外傷性くも膜下出血の後遺障害|等級認定の流れと慰謝料の相場を解説

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

外傷性くも膜下出血

交通事故によって頭部に強い衝撃を受けると、外傷性くも膜下出血を発症することがあります。
これは命に関わる重大な外傷であり、適切な治療を受けても、脳への損傷が後遺障害として残る可能性があります。

くも膜下出血により遷延性意識障害・高次脳機能障害・てんかんなどの障害が残った場合、「後遺障害等級認定」を受けることで、後遺障害慰謝料や逸失利益などの損害賠償を請求できます。

この記事では、くも膜下出血による後遺障害の症状や等級、慰謝料の相場、そして認定を受けるためのポイントまで詳しく解説します。

くも膜下出血の症状と考えられる後遺障害

交通事故などの強い衝撃によって発症する外傷性くも膜下出血は、命に関わることもある非常に危険な状態です。
発症後には、激しい頭痛や嘔吐といった急性の症状が見られるほか、脳へのダメージが後遺障害として残るケースもあります。

ここでは、くも膜下出血の主な症状や、どのような後遺障害が考えられるのかを解説します。

交通事故でくも膜下出血が発生する原因と症状

くも膜下出血とは、脳の周囲にあるくも膜と軟膜の間に出血が起こる病気です。

くも膜下出血

交通事故で頭部に強い衝撃を受けた場合、脳動脈が破裂してくも膜下出血を引き起こすことがあります。

このように外部からの力が加わって起きたくも膜下出血を、外傷性くも膜下出血といいます。

くも膜下出血の症状は、気を失うこともあるほどの激しい頭痛、嘔吐、吐き気などです。

けいれんや麻痺、意識障害などが発生した場合は、脳挫傷やびまん性軸索損傷、急性くも膜下血腫、頭蓋骨骨折などを併発している可能性があり、重症化すると死亡したりや後遺症が残ったりすることもあります。

交通事故で外傷性くも膜下出血になった場合、早急に医療機関を受診することが大切です。くも膜下出血は命に関わる病気ですので、放置せずに早期に治療を受けましょう。

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くも膜下出血で認定される後遺障害とは?

くも膜下出血では、事故後に深刻な後遺障害が残るケースがあります。

代表的な後遺障害としては、遷延性意識障害(植物状態)、半身麻痺、高次脳機能障害、視力障害、外傷性てんかんなどが挙げられます。これらはいずれも日常生活に重大な支障をきたすもので、介助が必要になるケースも少なくありません。

また、身体機能の障害だけでなく、記憶力や判断力の低下といった認知面への影響も出ることがあり、仕事や社会生活に大きな制限をもたらします。

このような後遺症が残った場合は、「後遺障害等級」の認定を受けることにより、後遺障害慰謝料や逸失利益といった金銭的補償を適切に受け取ることが可能になります。

交通事故による外傷性くも膜下出血では、医療面と法律面の両方からの支援が不可欠です。早期から後遺障害を見据えた対応を行い、損害を最小限に抑えることが大切です。

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外傷性くも膜下出血の後遺障害等級と慰謝料は?

外傷性くも膜下出血によって後遺障害が残ると、「後遺障害慰謝料」と「逸失利益」という2つの金銭的補償を受け取れる可能性があります。

  • 後遺障害慰謝料:障害が残ったことによる精神的苦痛への補償
  • 逸失利益:障害によって労働能力が低下し、将来的に得られるはずだった収入が減ることへの補償

これらは、認定された後遺障害等級に応じて金額が大きく変わるため、等級ごとの内容や基準を正しく理解することが重要です。

外傷性くも膜下出血で生じうる後遺障害別に、後遺障害等級と慰謝料相場を解説します。

遷延性意識障害

外傷性くも膜下出血により脳へ非常に大きなダメージが加わると、意識が戻らない状態が長期にわたって続く「遷延性意識障害」が発生することがあります。
この状態になると、自力で食事・排泄・移動などができず、介護が必要となります。

等級症状
1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
慰謝料相場:2,800万円

遷延性意識障害では被害者本人による賠償請求などはできません。ご家族による対応が必要です。

半身麻痺

くも膜下出血が原因で脳に障害が残ると、身体の片側に麻痺が生じるケースがあります。
症状の重さによって、歩行・言語・排泄などに支障が出たり、就労が困難になるケースもあります。

こうした半身麻痺で認定されうる後遺障害等級は1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号、14級9号認定で、慰謝料相場は110万〜2,800円です。

等級症状
1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
慰謝料相場:2,800万円
2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
慰謝料相場:2,370万円
3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終始労務に服することができないもの
慰謝料相場:1,990万円
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
慰謝料相場:1,400万円
7級4号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
慰謝料相場:1,000万円
9級10号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
慰謝料相場:690万円
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
慰謝料相場:290万円
14級9号局部に神経症状を残すもの
慰謝料相場:110万円

高次脳機能障害

くも膜下出血により脳が損傷すると、高次脳機能障害が発生することもあります。

高次脳機能障害の症状は記憶障害や言語障害、人格の変化などさまざまで、社会復帰が難しくなることもあります。

後遺障害1級に該当する重いものから14級に該当する比較的軽度なものまで幅広い点が特徴です。

該当しうる後遺障害等級と慰謝料相場は次のとおりです。

等級症状
1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
慰謝料相場:2,800万円
2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
慰謝料相場:2,370万円
3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終始労務に服することができないもの
慰謝料相場:1,990万円
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
慰謝料相場:1,400万円
7級4号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
慰謝料相場:1,000万円
9級10号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
慰謝料相場:690万円
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
慰謝料相場:290万円
14級9号局部に神経症状を残すもの
慰謝料相場:110万円

視力障害

くも膜下出血の影響が視神経に及ぶことで、視力が著しく低下することがあります。

視力低下により認定される可能性がある等級と慰謝料相場は以下の通りです。

等級症状
1級1号両眼が失明したもの
慰謝料相場:2,800万円
2級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
慰謝料相場:2,370万円
2級2号両眼の視力が0.02以下になったもの
慰謝料相場:2,370万円
3級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
慰謝料相場:1,990万円
4級1号両眼の視力が、0.06以下になったもの
慰謝料相場:1,670万円
5級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
慰謝料相場:1,400万円
6級1号両眼の視力が0.1以下になったもの
慰謝料相場:1,180万円
7級1号一眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
慰謝料相場:1,000万円
8級1号一眼が失明し、又は一眼の視力が0.02以下になったもの
慰謝料相場:830万円
9級1号両眼の視力が0.6以下になったもの
慰謝料相場:690万円
9級2号一眼の視力が0.06以下になったもの
慰謝料相場:690万円
10級1号一眼の視力が0.1以下になったもの
慰謝料相場:550万円
10級2号正面を見た場合に複視の症状を残すもの
慰謝料相場:550万円
13級1号一眼の視力が0.6以下になったもの
慰謝料相場:180万円
13級2号正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
慰謝料相場:180万円

交通事故による目の後遺障害は、視力障害が両目か、片目か、どの程度まで失われたかで等級が認定されます。

外傷性てんかん

外傷性てんかんは、くも膜下出血などにより脳細胞が傷つき、神経伝達に異常をきたすことで発生します。

意識発作やけいれん発作、失神発作など発作にはさまざまなものがあり、発作の頻度もさまざまです。

外傷性てんかんで認定されうる後遺障害等級と慰謝料相場は以下のとおりです。

等級症状
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
慰謝料相場:1,400万円
7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
慰謝料相場:1,000万円
9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
慰謝料相場:690万円
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
慰謝料相場:290万円

外傷性くも膜下出血の後遺障害認定の流れと対策ポイント

後遺障害の等級認定は、損害賠償の金額を大きく左右する重要なステップです。
外傷性くも膜下出血の症状は見た目だけでは判断しづい場合もあり、適切な資料と申請方法を選ぶことが、納得のいく等級認定につながります。

ここでは、認定までの流れと、正しく認定を受けるための対策ポイントを解説します。

後遺障害認定の流れ|外傷性くも膜下出血の場合

外傷性くも膜下出血により後遺障害が残った場合、適切な損害賠償を受けるには「後遺障害等級認定」が必要です。
この認定は、損害保険料率算出機構という第三者機関によって行われます。

認定までの主な流れは以下の通りです。

  1. 医師が作成した後遺障害診断書やMRI画像などの必要資料を準備
  2. 自賠責保険会社または任意保険会社に申請書類を提出
  3. 損害保険料率算出機構による審査
  4. 認定結果が通知される

申請書類の提出方法には次の2種類があります。

  • 事前認定
    • 加害者側の任意保険会社が資料を取りまとめて申請
    • 書類の負担は少ないが、必要最低限の資料しか提出されないことが多い
  • 被害者請求
    • 被害者側が必要資料をすべて揃え、自賠責保険会社を介して申請
    • 手間はかかるが、資料の追加・補強が可能で認定精度が高まりやすい

外傷性くも膜下出血のような医学的判断が難しい障害では、被害者請求の方が適正な等級を獲得しやすい傾向があります。

事前認定の流れ
被害者請求の流れ

後遺障害認定を受けるための対策ポイント

後遺障害等級の認定を受けるには、単に診断書を提出するだけでは不十分です。
審査機関が納得するだけの証拠資料を揃えることが極めて重要になります。

【特に重視される資料】

  • 画像資料(MRIやCTなど)
    くも膜下出血の位置や範囲が視覚的に示される
  • 医師の意見書や診断書
    症状名・後遺症の程度・日常生活への影響が明記されたもの
  • 日常生活状況報告書
    食事・排泄・通勤・会話など、生活の支障を具体的に記録

また、治療目的の検査と、後遺障害認定のための検査は異なることがあるため、医師が適切な資料を出せるとは限りません。

そのため、医師にどのような内容を記載してもらうべきか、不足があればどんな資料を追加するかといった戦略を立てることが大切です。

これらの点については、専門知識を持つ弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士に相談することで、以下のような後遺障害認定の成功率を高めるための実務的支援が可能になります。

  • 医師とのやり取りを適切に調整できる
  • 必要な書類を漏れなく準備できる
  • 被害者請求の申請サポートが受けられる
交通事故慰謝料
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交通事故でくも膜下出血になった場合の弁護士の役割

くも膜下出血のような重い障害が残る事故では、後遺障害等級の認定や損害賠償の交渉に専門知識が必要になります。
被害者がひとりで対応しようとすると、適正な補償を受け損なうリスクが高まるため、弁護士のサポートを受けることが極めて重要です。

この章では、弁護士がどのように等級認定や示談交渉をサポートできるのかをご説明します。

正しい後遺障害等級に認定されるためのサポート

弁護士は、後遺障害等級認定に必要な書類や診断書のチェック、提出書類の精査などを通じて、適正な等級獲得をサポートします。

  • 医師への説明資料の作成や、検査内容の選定アドバイス
  • 診断書の記載ミスや不備のチェック
  • 必要に応じた追加資料(画像、生活状況報告書など)の補強

こうした対応により等級が1段階上がるだけで、損害賠償金に数百万円以上の差が出るケースも少なくありません。
外傷性くも膜下出血のように、等級の判断が繊細なケースほど、弁護士のサポートが等級結果に影響しやすくなります。

示談を有利に進めるための交渉

弁護士は、後遺障害の認定結果をもとに、相場通りまたはそれ以上の賠償額で示談交渉を進めます。

  • 相場より低い金額を提示してくる保険会社に対し、適正な根拠をもとに増額交渉
  • 慰謝料・逸失利益・将来介護費用などの正当な請求
  • 過失割合をめぐる争点や減額リスクへの法的反論

こうした交渉を、専門的知見を持たない被害者が一人で行うのは極めて難しいのが実情です。
弁護士に依頼することで、納得できる金額での示談成立を目指せます。

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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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