介護施設の見守り義務とは?介護施設への請求方法についても解説 | アトム法律事務所弁護士法人

介護施設の見守り義務とは?介護施設への請求方法についても解説

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介護施設での見守り義務 施設への請求方法

介護においては、普段からの見守りも重要になります。特に、介護施設では転倒や転落事故が多く、介護施設の職員はあらかじめ数時間に一回の見守りをすることを看護計画に入れている場合もあるでしょう。

本件では、そういった見守りに関連した事故が生じてしまった場合における介護施設の責任や相談先、事故対応について解説します。

本記事がお役に立てば幸いです。

介護現場における見守りとは?

介護の現場では、思わぬ事故が多く発生してきます。その際に、歩行介助や食事介助だけで事故を防ぐことは難しく、頻繁な見守りが必要といえるでしょう。

まずは、介護の現場での見守りの必要性、介護施設の義務内容について解説します。

見守りの必要性について

見守りの頻度については、利用者の個別具体的な身体的、精神的な状態によって変化します。以前からベッドでの転倒事故を起こしていたり、認知症で歩き回ってしまうなどの症状が出ている場合は、見守りの頻度をより多く求められるでしょう。

また、利用者の事前の行動から、カルテや介護計画書に常時の見守りが必要である等という記載がある場合は、介護施設による見回りの必要性が強く求められることになります。

介護施設には見守りを行う義務がある

介護施設の義務内容

介護施設と利用者には、施設利用契約を締結することになります。介護施設は、契約にもとづいて介護契約履行義務と安全配慮義務のふたつの義務を負っていると考えられております。

介護契約履行義務とは「介護サービス業務を目的とした契約を履行するという義務」であり、安全配慮義務とは「施設利用者が安全に介護施設を利用するように配慮すべき義務」というものです。

これらの義務に反することで、介護施設は義務違反として損害賠償責任を負うことになります。

見守りも安全配慮義務に含まれる

介護施設内で見守りを行うことも、介護施設が負う安全配慮義務の一つといえます。見守りを適切に行い、事故を防ぐということは、介護施設の基本的な事故予防対策といえるでしょう。

介護施設で事故が生じてしまった場合には、見守りが適切にできておらず、介護施設の安全配慮義務違反があったのかどうかが問題となるのです。

見守りに関する介護事故の責任について

見守り行為を行っている際中に介護事故が生じてしまった場合、介護施設はいかなる場合に責任を負うのでしょうか。どのような責任を負うことになるのかも併せて解説します。

介護施設が責任を負う要件

介護施設に安全配慮義務違反が認められる場合、介護施設は債務不履行責任として損害賠償義務を負うことになります。治療費や看護費用の他に、慰謝料などの支払いを求めることが可能です。

しかしながら、事故発生の原因について利用者にも過失がある場合は、その分は過失相殺による減額となることに注意しましょう。

安全配慮義務違反の判断方法について

介護施設に安全配慮義務違反が認められるかは、介護施設側にその事故の予見可能性があることが前提となります。予見可能性がまったくなく、事故を防ぐことが出来ない場合、介護施設側に安全配慮義務違反は認められません。

また、予見可能性がある場合であっても結果を回避することが困難な状態もあります。その場合も同様に、介護施設への請求は認められないでしょう。

したがって、事故発生が予見可能であり、予見可能な事故を回避することが可能であるにもかかわらず事故が発生してしまった場合には、安全配慮義務違反が認められるのです。

たとえば、利用者の歩行介助中に一瞬目を話した隙に利用者が怪我した場合を考えます。この場合、歩行介助をしているということから、ふらつきや転倒の可能性を予見することができた状況といえます。

また、歩行中に適切な見守りを行うことで、ふらつきや転倒などによる怪我を防止することが可能であったといえるでしょう。
そのため、予見可能性および結果回避可能性はいずれも認められ、安全配慮義務違反があったと判断される可能性が高い事案といえます。

介護施設へ請求できる内容

介護施設の安全配慮義務違反が認められるのであれば、介護施設に対する損害賠償請求が可能となります。

介護施設に対しては、以下のような請求が可能です。

  • 慰謝料
  • 治療のために必要となった費用
  • 入通院に必要となった交通費
  • 入通院の際に付添が必要な場合は付添費用
  • 入院中に生じた日用雑貨や通信費などの雑費全般

慰謝料の種類や相場を知りたい方は『介護事故のケガや死亡の慰謝料相場は?損害賠償の内訳や判例も紹介』の記事をご覧ください。

介護施設への請求には証拠が必要

介護施設への請求を行う際には、利用者が介護施設の安全配慮義務違反を証明しなければなりません。その際には、客観的な証拠がなければ証明をすることはむずかしいでしょう。

見守りが不適切であったという点について、カルテや介護計画書などの証拠が必要になります。
また、職員への質問や、介護施設が作成する報告書の内容なども大切な証拠となるでしょう。

可能な限り客観的な証拠の収集に努めることで、請求の際に生じるトラブルを防ぐことが可能となります。

見守りに関する介護事故の裁判例

では実際に、裁判例を紹介しながら、実務ではどのように介護施設側の過失が判断をされているのか解説を行います。

ただし、安全配慮義務違反の有無などは、個別具体的な事案によって変化するものですので、一つの参考としてご確認ください。

見守りが特に要求された裁判例の紹介

東京地判平成24年3月28日の事例では、利用者Aが一人でトイレに向かう途中に転倒をし、左大腿骨転子部骨折と診断されました。

介護施設は夜間、夜勤者がサービスステーションからの見守り、1時間おきの巡回等を行っておりました。
また、ベッドに支援バーを設置するなどの対応もしており、居室もサービスステーションに近い場所にするなどの対策を取っていたとされています。

しかしながら、Aが以前から転倒事故を複数回起こしていたことが医療診療録に記載されていたことなどから、介護施設側はさらにAの見守りをしなければならなかったと裁判所は判断して、賠償額208万円を認めております。

裁判例のポイント

上記裁判例では、介護施設側も1時間おきの見守りをするなどの対策を取っていましたが、過失が認められました。転倒事故は、防ぐことがむずかしいものではあるものの、介護施設側の過失は認められやすい傾向にあります。

また、この裁判例では、Aが以前から転倒事故をよく起こしていたという点から、介護施設側の予見可能性および結果回避可能性を前提とした結果回避義務違反を認めております。

医療診療録でその旨が記載されていたことが、上記裁判例での施設の注意義務を認定することに役立ったように、医療記録などの証拠はとても重要なものになるのです。

介護事故で困ったら弁護士への相談を

介護事故に遭ってしまったら、介護施設にその事故の原因などをしっかりと聞き取りを行い、場合によっては責任を追及しなければなりません。

しかし、法的な責任を追及することは、利用者やその家族ではむずかしいのが実情です。
損害賠償請求のために必要な証拠の収集、請求金額の計算、介護施設の交渉などについて適切に行うためには、法的知識が欠かせません。

そこで、介護事故が発生した場合には、弁護士への早期相談をおすすめします。
弁護士に相談することで、損害賠償請求のために必要な証拠の収集方法や、損害賠償金額の計算方法についてアドバイスを受けることができます。

また、弁護士に依頼すれば、介護施設との交渉や裁判手続きを代わりに行ってくれるでしょう。

弁護士に依頼することで生じるメリットについては『介護事故を弁護士に相談・依頼するメリット!介護トラブルに強い弁護士とは?』の記事をご覧ください。

以上のようなメリットを受けるために、一度は弁護士に相談することをおすすめします。
無料の法律相談を行っている法律事務所であれば、費用の負担を気にせず相談を受けることが可能です。

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アトム法律事務所 岡野武志弁護士

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了