合同会社の持分は相続できる?相続税評価の方法と相続対策を解説

合同会社の社員が亡くなった場合、「持分はそのまま相続人に引き継がれる」と思われがちですが、実際にはそうとは限りません。
合同会社では、定款の内容によって「持分そのものを相続する」のか、「持分の払戻請求権を相続する」のかが決まります。また、相続税の評価方法や、相続人が複数いる場合の取り扱いなど、株式会社の株式相続とは異なるルールも数多く存在します。
この記事では、合同会社の持分相続の仕組みや相続税の計算方法、相続時の注意点、合同会社を活用した相続対策までわかりやすく解説します。
目次
合同会社の社員が亡くなったら相続はどうなる?
合同会社の相続は2パターン|確認方法は?
合同会社は、日本の会社法に基づいて設立できる法人形態のひとつです。
出資者は「社員」と呼ばれ、その社員としての地位(出資に基づく権利・義務のまとまり)を「持分」といいます。
合同会社の社員が亡くなった場合の相続として想像されがちなのは「相続人が持分を受け継ぐ」ということですが、実際には以下の2パターンに分かれます。
合同会社の相続
- 原則:持分の払戻請求権(持分の払い戻しを請求する権利)を相続する
- 例外:持分を相続する
どちらに該当するか確認する方法
持分を相続する場合は、合同会社の定款にその旨が記されています。特に記載がなければ、原則に従い持分の払戻請求権を相続します。
よって、会社の他の社員(業務執行社員など)に定款の確認を求めましょう。
それでも確認できず、かつ設立や定款変更の登記から10年以内であれば、法務局に対して登記簿の附属書類として閲覧請求を行える場合があります。
閲覧請求には、社員が死亡した旨を証明する戸籍・社員の相続人であることを証明する戸籍などが必要になります。
閲覧のみでコピーはできないため、メモできるものを持っていくと良いでしょう。撮影が可能かどうかは法務局により異なります。
(1)原則として持分の払戻請求権を相続する
合同会社の持分は、会社法第607条により原則として相続の対象にはなりません。
死亡した社員は退社扱いとなり、相続人は社員としての地位(持分)を引き継ぐのではなく、退社に伴う持分の払い戻しを請求する権利(払戻請求権)を相続することとなります。
払戻請求権=(各資産合計額-各負債合計額)×出資持分の割合
- 各資産合計額
合同会社が保有する財産を、退社時点の時価で評価し、合計した金額です。 - 各負債合計額
借入金や未払金など、合同会社が負っている債務の合計額です。 - 出資持分の割合
社員が合同会社に出資している割合です。通常は、出資額に応じて決まります。
※払戻請求権の金額は、原則として退社時における会社財産の状況(時価)を基準に算定されます。相続税を計算する際の持分の評価方法とは異なるため、注意しましょう。
払戻しを受けても相続人は社員にはなれず、会社の経営に関与することはできません。
合同会社の社員となりたい場合は、別途、社員の加入手続きが必要になります。
払戻請求権を行使する際の注意点
持分の払戻しを受けた場合、払戻額のすべてがみなし配当になるわけではありません。
持分に対応する資本金等の額を超える部分は、みなし配当として被相続人の配当所得(総合課税)の対象となります。一方、それ以外の部分は、一般株式等に係る譲渡所得等として取り扱われます。
そのため、被相続人に確定申告義務がある場合は、相続人が相続開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行う必要があります。
また、合同会社側にも、みなし配当に対する源泉徴収義務が生じる点に注意しましょう。
このほかにも、以下のような基準から債権者保護手続きが必要となるケースがある点にも注意してください。
- 持分払戻額が剰余金額以下の場合:債権者保護手続き不要
- 持分払戻額が剰余金額を超え、純資産額以下の場合:1か月以上の公告期間が必要(会社法第635条2項)
- 持分払戻額が純資産額を超える場合:2か月以上の公告期間が必要かつ各別の催告省略不可(会社法第635条3項)
債権者保護手続きの終了までは、払い戻しを受けることができません。
(2)「相続人への承継」条項があれば持分を相続する
会社法第608条第1項・第2項から、「社員が死亡した場合、その相続人が持分を承継する」という条項が定款に盛り込まれていれば、相続人が社員の地位ごと持分を引き継げます。
なお、相続人が複数いる場合(例:配偶者と子ども2人)には注意が必要です。
遺産分割協議がまとまるまでは、持分を相続人間で共有する状態になり、そのままでは業務執行や権利行使の際に代表者選任等が必要となるからです。
定款で承継者を特定していない場合は、誰を社員とするかの調整(定款設計・相続人間の合意・会社への届出等)が必要になります。
合同会社の持分を承継した場合の相続税評価方法
相続税を計算するには、まず相続した合同会社の持分の相続税評価額を算出する必要があります。
合同会社の持分の評価方法は、国税庁の財産評価基本通達で定められており、「取引相場のない株式(非上場株式)の評価方法に準じて評価する」とされています。
つまり、合同会社の持分は株式ではありませんが、相続税の計算では非上場株式と同じ考え方で評価することになります。
なお、以下は定款の承継条項により持分を承継する場合の評価方法です。承継条項がなく、相続人が持分払戻請求権を相続する場合は、持分払戻請求権として評価します。
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会社の規模によって評価方式が変わる
合同会社の持分は、非上場株式の評価方法に準じて計算します。
非上場株式の評価方法は3種類あり、そのいずれか(または組み合わせ)が用いられます。
どの評価方式を使うかは、会社の規模(従業員数・売上高・総資産額)によって決まります。
| 会社規模 | 主な評価方式 |
|---|---|
| 大会社 | 類似業種比準価額方式(純資産価額方式も選択可) |
| 中会社 | 類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用 |
| 小会社 | 純資産価額方式(類似業種比準価額方式との併用も可) |
| 少数持分 | 配当還元方式 |
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合同会社の持分の相続税評価方法
①類似業種比準価額方式
同業種の上場会社の株価を参考にしながら、「1株あたりの配当金額」「利益金額」「純資産価額」の3つの要素を比較して評価する方法です。
合同会社は株式を発行しませんが、評価上は「1口あたり」の価値として計算します。
一般的に、純資産価額方式よりも評価額が低くなる傾向があるため、大会社・中会社の評価では有利になることがあります。
②純資産価額方式
会社の資産から負債(および含み益に対する法人税等相当額)を差し引いた純資産を基準に評価する方法です。
含み益のある不動産や有価証券を多く保有している会社では評価額が高くなりやすい一方、会社の実態的な価値をそのまま反映しやすい方式です。
小会社や資産管理型の合同会社では、この方式が主に使われます。
③配当還元方式
少数持分(経営に実質的な影響力を持たない少数の持分)を評価する場合に使われる方法です。
過去2年間の実績をもとに1年間の配当金額を算出し、一定の利率(10%)で割り戻して(還元して)計算するため、評価額が低くなりやすい特徴があります。
合同会社の持分相続で生じやすいトラブルと注意点
合同会社の持分相続では、株式会社の株式相続とは異なるトラブルが起きやすいです。あらかじめ注意点を把握しておきましょう。
(1)定款を確認していなかったことで混乱が生じる
合同会社の定款は公開されていないため、遺族が定款の内容を把握していないことが多くあります。
相続発生後に初めて定款を確認し、「持分を引き継げない」「払戻しになる」と知ってトラブルになるケースが少なくありません。
社員が存命のうちに、定款の内容を家族・後継者と共有しておくことが重要です。
(2)持分の評価をめぐって税務上の問題が生じる
合同会社の持分評価は複雑で、評価方法の選択によって相続税額が大きく変わることがあります。
誤った評価方法で申告してしまうと、後から税務署に指摘され、追加の税金(過少申告加算税など)が課される可能性があります。
適切な評価が行えているかどうかについて、専門家である税理士に相談し、確認してもらうべきでしょう。
(3)相続人が複数いる場合の持分の扱いが難しい
持分(社員権)は株式のように細かく分割して流通させる性質ではないため、相続人が複数いる場合の遺産分割協議で揉めやすいです。
誰が持分を引き継ぐか、他の相続人には代わりに何を渡すかなど、慎重な協議が必要となります。
(4)会社の運営が止まるリスクがある
承継条項がなく、相続人への持分承継ができない場合、特に1人社員の合同会社では社員がいなくなり解散・清算に移行するリスクがあります。
事業を継続するためには、承継条項の整備や後継者を社員として加入させる手続きを事前に整えておく必要があります。
合同会社を活用した相続対策
合同会社は、相続対策ツールとして活用されることがあります。
主に「財産管理型合同会社」の設立という形で活用されますが、メリットとデメリットの両面を正確に理解することが大切です。
財産管理型合同会社による相続対策|メリットとデメリット
不動産や有価証券などの資産を合同会社に出資し、その合同会社の持分を相続財産として扱う方法です。この仕組みを使うことで、次のような効果が期待できます。
主なメリット
- 評価額の圧縮効果:不動産を直接相続するよりも、合同会社を通じた持分として評価する方が、相続税評価額が低くなる場合がある
- 所得の分散:資産から生じる所得を所有者だけでなく、合同会社の業務執行社員の報酬として分配することで保有財産を減らし、相続税の負担を軽減できる
- 名義変更のコストを削減:相続時の所有権移転登記による登録免許税の負担を避けることができる(ただし、法人の社員変更に係る商業登記の費用は別途発生します)
- 財産の分散管理:複数の相続人に持分を分けることで、財産の共有よりも管理しやすくなることがある
- 経営権の集中:定款で業務執行社員を指定することで、特定の後継者に実質的な経営権を集中させることができる
主なデメリット・注意点
- 節税効果は限定的:税務当局は過度な租税回避に対して厳しい姿勢をとっており、評価額の圧縮が否認されるリスクがある
- 維持コストがかかる:合同会社の設立・維持には費用や手間が伴う
- 定款設計が重要:定款の記載が不適切だと、想定どおりの相続ができなくなる
- 相続後の社員トラブル:相続により新たに社員となった人との間で意思統一が取れず、経営が滞る危険性がある
家族信託との比較
「家族信託」とは、特定の目的(例えば「自分の老後の生活・介護等に必要な資金の管理及び給付」等)に従って、その保有する不動産・預貯金等の資産を信頼できる家族に託し、その管理・処分を任せる仕組みです。
合同会社と家族信託は、どちらも財産管理・承継の手段として注目されていますが、性質が異なります。
| 比較項目 | 財産管理型合同会社 | 家族信託 |
|---|---|---|
| 法的な仕組み | 法人(会社)として財産を管理 | 信託契約によって財産を管理 |
| 設立コスト | 登録免許税・定款作成費用など | 信託契約書の作成費用など |
| 認知症対策 | 直接の対応は難しい | 認知症になっても財産管理を継続できる |
| 相続税への影響 | 持分評価の圧縮効果が期待できる場合あり | 直接の節税効果は少ない |
| 向いているケース | 事業・不動産を法人で一元管理したい場合 | 認知症対策・スムーズな財産承継を優先する場合 |
家族信託による相続税対策に関して詳しく知りたい方は『信託と相続の関係|家族信託における相続税や相続税対策の効果を解説』の記事をご覧ください。
合同会社の相続でよくある質問
Q. 株式と持分の違いは?
株式会社の「株式」と混同されがちですが、持分と株式はまったく別の概念です。主な違いを整理すると、次のとおりです。
| 比較項目 | 合同会社の持分 | 株式会社の株式 |
|---|---|---|
| 出資者の呼称 | 社員 | 株主 |
| 地位の分割 | 原則として自由に分割できない | 株数単位で売買・分割できる |
| 譲渡の自由 | 他の社員全員の同意が必要 | 原則として自由(定款で制限可) |
| 相続の扱い | 定款の記載内容によって大きく異なる | 原則として当然に相続人へ承継 |
| 経営への参加 | 社員は原則として全員が業務執行権を持つ | 株主は出資者として利益配当を受ける立場 |
このように、合同会社の持分は株式に比べて「人的な結びつき」が強い財産です。
誰でも自由に承継できるわけではなく、定款の内容が相続の行方を大きく左右します。
Q. 1人しかいない合同会社の社員が亡くなったらどうなる?
定款に承継条項がない場合、社員が0人になるため、会社法上会社は自動的に解散(法定解散)し、清算手続きへ移行します。
定款に定めがない場合、相続人が後から社員を引き継ぐことはできません。
合同会社の相続は専門家に相談すべき理由
合同会社の社員が亡くなった場合、相続人が当然に持分を引き継げるわけではありません。原則として相続人は持分の払戻請求権を相続し、定款に「相続人への承継条項」がある場合に限り、社員として持分を承継できます。
また、合同会社の持分は非上場株式の評価方法に準じて相続税評価額を算出するため、会社規模や評価方式によって評価額が大きく変わることがあります。評価を誤ると相続税にも影響するため、慎重な判断が必要です。
合同会社の相続では、定款の内容や持分の評価、相続人間の調整など、事前に確認すべき事項が多くあります。トラブルを防ぐためにも、必要に応じて税理士などの専門家へ相談しながら手続きを進めると安心です。
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監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
