第12胸椎圧迫骨折の後遺症|後遺障害の認定等級を解説
第12胸椎圧迫骨折は、胸椎のひとつである第12胸椎がつぶれるように骨折した状態で、腰から背中にかけての痛みや腫れ、下肢の痛みやしびれ、変形などの症状が生じることがあります。
第12胸椎圧迫骨折の後遺症として、変形障害、運動障害、荷重機能障害、神経症状を負った場合、後遺障害認定を受けられる可能性があります。
ただし、適正な相場金額での慰謝料を受け取るためには相手側の保険会社との示談交渉を要することもあります。
今回は、第12胸椎圧迫骨折の後遺症について、症状、治療の他、認定される後遺障害等級と各等級の慰謝料の相場を解説いたします。
第12胸椎圧迫骨折とは?
第12胸椎圧迫骨折とは?
第12胸椎圧迫骨折とは、背骨である胸椎のうち、上から12番目、みぞおちの裏の骨が圧迫、つぶれるように骨折した状態のことです。
背骨にあたる脊椎は、大きく分けて頸椎、胸椎、腰椎の3つに分けられます。
脊椎のひとつである胸椎は、脊椎の中央に位置し、12個の椎骨によって構成されています。第12胸椎は、12番目の椎骨にあたる部分です。
圧迫骨折は、おなか側の椎体がつぶれるように折れてしまっている状態です。
おなか側だけでなく、背中側、骨折が神経に接する部分にまで及んでいる場合は、破裂骨折にあたります。
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第12胸椎圧迫骨折の症状
第12胸椎圧迫骨折の症状として、腰から背中にかけての痛みや腫れ、下肢の痛みやしびれ、変形などが生じることがあります。
第12胸椎圧迫骨折の原因
第12胸椎圧迫骨折の原因は、交通事故や労災事故などで強い力が外から加わったことが考えられます。
たとえば、バイク事故で転倒した際に背中を強く打ち付けて第12胸椎圧迫骨折を負うことが考えられます。
第12胸椎圧迫骨折の治療
第12胸椎圧迫骨折を負った場合、骨折の程度が比較的軽ければ、コルセットなどの保存的治療が行われることになります。
2〜3ヶ月程度で骨折部位が結合して痛みも緩和することでリハビリを始めることができるケースが多いです。
ただし、骨折の程度が重かったり、症状が改善しない場合は、手術が行われることもあります。
具体的には、椎体にバルーンと骨セメントを挿入するバルーン・カイフォプラスティー(BKP)や骨折した骨にスクリューなどの金属を埋め込み固定する椎体除圧固定術などの方法があります。
第12胸椎圧迫骨折の後遺症と後遺障害慰謝料
第12胸椎圧迫骨折による後遺症とは?
第12胸椎圧迫骨折の後遺症として、変形障害、運動障害、荷重機能障害、神経症状を負った場合、後遺障害認定を受けられる可能性があります。
後遺障害等級の認定を受ければ、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができるため、慰謝料や示談金を増額させることができます。
第12胸椎圧迫骨折の後遺症(1)変形障害
第12胸椎圧迫骨折の後遺症として、変形障害を負った場合、後遺障害6級5号、8級相当、11級7号に認定される可能性があります。
変形障害による後遺障害等級の認定を受ければ、後遺障害慰謝料として420万円〜1,180万円を請求することができます。
変形障害とは、圧迫骨折によって胸椎の変形が起こり、そのまま症状固定となってしまった状態のことです。
変形障害の後遺障害等級の認定基準
等級 | 後遺障害 慰謝料額 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの 1,180万円 |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの 830万円 |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの 420万円 |
後遺障害6級5号の認定基準
後遺障害6級5号の「脊柱に著しい変形を残すもの」とは、X線写真等により、脊椎圧迫骨折を確認することができる場合であって、以下のいずれかの条件にあてはめる状態を指します。
- 脊椎圧迫骨折等により2個以上の椎体のおなか側の椎体の高さが著しく減少し、後彎(脊椎の背中側が曲がる、背中が丸くなる)が生じているもの
- 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法(X線写真で脊柱の湾曲を調べる計測方法)による側彎(脊椎が横方向に曲がる)度が50度以上となっているもの
後遺障害8級相当の認定基準
後遺障害8級相当の「脊柱に中程度の変形を残すもの」とは、X線写真等により脊椎圧迫骨折等を確認することができる場合であって、以下のいずれかの条件にあてはまる状態を指します。
- 脊椎圧迫骨折等により1個以上の椎体の前方椎体高が減少し、後彎が生ずるとともに、コブ法による側彎度が50度以上となっているもの
- コブ法による側彎度が50度以上であるもの
- 環椎(第一頚椎)または軸椎(第二頚椎)の変形・固定(環椎と軸椎の固定術が行われた場合も含む)により、次のいずれかに該当するもの
- 60度以上の回旋位となっているもの
- 50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
- 側屈位となっており、X線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
後遺障害11級7号の認定基準
後遺障害11級7号の「脊柱に変形を残すもの」とは、以下のいずれかの条件にあてはまる状態を指します。
- 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
- 脊椎固定術が行われたもの(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除く)
- 3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けたもの
第12胸椎圧迫骨折の後遺症(2)運動障害
第12胸椎圧迫骨折の後遺症として運動障害が残った場合、後遺障害6級5号、8級2号に認定される可能性があります。
運動障害の後遺障害等級が認定された場合、後遺障害慰謝料として830万円〜1,180万円を請求できます。
運動障害とは、胸椎の圧迫骨折が原因で首や背中が曲がりにくくなり、そのまま症状固定となってしまった状態のことです。
運動障害の後遺障害等級の認定基準
等級 | 後遺障害 慰謝料額 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの 1,180万円 |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの 830万円 |
後遺障害6級5号の認定基準
後遺障害6級5号の「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは、以下のいずれかの条件にあてはまって、頸部及び胸腰部が強直(脊椎が固くなり、可動域制限が起こること)したものをいう。
- 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
- 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
後遺障害8級2号の認定基準
後遺障害8級2号の「脊柱に運動障害を残すもの」とは、以下の条件があてはまる状態を指します。
- 次のいずれかにより、頸部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度(可動域の正常値)の1/2以下に制限されたもの
- 頸椎又は胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
- 頸椎又は胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
- 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
- 頭蓋・上位頸椎間に著しい異常可動性が生じたもの
第12胸椎圧迫骨折の後遺症(3)荷重機能障害
第12胸椎圧迫骨折の後遺症として荷重機能障害が残った場合、後遺障害6級、8級に認定される可能性があります。
荷重機能障害の後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料として830万円〜1,180万円が請求できます。
荷重機能障害とは、圧迫骨折が原因で脊椎の頭や腰を支える機能が削がれ、硬性補装具が必要になった状態のことです。
荷重機能障害の後遺障害等級の認定基準
等級 | 後遺障害 慰謝料額 |
---|---|
6級相当 | 荷重機能の障害の原因が明らかに認められる場合であって、頸部及び腰部の両方の保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの 1,180万円 |
8級相当 | 荷重機能の障害の原因が明らかに認められる場合であって、頸部又は腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とするもの 830万円 |
6級及び8級の等級認定の前提となる「荷重機能の障害の原因が明らかに認められる」状態とは、脊椎の圧迫骨折や脱臼、筋肉の麻痺または項背腰部軟部組織の明らかな器質的変化が存在することを、X線写真などで確認できる状態を指します。
第12胸椎圧迫骨折の後遺症(4)神経症状
第12胸椎圧迫骨折の後遺症として神経症状が残った場合、後遺障害12級13号、14級9号に認定される可能性があります。
神経症状によって後遺障害認定を受けた場合、後遺障害慰謝料として110万円〜290万円を請求することができます。
神経症状とは、交通事故によって痛みやしびれなどが残った状態を指します。
神経症状の後遺障害等級の認定基準
等級 | 後遺障害 慰謝料額 |
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12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの 290万円 |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの 110万円 |
後遺障害12級13号の認定基準
12級13号は、障害の存在が他覚的にわかる場合、具体的には、CTやMRIなどの画像診断でむちうち症の後遺症の存在が医学的に証明できる場合に認定されます。
後遺障害14級9号の認定基準
また、画像検査で神経症状の存在が明らかにならなかったとしても、神経学検査の結果から痛みやしびれがあるといえる場合には14級9号に認定されます。
認定されても相場の後遺障害慰謝料は支払われない?
たとえ、後遺障害等級の認定を受けたとしても、示談交渉をしなければ、相手側の保険会社から提示される後遺障害慰謝料は相場の金額を下回るおそれがあります。
各後遺障害の認定基準で示した後遺障害慰謝料の金額は、あくまで弁護士基準、弁護士や裁判所が用いる基準を用いた場合の算定額です。
実際に、任意保険会社が提示する金額は、任意保険基準と呼ばれる、それぞれの保険会社独自の基準での算定額であり、弁護士基準よりも低い価格に設定されています。
- 自賠責基準:加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。被害者に対する最低限の補償をすることを目的としていることから、最低限の金額となる
- 任意保険基準:加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い
- 弁護士基準(裁判基準):弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準
3つの基準の中でも弁護士基準は、過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準であり、被害者が受け取るべき適正な金額といえます。
相場金額で慰謝料を受け取るためには、保険会社から示談金の提示を受けてもそのまま受け入れず、示談交渉をしていくことになります。
しかし、なるべく支払い額を抑えようとする保険会社との交渉はそう簡単ではありません。
弁護士に依頼すれば、法的根拠に基づいて説得力のある主張をしてもらい、慰謝料を増額させる可能性が上げられます。
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第12胸椎圧迫骨折の逸失利益
第12胸椎圧迫骨折による後遺障害認定を受けた場合、逸失利益を請求できます。
逸失利益とは、不法行為がなければ本来、得られたはずの利益のことです。
今回の場合、不法行為である交通事故がなければ、後遺障害なく働いて十分に得られたはずの利益を請求することができます。
ただ、逸失利益はその性質上、かなりの高額になるケースもあることから、後遺障害慰謝料と同じく保険会社が低く見積もって金額を提示してくることもあります。
弁護士に依頼すれば後遺障害認定の申請手続き、後遺障害慰謝料の請求とあわせて逸失利益の請求も進めてもらえます。
第12胸椎圧迫骨折の慰謝料
第12胸椎圧迫骨折の入通院慰謝料
第12胸椎圧迫骨折を治療した場合、後遺障害等級の認定に関係なく、入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料とは、交通事故で入通院を余儀なくされるほどのケガによる精神的苦痛に対する賠償金です。
入院をして治療したケースの方が、通院のみで治療したケースよりも高額となります。
また、入通院による治療期間が長ければ、慰謝料も増額されます。
治療費・休業損害など|慰謝料以外に請求できる金銭
慰謝料の他にも、治療費や休業損害といった請求できる費用・損害があります。
請求する金銭がそれぞれ適正な金額か、増額の余地はないか、漏れがないように検討した上で示談しましょう。
弁護士にご依頼いただければ、各損害についても入念にチェックしてもらったうえで示談交渉をしてもらえます。
第12胸椎圧迫骨折の後遺症は弁護士に相談
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第12胸椎圧迫骨折の後遺障害認定や慰謝料請求については、弁護士に相談してみましょう。
適正な慰謝料額がいくらになるのか、見込みの金額を聞いてみるだけでも今後の示談での交渉材料を得られることがあります。
法律事務所によっては無料で相談を受け付けていますので、積極的に活用してみましょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了