退職強要とは?退職勧奨との違いと退職強要にあたる行為を解説!
「会社に退職を強制された」
「退職強要と退職勧奨の違いとは?」
退職強要とは、会社が自社の従業員に対して、本人の意思に関係なく退職を強要することです。
会社から退職強要されてしまうと、強く反発できずに、会社から言われるがままに退職に応じてしまうこともあるでしょう。
退職強要は違法となる可能性が高いです。会社は正当な理由なしに、従業員を辞めさせることはできないからです。
そこで、今回の記事では、退職強要と退職勧奨の違いや違法性の判断基準を解説するとともに、退職強要されたときの対処法もご紹介します。
目次
退職強要とは|退職勧奨との違い
退職強要と退職勧奨は法律の用語ではありませんが、それぞれどういった行為を指すものか確認しましょう。
退職強要と退職勧奨
退職強要とは、会社が自社の従業員に対して、本人の意思に関係なく退職を強要することです。
一方で退職勧奨は、従業員が自発的(従業員の意思で)に退職してくれるよう、会社が従業員にはたらきかけることです。
退職勧奨が従業員の意思を尊重して退職をはたらきかけるのに対し、退職強要の場合は従業員の意思を無視して退職を強要するという点で両者は異なります。
従業員に退職してもらうという目的は同じでも、その方法が違うということです。
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退職勧奨は違法ではない
会社が自社の従業員に対して、退職勧奨をすること自体は、直ちに違法ではありません。
退職勧奨をされることは気分がいいものとは言えないかもしれませんが、退職勧奨に応じるか否かは従業員にゆだねられます。
退職勧奨はあくまでもお願いであるため、従業員は当然拒否することが可能です。
しかし、退職勧奨が行き過ぎて強制的、執拗な態様で行われた場合には、退職強要になります。
退職強要は違法|退職強要にあたる行為は?
退職強要は違法
退職勧奨が行き過ぎて不法行為に該当すると、その行為は退職強要になります。
不法行為とは、故意・過失により相手の権利を違法に侵害し損害を与えることです(民法709条)。
退職強要は違法となる可能性が高いです。
では、違法ではない退職勧奨と、違法である退職強要の境目をどう判断すればいいのでしょうか。
下記では、退職強要に該当する可能性がある行為についてみていきます。
退職強要に該当する会社の行為
退職強要に該当する可能性があるケースは以下のものがあります。
退職強要に該当する可能性があるケース
- 退職させるための面談を何度も行う
- 退職する意思がない従業員に執拗に退職を迫る
- 退職しないことを理由に仕事や待遇で不利益な取り扱いをする
- 退職を促すために虚偽の説明をする など
従業員の退職を促すためのパワハラ行為やセクハラ行為も、退職強要にあたります。
退職強要に該当する退職面談
会社が従業員の退職を促す主な方法の1つが退職面談です。下記の面談は、退職勧奨を行き過ぎた行為として退職強要に該当する可能性があります。
退職強要に該当するおそれのある退職面談
- 面談回数が多すぎる、長期にわたる
- 面談時間が長すぎる
- 従業員の名誉を傷つける発言、精神的苦痛を与える発言がある
- 会社側の参加者が多すぎる
- 従業員が希望する立会人の参加が認められない
裁判などでは退職面談が行われた状況を総合的にみて、従業員の自由な意思決定が妨げられていないか、従業員に精神的な損害を与えていないかを判断し、違法かどうか判断されます。
退職強要を受けたときの対処法|損害賠償請求も可能
ここでは、退職勧奨・退職強要を受けた場合の対処法について解説します。
退職強要に対しては「拒否」または「回答保留」
退職して生活に困るなどの事情がある場合は、退職を強要されても、「拒否」または「回答保留」にしましょう。
会社は正当な理由なしで従業員を辞めさせることはできないので、労働者は退職強要に応じる必要はありません。
会社には退職を強制する権利はなく、できることは勧奨だけです。
また、退職勧奨と引き換えに退職金を割増するなど優遇措置を提示されたり、辞めざるを得ないと誤解させるような表現で説得されたりすることもあります。
退職金の割増は良い条件のようにも思えますが、素直に応じるのは注意が必要です。
なぜなら、条件を飲んで自ら退職に応じてしまうと、会社都合退職ではなく自己都合退職になる可能性が高いからです。
自己都合退職の失業手当の給付日数は、会社都合退職が「最大330日」であるのに対し、自己都合退職は「最大150日」と短くなっています。
自己都合退職になってしまう不利益を回避するためにも、回答を保留して第三者に相談してから応じるかどうか判断したほうがいいでしょう。
退職届の撤回と損害賠償請求
会社からいきなり退職を迫られ、どうしていいかわからずに退職届を書いてしまって後から後悔するケースはよくあります。
執拗な退職強要を迫られ、やむを得ず退職届を出してしまった場合でも、退職届を提出しなければならない状況であった場合は、退職届の撤回が可能です。
また、違法な退職強要行為があって損害を受けたことが証明できれば、損害賠償請求を行うことも可能です。
退職強要で損害賠償請求を請求するためには、証拠が重要になります。
たとえば、面談した際の録音データや退職を強要されたメールや文書などのデータがあれば、有効な証拠となるでしょう。
退職勧奨・退職強要をされたときの相談窓口
退職勧奨や退職強要をされた場合は、労働問題について専門的な知識をもった人や機関に相談するのがいいでしょう。
労働基準監督署や労働局であれば無料で相談ができますが、退職強要が違法かどうかの判断を知りたい方は、弁護士への相談をおすすめします。
労働問題に詳しい弁護士であれば、法的知識や過去の判例などから、行われた退職勧奨が退職強要にあたるのか判断してくれます。
退職強要にあたる場合には、今後の対処法や損害賠償請求の方法などのアドバイスももらうことができるでしょう。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もあるので、まずは一度相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了