死亡退職金は相続財産にならないが相続税の対象!非課税枠や注意点を解説

在職中に亡くなった方の遺族が受け取る「死亡退職金」。
「相続財産にならない」というのは事実ですが、「みなし相続財産」として相続税はかかります。
ただし、一定の金額までは非課税になる枠が設けられており、正しく計算することで節税につながる場合もあるでしょう。
この記事では、相続財産にならないはずの死亡退職金に相続税がかかる理由や、死亡退職金の非課税枠について解説しています。
死亡退職金の相続税に関する注意点もわかるので、ぜひご覧ください。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
死亡退職金とは?
死亡退職金とは、会社員や公務員が在職中に亡くなった場合に、勤務先から遺族に対して支払われるお金のことです。通常の退職金とは異なり、本人ではなく遺族が受け取ります。
支給の根拠は、会社ごとの就業規則や退職金規程によって決まります。誰が受け取るかについても、規程の中で「配偶者」「子」などの優先順位が定められているケースがほとんどです。
受取人が指定されている場合、死亡退職金は受取人固有のものとされます。
一方、受取人が設定されていない場合は、退職金規程の定めや個別事情によって取り扱いが異なり、遺産分割の対象となるケースもあります。具体的な取り扱いは、勤務先の規程や専門家に確認することをおすすめします。
死亡退職金は相続財産にならないが、相続税がかかる
死亡退職金が相続財産にならない理由
死亡退職金は、民法上の「相続財産」には含まれません。
死亡退職金は、被相続人の財産として相続するものではなく、被相続人の死亡をきっかけとして、勤務先から遺族に直接支払われるものです。
この権利は受取人固有の権利として発生するため、相続財産には含まれません。
ポイント
- 相続財産
生前に被相続人が所有しており、被相続人の死亡によって相続人などが受け取るもの - 死亡退職金
被相続人の死亡をきっかけに、勤務先から遺族などへ直接支払われるもの
死亡退職金に相続税がかかる理由
死亡退職金は民法上の相続財産にはなりませんが、相続税の対象にはなります。
「被相続人の死亡をきっかけに、受け取るもの」という点では相続財産と同じであり、「相続によって取得したとみなす」と定められているからです。(相続税法第3条)
このように、相続によって取得したとみなされ相続税の対象となる財産を「みなし相続財産」と言います。
みなし相続財産として代表的なものとしては、他に生命保険金(死亡保険金)があります。
ただし、死亡保険金は契約者や受取人が誰であったのかによって、相続税ではなく贈与税や所得税がかかる場合があるので注意しましょう。
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死亡退職金を受け取る際の注意点
死亡退職金は相続財産にはならないものの、みなし相続財産として相続税がかかります。
ただし、以下の点には注意しましょう。
- 死亡後3年を超えてからの支給は所得税がかかる
- 一定以上の弔慰金も死亡退職金として相続税の対象になる
死亡後3年を超えてからの支給は所得税がかかる
相続税の対象となるのは、死亡により支給が確定する退職手当金等で、死亡後3年以内に支給額が確定したものです(相続税法第3条第1項第2号)。
死亡後3年を超えてから支給額が確定した場合は、相続税ではなく所得税の対象となり得ます。
| 支給確定のタイミング | 課税される税目 |
|---|---|
| 死亡後3年以内 | 相続税(みなし相続財産) |
| 死亡後3年超 | 所得税(一時所得) |
死亡後3年を超えてから支給額が確定した場合は、受取人の一時所得として所得税の課税対象となります(所得税基本通達34-2)。
一時所得は、特別控除(最大50万円)を差し引いた後、その残額の2分の1が総合課税の対象となります。
一定額以上の弔慰金も死亡退職金扱いになる
遺族が受け取るお金には、「弔慰金(ちょういきん)」と「死亡退職金」の2種類が混在するケースがあります。
弔慰金とは、会社が遺族に対して哀悼の意を示すために支払うお金です。社会通念上相当な範囲であれば、みなし相続財産にはならず相続税もかかりません。
ただし、以下の金額を超えると、超過分は死亡退職金として扱われ、相続税の対象になります。
- 業務上の死亡:被相続人の死亡時の普通給与 × 36か月分
- 業務外の死亡:被相続人の死亡時の普通給与 × 6か月分
なお、普通給与とは俸給・給料・賃金・扶養手当・勤務地手当などの合計額をいい、賞与は含まれません(相続税法基本通達3-20)。
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死亡退職金には非課税枠がある
死亡退職金がみなし相続財産として課税対象になるとしても、全額に相続税がかかるわけではありません。一定額までは非課税とされる「非課税限度額」が設けられています。
非課税枠は「500万円×法定相続人の数」
死亡退職金の非課税限度額は、以下の計算式で求めます。
死亡退職金の非課税枠
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
法定相続人の数には、相続放棄した人も含めます。
また、養子については、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人の数に含められます。
法定相続人の数に算入できなかった養子であっても、相続人として死亡退職金を受け取った場合は、非課税限度額の範囲内で取得額に応じた非課税の適用を受けられます。ただし、非課税限度額そのものが増えるわけではない点に注意してください。
なお、死亡退職金と同じくみなし相続財産とされる生命保険金についても、同じ計算式の非課税枠があります。
ただし、死亡退職金と生命保険金の非課税枠は別々に計算します。死亡退職金と生命保険金それぞれについて、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠を適用できるということです。
具体的な計算例
【例】死亡退職金2,000万円を受け取り、法定相続人が配偶者・子2人の合計3人の場合
- 非課税限度額:500万円 × 3人 = 1,500万円
- 課税対象額:2,000万円 − 1,500万円 = 500万円
この500万円が、他の相続財産と合算されて相続税の計算に組み込まれます。
非課税枠が使えない人もいる
死亡退職金の非課税枠は、以下の人は使えません。
相続放棄をした法定相続人
死亡退職金は受取人が指定されていることも多いため、受取人になっているなら相続放棄をしていても取得できます。この場合、たとえ相続放棄をしていても、死亡退職金分の相続税は支払う必要があります。
しかし、相続放棄をしている場合は非課税枠が使えません。
相続放棄をした法定相続人は、非課税枠の計算時に「法定相続人の数」に数えられますが、本人が非課税枠を使うことはできないのです。
法定相続人以外の受取人
死亡退職金の受取人として指定されていれば、法定相続人でない人でも死亡退職金を受け取れます。この際、死亡退職金分の相続税が発生します。
しかし、法定相続人でない場合は非課税枠が使えません。
さらに、被相続人の配偶者や一親等の血族(親・子)以外が死亡退職金を受け取り、相続税が発生する場合は、税額が2割加算されます。
養子は原則として一親等の法定血族として扱われるため2割加算の対象外ですが、被相続人の孫を養子にした場合(孫養子)は、代襲相続人として相続人になっている場合を除き、2割加算の対象となります。
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死亡退職金がある場合の相続税の計算方法
死亡退職金を含む場合の相続税計算は、大まかに以下の流れで行います。
- 死亡退職金の課税対象額を求める
受け取った死亡退職金の合計額から、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)を差し引きます。 - 課税対象額を他の相続財産と合算する
ステップ1で求めた課税対象額を、預貯金・不動産などの本来の相続財産に加算します。生命保険金がある場合は、そちらのみなし相続財産も同様に加算します。 - 基礎控除額を差し引く
相続財産の合計額から、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引きます。この金額を「課税遺産総額」といいます。 - 各相続人の税額を計算する
課税遺産総額をもとに、法定相続分に応じて各相続人の相続税額を計算します。
相続税の基礎控除の計算においても、相続放棄した人を法定相続人の数に含められます。
また、養子については実子がいるなら1人まで、いないなら2人まで法定相続人の数に含めることが可能です。
また、被相続人の配偶者・一親等の血族(親・子)以外の相続税には、2割加算が適用され相続税額が2割多くなります。
孫については代襲相続人であれば2割加算の対象外です。また、孫養子は原則として対象となりますが、代襲相続人でもある場合は対象外です。
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死亡退職金の相続税についてよくある質問
相続放棄した人でも死亡退職金を受け取れる?
受取人として指定されているなら、受け取れます。
ただし、受け取った分については相続税が発生します。
また、相続放棄した人は、死亡退職金の非課税枠の計算において「法定相続人の数」に含められますが、本人が非課税枠を使うことはできません。
生前に退職していて、死亡後に退職金を受け取った場合は?
生前に退職金の「支給額が確定していたか」「死亡後に確定したか」によって扱いが異なります。
被相続人が生前に退職しており、退職金の支給額がすでに確定していた場合、その退職金は「死亡をきっかけとして発生したもの」ではありません。
そのため、死亡退職金ではなく、被相続人の本来の財産(未収金)として相続財産に含まれます。
したがって、死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用もありません。
一方、生前に退職していても、退職金の支給額が「死亡後3年以内」に確定した場合は例外です。この場合は死亡退職金(みなし相続財産)として扱われるため、非課税枠の適用対象となります。
まとめ|死亡退職金は非課税枠や支給時期に注意
死亡退職金は、被相続人の財産ではなく、受取人固有の権利として支給されるため、民法上の相続財産には含まれません。しかし、被相続人の死亡をきっかけに取得する点から、相続税の計算では「みなし相続財産」として課税対象となります。
一方で、死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられており、この範囲内であれば相続税はかかりません。さらに、支給時期や弔慰金の金額によっては課税関係が変わるため、制度の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
死亡退職金は相続財産ではないものの、税務上は特有の扱いがされるため、事前にポイントを押さえておきましょう。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士