後継者不足の場合は廃業?倒産を防ぐ方法・解決策とは
事業を承継できる後継者がいない問題は、高齢の経営者にとっては差し迫った課題でしょう。
身近に後継者がいないと、もう廃業するしかないのかと思ってしまうかもしれません。しかし、会社売却による第三者承継も、後継者不足に悩んだ場合の解決策となりえます。
これまでは、会社を売却するという行為は「身売り」としてマイナスイメージを持たれていました。しかし、企業同士が統合して世の中に次々と新たな価値を生み出している昨今、そのような考え方は古くなっているといえます。
特に近年では、会社を買いたいという買い手のニーズは非常に膨れ上がっている一方で、会社売却したいという売り手が少ないという市場の状況です。
業績が良好ではなく買い手がつくか不安だとしても、廃業に踏み切る前に、まずはM&A仲介会社などの専門業者への相談をおすすめします。
目次
後継者不足の現状と課題
後継者不足の現状
近年、中小企業を中心に後継者不足が深刻化しています。
帝国データバンクの調査によると、2023年の全国休廃業・解散動向調査における休廃業件数は5万件を超え、経営者の平均年齢は70.9歳でした。
後継者不足により事業承継が進まないまま、経営者の高齢化が進んでしまい、休廃業に陥ってしまっていると予想されます。
その他にも、事業の複雑化や都市部への人口集中なども、後継者不足の要因と考えられます。
後継者不足の主な要因
- 経営者の高齢化
団塊世代の経営者が70代を迎え、引退を検討する人が増えている - 事業の複雑化
TI化やグローバル化により、事業の規模や複雑さが増し、後継者育成が難化している - 都市部への人口集中
地方の人口減少により、地方企業の後継者候補が不足している - 事業の魅力低下
長時間労働や低賃金など、事業の魅力が低下し、若い世代が事業継承を敬遠している。
後継者不足の防止・解決方法
後継者不足問題を防止するためには、早めからの対策が重要です。
親族内や会社内から後継者候補を選び、早期から将来の経営者候補として育成し、必要なスキルや知識を身につけさせる必要があります。
後継者の育成には少なくとも数年以上はかかるといわれています。
気付いた時には自分が高齢になってしまい、後継者候補が誰もいないという状態にならないよう注意すべきでしょう。
もし現時点で事業を引き継ぐ候補者がいないのであれば、M&A・会社売却を検討しましょう。
業績がよくない会社であっても、業種や事業内容、地域などによっては、複数の買い手に興味を持ってもらえるケースもありえます。
赤字会社であっても、売却できる可能性はゼロではないので、まずはM&A仲介会社などの専門業者に相談してみてください。
後継者問題の防止・解決には、経営者自身の意識改革と、積極的な行動が不可欠です。将来を見据えた対策を早めから実行することで、事業の継続と発展を実現することができます。
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後継者不足で廃業・倒産する
廃業とは
廃業とは、個人事業や法人事業を当事者の意思で辞めることです。解散と清算という二段階のステップを経て、会社は廃業されます。
会社の事業をやめて債権債務を整理する手続きに入ることを解散といいます。廃業の準備段階ともいえるでしょう。
経営者が事業継続できないと判断した場合の他、会社法で定められている解散事由を満たした場合に、会社は解散となります(会社法471条)。
清算とは、会社の資産を実際に処分し、債権者への弁済を行い、残余財産を株主に分配することです。
会社の解散が決定したら、残る債権債務などの処理を行う清算人を選任します。清算人は、債権を回収したり財産の換価を行ったりして、債権者に弁済していきます。
廃業と倒産の違い
当事者自身の意思で事業をやめる判断をする廃業に対し、倒産とは、法律の要件に当てはまる場合や、労働基準監督署の認定を受けた場合を指しています。
前者を法律上の倒産といい、破産や特別清算、民事再生などが具体例です。
後者を事実上の倒産といい、事業が停止して再開見込みがないような場合に、労働基準監督署長から倒産の認定を受けることとなります。
廃業・倒産の費用
廃業には、手続き費用や債務整理費用など、様々な費用がかかります。
これらの費用は、廃業後の生活にも影響を与えるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。
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廃業の手順・流れ
廃業の手順・流れは以下の通りです。
- 株主総会の解散決議・会社法の解散事由に該当
- 解散登記・清算人選任登記
- 解散届出などの書類提出
- 債権者保護手続き
- 清算手続き
- 解散事業年度確定申告
- 残余財産の分配
- 清算事業年度確定申告
- 清算結了登記
株主総会の解散決議・会社法の解散事由に該当
株主総会によって決議されるか、その他の会社法上の解散事由に該当すると、解散が決定します。
株主総会における解散決議とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成によって成立する特別決議でなければなりません。
会社法上の要件とは、定款で定めた存続期間の満了や、定款で定めた解散事由が発生した場合などです。
解散登記・清算人選任登記
会社の解散と清算人が決定されたら、2週間以内に、解散登記と清算人登記を行います。
解散登記と清算人登記は、本店所在地の法務局に申請します。申請の際には、定款、株主総会議事録、清算人の就任承諾書、印鑑届出書などの書類が必要です。
解散の届出
解散登記、清算人選任登記が終了したら、解散の届出を税務署や各都道府県の税事務所に提出しなければなりません。
提出が必要な書類としては、異動届出書や給与支払事務所等廃止届などがあります。会社の状況に応じて、準備しなければならない書類は変わります。
また、社会保険や労働保険などの各種保険に関する書類の提出も必要です。
各保険の適用事業所ではなくなったことを、公的機関に届け出ます。
社会保険については日本年金機構、雇用保険は管轄ハローワーク、労働保険は労働基準監督署がそれぞれ提出先となります。
官報公告・個別催告
債権者に対して解散を知らせるため、官報で公告します。知れている債権者には個別に催告する必要もあります。
この手続きは債権者保護を目的としたもので、会社法によって定められています。もし違反すれば、過料が課される可能性もあります。
清算株式会社は、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。
会社法499条1項
清算手続き①
清算の段階では、残る債権を取り立て、債務を完済します。清算会社は所有する財産を売却し、その売却代金で債務を完済していくケースが一般的です。
清算人は就任後遅滞なく、会社財産の現況を調査して解散日における財産目録と貸借対照表を作成しなければなりません(会社法492条1項)。
また、清算株式会社は、作成した財産目録・貸借対照表は株主総会に提出し承認を受けた上で、清算結了登記が完了するまで保存する必要があります(会社法492条4項)。
清算手続き②
清算人が債務の完済を達成し、残余財産が確定すると、その後は企業の株主に残余財産を分配する必要があります。
残余財産は、全ての債務が清算された後に企業に残る資産を指します。
株主に残余財産を分配する際には、原則として、これらの資産を全て現金に換金する必要があります。
非上場株式が含まれる場合や、固定資産が多い場合などでは、資産を現金化するまでに時間がかかる可能性があります。
計画的に残余財産を処理するためには、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、適切なアドバイスを受けることが重要です。
解散事業年度確定申告
会社が解散した場合、事業年度開始の日から解散の日までを1つの事業年度とみなします。これを解散事業年度といいます。
清算人が作成した財産目録と貸借対照表をもとに、解散日の翌日から2ヶ月以内に解散事業年度の確定申告を行います。
清算事業年度確定申告
解散した会社は、解散日の翌日以降は清算会社と呼ばれます。
解散日の翌日から1年間が、清算事業年度となり、事業年度が終わるごとに、清算中の所得を申告しなければなりません。
確定申告書は、事業年度の終了後2カ月以内に税務署に提出します。
清算結了登記
清算事務が完了した後は、精算株式会社は遅滞なく決算報告の作成を行う必要があります(会社法507条1項)。
また清算人は、この決算報告を株主総会に提出し、承認を受けなければなりません(会社法507条2項)。
清算の承認を受けた場合、2週間以内に、法務局に清算結了登記を申請し、清算手続きは終了します。
後継者不足で廃業する際の注意点
廃業・倒産前にやっておくべきこと
廃業前に、以下の準備をしておくことで、円滑な廃業手続きが可能となります。
廃業・倒産前の準備
- 顧客への告知
- 従業員への説明
- 取引先への連絡
- 債権回収
- 在庫処分
廃業・倒産後の生活
廃業後、どのように生活していくかは、個々の状況によって異なります。
他の企業に就職するケースもあれば、新たな事業を立ち上げるケースもあるでしょう。
廃業は人生の大きな転機となります。
事前にしっかりと準備しておくことで、不安を軽減し、新たな人生に向けて一歩を踏み出すことができます。
後継者不足で廃業を防ぐために
後継者候補がいない場合であっても、事業承継を諦める必要はありません。
第三者承継(M&A)という選択肢によって、廃業を回避できる可能性があります。
後継者不足なら第三者承継(M&A)を利用する
第三者承継(M&A)とは、自社の事業を第三者に譲渡・売却することを指します。M&Aによって、以下のようなメリットを得ることができます。
事業の継続: 後継者不足による廃業を防ぎ、事業を継続することができます。
事業価値の最大化: 第三者による買収により、事業価値を最大限に活かすことができます。
経営資源の有効活用: 経営資源を有効活用することで、事業の効率化を図ることができます。
新しい経営ノウハウの導入: 第三者による新しい経営ノウハウの導入により、事業の成長を促進することができます。
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第三者承継の流れ
第三者承継(M&A)は以下の流れで進みます。
第三者承継(M&A)は、複雑な手続きや専門知識が必要となるため、アドバイザーなどの専門家の支援を受けることが重要です。
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まとめ
後継者不足は、事業継続にとって大きな課題となっています。第三者承継(M&A)は、この課題を解決し、事業を存続させる有効な手段の一つとなりえます。
M&Aを検討する際には、専門家の支援を受け、自社の状況や事業内容に合った方法を選択することが重要です。