腰椎破裂骨折の後遺症とは?認定される後遺障害等級も解説

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岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

腰椎破裂骨折は、腹部側の椎体が割れる骨折です。椎体除圧固定術など手術を行うケースも少なくありません。

腰椎破裂骨折の後遺症として神経障害、運動障害、変形障害などの症状がみられることがあります。

後遺症が残った場合、後遺障害等級に認定されることで、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができ、示談金を増額させることができます。

今回は、交通事故による腰椎破裂骨折の症状、治療や後遺症、認定される後遺障害等級、慰謝料の相場について解説します。

腰椎破裂骨折とは?

腰椎正面図・横図

腰椎(ようつい)破裂骨折とは、腹部側の椎体が割れる骨折です。

具体的には、腰の骨である腰椎のうち、円柱状の骨である椎体(ついたい)が神経に接している背中側の部分まで損傷している状態を指します。

腰椎圧迫骨折も、破裂骨折と同様に椎体の骨折ではあるものの、破裂骨折と違って椎体の外側の部分しか骨折しておらず、神経に接する部分まで損傷が及んでいません。

腰椎破裂骨折は、神経と接する部分も損傷していることから、痛みや麻痺、しびれなどの神経症状がみられることがあるのが特徴です。

腰椎破裂骨折の原因

腰椎破裂骨折は、交通事故で後方から追突され、強い衝撃が腰椎に加えられることで発生してしまう可能性があります。

腰椎破裂骨折の症状

腰椎破裂骨折は神経にも影響を与える結果、骨折部位である腰椎が痛んだり、腰や足がしびれるといった神経症状がみられることがあります。

また、可動域が制限されることで事故以前のように動いたり歩いたりすることが困難になるケースもみられます。

腰椎破裂骨折の治療

神経症状が出ていない圧迫骨折の場合、安静、コルセット固定、理学療法などの保存的治療から行われます。

一方で、神経症状が出ている腰椎破裂骨折の場合、椎体除圧固定術など手術を行うケースも少なくありません。

椎体除圧固定術とは、金属製のスクリューを骨折した骨に埋め込み固定する方法です。

破裂骨折した椎体の上下の椎体を固定することによって、骨折した椎体がくっつくのを助けます。

また、骨にかかる圧力も抑えられるので、神経への圧迫もなくなり、症状の改善が期待できます。

腰椎破裂骨折の後遺症

腰椎破裂骨折の後遺症として神経症状、変形障害、運動障害(可動域制限)を負うことが考えられます。

腰椎破裂骨折の神経症状

腰椎破裂骨折は神経にも影響を及ぼすことから、足のしびれや麻痺、痛みなどの神経症状がみられることがあります。

腰椎破裂骨折の運動障害

腰椎破裂骨折が背骨の変形を引き起こすことで、背中が曲がりにくくなるといった運動障害が現れることがあります。

腰椎破裂骨折の変形障害

腰椎破裂骨折によって骨折した腰椎が変形してしまい、見た目の変化が現れることがあります。

腰椎破裂骨折の後遺障害等級

腰椎破裂骨折の後遺障害等級表

腰椎破裂骨折による後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定を受けられる可能性があります。

後遺障害認定を受ければ、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。

腰椎破裂骨折の後遺障害等級表

等級
神経症状12級13号、14級9号
運動障害6級5号、8級2号
変形障害6級5号、8級相当、11級7号

腰椎破裂骨折の後遺障害等級認定基準

腰椎破裂骨折の後遺症として神経障害が残った場合、12級13号または14級9号に認定される可能性があります。

神経障害による後遺障害等級の認定基準

等級後遺障害
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

神経障害による後遺障害慰謝料の相場

等級慰謝料額
12級13号290万円
14級9号110万円

神経障害では、12級13号・14級9号のいずれの等級で認定を受けられるかが問題となります。

12級13号と14級9号の違いは、後遺症の存在が医学的に証明できるかどうかという点です。

局部に「頑固な」神経症状を残すとされる12級13号の認定は、レントゲン写真やMRI画像に異常が写っているなど後遺症の存在が医学的に証明される必要があります。

一方で、画像診断では他覚的な後遺症の存在はないものの、受傷の状況、症状、治療の経過、各種神経学的検査の結果などから、後遺症が発生していると説明できれば14級9号の認定を受けられます。

運動障害による後遺障害等級の認定基準

等級後遺障害
6級5号脊柱に著しい運動障害を残すもの
8級2号脊柱に運動障害を残すもの

運動障害による後遺障害慰謝料の相場

等級慰謝料額
6級1,180万円
8級830万円

腰椎破裂骨折の後遺症として運動障害が残った場合、後遺障害6級5号または8級2号に認定される可能性があります。

「著しい運動障害」や「運動障害」にあたるか否かは、脊椎破裂骨折の有無や、脊椎固定術の有無、明らかな器質的変化(変形し、元の形に戻らなくなっている状態)の有無と、その可動域の範囲を総合的に考慮して判断されます。

後遺障害6級5号「脊柱に著しい運動障害」を残すものとは、以下のいずれかに該当し、頚部や胸腰部が動かなくなったケースを指します。

  • 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等などが生じており、レントゲンで確認できるもの
  • 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術がおこなわれたもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

後遺障害8級2号「脊柱に運動障害」を残すものとは、以下のいずれかにより頚椎または胸腰椎の可動域が、参考可動域角度の2分の1以下に制限されたものを指します。

  • 頚椎または胸腰椎のどちらかに脊椎圧迫骨折等が生じており、レントゲンで確認できるもの
  • 頚椎または胸腰椎に脊椎固定術がおこなわれたもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

また、頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性が生じたケースも8級2号に該当します。

後遺障害6級5号と8級2号の違いをまとめると、以下の表のとおりです。

運動障害の認定基準の比較

6級5号8級2号
レントゲンで確認可能な脊椎圧迫骨折等頚椎および胸腰椎頚椎か胸腰椎
参考可動域角度の2分の1以下に制限頚椎か胸腰椎
脊椎固定術頚椎および胸腰椎頚椎か胸腰椎
項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化ありあり
頭蓋・上位頚椎間に著しい異常可動性あり

変形障害による後遺障害等級の認定基準

等級後遺障害
6級5号脊柱に著しい変形を残すもの
8級相当脊柱に中程度の変形を残すもの
11級7号脊柱に変形を残すもの

変形障害による後遺障害慰謝料の相場

等級慰謝料額
6級1,180万円
8級830万円
11級420万円

腰椎破裂骨折の後遺症として変形障害が残った場合、後遺障害6級5号、8級相当、11級7号に認定される可能性があります。

腰椎は椎体が連なってできています。著しい変形とは、レントゲン・CT・MRI画像で脊椎圧迫骨折等を確認できる、次のいずれかを満たすものです。

  • 2つ以上の前方椎体高が著しく減少し、後弯(こうわん)が発生しているもの
  • 1つ以上の椎体の前方椎体高が減少し、コブ法による側弯(そくわん)度が50度以上となっているもの

後弯は腰椎が後ろに曲がってしまっている状態、側弯は本来、まっすぐの腰椎が左右に曲がってしまっている状態を指します。

中程度の変形はレントゲンなどで脊椎圧迫骨折等を確認できて、いずれかに該当するものです。

  • 1つ以上の前方椎体高が著しく減少し、後弯が発生しているもの
  • コブ法による側弯度が50度以上であるもの

あるいは、環椎または軸椎の変形・固定によって次のいずれかに該当するものも該当します。

  • 60度以上の回旋位となっているもの
  • 50度以上の屈曲位または60度以上の伸展位となっているもの
  • 側屈位となっており、レントゲンなどによって、矯正位の頭蓋底部両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上斜位となっているもの

変形障害の各等級の基準は細かく定められており、レントゲン撮影の1種であるコブ法など、測定方法もしっかり定められています。

適切な等級での認定をしてもらうためにも、何級の認定を受けられそうかあらかじめ確認し、立証に必要な検査を受けましょう。

腰椎破裂骨折の後遺障害等級認定基準は、複雑でわかりにくいため、弁護士に相談することをお勧めします。

アトム法律事務所では、後遺障害申請の実務経験豊富な弁護士も在籍しています。

変形障害の後遺障害申請にお悩みの際にも、お気軽にお問い合わせください。

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腰椎破裂骨折の慰謝料相場と計算方法

腰椎破裂骨折の慰謝料の相場

腰椎破裂骨折の慰謝料相場は、110万円〜1,180万円です。

後遺障害慰謝料の相場(抜粋)

等級自賠責基準弁護士基準
6級512万円(498万円)1,180万円
8級331万円(324万円)830万円
11級136万円(135万円)420万円
12級94万円(93万円)290万円
14級32万円(32万円)110万円

*()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用

腰椎破裂骨折の慰謝料の計算方法

後遺障害慰謝料は、自賠責基準(加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準)や弁護士基準(弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準)など慰謝料算定に用いる基準によって異なる金額が算定されます。

たとえば、腰椎破裂骨折による運動障害で、後遺障害8級2号に認定された場合、自賠責基準では後遺障害慰謝料が331万円(324万円)になる一方、弁護士基準では830万円となります。

加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準である任意保険基準は、自賠責基準に少し上乗せした金額であるものの、弁護士基準よりも低い価格となります。

加害者側の保険会社から提示される示談金は、あくまで任意保険基準に基づいた金額となっております。

弁護士基準に基づくより高額な慰謝料を支払ってもらうためには示談金の交渉をしていくことになります。

入通院慰謝料の請求

後遺障害認定の有無にかかわらず、交通事故で腰椎破裂骨折を負った際には入通院慰謝料を請求することもできます。

入通院慰謝料とは?

被害者が交通事故の怪我の治療として、手術・治療・検査・リハビリなどのために入通院をしなければならなかった精神的苦痛を緩和するために支払われる金銭。傷害慰謝料と呼ばれることもある。

慰謝料以外にも、治療費や休業損害など他にも請求できる費用や損害もあります。

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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