会社をクビになったらするべきこと6選!必要な手続きを解説

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会社をクビ

ある日急に会社をクビになったら、不安や怒りなどのあらゆる感情が湧き上がってくるでしょう。

会社をクビになってしまったら、解雇理由証明書を会社に請求して解雇の理由を知り、今後の対処法を練ることが重要です。

具体的な解雇理由がわかれば、解雇の有効性について争うこともできます。不当解雇に当たる可能性が高い場合は、解雇無効の申し立てを行うことになります。

この記事では、会社をクビになったらするべきこと、退職勧奨されたとき・クビにされそうなときの対処法を詳しく解説します。

解雇の種類と解雇の要件

解雇の種類

会社をクビになるといっても、解雇には大きく分けて3種類があります。種類によって退職後の扱いが変わってくるので、自身がどの解雇に該当するのか確認しましょう。

解雇の種類

  • 普通解雇
  • 整理解雇
  • 懲戒解雇

普通解雇

普通解雇は、傷病により業務遂行能力が失われたときや勤怠不良、業務命令違反などの理由でなされる解雇です。

整理解雇

整理解雇は、使用者の経営上の理由によってなされる解雇です。通常、景気が後退したときや、会社の業績が悪化したときなどに検討されます。

一般的には、リストラ・早期退職者の募集という形で行われることが多いです。

懲戒解雇

懲戒解雇は、労働者の企業秩序違反行為への罰である懲戒処分として行われる解雇です。

具体的な行為として、採用判断に重要な影響を与える経歴を詐称していた、2週間以上の無断欠勤をした、重大犯罪を犯した、重大なハラスメント行為を繰り返していた場合などが挙げられます。

解雇の要件

解雇は3種類に分けることができますが、いずれの解雇もそう簡単になされるものではありません。

普通解雇の場合、使用者が労働者を解雇するためには、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要であると規定されています(労働契約法16条)。

また、経営不振などの理由で企業が整理解雇(リストラ)をしなければならない場合にも、労働者を解雇するためには、以下の要件を満たす必要があります。

整理解雇が認められるケース

  • 不況、経営不振など企業経営上やむを得ない人員削減措置であること
  • 配置転換、希望退職者募集など解雇回避のために努力したこと
  • 整理解雇の対象者を決める基準が客観的・合理的で運用も公正であること
  • 労働者などに対し解雇の必要性・時期など、納得を得る説明をおこなうこと

懲戒解雇の場合も、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要とされています。使用者が身勝手な理由で労働者を懲戒解雇した場合には懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。

解雇が無効となるケースについて詳しく知りたい方は、『解雇を無効にしたい!無効となるケースや対処法を解説』の記事をご覧ください。

会社をクビになったらするべきこと6選!

会社をクビになった、または解雇通知を出されたら、以下の6つのことをするべきです。

会社をクビになったらするべきこと6選

  1. 解雇理由証明書を請求する
  2. (不当解雇の場合)解雇無効を主張する
  3. (解雇を受け入れる場合)解雇予告手当を請求する
  4. (解雇を受け入れる場合)退職金を請求する
  5. 未払い賃金、未払い残業代の請求をする
  6. 失業保険の手続きを行う

以下、具体的にどのような意味があるのか確認していきましょう。

1.解雇理由証明書を請求する

会社をクビになったら、まずは会社に解雇理由証明書の交付を請求しましょう。

解雇理由証明書には、具体的な解雇理由が記載されています。解雇の有効性について争う場合には、第三者機関が解雇の有効性の判断するための資料にもなります。

解雇理由証明書に関しては、労働者が解雇予告日から退職日までの間に請求すれば、使用者は遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条2項)。

ただし、労働者側から自分で請求しなければ、会社側に解雇理由証明書を交付する義務は発生しないことに注意が必要です。

なお、解雇理由証明書を解雇日までに請求しなかったとしても、解雇予告日から2年間は解雇理由を記載した退職証明書の交付を請求することができます(労働基準法115条、22条1項)。

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2.不当解雇なら解雇の無効を会社側に申し立てる

会社をクビになったとしても、それが不当解雇だと思う場合、就労の意思を示して解雇の無効を会社側に申し立てることが可能です。

たとえば、以下のようなケースだと不当解雇の可能性が高まります。

不当解雇の可能性があるケース

  • 「能力不足だから」というだけの理由で解雇された
  • 配転や希望退職の募集、報酬カットなどがなされずに整理解雇された
  • 客観的に見て軽微な非違行為で懲戒解雇された

解雇の無効を申し立てる際は、まず、就労の意思があることを会社側に書面を送るなどして伝えます。

就労の意思を伝えても会社側が解雇を撤回しない場合、以下のような手段で解雇の無効を主張することになります。

解雇の無効を主張する方法

  • 各都道府県の労働局に労働紛争解決のあっせんを依頼する
  • 弁護士に依頼し裁判所に労働審判を申し立てる
  • 訴訟を提起して解雇無効を主張する

もしも解雇が無効であると認められた場合、解雇日から判決日まで就労していれば得られたはずの賃金(バックペイ)が支払われます。

また、不当解雇にあたり、ハラスメントなどの労働者の権利が侵害されるような不法行為が存在した場合、会社に対して慰謝料などの損害賠償請求が認められる可能性もあります。

3.解雇予告手当を請求する

会社をクビになったら解雇の無効を申し立てることも選択肢ですが、解雇の無効を申し立てず、解雇を受け入れることもできます。

解雇を受け入れる場合は、解雇予告手当が適切に支払われているか確認し、支払われていない場合は解雇予告手当を請求しましょう。

解雇がなされる際は、解雇日の30日以上前に解雇予告が通知されなければなりません。

もしも30日以上前に解雇予告が出されなかった場合、解雇日までの残日数に応じた金額を解雇予告手当として支払ってもらうことができます(労働基準法20条)。

そのため、「今日でクビだから明日から会社に来なくていい」などと使用者から即日解雇を宣告された場合は、少なくとも30日分の解雇予告手当が支払われます。

解雇予告日の10日後が解雇日と設定された場合は、少なくとも20日分の解雇予告手当が支払われます。

なお、労働者の責に帰すべき事由での解雇(懲戒解雇)で、会社が労働基準監督署長の除外認定を受けているような場合は、解雇予告手当は支払われないこともあります(20条1項但し書き、3項)。

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4.退職金を請求する

解雇を受け入れたものの、退職金が支払われない場合は、退職金を請求しましょう。

就業規則で退職金について記載がある場合は、会社から退職金をもらえる権利が生じます。

ただし、多くの企業では、「懲戒解雇の場合は退職金は支払わない」という旨を就業規則で定めています。そのため、懲戒解雇されたら、退職金を請求できないとお考えの方もいるでしょう。

しかし、懲戒解雇されたとしても、退職金を請求できるケースがあります。

裁判例上、退職金が全額不支給になるのは「当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があること」が条件となっています。

つまり、重大な犯罪行為や企業秩序を著しく乱す行為などでなければ、懲戒解雇がなされたとしても退職金は(一部)支払われる見込みがあるということです。

たとえば、鉄道会社の従業員が痴漢行為を行い、懲戒解雇された事例では、当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不審行為ではないとして、本来の退職金の支給額の3割が認められています(『小田急電鉄事件』東京高判平15.12.11)。

そのため、もしも懲戒解雇されて退職金が不支給になったとしても、事案によっては退職金の一部または全額分の支払いを求めることが可能です。

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5.未払い賃金、未払い残業代の請求をする

会社をクビになったときに、未払い給料や未払いの残業代がある場合は、退職金などと同時に請求するのが一般的です。

実際に請求するときは、その賃金の種類(月給、手当、賞与など)や金額を示す証拠などを確認し、内容証明郵便を送るのが効果的です。

6.失業手当(失業保険)の申請をする

会社をクビになったら、すぐに転職先が決まるケースは珍しいでしょう。

転職先が見つかっていない場合には、再就職までの期間の生活を安定させるために失業手当(失業保険)の受給手続きを行ってください。

このとき、離職理由が自己都合退職か会社都合退職かで、給付のための条件と給付開始時期・給付期間が異なります。

解雇は、一般に会社都合退職にあたります。

会社都合退職の場合、離職日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が合計で6か月以上あれば、解雇後にハローワークで失業手当の申請が可能です。

申請後、7日間の待機期間を経て失業手当(雇用保険の基本手当)が支給されます。支給までには約1か月かかります。

ただし、労働者の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合、7日間の待期期間+1か月~3か月間は失業手当が支給されない点にご注意ください(雇用保険法33条)。

なお、失業保険の受給手続きにあたっては離職票の提出が必須となりますので、会社に交付を依頼する必要があります。

退職勧奨されたとき・クビにされそうなときの対処法

まだ会社をクビにされてはいないものの、退職勧奨されてしまったときやクビにされそうなとき、どのように対処すべきなのでしょうか。

一度対応を誤るとその後の紛争で不利になってしまうこともありますので、適切に対処していきましょう。

退職勧奨に安易に合意してはいけない

会社側から退職勧奨をされても、素直に応じる必要はありません。

解雇が認められる条件は非常に厳しいため、会社側はいきなり解雇を宣告するのではなく、退職勧奨という形で労働者に自己都合退職を促すことがあります。

退職勧奨に応じて退職してしまうと、後から不当解雇として争うことが困難になります。会社側から退職勧奨をされたとしても、安易に合意はしないようにしましょう。

ただ、場合によっては何十回も執拗に退職勧奨をされたり、何時間も会議室に拘束されたりすることもあります。

そのような強迫にあたるほどの強要がなされ、嫌々ながらも退職に合意した場合、退職強要であるとして民法96条に基づき退職の意思表示を取り消すことが可能です。

退職強要をされて退職に合意してしまった場合、弁護士などに相談すれば、今後の対処法などを提示してくれるでしょう。

「自己都合退職しないならクビにする」は退職強要になりうる

労働者が横領などの問題を起こしてしまった結果、使用者から以下のような退職勧奨をされるケースがあります。

「自己都合退職をしないなら、告訴するか懲戒解雇にする。そうなるとあなたの将来や子供の就職に支障が生じるだろうから、自己都合退職にしたほうがいい」

このように、告訴や懲戒解雇がなされた場合の不利益を説かれ、畏怖した労働者が退職に合意したものの、告訴や懲戒解雇後の不利益を説いて退職を迫るのは強迫行為であるとして退職の意思表示の取消を認めた判例があります(『ニシムラ事件』大阪地決昭61.10.17)。

そのため、上記のようなことを言われて退職に合意してしまったとしても、後から解雇の無効を申し立てることが可能です。

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会社をクビになる前に提示された改善案を実施する

会社をクビになる前に、通常は会社側から当該労働者に対して指導・教育がなされます。

その指導・教育を受けた結果、勤務態度を改めれば、労働者が解雇される根拠は弱まるでしょう。

しかし、指導・教育が何度もなされたにもかかわらず、労働者が改善しなかった・改善しようとしなかった場合、解雇後に解雇の無効を認めてもらうことは難しくなります。

実際、上司の指示に従わない、周りの判断を仰がずに独断で事務処理を行う、などの行為が問題視されて4回のけん責処分を受けたものの、態度に変化が見られなかったため、就業規則の「勤務成績又は能率が著しく不良で、就業に適しないと認めるとき」に当たるとして解雇が認められた判例があります(『カジマ・リノベイト事件』東京高判平14.9.30)。

会社側から指導・教育がなされずにいきなり解雇された場合は不当解雇の可能性が高まりますが、そうではない場合、労働者は改善努力をして解雇されるリスクを抑えるべきでしょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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