退職金が未払いの時は弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由

更新日:
退職金と弁護士

「解雇されたため退職金が少ない」
「退職金がもらえるはずだったのに受け取れなかった」

こういったお悩みを抱えてはいませんか?円満に退職したくても、本来は貰える退職金を受け取れなかったら不満が残りますよね。

退職金についてお悩みの方は弁護士に相談してください。

今回の記事では、退職金がもらえなかった場合の対処法について詳しく解説し、弁護士に相談すべき理由をご紹介します。

退職金は必ず支払われるものではない

そもそも退職金は必ず支払われなければいけないのかというと、実はそのような規定はありません。

しかし、以下の2つのケースに該当する場合は、会社が退職金を支払う義務が発生するため、未払い退職金を請求できる可能性があります。

会社が退職金を支払う義務が生じるケース

  • 就業規則などの書面で退職金について明記されている
  • 労使慣行等で退職金が支払われている

未払い退職金を請求できる2つのケース

就業規則などの書面で退職金について明記されている

就業規則で退職金について記載がある場合は、会社から退職金をもらえる権利が生じます。

就業規則に記載があるにもかかわらず、記載内容に沿った支払いがされないのは、会社側の債務不履行となります。

労使慣行などで退職金が支払われている

就業規則には退職金についての記載がない場合であっても、労使慣行(企業内で定着している事実上のルール)などで長年に渡って継続的に退職金が支給されている場合は、会社に退職金の支払い義務が生じると考えられています。

会社が倒産しても退職金は請求できる

会社が倒産してしまった場合でも、退職金の支払いを請求することはできます。

倒産した会社の資産が不足していて、退職金を支払えないときは、「未払賃金立替払制度」という国の救済制度を利用して未払い退職金額(賃金)の原則80%を立て替えてもらえます

ただし、年齢により一定の上限が決められています。

なお、「未払賃金立替払制度」を利用しても足りなかった退職金の残りは、倒産手続における配当などで支払われることになります。

関連記事

未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説

解雇された場合は退職金を請求できない?

整理解雇の場合は割増し退職金が支払われることが多い

整理解雇の場合は、希望退職者を増やすために通常の退職金に上増しされた割増し退職金が支払われることが多いです。

退職金についてさほどトラブルになることはないでしょう。

懲戒解雇の場合は対処が必要になることが多い

懲戒解雇で退職金が支払われるかどうかは、就業規則によります。

懲戒解雇の場合は、退職金を支払わないと就業規則に記載している会社も多いです。懲戒解雇による退職金の不支給は法律違反でありません。

退職金の不支給が就業規則に記載されている場合は、退職金を請求できない可能性もあります。

ただし、退職金は「賃金の後払い的性質」と長年会社に貢献してきた「功労報償的な性質」を併せ持つという考え方もあります。

そのため、退職金を支払わないのは、労働者のこれまで働いてきた功労に対する評価を全て抹消・減殺させてしまうほどの、著しく信義に反する行為があった場合に限られると判断されることもあります。

鉄道会社の従業員が痴漢行為を行い、懲戒解雇された事例で、当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不審行為ではないとして、本来の退職金の支給額の3割が認められた判例もあります(『小田急電鉄事件』東高判平15.12.11)。

上記のように、一部の退職金が認められるケースもあるので、退職金未払いでお悩みの方は専門家である弁護士などに相談してください。

会社が退職金を支払わないときの対処法

証拠を集める

まずは、会社が退職金を支払う義務がある証拠として、退職金について記載されている就業規則や労働契約書などを用意しましょう。

手元にない場合は、会社は就業規則を従業員に周知させる義務があるため、会社に請求することが重要です(労働基準法第106条1項)。

労使慣行による退職金の請求をする場合は、他の労働者が退職金を受け取っていた事実がわかるものを用意してください。

また、ご自身が退職金を支給される条件があることを立証するために、給与明細などの勤続年数がわかるものを手元に用意しておきましょう。

内容証明郵便を送る

用意した就業規則や給与明細等を根拠に、未払い退職金の請求を内容証明郵便で送ります。

配達証明書付きの内容証明郵便であれば、後々会社からそのような請求書は届いていないと言われることを防げるうえに、催告の効果があります。

催告をすることによって、時効を6か月間だけ停止させることが可能です。

もっとも、未払い退職金の消滅時効は5年間であることに注意しましょう。

退職金未払いは弁護士に相談するべき

退職金が未払いの場合、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談するべき理由は、裁判を視野に入れた解決方法を知ることができるからです。

弁護士は、個別の状況に応じて、会社との和解交渉や労働審判、訴訟といった手続きのどれが適切か判断し、解決に向けたサポートを行います。

和解交渉を任せられる

和解交渉とは、会社と話し合いを行い、双方の納得のいくかたちで合意を目指すものです。

弁護士が対応すると、労働者本人が対応するよりも会社が真剣な態度となり、退職金が支払われるケースが少なくありません。

また、労働者が直接会社と交渉せずに済むことも大きなメリットです。転職活動や資格取得のための勉強など、これからの人生に役立つ活動に時間を割くことができるでしょう。

労働審判の対応

労働審判とは、労働者と会社の間に労働審判員が入って調停による解決を目指すものです。

労働審判は3回以内の期日で話し合いがまとまらず、解決できない場合は審判が行われるところが特徴です。

労働審判は弁護士に依頼せずに、自分自身でも行うことができます。

労働審判は、法的な証拠から退職金の請求を主張することが重要です。

しかし、自分自身だけでは十分に証拠が収集できなかったり、正しい主張が難しかったりするケースもあります。結果的に退職金が未払いのまま終わってしまう可能性もあるでしょう。

弁護士であれば、法的な知識と収集した証拠に基づき、適切な主張を行うことができるため、退職金を受け取れる可能性が高まります

なお、労働審判の調停での決定や審判内容は、裁判上の和解と同じ効力があり、会社側が応じない場合は強制執行できます。

関連記事

労働審判とは?制度の内容や手続きの流れを弁護士がわかりやすく解説

訴訟代理人としての活動

労働審判で会社側との話し合いがまとまらずに、出された審判にどちらか一方が納得せず異議を申し立てた場合は、審判内容は失効となり訴訟手続きに発展します。

弁護士に依頼することで、労働者の訴訟代理人として活動してもらえます。

裁判では、労働審判以上に専門的な知識が必要不可欠です。

労働審判では弁護士に依頼していなかった方も、裁判まで発展した際には、労働問題に強い弁護士に依頼して対応を任せることをおすすめします。

関連記事

労働問題を依頼すべき弁護士とは?選び方や注意点も解説!

弁護士以外の相談窓口

総合労働相談コーナー

退職金未払いは、「総合労働相談コーナー」に相談することも可能です。

総合労働相談コーナーは各都道府県の労働局や全国の労働基準監督署内に設置されており、予約不要かつ無料でさまざまな労働トラブルを相談できます。

また、プライバシーの保護に配慮した相談対応をおこなっているところが特徴です(厚生労働省|総合労働相談コーナー)。

労働組合

退職金未払いは、労働組合に相談することも可能です。

労働組合に相談することのメリットとして、会社に対して団体交渉をしてくれるという点が挙げられます。会社は正当な理由なく、この団体交渉を拒否することができません。

また、使用者が団体交渉に応じたとしても、不誠実に応じることは不当労働行為として禁止されています(労働組合法第7条2号)。

そのため、団体交渉は会社側と対等に話をすることができ、和解につながる可能性も高まります。

関連記事

労働組合に相談できることと相談の流れ【弁護士が解説】

まとめ

もらえるはずだった退職金が少なかったり、受け取れなかったりして悩んでいる方は、弁護士に相談することをおすすめします。

費用の心配をされている方は、無料相談を受け付けている弁護士事務所や総合労働相談コーナーに相談してみるといいでしょう。

未払い退職金の消滅時効は5年です。期間の猶予はあると感じても、退職からの年数が経過するごとに証拠の収集や会社との対応が難しくなる場合もあります。

退職金未払いでお悩みの方は、できる限り早急に動き出すことが大切です。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

残業代・不当解雇など

全国/24時間/無料

弁護士に労働問題を共有する