貸宅地の相続税評価はいくら?計算方法と貸家建付地・借地権との違いも解説

貸宅地(かしたくち)とは、土地の所有者が他人に貸しており、借りている人が建物を建てている宅地のことです。
貸宅地の相続税評価額は、原則として「自用地評価額 ×(1 - 借地権割合)」で計算します。 土地を貸している分、土地の所有者が自由に使えないため、相続税評価額は自用地よりも低くなります。
たとえば、自用地(他人に貸していない土地)なら5,000万円と評価される土地でも、貸宅地になると評価額が2,000万円まで下がります。
ただし、地代の水準(相当の地代に該当するか等)・契約内容(無償返還届出書の有無等)・借地権の種類(普通借地権か定期借地権か)によっては、評価方法が異なる場合があります。
この記事では、貸宅地とは何かの解説から、自用地・貸家建付地・借地権との違い、地代の水準や契約内容ごとの評価方法まで、体系的に解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
貸宅地とは?
貸宅地の概要
貸宅地(かしたくち)とは、借地人(土地を借りている人)が建物を所有する目的で土地を借りている宅地のことです。
借地人が土地を使う権利(借地権)を持っている分、土地の所有者が利用を制限されるため、自用地(他人に貸していない所有者自らが使用する土地)と比べて相続税評価額が下がります。

借地権との違い
貸宅地と借地権の違いは、借地権が「権利」であるのに対し、貸宅地は「宅地(土地)そのもの」であるという点です。
- 貸宅地:借地権の目的となっている宅地そのもの
- 借地権:借地人が持つ、建物所有を目的とした土地の権利
相続税評価の計算方法も異なり、貸宅地は自用地評価額から借地権相当額を差し引いて求めるのに対し、借地権は自用地評価額に借地権割合を乗じて求めます。そのため、以下の関係が成り立ちます。
貸宅地の評価額 + 借地権の評価額 ≒ 自用地の評価額
借地権の評価方法については、以下の関連記事で詳しく解説しています。
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自用地との違い
貸宅地と自用地の違いは、その土地に借地権が設定されているかどうかです。
| 区分 | 土地の内容 | 相続税評価額の求め方 |
|---|---|---|
| 自用地 | 所有者が自由に利用できる土地 | 路線価方式(※地形に応じて補正率を利用)もしくは倍率方式で求める |
| 貸宅地 | 借地人が建物を所有する目的で借りている宅地(借地権が発生) | 自用地評価額から借地権相当額を差し引いて求める |
貸宅地には借地権が設定されている分、土地の所有者による自由な利用や処分が制限されるため、自用地よりも評価額が減額されます。
貸家建付地との違い
貸宅地と貸家建付地の違いは、「その土地の上の建物を誰が所有しているか」という点です。
貸宅地は建物の所有者が借地人であるのに対し、貸家建付地では建物の所有者が土地の所有者自身です。つまり、他人の建物のために土地を貸しているか、自分の建物を人に貸しているか、という点で大きく異なります。
たとえば、自分の土地にアパートを建てて賃貸経営をしている場合は貸家建付地であり、貸宅地ではありません。
相続税評価額の計算式も「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」と、貸宅地の「自用地評価額×(1-借地権割合)」とは異なるため、混同しないように注意しましょう。
| 区分 | 誰が建物を建てるか | 貸しているもの | 典型例 |
|---|---|---|---|
| 貸宅地 | 借地人 | 土地 | 借りた土地に借地人が自分の家を建てて住んでいる |
| 貸家建付地 | 土地の所有者 | 建物 | 土地の所有者が自分の土地に、アパートやマンションを建てて賃貸している |
貸家建付地の詳しい評価方法や小規模宅地等の特例との関係については、以下の記事をご覧ください。
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貸家建付地とは?相続税評価額の計算や小規模宅地等の特例との併用を解説
貸宅地の相続税評価額は?
貸宅地の相続税評価額の計算式
通常の普通借地権が設定されている貸宅地の評価額は、次の計算式で求めます。
貸宅地の評価額
貸宅地の評価額 = 自用地評価額 ×(1 - 借地権割合)
①自用地評価額
路線価方式または倍率方式で計算した、その土地本来の評価額です。
- 路線価方式の評価額=路線価×地積
- 倍率方式の評価額=固定資産税評価額×評価倍率
必要に応じて、補正率をかけることもあります。
路線価方式を使うか倍率方式を使うかを判断したり、路線価・評価倍率を調べたりする際には、国税庁が公表している「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」を使います。
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②借地権割合
その土地が所在する地域ごとに、国税庁が定めている割合です。借地権(土地を借りる権利)の価値が、土地の価値全体に対してどのくらいの割合を占めるかを示します。
借地権割合は、国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で確認できます。
路線価図では数字の後にアルファベット(A~G)が記載されており、このアルファベットが借地権割合に対応しています。
| 記号 | 借地権割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
評価倍率表では、「借地権割合」の欄にそのままパーセンテージが示されています。
都市部では60~70%、地方では30~50%程度となることが多いです。
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具体的な計算例
次の条件で計算してみましょう。
| 条件 | 数値 |
|---|---|
| 自用地評価額 | 5,000万円 |
| 借地権割合 | 60%(記号D) |
貸宅地の評価額 = 5,000万円 ×(1 - 0.6) = 2,000万円
自用地のままであれば5,000万円と評価されるところ、借地権が設定されていることで2,000万円に下がります。差額の3,000万円分相続税の課税価格が軽減されるため、相続税の負担軽減につながります。
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定期借地権が設定されている貸宅地の評価
定期借地権とは、契約期間が満了すると更新されずに終了する借地権のことです。
貸主に正当な理由がない限り契約が更新され続ける「普通借地権」とは異なり、期間満了とともに契約が終了する点が最大の特徴です。
この定期借地権が設定されている場合は、普通借地権とは評価方法が異なります。
次の2つの計算式で求めた金額のうち、原則いずれか低い方の金額で評価します。
- 自用地評価額 - 定期借地権等の価額
- 自用地評価額 - 自用地評価額 ×(残存期間に応じた割合)
| 残存期間 | 残存期間に応じた割合 |
|---|---|
| 5年以下 | 5% |
| 5年超10年以下 | 10% |
| 10年超15年以下 | 15% |
| 15年超 | 20% |
出典:国税庁タックスアンサー No.4613(貸宅地の評価)
なお、定期借地権のうち一般定期借地権については、課税上弊害がないと認められる場合に別の評価方法が用いられることがあります。
また、一時使用目的の借地権についても雑種地の賃借権に準じた計算方法が別途定められています。
このように、定期借地権等の価額そのものの算定は契約条件によって計算が複雑になるため、税理士へのご確認をおすすめします。
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定期借地権の相続税評価とは?借地権・底地ごとの計算方法を解説
使用貸借(無償で土地を貸している場合)の扱い
親族間などで土地を無償あるいは固定資産税等(公租公課)未満の非常に低額な地代で貸している場合は、「使用貸借」という扱いになります。
使用貸借の場合、借地権が発生しないため、貸宅地としての評価減は適用されず、自用地として評価されます。たとえば、子どもに無償で土地を貸し、その土地に子どもが家を建てているようなケースが該当します。
なお、地代の支払いがなくても、権利金など地代に代わる経済的利益のやり取りがある場合は使用貸借に該当しません。
また、後述する「無償返還届出書」は、法人が関係する土地の貸借について、契約終了時に土地を無償で返還する旨を税務署に届け出る制度です。地代を受け取っている場合に限られるものではなく、使用貸借に係る土地について提出されている場合もあります。
相当の地代を収受している貸宅地の評価
地代の金額によって評価方法が変わることがあります。特に法人に土地を貸しているケースでは、「相当の地代」という概念が重要になります。
相当の地代とは
相当の地代とは、自用地価額のおおむね年6%程度を目安とした地代のことを指します。これは、権利金(借地権の設定の対価としての一時金)を受け取らずに土地を貸す場合に、地代を高く設定することで権利金に代えるという考え方に基づく通達上の概念です。
ただし、6%はあくまで目安であり、地域性・契約内容・権利金授受の有無等を踏まえた個別判断が必要です。
相当の地代を受け取っている場合の評価
相当の地代を受け取っているケース(主に権利金を授受せず法人に土地を貸し付けている場合等)では、借地人が地代を通じて借地権相当の対価をすでに支払っているとみなされます。そのため、借地人が保有する借地権の価額はゼロとして評価されます。
この取り扱いが適用される場合、貸宅地の評価額は次のようになります。
(参考)相当の地代を受け取っている貸宅地の評価額
相当の地代を受け取っている貸宅地の評価額 = 自用地評価額 × 80%
ただし、この評価方法は契約内容(権利金の有無・無償返還の定めの有無など)や通達上の適用要件によって結論が変わります。単純に地代水準だけで一律に決まるものではないため、実際の申告にあたっては専門家への確認をおすすめします。
具体的な計算例
次の条件で計算してみましょう。
| 条件 | 数値 |
|---|---|
| 自用地評価額 | 5,000万円 |
| 借地権割合 | 60%(記号D) |
| 地代の水準 | 相当の地代(自用地価額の年6%程度)に該当すると判断されたとする |
相当の地代を受け取っている土地の評価額(参考値)= 5,000万円 × 80% = 4,000万円相当の地代を受け取っていない通常の貸宅地(借地権割合60%のケースで2,000万円)よりも、高い評価額になります。
無償返還届出書が提出されている場合
無償返還届出書とは、土地の貸借契約が終わったときに、借地人が土地を無償で返還する旨を税務署に届け出る書類です。権利金を受け取らず、地代が相当の地代に満たない場合でも、一定の要件を満たして届出を行うことで、権利金の認定課税を回避できます。
具体的には、法人に土地を貸している場合(特にオーナー社長が自社に土地を貸しているケースなど)、無償返還届出書を税務署に提出していることがよくあります。
また、無償返還届出書が提出されている土地は、賃貸借に当たる場合、原則として自用地評価額の80%で評価します。一方、使用貸借に当たる場合は、自用地として評価します。そのため、届出書の有無だけでなく、実際の貸借関係を確認する必要があります。
相続税申告での誤りが生じやすい部分であるため、この届出書が提出されている土地を相続した際は専門家へ相談することをおすすめします。
貸宅地と小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)
貸付事業用宅地等の概要
貸宅地は「貸付事業用宅地等」に該当し、要件を満たせば小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)を適用して評価額を200㎡まで50%減額できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 被相続人が貸付事業(不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業およびこれらに類する準事業)に使っていた土地 |
| 限度面積 | 200㎡まで |
| 減額割合 | 50%減額 |
なお、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等は原則として対象外となります(※被相続人等が相続開始前3年を超えて引き続き特定規模の貸付事業を行っていた場合を除く)。
また、使用貸借(地代ゼロ)の土地は貸付事業用宅地等には該当しません。地代を受け取っていることが適用の前提条件となります。
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小規模宅地等の特例とは?要件・計算方法をわかりやすく解説【フローチャート付き】
貸宅地の相続税評価でよくある疑問
Q.無償で土地を貸していた場合は、どう評価されますか?
地代を受け取らずに無償で土地を貸している場合は「使用貸借」となり、借地権が発生しません。そのため、借地権による評価減は適用されず、自用地と同じ評価額になります。
親子や親族間で、無償または固定資産税相当額未満のごく少額の地代で土地を貸しているケースは、使用貸借に該当することが多いため注意が必要です。
地代の水準や契約内容による判断となるため、個別のケースの判断は専門家への確認をおすすめします。
Q.一つの土地を複数の借地人に貸している場合はどのように評価しますか?
一つの土地を複数の借地人に分割して貸している場合は、借地人が借りている範囲ごとに区画を分け、個別に評価を行います。
これは同じ一つの土地であっても、区画ごとに土地の形状が違ったり、面している道路の路線価が異なったりするためです。
Q.貸宅地は相続後に売却できますか?
貸宅地を相続したあとに売却することは可能です。ただし、「小規模宅地等の特例」を利用する場合は注意が必要です。特例を適用するには相続税の申告期限(相続開始から10か月)まで土地を保有し続ける必要があるため、期限前に売却すると特例が使えなくなるおそれがあるからです。
また、申告期限を過ぎたあとの売却であれば特例への影響はありませんが、貸宅地は借地権が設定されているため、自由に売却や活用がしづらく、流動性の低い資産といわれています。売却する際は「借地人に買い取ってもらう」か「第三者へ売却」することになりますが、売却価格は評価額より低くなる傾向があります。
貸宅地の評価は税理士への相談をおすすめします
貸宅地の相続税評価は、「誰に・どんな契約で」貸しているかによって、計算方法が大きく変わります。
特に以下のようなケースは、判断が難しく、申告誤りが生じやすい場面です。
- 相当の地代や無償返還届出書が関係する貸し付け
- 法人(同族会社)への土地の貸し付け
- 定期借地権が設定されている土地
- 複数の借地人がいる土地
- 小規模宅地等の特例を適用したい土地
評価を誤ると、相続税の過大申告・過少申告につながるリスクがあります。 貸宅地を含む相続税申告は、不動産評価に精通した税理士へのご相談が安心です。

監修者
アトム相続税理士事務所
税理士岡野誠治
2022年税理士試験合格 2023年税理士登録
相続税専門の税理士法人に3年以上勤務し、約100件の相続税申告に携わりました。
相続税のご相談は、大切なご家族を亡くされた後という、心身ともに大変な時期に直面されるケースがほとんどです。
専門的な知識はもちろん、寄り添う姿勢を大切に、一つひとつの案件に丁寧に向き合うことを心がけています。
