交通事故やバイク事故で寝たきりになった。後遺障害や賠償金・介護費用を解説

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

事故で寝たきりに

交通事故やバイク事故で被害者が寝たきり状態になってしまったら、治療費をはじめ慰謝料や介護費用など、適切な賠償金をもらうことが大切です。しかし、被害者のご家族にとって、賠償金請求手続きは煩雑で難しいでしょう。

そこで、弁護士に相談するのがおすすめです。弁護士は、ご家族から寝たきり状態になった方の状況を詳しく聞き、適切な方法で賠償金を計算し、損害保険会社との示談交渉をサポートします。

寝たきりの原因と後遺障害等級

寝たきりの明確な定義はありませんが、本記事では「1日中ベッド上で過ごし、日常生活の動作(排泄、食事、着替、入浴など)において介助を要する状態」のことを、寝たきり状態と呼びます(厚生労働省「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」参照)。

交通事故をきっかけに寝たきり状態になってしまった場合、どのくらいの後遺障害等級が認定されるのでしょうか。まずは寝たきりの原因からみていきます。

寝たきりにつながる原因

交通事故後に寝たきりになる原因は主に、脳や脊髄といった部位の重篤な損傷です。

全身の運動に関係する脳や脊髄が傷つくと植物状態や四肢麻痺となってその後遺症が残り、寝たきりとなってしまう場合があります。

たとえば、一般的には植物状態と、医学的には遷延性意識障害と呼ばれる、頭部外傷(脳挫傷)や脳卒中、低酸素脳症などが原因で昏睡状態に陥り、意識不明の状態から速やかに回復しないと、寝たきりになってしまうケースが多いです。

また、重度の高次脳機能障害により、寝たきり状態になってしまうケースや外傷性脳損傷、背骨の骨折や脱臼での脊髄損傷によって麻痺となり、寝たきりになるケースもみられます。

特に首部分の脊髄である頚髄が損傷してしまうと、両腕・両足・骨盤が麻痺する四肢麻痺を負うことになります。

さらに、骨盤骨折や大腿骨骨折で長期間安静にしている間に、関節拘縮が起こったり、筋力・身体機能が低下してしまったりした結果、寝たきり状態につながるケースもあります。

なお、バイク事故の場合、自動車事故よりも身体にかかる負荷が大きいため、頭部や脊髄に大きな損傷を負い、寝たきりとなってしまうリスクが高いので、特に注意が必要です。

寝たきりの原因となる傷病名について詳しく知りたい方は、下記の関連記事を参考にしてください。

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寝たきりの後遺障害等級

後遺障害等級は1級から14級までありますが、交通事故やバイク事故で寝たきりになった場合、要介護1級または要介護2級に該当すると認定される可能性があるでしょう。

寝たきりの主な後遺障害等級

要介護
(別表1)
症状の内容
1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
1級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
2級2号胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

後遺障害等級は、医師が作成した後遺障害診断書や資料などに基づいて認定されます。後遺障害診断書には、寝たきりの状態の詳細や日常生活に及ぼす影響が記載されている必要があります。

交通事故やバイク事故で寝たきりになり、後遺障害等級が認定されると賠償金が支払われますが、賠償金の金額は、後遺障害等級や寝たきりの状態の程度(常時介護が必要か)などによって異なります。

【コラム】障害者手帳について

交通事故やバイク事故で寝たきりになった被害者が後遺障害認定された場合には、「身体障害者手帳」の交付も受けられる可能性が高いです。 

障害者手帳の交付を受けると、住宅設備改善費の支給や所得税や住民税の控除といった福祉サービスを利用できる可能性があります。

また、各地方公共団体は、障害者の自立支援を目的とした障害福祉サービス制度を用意しています。

交通事故で寝たきりになった場合に請求できる賠償金項目

交通事故やバイク事故で寝たきりになった場合に、被害者側は下記のようなさまざまな項目の損害賠償請求をできます。

  • 治療関係費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 逸失利益
  • 後遺障害慰謝料
  • 将来治療費・将来介護費用
  • 装具・器具等購入費
  • 家屋・自動車改造費

それぞれの損害賠償額の相場や計算方法について詳しく紹介していきます。

治療関係費

交通事故やバイク事故による怪我の治療関係費が支払われます。治療関係費としては、病院や薬局での治療費用や付添費、通院交通費、入院費、リハビリテーション費など、怪我の治療に必要で相当な範囲の費用が認められます。

休業損害

交通事故やバイク事故による怪我の治療期間中に仕事を休んだ場合、休業期間中の収入が支払われます。休業損害は、被害者の収入や平均賃金を基に算定した基礎日額に休業日数を乗じて計算されます。

入通院慰謝料

交通事故やバイク事故による怪我で入院や通院をした場合、入通院期間中の精神的苦痛に対する慰謝料が支払われます。入通院慰謝料は、基本的に入通院期間の長さで金額が決まります。

寝たきりの場合の入通院慰謝料は、以下の表から具体的な金額が確認可能です。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

もっとも、「生死が危ぶまれる状態が継続したときや手術を繰返したときは増額を考慮する」とされており、寝たきりになるような場合は上記の基準よりも増額して請求できる可能性があります。

逸失利益

交通事故やバイク事故による怪我で後遺障害が残った場合、本来は受け取れたはずの将来の収入が減少する可能性があります。逸失利益は、将来の収入の減少額を補償するための賠償金です。

逸失利益は、基礎収入(年収)×後遺障害等級に対応する労働能力喪失率×労働能力喪失期間(原則67歳になるまでの期間)に対応するライプニッツ係数という計算方法で算定されるため、同じ寝たきり状態でも、被害者の職業や年齢によって金額は大きく変動します。

後遺障害慰謝料

交通事故やバイク事故による怪我で後遺障害が残った場合、後遺障害慰謝料が支払われます。後遺障害慰謝料は、認定された後遺障害等級に応じて金額が異なります。

交通事故で寝たきりになった場合に認定される可能性のある後遺障害1級または2級では、以下の金額の後遺障害慰謝料が目安となる相場です。

後遺障害慰謝料の相場

要介護自賠責基準弁護士基準
1級1,650万円
(1,600万円)
2,800万円
2級1,203万円
(1,163万円)
2,370万円

()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用

将来治療費・将来介護費用

通常、交通事故やバイク事故による怪我の賠償請求の対象となる治療費や介護費用は、受傷日から症状固定日までに発生したものです。

しかし、寝たきりとなってしまった場合、症状固定日以後も被害者自身の力で生活を続けていくことはできないことがほとんどです。

そのため、寝たきりの場合には今後、現在の状況を維持するのに必要な症状固定日以降の将来治療費や将来介護費用を請求することができます。

将来治療費や将来介護費用は、怪我の程度や医師の指示、介護期間などによって計算されます。

介護費用は、介護人が職業付添人(看護師や介護士など)の場合には実費相当額(全額)が、近親者の場合には1日につき8000円が相場となります。

なお、加害者側から「寝たきりは余命が短い」という理由で、介護期間を10年程度で計算した将来介護費用を主張されるケースもありますが、裁判例では、被害者の平均余命を介護期間として将来介護費用を計算している事例が多いです。

装具・器具等購入費

交通事故やバイク事故で寝たきりになった被害者の介護に、マットレスや介護ベッドなどの介護用品・器具が必要になる場合、その器具などの購入費を請求することができます。将来的に買い換えが必要となる器具については、将来的に発生する費用も含めて請求することができます。

家屋・自動車改造費

交通事故やバイク事故による怪我で、寝たきりの被害者を在宅介護するため、段差をなくしてスロープ(手すり)を付けるなど自宅をバリアフリーにしたり、自動車にリフトを設置する必要が生じたりした場合は、家屋・自動車改造費が請求できます。

ただし、請求が全額認められるには、改造の必要性や費用の相当性を立証する必要があるのが注意点となります。

交通事故で寝たきりになった場合の賠償金の増額方法

交通事故やバイク事故で寝たきりになった場合、適切な賠償金をもらうためには、以下の方法で賠償金の増額を図ることができます。

後遺障害等級の認定を受ける

後遺障害等級とは、交通事故やバイク事故による怪我の影響で残存した症状の程度を客観的に評価するための等級です。後遺障害等級が認定されると、それに応じて賠償金が支払われます。

そのため、適切な後遺障害等級認定を受けないと、適切な賠償金が得られないということになります。

たとえば、寝たきりで後遺障害1級に認定されれば、弁護士基準で2,800万円の後遺障害慰謝料が請求可能です。一方、寝たきりで後遺障害2級に認定されれば、請求できる後遺障害慰謝料は弁護士基準で2,370万円となります。

このように、等級の違いで賠償金も違ってくることになるので、適切な後遺障害等級認定を受けるのが賠償金を増額する重要なポイントです。

後遺障害等級認定の手続きの流れ

後遺障害等級の認定を受けるための流れとして、まずは症状固定(治療による改善が見込めなくなった時期)の段階で、主治医に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。その上で、取得した後遺障害診断書とその他の必要書類をあわせて自賠責保険会社に提出する必要があります。

申請方法は、加害者側の任意保険会社に申請の準備を一任する事前認定と被害者本人が申請する被害者請求の2つの種類の方法から選択できます。

手間がかかるというデメリットはありますが、適切な後遺障害等級の認定を目指すのであれば、認定に有利な資料を添付できる被害者請求という方法により申請するのがおすすめです。

申請書類を受け取った審査機関(損害保険料率算出機構)は、提出書類の内容や医療機関への調査などに基づいて、後遺症が等級認定基準を満たすかや事故との因果関係が認められるかなどを検討し、後遺障害等級を認定します。

適切な方法で賠償金を計算する

賠償金は、交通事故やバイク事故による怪我の程度や、怪我が原因で生じた損害額によって計算されます。適切な方法で賠償金を計算するためには、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、寝たきりになられた方の状況を把握し、適切な方法で賠償金を計算します。また、損害保険会社との交渉もサポートします。

交通事故で寝たきりになったら弁護士に相談するメリット

交通事故やバイク事故で寝たきりになった場合、適切な賠償金をもらうためには、専門家である弁護士に相談することが重要です。弁護士は、寝たきりになった被害者の状況をご家族から詳しく聞き、適切な賠償金を得られるようサポートします。

適切な賠償金を得ることができる

弁護士は、交通事故やバイク事故による怪我の程度や、怪我が原因で生じた損害額を詳しく調べ、適切な賠償金を得られるようサポートします。

慰謝料金額相場の3基準比較

特に、慰謝料に関しては、以下の算定基準のうちどれを用いて算定するかで金額が大きく変わります。

  • 自賠責基準
    3つの基準のうち最も低額で最低限度の補償となる自賠責保険の基準
  • 任意保険基準
    3つの基準のうち真ん中の立ち位置ではあるが自賠責基準に少し上乗せした程度の基準
  • 弁護士基準(裁判基準)
    3つの基準のうち最も高額かつ法的に妥当な金額になる過去の判決を基に作成された基準

加害者側が加入する任意保険会社の提示額は、支払う賠償金を少しでも抑えるため、自賠責基準や任意保険基準で算定した示談金であるケースがほとんどです。保険会社の言うままにしていると、最も高く妥当な金額になる弁護士基準の慰謝料額を受け取れなくなってしまいます。

納得のできる適切な賠償金を得るには、弁護士に依頼して弁護士基準の賠償金を算定してもらうところからはじめましょう。

また、賠償金額に大きく影響する後遺障害等級認定の申請についても、弁護士が自分では申請できない寝たきり状態の被害者の代理人として、被害者請求の方法により、医師の意見書など認定に有利な資料を付けて申請することで、適切な後遺障害等級認定を獲得できる可能性を高めることもできます。

さらに、割合分が損害賠償額から減額される過失割合が争点となっているケースでは、適切な過失割合で示談できる可能性を高めることもできます。

寝たきりのケースでは、弁護士への依頼次第で、受け取れる損害賠償金が数千万円増額できるケースも珍しくなく、弁護士費用を差し引いても、結果的に金銭的なメリットがあることがほとんどです。

精神的苦痛を軽減することができる

交通事故やバイク事故で被害者が寝たきりになると、被害者家族の精神的な苦痛や負担が非常に大きくなります。

大切な家族が寝たきりになったという状況はもちろん、相手方の任意保険会社とのやり取りも簡単ではなく、今後のことを考えて不安や悩みを抱えたりすることになり、気持ちが休まらないことでしょう。

弁護士は、交通事故被害者やそのご家族の精神的苦痛の理解に努め、苦痛軽減のためのサポートを行うことができます。

具体的には、自力での判断や解決が難しい事柄に対して、専門的知識に基づいた対処法を助言したり、保険会社との示談交渉を代理したりするサポートにより、不安・悩みを解消したり、負担を軽減したりすることが可能です。

そのため、弁護士に依頼すれば、交通事故被害者やそのご家族が安心して治療や介護などに専念できるというメリットがあります。

成年後見人の選任申立てに関してアドバイスがもらえる

交通事故やバイク事故で被害者が寝たきりになり、意思疎通が困難な場合は、原則成年後見人の選任が必要です。成年後見人は、寝たきり状態の被害者本人に代わり財産や生活を管理する役割を担います。弁護士は、家庭裁判所への成年後見人の選任申立てに関してもアドバイスすることができます。

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岡野武志弁護士

監修者


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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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