合同会社の持分は相続できる?相続税評価の方法と相続対策を解説

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合同会社のオーナー(社員)が亡くなった場合、その「持分」は定款により相続できる旨が定められている場合には相続の対象となります。

持分が相続ができない場合は、払戻請求権を相続することとなるのです。

相続できる場合の評価額の計算方法や、払い戻しが認められる金額などについてしっかりと理解しておくことが大切になります。

この記事では、合同会社の持分相続の基本的な仕組みから相続税評価の方法、相続の際によくあるトラブル、そして相続対策としての合同会社の活用まで、わかりやすく解説します。

合同会社の持分とは?株式会社との違い

合同会社は、日本の会社法に基づいて設立できる法人形態のひとつです。

出資者は「社員」と呼ばれ、その社員としての地位(出資に基づく権利・義務のまとまり)を「持分」といいます。

株式会社の「株式」と混同されがちですが、持分と株式はまったく別の概念です。主な違いを整理すると、次のとおりです。

比較項目合同会社の持分株式会社の株式
出資者の呼称社員株主
地位の分割原則として自由に分割できない株数単位で売買・分割できる
譲渡の自由他の社員全員の同意が必要原則として自由(定款で制限可)
相続の扱い定款の記載内容によって大きく異なる原則として当然に相続人へ承継
経営への参加社員は原則として全員が業務執行権を持つ株主は出資者として利益配当を受ける立場

このように、合同会社の持分は株式に比べて「人的な結びつき」が強い財産です。

誰でも自由に承継できるわけではなく、定款の内容が相続の行方を大きく左右します。

合同会社の持分は相続の対象になる?

原則として持分は相続の対象にならない

会社法第607条により、原則として持分は相続の対象にはならず、合同会社の定款で相続により承継される旨を定める必要があります。

そのため、原則として死亡した社員は退社扱いとなり、相続人は社員としての地位を引き継ぐのではなく、退社に伴う持分の払い戻しを請求する権利(払戻請求権)を相続することとなるのです。

  • 払戻請求権=(各資産合計額(相続税評価額)-各負債合計額)×出資持分の割合

払戻しを受けても相続人は社員にはなれず、会社の経営に関与することはできません。

合同会社の社員となりたい場合は、別途、社員の加入手続きが必要になります。

払戻請求権を行使する際の注意点

払戻請求権の額が被相続人である社員の出資金額(資本金等の額)を超える部分はみなし配当として、被相続人の所得(総合課税の対象)となります。

相続人は、相続開始日の翌日から4か月以内に被相続人に代わって準確定申告を行う必要があります。また、合同会社側にも源泉徴収義務が生じる点に注意が必要です。

このほかにも、以下のような基準から債権者保護手続きが必要となるケースがある点にも注意してください。

  • 持分払戻額が剰余金額以下の場合:債権者保護手続き不要
  • 持分払戻額が剰余金額を超え、純資産額以下の場合:1か月以上の公告期間が必要(会社法第635条2項)
  • 持分払戻額が純資産額を超える場合:2か月以上の公告期間が必要かつ各別の催告省略不可(会社法第635条3項)

債権者保護手続きの終了までは、払い戻しを受けることができません。

定款に「相続人への承継」条項があるなら相続可能

会社法第608条第1項・第2項から、「社員が死亡した場合、その相続人が持分を承継する」という条項を定款に盛り込むことで、相続人が社員の地位ごと持分を引き継ぐことができます。

この定款の記載の有無が、合同会社の持分相続において最も重要なポイントです。

定款の記載相続人の扱い相続人が受け取るもの
承継条項あり社員の地位を承継する持分(社員権)そのもの
承継条項なし社員にはなれない持分の払戻請求権(財産的価値のみ)

定款が見当たらない場合は、まずは会社の他の社員(業務執行社員など)に確認を求めましょう。それでも確認できず、かつ設立や定款変更の登記から5年以内であれば、法務局に対して登記簿の附属書類として閲覧請求を行える場合があります。

閲覧請求には、社員が死亡した旨を証明する戸籍・社員の相続人であることを証明する戸籍などが必要になります。

閲覧のみでコピーはできないため、撮影のためのカメラを持っていくとよいでしょう。

相続人が複数人いる場合は注意

相続人が複数いる場合(例:配偶者と子ども2人)には注意が必要です。

持分(社員権)は株式のように自由に細分化して流通させる性質ではなく、相続人が複数いると相続開始により共有状態となり、代表者選任・業務執行等の運営に支障が出やすくなります。

定款で承継者を特定していない場合は、誰を社員とするかの調整(定款設計・相続人間の合意・会社への届出等)が必要になります。

合同会社の持分の相続税額を計算する方法

通達に基づいて相続税評価額を決める

相続税を計算するためには、相続した財産の「評価額」を算出する必要があります。

評価額とは、相続税法上の財産の値段のことで、実際の売買価格や帳簿上の金額とは異なる場合があります。

合同会社の持分については、国税庁が定める財産評価基本通達に基づいて評価されるのです。

財産評価基本通達とは、相続税・贈与税の計算において各財産をどのように評価するかを定めた国税庁の内部規定をいいます。

法律そのものではありませんが、税務の実務では事実上の基準として機能しているのです。

合同会社の持分については、財産評価基本通達において「取引相場のない株式の評価方法に準じて評価する」とされています。

つまり、合同会社の持分は「株式」ではありませんが、税務上の評価方法は非上場の株式会社の株式に準じた方法が使われるのです。

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合同会社の持分の相続税評価方法

合同会社の持分は、非上場株式の評価方法に準じて計算します。

具体的には、会社の規模や状況に応じて、以下の3つの方式のいずれか(または組み合わせ)が用いられます。

①類似業種比準価額方式

同業種の上場会社の株価を参考にしながら、「1株あたりの配当金額」「利益金額」「純資産価額」の3つの要素を比較して評価する方法です。

合同会社は株式を発行しませんが、評価上は「1口あたり」の価値として計算します。

一般的に、純資産価額方式よりも評価額が低くなる傾向があるため、大会社・中会社の評価では有利になることがあります。

②純資産価額方式

会社の資産から負債(および含み益に対する法人税等相当額)を差し引いた純資産を基準に評価する方法です。

含み益のある不動産や有価証券を多く保有している会社では評価額が高くなりやすい一方、会社の実態的な価値をそのまま反映しやすい方式です。

小会社や資産管理型の合同会社では、この方式が主に使われます。

③配当還元方式

少数持分(経営に実質的な影響力を持たない少数の持分)を評価する場合に使われる方法です。

過去2年間の実績をもとに1年間の配当金額を算出し、一定の利率(10%)で割り戻して(還元して)計算するため、評価額が低くなりやすい特徴があります。

会社の規模によって評価方式が変わる

どの評価方式を使うかは、会社の規模(従業員数・売上高・総資産額)によって決まります。

会社規模主な評価方式
大会社類似業種比準価額方式(純資産価額方式も選択可)
中会社類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用
小会社純資産価額方式(類似業種比準価額方式との併用も可)
少数持分配当還元方式

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合同会社の持分相続で生じやすいトラブルと注意点

合同会社の持分相続では、株式会社の株式相続とは異なるトラブルが起きやすいです。あらかじめ注意点を把握しておきましょう。

(1)定款を確認していなかったことで混乱が生じる

合同会社の定款は公開されていないため、遺族が定款の内容を把握していないことが多くあります。

相続発生後に初めて定款を確認し、「持分を引き継げない」「払戻しになる」と知ってトラブルになるケースが少なくありません。

オーナーが存命のうちに、定款の内容を家族・後継者と共有しておくことが重要です。

(2)持分の評価をめぐって税務上の問題が生じる

合同会社の持分評価は複雑で、評価方法の選択によって相続税額が大きく変わることがあります。

誤った評価方法で申告してしまうと、後から税務署に指摘され、追加の税金(過少申告加算税など)が課される可能性があります。

適切な評価が行えているかどうかについて、専門家である税理士に相談し、確認してもらうべきでしょう。

(3)相続人が複数いる場合の持分の扱いが難しい

持分(社員権)は株式のように細かく分割して流通させる性質ではないため、相続人が複数いる場合の遺産分割協議で揉めやすいです。

誰が持分を引き継ぐか、他の相続人には代わりに何を渡すかなど、慎重な協議が必要となります。

(4)会社の運営が止まるリスクがある

承継条項がなく、相続人への持分承継ができない場合、特に1人社員の合同会社では社員がいなくなり解散・清算に移行するリスクがあります。

事業を継続するためには、承継条項の整備や後継者を社員として加入させる手続きを事前に整えておく必要があります。

合同会社を活用した相続対策

合同会社は、相続対策ツールとして活用されることがあります。

主に「財産管理型合同会社」の設立という形で活用されますが、メリットとデメリットの両面を正確に理解することが大切です。

財産管理型合同会社による相続対策|メリットとデメリット

不動産や有価証券などの資産を合同会社に出資し、その合同会社の持分を相続財産として扱う方法です。この仕組みを使うことで、次のような効果が期待できます。

主なメリット

  • 評価額の圧縮効果:不動産を直接相続するよりも、合同会社を通じた持分として評価する方が、相続税評価額が低くなる場合がある
  • 所得の分散:資産から生じる所得を所有者だけでなく、合同会社の業務執行社員の報酬として分配することで保有財産を減らし、相続税の負担を軽減できる
  • 名義変更のコストを削減:相続時の所有権移転登記による登録免許税の負担を避けることができる(ただし、法人の社員変更に係る商業登記の費用は別途発生します)
  • 財産の分散管理:複数の相続人に持分を分けることで、財産の共有よりも管理しやすくなることがある
  • 経営権の集中:定款で業務執行社員を指定することで、特定の後継者に実質的な経営権を集中させることができる

主なデメリット・注意点

  • 節税効果は限定的:税務当局は過度な租税回避に対して厳しい姿勢をとっており、評価額の圧縮が否認されるリスクがある
  • 維持コストがかかる:合同会社の設立・維持には費用や手間が伴う
  • 定款設計が重要:定款の記載が不適切だと、想定どおりの相続ができなくなる
  • 相続後の社員トラブル:相続により新たに社員となった人との間で意思統一が取れず、経営が滞る危険性がある

家族信託との比較

「家族信託」とは、特定の目的(例えば「自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付」等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。

合同会社と家族信託は、どちらも財産管理・承継の手段として注目されていますが、性質が異なります。

比較項目財産管理型合同会社家族信託
法的な仕組み法人(会社)として財産を管理信託契約によって財産を管理
設立コスト登録免許税・定款作成費用など信託契約書の作成費用など
認知症対策直接の対応は難しい認知症になっても財産管理を継続できる
相続税への影響持分評価の圧縮効果が期待できる場合あり直接の節税効果は少ない
向いているケース事業・不動産を法人で一元管理したい場合認知症対策・スムーズな財産承継を優先する場合

家族信託による相続税対策に関して詳しく知りたい方は『家族信託で相続税はかかる?相続時の手続きや節税効果も解説』の記事をご覧ください。

合同会社の相続は専門家に相談すべき理由

合同会社の持分相続は、次のような理由から、専門家のサポートが強く推奨される分野です。

  • 定款の解釈が難しい:持分を承継できるかどうかは定款次第であり、条項の解釈によって結論が変わることがある
  • 相続税評価が複雑:評価方式の選択や計算が難しく、誤った方法で申告すると追徴課税のリスクがある
  • 遺産分割の調整が必要:複数の相続人がいる場合、持分の分け方や代償の設定で弁護士・税理士の調整が必要になることが多い
  • 相続対策の設計には高度な専門知識が必要:合同会社の活用による相続対策は、法律・税務・会社法の知識を横断的に理解している専門家でないと適切なアドバイスができない

特に相続税の申告については、合同会社の持分評価の経験豊富な税理士に依頼することが重要です。税理士選びの参考に、以下の記事もご覧ください。

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高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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