死亡退職金は相続税の対象|非課税枠の計算方法や受け取る際の注意点を解説

死亡退職金は民法上の相続財産にならないが、被相続人の死亡をきっかけに取得する財産であることから、相続税法ではみなし相続財産として相続税の計算に組み込まれます。
ただし、死亡退職金の相続税には、相続人が受け取った場合に限り「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています(相続税法12条)。
法定相続人が3人の場合、1,500万円までは非課税となります。
この記事では、死亡退職金が相続税の対象となる範囲、非課税枠の計算方法などを分かりやすく解説しています。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
死亡退職金は相続財産にならないが相続税の対象となる
死亡退職金は、被相続人が生前に所有していた財産ではなく、死亡をきっかけとして勤務先などから相続人等へ支払われるものです。
そのため、民法上の相続財産にはならないものの、相続税の対象にはなります。
被相続人の死亡によって取得する財産であることから、相続税法3条により相続によって取得したものとみなすと定められているためです。
このように、相続によって取得したとみなされ相続税の対象となる財産を、みなし相続財産といいます。
生前に退職金を受け取り、死亡時に現金や預貯金などとして残っていれば、本来の相続財産として相続税の対象となります。
一方、死亡に伴って支給される退職手当金等も、本来の相続財産と経済的実質が異ならないことから、死亡後3年以内に支給額が確定したものは、みなし相続財産として相続税の対象となるのです。
みなし相続財産には、死亡退職金のほか、生命保険金(死亡保険金)などがあります。
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死亡退職金は非課税となる場合がある
死亡退職金はみなし相続財産と扱われるため、原則として相続税の課税対象となります。
しかし、死亡退職金全額が相続税の対象になるとは限りません。
一定額までは非課税となる制度が設けられています。
死亡退職金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」
死亡退職金の非課税限度額は、以下の計算式で求めます。
死亡退職金の非課税枠
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
法定相続人の数には、相続放棄した人も含めます。
また、養子については、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人の数に含められます。
法定相続人の数に含められなかった養子であっても、相続人として死亡退職金を受け取った場合には、非課税限度額の範囲内で、取得した金額に応じた非課税の適用を受けることが可能です。
ただし、その養子を加えて非課税限度額が増えるわけではありません。
具体的な計算例
死亡退職金2,000万円を受け取り、法定相続人が配偶者・子2人の合計3人の場合
- 非課税限度額:500万円 × 3人 = 1,500万円
- 課税対象額:2,000万円 − 1,500万円 = 500万円
この500万円が、他の相続財産と合算されて相続税の計算に組み込まれます。
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非課税枠が使えない人もいる
死亡退職金の非課税枠は、以下の人は使えません。
- 相続放棄をした法定相続人
- 法定相続人以外の受取人
相続放棄をした法定相続人
相続放棄をしている場合は非課税枠が使えません。
相続放棄をしていても、死亡退職金を受け取ることができますが、死亡退職金は相続税の課税対象となります。
しかし、相続放棄をした法定相続人は、非課税枠の計算時に「法定相続人の数」に数えられますが、本人が非課税枠を使うことはできないのです。
法定相続人以外の受取人
法定相続人でない場合は非課税枠が使えません。
死亡退職金の受取人に指定されていれば法定相続人でない人でも受け取れますが、相続税の課税対象となります。
さらに、被相続人の配偶者や一親等の血族(親・子)以外が死亡退職金を受け取り、相続税が発生する場合は、税額が2割加算されるのです。
養子は原則として一親等の血族として扱われるため、2割加算の対象外すが、被相続人の孫を養子にした場合(孫養子)は、代襲相続人として相続人になっている場合を除き、2割加算の対象となります。
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非課税限度額以下なら死亡退職金に相続税はかからない
死亡退職金のうち、非課税限度額を超えた部分については相続税の課税対象となります。
受け取った死亡退職金の総額が非課税限度額以下であれば、死亡退職金について相続税はかかりません。
死亡退職金を受け取る際の注意点
死亡退職金は相続財産にはならないものの、みなし相続財産として相続税がかかります。
ただし、以下の点には注意が必要です。
- 死亡後3年を超えて支給額が確定した場合は所得税がかかる
- 一定以上の弔慰金も死亡退職金として相続税の対象になる
死亡後3年を超えて支給額が確定すると所得税がかかる
相続税の対象となるのは、死亡後3年以内に支給額が確定した退職手当金等です(相続税法3条1項2号)。支給確定のタイミングによって、課税される税目が異なります。
| 支給確定のタイミング | 課税される税目 |
|---|---|
| 死亡後3年以内 | 相続税(みなし相続財産) |
| 死亡後3年超 | 所得税(一時所得) |
死亡後3年を超えてから支給額が確定した場合は、受取人の一時所得として所得税の課税対象となります(所得税基本通達34-2)。
一時所得は、特別控除(最大50万円)を差し引いた後、残額の2分の1が総合課税の対象です。
一定額以上の弔慰金も死亡退職金扱いになる
弔慰金の金額が一定の金額を超える場合には、超えた部分が相続税の対象となります。
遺族が受け取るお金には、「弔慰金(ちょういきん)」と「死亡退職金」の2種類が混在するケースがあります。
弔慰金とは、会社が遺族に対して哀悼の意を示すために支払うお金です。
社会通念上相当な範囲であれば、みなし相続財産にはならず相続税もかかりません。
ただし、以下の金額を超えると、超過分は死亡退職金として扱われ、相続税の対象になります。
- 業務上の死亡:被相続人の死亡時の普通給与 × 36か月分
- 業務外の死亡:被相続人の死亡時の普通給与 × 6か月分
なお、普通給与とは俸給・給料・賃金・扶養手当・勤務地手当などの合計額をいい、賞与は含まれません(相続税法基本通達3-20)。
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死亡退職金の受取人が指定されていない場合は相続財産となることも
死亡退職金の受取人が指定されていない場合、勤務先の規定により固有の財産となるのか、相続財産となるのかが決まります。
勤務先の就業規則や退職金規定から受取人を決めることができる場合には、受取人の固有の財産となるでしょう。
一方、受取人を決めることができない場合には、相続財産となるため相続税の対象となります。
誰が死亡退職金を受け取るのかについては、法定相続人全員で行う遺産分割協議で決めることとなるでしょう。
退職金規程の定めや個別事情によって結果が異る可能性があるので、具体的な取り扱いは、勤務先への確認や専門家への相談をおすすめします。
死亡退職金がある場合の相続税の計算方法
死亡退職金がある場合の相続税は、死亡退職金の課税対象額を求めたうえで、他の相続財産と合算して計算します。
大まかな流れは、以下のとおりです。
- 課税対象となる死亡退職金の額を計算する
相続人が受け取った死亡退職金の合計額から非課税限度額(500万円×法定相続人の数)を差し引いた額が課税対象(相続人以外が受け取った死亡退職金には、この非課税枠は適用されない) - 他の財産と合算して「正味の遺産額」を計算する
課税対象の死亡退職金に現金・不動産などの相続財産や死亡保険金などを加算し、債務や葬式費用を差し引いた金額が正味の遺産額 - 基礎控除額を差し引いて「課税遺産総額」を計算する
正味の遺産額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた残額が課税遺産総額。残額が0円以下であれば相続税はかからない - 各相続人の税額を計算する
課税遺産総額をもとに相続税の総額を算出し、実際の取得割合に応じて各相続人の納付税額を計算
相続税の計算は複数の手順があり、やや複雑です。詳しい計算方法は『相続税の計算方法をわかりやすく解説!概算の早見表や節税できる制度も』の記事をご参照ください。
死亡退職金の相続税申告の手続き
死亡退職金がみなし相続財産に該当する場合は、他の相続財産と合算して相続税の申告をおこなう必要があります。
申告漏れや期限超過にならないよう、手続きの流れを確認しておきましょう。
申告期限は被相続人の死亡から10か月以内
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条)。
死亡退職金の支給が申告期限前に確定している場合は、他の相続財産と合わせて申告書に記載します。
申告書の提出先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署です。
遠方に居住していても、自身の住所地ではなく被相続人の住所地の税務署に提出する点に注意が必要です。
具体的な提出先の調べたかについて知りたい方は『相続税申告書の提出先はどこ?管轄税務署の調べ方から提出方法・綴じ方まで解説』の記事をご覧ください。
申告書第10表への記載方法
死亡退職金は、相続税申告書の第10表「退職手当金などの明細書」に記載します。
記載事項は、勤務先の名称・所在地、受取年月日、退職手当金などの名称、受取金額、受取人の氏名などです。
相続人が受け取った死亡退職金に限り、非課税限度額の計算(500万円×法定相続人の数)を第10表上でおこない、課税対象となる金額を算出します。
なお、弔慰金の一部が死亡退職金として課税対象になる場合も、第10表に合算して記載します。
支給通知書など受取金額や支給日がわかる書類を勤務先から取得し、申告前に整理しておきましょう。
死亡退職金の相続税についてよくある質問
Q. 相続放棄した人でも死亡退職金を受け取れる?
勤務先の退職金規程などにより受取人として指定されている場合は、相続放棄をしていても死亡退職金を受け取れます。
ただし、受け取った分については相続税が発生します。
また、相続放棄した人は、非課税枠の計算における法定相続人の数には含められますが、本人が非課税枠を使うことはできません。
Q. 生前に退職していて、死亡後に退職金を受け取った場合は?
生前に退職金の支給額が確定していたか、死亡後に確定したかによって扱いが異なります。
被相続人が生前に退職しており、支給額がすでに確定していた場合、その退職金は死亡をきっかけとして発生したものではありません。
そのため、被相続人の本来の財産(未収金)として相続財産に含まれ、死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)は適用されません。
一方、生前に退職していても、支給額が死亡後3年以内に確定した場合は例外です。
死亡退職金(みなし相続財産)として扱われるため、相続人が受け取った場合に限り非課税枠の適用対象となります。
Q. 死亡退職金の非課税枠と生命保険の非課税枠は併用できる?
死亡退職金と生命保険金(死亡保険金)の非課税枠はそれぞれ別の制度のため、両方の適用を受けられます。
相続人が受け取った場合に限り、それぞれ「500万円×法定相続人の数」を上限に非課税枠が適用されるため、併用することで最大「1,000万円×法定相続人の数」まで相続税を非課税にできます(相続税法12条)。
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まとめ|死亡退職金は非課税枠や支給時期に注意
死亡退職金は、被相続人の財産ではなく受取人固有の権利として支給されるため、民法上の相続財産には含まれません。
しかし、被相続人の死亡をきっかけに取得する点から、相続税の計算ではみなし相続財産として課税対象となります。
相続人が受け取った場合に限り「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられており、この範囲内であれば相続税はかかりません。
支給時期や弔慰金の金額によっては課税関係が変わる点にも注意が必要です。
死亡退職金は相続財産ではないものの、税務上は特有の扱いがされます。
不明点があれば、早めに税理士に相談するべきでしょう。
アトム相続税理士法人では税理士に無料相談することが可能です。
相談予約は24時間いつでも受け付けているので、相続の際に死亡退職金を受け取ったが相続税の計算に不安がある方は、一度ご連絡ください。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士