまって解雇理由証明書を請求できない場合は、退職証明書という書類を発行することを会社に請求できます(労働基準法22条1項)。
退職証明書は、会社を退職したことを証明するための書類です。主に国民健康保険への切り替え、転職先の会社への提出、失業保険の給付手続きなどに使用します。
退職証明書には一般に以下の情報が記載されています。
退職証明書に記載されている項目
- 使用期間(会社に雇用されていた期間)
- 業務の種類
- 事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(解雇の場合はその理由)
退職証明書に解雇の理由のみを記載してもらえば、解雇理由証明書の代わりとして役立ちます。
退職証明書を請求できるのは、退職から2年以内です。できる限り早めに請求しておきましょう。
解雇理由証明書は再発行してもらえる?
紛失してしまったり、再就職先に提出してしまったりなどで、解雇理由証明書が手元にない場合は、解雇理由証明書の再発行を請求できます。
解雇理由証明書の再発行を請求された場合、すでに発行したことを理由に会社が拒否することはできません。
解雇理由証明書による証明を求める回数に制限がないことが、行政通達で認められているからです(平成11年3月31日基発169号)。
まとめ
解雇理由証明書は、会社がどのような理由で労働者を解雇したのか、解雇理由が記載されています。
解雇理由証明書があれば、自分がどんな理由で解雇されるのかを把握できるだけでなく、不当解雇として裁判などで争う場合に役立ちます。
解雇理由証明書を請求し、不当な解雇であることが疑われる場合は弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談することで、不当な解雇として争える可能性があるか、今後の対処法などを知ることができます。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、一度相談してみてはいかがでしょうか。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了