脊髄損傷の後遺症|交通事故での脊髄損傷で認定される後遺障害

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

脊髄損傷での後遺症

脊髄損傷の症状には、四肢体幹の感覚障害、運動障害、損傷部位の痛みなどがあり、完全損傷では重度の麻痺症状が生じます。

脊髄損傷の後遺症として、日常生活や労務に影響が出るほどの麻痺症状が残ることが考えられます。

脊髄損傷の後遺症が残った場合、要介護1級1号〜12級13号のいずれかに認定される可能性があり、後遺障害慰謝料の相場は、290万円〜2,800万円です。

今回は、脊髄損傷・脊椎損傷の症状や治療、後遺症、慰謝料請求の方法などについて詳しく解説します。

脊髄損傷の症状・治療|交通事故で脊髄損傷を負ったら

脊髄損傷とは?

脊髄損傷の症状:四肢体幹の感覚障害、運動障害や損傷部位の疼痛など。

脊髄とは、背骨である脊椎の内側の脊柱管の中を通っている神経の束です。

脊髄は、脳から伝達された命令に従って筋肉を動かしたり、感覚情報を脳に伝えるといった重要な役割を担っています。

脊髄損傷は、外傷や疾患によって、脊椎だけでなく内部の脊髄も損傷した状態を指します。

脊髄損傷の原因

脊髄損傷の原因として交通事故やスポーツなど、大きな外力が加わったことが考えられます。

交通事故の場合、特にバイクや自転車など、生身で車に衝突されるような二輪車の乗車中の事故で生じることが多いです。

バイクや自転車事故での脊髄損傷については、「バイク事故で脊髄損傷|麻痺は後遺障害何級?半身不随など慰謝料の相場も解説」の記事でも詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。

脊髄損傷の症状の程度

脊髄損傷の症状として、四肢体幹の感覚障害、運動障害や損傷部位の痛みなどが生じ、場合によっては意識障害が生じる可能性もあります。

脊髄がどの程度損傷したかによって、生じる症状の程度も変わってきます。

完全損傷

脊髄損傷における完全損傷とは、脊髄が損傷によって完全に横断され、損傷した部位から下の神経伝達が途絶えて完全に麻痺している状態のことです。

脊髄損傷の症状として、損傷した部位の運動能力や感覚機能が失われ、自律神経の損傷によって体温調節機能や代謝機能も落ちます。

具体的には、身体を動かすことができなかったり、何も感じることができなくなるため、日常生活を送ることが著しく困難になります。

感覚機能が麻痺すると、横になっている際にベッドに接する背中などの部位の血行が悪くなっても感覚麻痺から寝返りを打たなくなるので、いわゆる床ずれと呼ばれる褥創(じゅくそう)も起きやすくなります。

不完全損傷

脊髄損傷における不完全損傷とは、脊髄が部分的に損傷しているものの、神経伝達の一部が残っている状態です。

不完全損傷を負っても、運動能力や感覚機能が部分的に失われるにとどまり、他の機能は残っていることも多いです(不全麻痺)。

たとえば、脊髄の半分側だけ損傷し、運動能力や感覚機能の一部が失われるブラウン・セカール症候群が生じることも考えられます。

脊髄損傷における不完全損傷の具体的な症状として、身体の一部が動かしにくくなる麻痺や筋力の低下、一部の感覚の鈍化、しびれや痛みなどの異常知覚が生じることがあります。

脊髄損傷の症状が出る部位

脊髄損傷は、損傷した部位によって、麻痺の生じる部位も異なります。

麻痺の種類

脊髄損傷の麻痺(1)片麻痺

脊髄損傷の麻痺のひとつである片麻痺とは、脳の片側を損傷したことによって、半身が麻痺した状態のことです。

右脳の損傷で左半身、左脳の損傷で右半身に麻痺が生じることがあります。

脊髄損傷の麻痺(2)対麻痺

脊髄損傷の麻痺のひとつである対麻痺とは、胸髄や腰髄などの胸から下の脊髄が損傷したことによって、両足や骨盤が麻痺した状態のことです。

脊髄損傷の麻痺(3)四肢麻痺

脊髄損傷の麻痺のひとつである四肢麻痺とは、首部分の脊髄である頚髄が損傷したことによって、両腕・両足・骨盤が麻痺した状態のことです。

脊髄損傷の麻痺(4)単麻痺

脊髄損傷における単麻痺とは、特定の手や足などの身体の一部が麻痺している状態です。

損傷部位によって麻痺する部位は異なり、たとえば、頚椎付近の損傷で手足、胸椎付近の損傷で足の麻痺が起こります。

脊髄損傷の治療

脊髄損傷の治療として、症状の程度に応じて手術や薬物療法などの保存的療法が行われます。

脱臼や骨折などによる高度の不安定性や脊髄圧迫がある場合には、脊髄の圧迫物を取り除く手術が行われます。

また、症状によっては痛みや炎症を抑える、筋肉の痙攣を抑える、排尿障害を改善するなどの目的に合わせた薬物療法が行われることもあります。

いずれの治療でも、処置後は筋力や運動機能の回復を目的とした理学療法、作業療法、言語療法などのリハビリテーションに取り組むことになります。

交通事故での脊椎損傷の後遺症

脊椎損傷とは?

脊椎損傷:痛みや腫れ、変形。脊髄損傷を伴った場合には、四肢体幹の感覚障害、運動障害なども生じ得る。

脊「髄」損傷と似たような症状名として、脊「椎」損傷という言葉が使われることがあります。

背骨である脊椎は、上から頸椎、胸椎、腰椎で構成されています。

頚椎は頭部と胸部を、腰椎は胸部と骨盤をつなげる役割があります。胸椎は頸椎と腰椎の間にあり、背中部分を通る背骨を指します。

脊椎損傷は、脊髄を守っている役割を担う背骨・脊椎が骨折や脱臼によって損傷する状態を指します。脊髄損傷と違って必ずしも脊髄が損傷しているとは限りません。

骨折した部位や状態によって、症状が細分化されますので、ご自身のケガの状況に合わせて関連記事もご覧ください。

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脊椎損傷の後遺症

脊椎損傷の後遺症として、神経症状、変形障害、運動障害(可動域制限)を負うことが考えられます。

特に圧迫骨折や破裂骨折では、痛みやしびれなどの神経症状だけでなく、脊柱が変形したことによって首や背中が曲がりにくくなることが考えられます。

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脊髄損傷の後遺症とは?

脊髄損傷の後遺症|脊髄損傷の障害等級

脊髄損傷の後遺症として、日常生活や労務に影響が出るほどの麻痺症状が残ることが考えられます。

特に麻痺症状が重くなると、ひとりでは身の回りのことをこなすのも困難になり、介護が必要となり、被害者の人生に与える影響はより大きくなります。

脊髄損傷の後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定を受けることで各認定等級に応じた後遺障害慰謝料を請求できます。

後遺障害認定を受けるには、後遺障害申請を行い、各等級の認定基準を満たしたとして審査を通過する必要があります。

後遺障害認定の手続きの流れ

後遺障害等級認定の手続きの流れ
  1. 入通院治療後、医師から症状固定と診断される
  2. 医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
  3. 保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
  4. 審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知される

脊椎損傷の各等級の認定基準は、以下の通りです。

等級認定基準
慰謝料額
要介護1級1号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2,800万円
要介護2級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
2,370万円
3級3号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
1,990万円
5級2号神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
1,400万円
7級4号神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
1,000万円
9級10号神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
690万円
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
290万円

脊髄損傷は、特に認定基準が細かい後遺症のひとつといえます。

弁護士であれば、後遺障害申請手続きだけでなく認定基準や認定されるための対策も熟知しているので、後遺障害申請をご検討の際は是非、専門家である弁護士に相談してみましょう。

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脊髄損傷の後遺障害慰謝料

脊髄損傷の後遺症が残ったとして後遺障害認定を受けることで、各等級に応じた後遺障害慰謝料を請求できます。

脊髄損傷の後遺障害慰謝料の相場は、290万円〜2,800万円です。

ただし、後遺障害認定後、相手側の保険会社から提示される支払い予定額は、相場の金額よりも低い傾向にあります。

何故ならば、相手側の保険会社は、相場金額を算定する弁護士基準ではなく、保険会社独自の基準である任意保険基準を用いているからです。

慰謝料算定の3基準

  • 自賠責基準
    加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。
  • 任意保険基準
    加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。
  • 弁護士基準(裁判基準)
    弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。
慰謝料金額相場の3基準比較

特に脊髄損傷は重い後遺症が残ったとして、後遺障害慰謝料が高額になるケースもみられます。

その分、慰謝料を支払う保険会社側の負担も増えるので、保険会社が慰謝料を低く見積もってくるケースも少なくありません。

弁護士基準に基づく適正な慰謝料を受け取るためには、提示額を鵜呑みにするのではなく、保険会社を相手に増額交渉をしていくことになります。

弁護士に依頼すれば、後遺障害申請だけでなく、認定後の慰謝料の増額交渉まで任せることができるので、ひとりで手続きを進めるよりも慰謝料増額の可能性を高められます。

脊髄損傷の後遺症で請求できる示談金

脊髄損傷の入通院慰謝料

交通事故で負った脊髄損傷を入院・通院をして治療した際には、後遺障害認定の有無に関係なく、入通院慰謝料を請求できます。

入通院慰謝料とは、入院・通院を余儀なくされるほどの交通事故でのケガで受けた精神的損害に対する賠償金です。

入通院慰謝料は、入院・通院期間の長さに応じて金額が変わります。

重傷の慰謝料算定表
重傷の慰謝料算定表

治療期間が長いほど慰謝料は増額されます。

また、同じ治療期間でも入院をせず通院のみで治療したケースよりも入院もして治療したケースの方が慰謝料額も高額になります。

脊髄損傷の治療費|請求できる示談金の内訳

脊髄損傷で請求できるのは、慰謝料だけではありません。

慰謝料以外に、以下のような費用や損害を示談金として請求できます。

  • 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
  • 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
  • その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
  • 逸失利益:後遺障害により減収することとなる将来の収入に対する補償
  • 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
交通事故示談金の内訳

保険会社から届く示談書(免責証書)には、支払い予定の示談総額だけでなく、各損害の金額・内訳も提示されています。

示談書を弁護士に見せれば、事故の状況や症状の程度にあわせて示談金の相場を算定し直してくれるため、提示額からどのくらい増額できそうか、見込みを知ることもできます。

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脊髄損傷の後遺症は弁護士に相談!

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脊髄損傷の後遺症が残ったら、弁護士に相談してみましょう。

脊髄損傷は、重大な後遺症が残る可能性があるため、慰謝料も高額となり、保険会社との交渉も難航することも少なくなく、弁護士相談の必要性が高い疾患です。

脊髄損傷の後遺症を弁護士に相談することには、以下のようなメリットがあります。

  • 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、脊髄損傷の治療や職場復帰に専念できる
  • 脊髄損傷での後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
  • 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる

アトム法律事務所では、交通事故の被害者向けにLINE・電話での無料相談を受け付けております。

無料相談では、正式に依頼した際の料金のご確認もできますので、弁護士依頼のメリットや負担費用も考慮して、正式に依頼するべきか、十分ご検討いただけます。

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費用を払わずに弁護士に依頼する方法|弁護士費用特約

弁護士費用特約を利用すれば、弁護士費用を払わずに弁護士に依頼することもできます。

弁護士費用特約とは?

弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約です。

負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。

弁護士費用特約とは

弁護士費用特約の利用の有無に応じて弁護士費用の料金もご案内いたします。

無料相談の際は、あらかじめ自分の保険に弁護士費用特約が付帯していないか確認しておきましょう。

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岡野武志弁護士

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代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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