遺言執行者を選任するメリット|税理士等に依頼した場合の報酬も解説

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遺言執行者を選任

遺言書を作成する場合、遺言内容がきちんと実現されるかどうか不安ですよね。

そのような方にぜひ知っていただきたいのが「遺言執行者」の存在です。遺言執行者を選任しておけば、遺言内容の適切・迅速な実現が期待できます。

この記事では、遺言執行者を選任するメリットや、報酬についてわかりやすく解説します。

遺言執行者とは?

遺言執行者の概要

遺言執行者とは、遺言の内容を実現することを職務として選任された者を意味します。

遺言執行者は、相続財産を調査して、それらを適切に管理します。

そして、最終的には遺言に基づき相続財産を相続人などに引き渡します。

遺言執行者を選任するメリット

遺言執行者を選任するメリットは、遺言内容を適正かつ迅速に実現できる点にあります。

もし遺言執行者がいなければ、相続人全員で遺言を実現することになります。

しかし、遺言内容が相続人の利害対立を生むものであった場合、遺言の実現までには相当な労力と時間がかかるでしょう。

また、遺言が相続人以外の者へ遺贈するという内容だった場合も、相続人の協力を得られず、いつまで経っても遺言内容が実現しないおそれがあります。

このような事態を避けるため、法律は「遺言執行者」を定め、遺言内容を適切に実行できるようにしています。

弁護士、司法書士、税理士など専門的第三者が遺言執行者になれば、相続人の一部が勝手に相続財産を使ってしまったり、売却してしまうといった相続トラブルの回避が可能です。

遺言執行者になる資格がある人・ない人

①遺言執行者になる資格がある人

遺言執行者は、下記②以外の者であれば特に制限はありません。

例えば、以下に掲げる人も遺言執行者になることができます。

●法人(信託銀行が遺言執行者に就任する場合など)

●相続人

●受遺者

②遺言執行者になる資格がない人

●未成年者

●破産者

遺言執行者の指定・選任方法

遺言執行者を指定・選任する方法は、以下の2つです。

①遺言によって指定する方法

・遺言者は、遺言書で、1人または数人の遺言執行者を指定することができます。

・遺言者は、遺言書で、遺言執行者の指定を第三者に委託することができます。

例えば、「遺言執行者は〇〇が指定する」という条項を遺言書に記載しておきます。

②家庭裁判所によって選任する方法

・遺言者が遺言執行者を指定または第三者に指定の委託をしなかったとき等は、利害関係人の請求によって、家庭裁判所が遺言執行者を選任できます。

・利害関係人とは、相続人、受遺者、相続債権者等、遺言の執行に関して法律上の利害関係を有する者を意味します。

遺言執行者の職務内容

遺言執行者の主な職務を時系列に沿って並べると、以下のとおりです。

①遺言書の確認

・遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。遺言執行者は、相続人、法務局、公証役場等に問い合わせ、遺言書を探します。

②遺言書の有効性の確認

・遺言執行者は、遺言書は法律に規定された方式を備えているか、遺言の撤回はないか等を確認します。

③遺言書の検認

・自筆証書遺言(法務局において保管されている遺言を除く)と秘密証書遺言が発見された場合、家庭裁判所において検認を受ける必要があります。

④相続人等の調査

・遺言執行者は、戸籍関係書類を取り寄せ、相続人を調査します。

・受贈者や受遺者がいないかも確認します。

⑤相続人への就任の通知

・遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言内容を相続人に通知しなければなりません。

⑥相続財産の調査

⑦相続財産の管理

・遺言執行者は、不動産の所有権移転登記手続を行います。

・不動産の不法占有者に対し、引渡しを求めることもできます。

・預貯金口座の解約を行い、相続人等への引渡しまで金銭を保管します。

・株式の名義変更も行います。

⑧財産目録の作成

・遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、これを相続人に交付しなければなりません。

⑨遺言の執行

・遺言に基づき、相続財産を相続人等へ引き渡します。

⑩相続トラブルへの対処

・遺言執行者は、相続人が提起した遺言無効確認訴訟等に対応します。

⑪遺言執行業務の終了

・遺言執行が完了した場合、遺言執行者は、相続人及び受遺者に対し、任務完了の通知を行います。

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遺言執行者の報酬とは?

遺言執行者の費用・報酬

遺言執行の費用は、相続人が相続財産の中から負担します。

「遺言執行の費用」には、具体的には以下のものが含まれます。

・遺言書の検認費用
・相続財産目録の作成費用
・相続財産の管理費用
・遺言執行者への報酬
・遺言執行に関連する訴訟費用
・遺言執行者が立て替えて支払った費用
など

遺言執行者の報酬支払い時期

遺言執行者の報酬は後払いで、遺言執行の職務がすべて終了したときに支払われます。

実務上、遺言執行者が相続財産を管理している場合、遺言執行者は、報酬その他の遺言執行費用を差し引いて、その残額を相続人に引き渡すという清算方法がとられています。

遺言執行者の報酬の決め方

遺言執行者の報酬の決め方は、以下の3つです。

①遺言者が、遺言で遺言執行者の報酬額を定めたときはその額に従います。

②遺言に定めがない場合、遺言執行者は、相続人及び受遺者全員で協議して報酬額を決めることができます。

遺言執行者の報酬について遺言書に明記されていない場合、遺言執行者が任務に着く段階で相続人らと話し合い、報酬額や報酬の支払い方法等について合意しておくのが安心です。

③遺言に定めがない場合、遺言執行者は、家庭裁判所に対し、報酬付与の審判の申し立てをすることができます。

遺言執行を専門家に依頼する場合の報酬相場

ここでは、「弁護士」「司法書士」「税理士」に遺言執行者を依頼する場合の報酬相場をご紹介します。

併せて、各専門家に依頼するのが適切なケースもお伝えします。

①弁護士

【報酬相場】

弁護士報酬は、従来、弁護士報酬等基準規程に従って決められていました。しかし、同規程は平成16年に廃止され、弁護士報酬は自由化されました。

もっとも、現在でも弁護士報酬は、旧日弁連報酬等基準規程に従って決めている事務所が多く存在します。

同規程によると、遺言執行者の報酬基準額は以下のとおりです。

経済的な利益の額弁護士報酬額
300万円以下30万円
300万円を超え3,000万円以下2%+24万円
3,000万円を超え3億円以下1%+54万円
3億円を超える0.5%+204万円

【依頼が適切なケース】

「遺産分割協議がまとまらない」「遺言書の内容に不満がある相続人がいる」など、相続トラブルが発生しているまたは発生する可能性がある場合は、弁護士へ依頼するのが適切です。

家庭裁判所での調停や審判などが必要なケースも弁護士を代理人とした方が、法的アドバイスを受けながら適切な主張が行えるでしょう。

②司法書士

【報酬相場】

司法書士の場合、弁護士報酬のような基準はありません。報酬相場としては、20万円〜60万円程度です。

【依頼が適切なケース】

相続財産に不動産が多い場合、相続登記の手間がかかるため司法書士に依頼するのが適切です。

また、相続人の数が多い場合、戸籍謄本の取り寄せ、相続人全員への連絡、遺産分割協議、相続登記をご自分ですべて行うのは大きな負担です。

このような場合も、司法書士に依頼すれば、戸籍謄本の収集から任せられるので負担が軽くなります。

③税理士

【報酬相場】

税理士の場合も、弁護士報酬のような基準はありません。報酬相場としては、20万円〜80万円程度です。

【依頼が適切なケース】

相続税が発生する可能性があるケースでは、遺言執行の段階から税理士に依頼するのが適切です。

相続税が発生するかどうか気になる方は、『相続税額をシミュレーションできる計算方法を解説!』を参考に、ぜひ一度試算してみてください。

また『税理士報酬シミュレーター』もご参考ください。

税理士に遺言執行を依頼するメリットについては、次の項で詳しくご紹介します。

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遺言執行者を税理士に依頼するメリット

相続税申告をスムーズに行える

税理士に遺言執行を依頼すれば、相続税申告をスムーズに行える点が大きなメリットです。

一方、他の専門家に遺言執行を依頼すると、相続税申告をあらためて税理士に依頼しなければならず二度手間になってしまいます。

さらに、税理士が関与した相続税申告は、相続人ご本人が申告した場合に比べ、税務調査のリスクが大幅に下がるメリットもあります。

相続税の節税対策も相談できる

早い段階から税理士に依頼しておくと、相続税の節税対策ができる点も大きなメリットです。

典型的な節税対策は、生前贈与を活用して相続財産を減らす方法です。また、生命保険の非課税枠を活用した節税方法も有効です。

最適な節税対策は、資産状況や被相続人の年齢等によって様々です。ご自分に適した節税対策がお知りになりたい方は、税理士に直接相談するのがおすすめです。

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相続税を減額できる特例・控除の適用要件

遺産分割協議に役立つアドバイスをもらえる

遺産分割協議を円滑に行うポイントは、相続財産の適切な評価です。

相続専門の税理士は、豊富な知識と経験を生かし、相続財産の適切な評価を行います。

その上で、公正な分配を実現できる遺産分割案をアドバイスします。

専門的第三者のアドバイスがあれば、感情的な対立を回避でき、遺産分割が円滑に進むことが期待できます。

他の専門家と連携して相続手続きをサポート

弁護士や司法書士など他の専門家と連携している税理士に依頼すれば、より大きなメリットが得られます。

上述のとおり、各専門家への依頼が適切なケースは異なります。

税理士、弁護士、司法書士が連携している事務所に依頼すれば、相続手続きに関連する問題をワンストップで解決することが可能です。

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アトムグループ 協力税理士

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