交通事故での頭部外傷・脳損傷の後遺症や慰謝料は?バイク事故で頭を打ったら

交通事故で頭部外傷を負った場合、頭蓋骨だけでなく脳に損傷が及ぶ外傷性脳損傷が発生し、後遺症が残る可能性があります。
外傷性脳損傷の後遺症として遷延性意識障害、高次脳機能障害、てんかんが残った場合、後遺障害1級1号(要介護)〜14級9号のいずれかに認定される可能性があります。
高次脳機能障害の慰謝料の相場は、110万円〜2,800万円です。
今回は、交通事故での頭部外傷の症状・治療、後遺障害等級の認定基準、後遺障害慰謝料の相場などを解説いたします。
目次
交通事故による頭部外傷で脳損傷…症状は?
頭部外傷とは、頭部に対して外からの衝撃が加わり、負傷することをいいます。
外力による頭部の損傷を広く指す言葉であるため、たんこぶのような軽い症状で済むこともあれば、脳の特定の部位または広い範囲を損傷する外傷性脳損傷(TBI)に発展することもあります。
ここでは、交通事故による頭部外傷で脳損傷が起きたときにみられる症状として、以下を解説していきます。
- 頭蓋骨骨折
- 脳震盪
- 硬膜外出血、硬膜下出血、くも膜下出血、脳出血
- 外傷性脳挫傷
- 高次脳機能障害
- 遷延性意識障害
頭蓋骨骨折

頭部外傷では、頭蓋骨骨折が発生することがあります。
頭蓋骨の損傷に加えて脳に損傷が及んでいることも考えられることから、陥没骨折や粉砕骨折の場合は特に注意が必要です。
頭部外傷で脳も損傷していると、頭痛、嘔吐、吐き気、意識障害、記憶障害などの症状が生じるおそれがあります。
脳震盪
脳震盪とは、交通事故による衝撃で脳が揺さぶられ、頭痛、めまい、吐き気、嘔吐、意識障害、記憶障害、耳鳴りなどの症状が発生することです。
症状は一時的なものであることが多いですが、頭痛、睡眠障害、疲労、集中力の低下などの症状が数週間から数カ月続く「脳震盪後症候群」を発症することもあります。
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硬膜外出血、硬膜下出血、くも膜下出血、脳出血

交通事故で頭部外傷を負うと、頭蓋骨の中や脳で出血が発生することがあります。
出血の場所によって硬膜外出血、硬膜下出血、くも膜下出血、脳出血などに分けられ、こうした血がたまって「血腫」となることもあります。
頭蓋骨内や脳内で出血が起こると、脳や神経を傷つけたり圧迫したりしてしまうため、頭痛や吐き気、めまいなどを感じがちです。
場合によっては脳機能に異常をきたし、記憶障害や意識障害を起こすこともあるでしょう。
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外傷性脳挫傷
外傷性脳挫傷とは、簡単に言えば脳が打撲した状態です。脳の出血や腫れも伴うことがあります。
その他の脳損傷と同様に吐き気やめまい、頭痛といった症状が出ることがあり、意識障害や記憶障害など脳機能に異常をきたすリスクもあります。
高次脳機能障害
高次脳機能障害とは、脳の損傷などにより脳機能に異常をきたし、意識障害や記憶障害、言語障害をはじめとした症状を引き起こすものです。
怒りっぽくなる、金遣いが荒くなるなど、人格面に変化が生じることもあります。
くも膜下出血や硬膜下血腫といった出血などが原因となることが多いです。
また、高次脳機能障害に伴いてんかんを発症する場合もあります。
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遷延性意識障害
遷延性意識障害とは、いわゆる寝たきり状態、植物状態のことを指します。
寝たきり状態から回復することもありますが、回復した場合でも、高次脳機能障害など何らかの症状が後遺症として残るケースが多いです。
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頭部外傷による脳損傷で後遺症が残ったら
交通事故での頭部外傷・外傷性脳損傷の後遺症としては、遷延性意識障害、高次脳機能障害、てんかんがあります。
後遺症が残った場合は、「後遺障害等級」の認定を受けることで、後遺障害に関連する賠償請求が可能になります。
後遺障害等級認定の受け方や、頭部外傷・外傷性脳損傷で認定されうる後遺障害等級、各等級の慰謝料相場を見ていきましょう。
後遺障害等級認定で賠償請求ができる
頭部外傷による外傷性脳損傷で後遺症が残り、後遺障害等級の認定を受けると、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求が可能になります。
- 後遺障害慰謝料
後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する補償 - 逸失利益
後遺障害が残り、労働濃色が低下したことで減ってしまう生涯収入の補償
後遺障害等級に認定されるためには、後遺障害申請を行って審査を受け、各等級の認定基準を満たすと認められる必要があります。
後遺障害等級の認定を受けるための流れは以下の通りです。
後遺障害等級認定の手続きの流れ

- 入通院治療後、医師から症状固定と診断される
- 医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
- 保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
- 審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知される
審査機関への書類提出では、加害者側の任意保険会社を介する「事前認定」か、加害者側の自賠責保険会社を介する「被害者請求」が選べます。
事前認定の場合、被害者が後遺障害診断書を保険会社に提出すれば、残りの書類は保険会社がそろえてくれます。
一方、被害者請求では被害者がすべての書類をそろえたうえで、保険会社に提出しなければなりません。手間はかかりますが、すべての書類に関与できる分、審査対策はしやすくなります。
頭部外傷による脳損傷の後遺障害等級・慰謝料相場
交通事故での頭部外傷の後遺症として遷延性意識障害、高次脳機能障害、てんかんが残った場合、症状の程度に応じて後遺障害1級1号(要介護)〜14級9号のいずれかに認定される可能性があります。
後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜2,800万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
1級1号(要介護) | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 2,800万円 |
2級1号(要介護) | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 2,370万円 |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 1,990万円 |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1,400万円 |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1,000万円 |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 690万円 |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの 110万円 |
要介護1級・2級|交通事故での頭部外傷
交通事故での頭部外傷の後遺症で要介護1級1号あるいは2級1号に認定されるための「介護を要する状態」とは、意思疎通を図ることがむずかしく、食事、入浴、用便、更衣といった生命維持活動に他者の介助が必要な状態をいいます。
具体的には生活全般において介助が必要であれば要介護1級1号、日常生活の一部の動作のみ介助が必要であれば要介護2級1号に認定されます。
3級3号〜9級10号|交通事故での頭部外傷
交通事故での頭部外傷の後遺症で後遺障害3級3号〜9級10号に認定されるためには、以下の4つの能力に障害が残っている場合です。
- 意思疎通能力
- 問題解決能力
- 作業負荷に対する持続力・持久力
- 社会行動能力
各等級の具体的な認定基準は、以下の通りです。
等級 | 認定基準 |
---|---|
3級3号 | 1つの能力を完全に喪失したか2つ以上の能力の大部分が失われた場合 |
5級2号 | 1つ以上の能力の大部分が失われたか2つ以上の能力の半分程度が失われた場合 |
7級4号 | 4つの能力のうち、1つ以上の能力の半分程度が失われたか2つ以上の能力の相当程度が失われた場合 |
9級10号 | 4つの能力のうち、1つ以上の能力の相当程度が失われた場合 |
12級13号〜14級9号|交通事故での頭部外傷
たとえ、4つの能力について労務に影響するほど失われなかった場合でも後遺障害12級13号あるいは14級9号に認定されることがあります。
具体的には、CTやMRIなど画像診断などによって後遺症の存在が医学的に証明された場合は、12級13号に認定されます。
また、画像診断などで他覚的な後遺症の存在がなくても、受傷の状況、症状、治療の経過、各種神経学的なテストの結果、後遺症が残ったと説明可能な場合は14級9号に認定されます。
【注意】後遺障害慰謝料の相場は3種類ある
交通事故における頭部外傷の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜2,800万円です。これは「弁護士基準」と呼ばれる過去の判例に沿った相場であり、法的正当性の高い金額といえます。
しかし、後遺障害慰謝料にはほかに、「自賠責基準」「任意保険基準」と呼ばれる基準に沿った金額もあります。
慰謝料算定の3基準
- 自賠責基準
加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。 - 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。 - 弁護士基準(裁判基準)
弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。

加害者側の任意保険会社が示談交渉で提示してくる金額は、自賠責基準や任意保険基準に沿ったものであることが多いです。
任意保険基準での算定額を鵜呑みにして示談を成立させることなく、弁護士基準に合わせて増額できないか、交渉を進めてみましょう。
ただし、加害者側の任意保険会社が、弁護士基準の金額を簡単に認めてくれることはほぼありません。
慰謝料が高額になれば、それを支払う保険会社の負担も大きくなるからです。
しかし、弁護士であれば、法的根拠に基づく説得力のある主張をすることが期待できるため、慰謝料増額の可能性を高めることができます。

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頭部外傷の症状は遅れて出ることも…注意点と対策
頭部外傷や外傷性脳損傷の症状は、遅れて判明することがあります。
例えば高次脳機能障害の中には近しい人しか気づかないような人格の変化が生じ、それが交通事故によるものだとわかるまでに時間がかかる場合があります。
後遺障害が遅れて判明した場合でも、賠償請求できる可能性はありますが、以下の点が問題になりがちです。
- 交通事故と症状の因果関係が疑われやすい
- すでに示談成立後、あるいは賠償請求の時効成立後
それぞれの問題の詳細や対策について解説します。
交通事故と症状との因果関係が疑われやすい
交通事故から遅れて頭部外傷や外傷性脳損傷の症状が発覚した場合、「それは本当に交通事故が原因なのか?」が疑われやすくなります。
事故後の日常生活や健康状態の変化によって生じた症状なのではないか、と疑われるのです。
こうした場合、以下の点が事故と症状との因果関係を主張するうえで重要になります。
- 交通事故直後から、高次脳機能障害などの疑いで受診をしていたという事実がある
- 交通事故直後の頭部のMRI画像や検査結果がある
交通事故により頭部に衝撃を受け、少しでも違和感がある場合は、のちに症状が発覚する可能性も見越して一度病院に行っておくことがポイントです。
すでに示談成立後、あるいは賠償請求権の時効成立後
交通事故による頭部外傷・外傷性脳損傷の症状が発覚したとき、すでに示談が成立していたり、損害賠償請求権の時効が成立していたりすることがあります。
- 示談成立後
示談成立後は、原則として再交渉や追加の交渉はできない。 - 損害賠償請求権の時効
加害者に対して損害賠償請求できる権利の時効。例えば傷害分の費目(治療費や入通院慰謝料など)は事故翌日から5年、後遺障害分の費目(後遺障害慰謝料・逸失利益など)は症状固定翌日から5年が時効。
示談については、示談成立時には把握しえなかった損害が後から判明した場合、例外的に追加の賠償請求が可能です。
ただし、加害者側は追加の賠償請求を認めない姿勢をとることがあるため、あらかじめ示談書に「後から新たな損害が発覚した場合は追加の交渉をする」旨を記載しておくと安心です。
また、時効が成立してしまっている場合でも、それまでに知りえなかった症状なら、その症状に関する損害賠償請求権の時効は「症状発覚時点から」カウントされます。
頭部外傷・外傷性脳損傷の賠償請求は弁護士に相談!
交通事故で頭部外傷や外傷性脳損傷を負った場合は、十分な賠償請求をするために弁護士を立てることがおすすめです。
ここでは、アトム法律事務所における実際の解決事例を紹介します。
事例(1)脳挫傷など|提示額から900万円アップ
被害者 | 40代 会社員 男性 |
ケガ・後遺症 | 脳挫傷、硬膜下血腫 |
後遺障害等級 | 9級 |
示談金 | 1,924万円→2,823万円 |
脳挫傷、硬膜下血腫で899万円の増額に成功した事例(アトム法律事務所)
自転車と自動車による交差点での事故事例です。
当初加害者側から提示された金額は1,924万円でしたが、弁護士の介入により2,823万円まで増額しました。
事例(2)急性硬膜下血腫など|2,000万円超の示談金獲得
被害者 | 40代 会社員 男性 |
ケガ・後遺症 | 外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫 |
後遺障害等級 | 5級 |
示談金 | 2,328万円 |
外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫で2328万円の回収に成功した事例(アトム法律事務所)
自転車と自動車による、交差点での事故事例です。
通院段階からご相談いただき、後遺障害等級認定では5級獲得、示談金は2,328万円を獲得しました。
事例(3)高次脳機能障害|4,000万円超の示談金獲得
被害者 | 40代 その他職業 男性 |
ケガ・後遺症 | 高次脳機能障害、右目失明 |
後遺障害等級 | 7級 |
示談金 | 4,138万円 |
高次脳機能障害、右目失明で4138万円の回収に成功した事例(アトム法律事務所)
バイクと自動車の事故事例です。
弁護士基準の満額獲得に注力して示談交渉を行い、4,138万円を獲得しました。
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負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。

頭部外傷の場合、回収額が比較的高額になりますが、弁護士費用特約の上限の範囲内に収まることも十分に考えられます。
弁護士費用特約がない場合でも費用倒れになるかどうか、あらかじめ弁護士に相談することもできます。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了