距骨骨折での後遺症とは?後遺障害慰謝料の相場も解説

更新日:
岡野武志弁護士

監修者:アトム法律事務所 代表弁護士
岡野武志

距骨(きょこつ)とは、足首を支え、足首の関節を構成する骨のことです。

表面の3分の2が軟骨で覆われる距骨には血液があまり巡らないため、骨折後に骨壊死を生じて重い後遺症を負うこともあるので、緊急手術を要することも少なくありません。

距骨骨折の後遺症として痛みやしびれなどの神経障害の他、足首の可動域が制限されて歩行が困難になる運動障害を負うことが考えられます。

今回は、距骨骨折を負った場合、どのような症状を負うか、治療方法や後遺障害、慰謝料の相場などを解説していきます。

距骨骨折の症状と治療

距骨骨折とは?

距骨(きょこつ)骨折とは、くるぶしの内側の骨である距骨が骨折することです。

足首の骨は、脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)、距骨(きょこつ)の3つの骨が組み合わさってできています。

距骨は、足首を支え、足首の関節を構成する骨です。

周りに筋肉がついておらず自由に動かすことができる骨であり、足首が滑らかに動くように機能しています。

足首周りの骨や関節の一覧表

骨・関節位置関係
脛骨(けいこつ)膝から足首までの2本の骨の、太いほうの骨
腓骨(ひこつ)膝から足首までの2本の骨の、細いほうの骨
距骨(きょこつ)足首を支え、足首の関節を構成する骨
外果(がいか)足首の外側にある骨
踵骨(しょうこつ)足のかかとの骨
中足骨(ちゅうそくこつ)足の甲にある骨
リスフラン関節足の甲の関節

距骨骨折の原因

バイクや自転車の乗車中に転倒して足首を捻った際に距骨骨折を負うことがあります。

また、自動車のブレーキを踏んだ状態で正面衝突して足首に大きな力が加わったことで距骨骨折が起こることもあります。

距骨骨折の症状

距骨骨折の症状として、足首の激痛や腫れが考えられます。

また、表面の3分の2が軟骨で覆われる距骨には血液があまり巡らないため、骨折後に骨壊死を生じて重い後遺症を負うこともあります。

距骨骨折の治療

足首の骨折では転移(ずれ)がほとんどなければギブスや装具による保存療法を行うのが一般的です。

一方で骨壊死のリスクもある距骨骨折の場合、手術が行われることも少なくありません。手術ではスクリューでの圧迫固定が行われます。

距骨壊死となった場合には、セラミック製の人工距骨をはめ込むこともあります。

ただ距骨の性質上、骨折してしまうと完全に治るのは難しいとされています。

後遺症が残った場合には、後遺障害認定を検討しておきましょう。

距骨骨折の後遺症|後遺障害認定が必要

距骨骨折の後遺症が後遺障害と判断されるための方法

距骨骨折によって後遺症が残った場合、後遺障害認定を受けて後遺障害慰謝料、逸失利益を請求できる可能性があります。

後遺障害認定を受けるには、損害保険料率算出機構の審査に通る必要があります。

後遺障害の申請方法として、事前認定と被害者請求という2つの方法があります。

事前認定とは、後遺障害認定に必要な資料を加害者側の保険会社が用意する方法です。

一方で、被害者請求とは、後遺障害認定に必要な資料を被害者が用意する方法です。

事前認定の方が被害者側の負担が少なく有利に思えますが、適切な等級での後遺障害認定を受けたい場合には事前認定がおすすめです。

弁護士に相談すれば、後遺障害の認定に必要な書類の準備も依頼することができるため、事前認定であっても被害者側の負担を最小限にして手続きを進めることができます。

関連記事

交通事故の後遺障害等級が認定されなかった理由と防止法|結果は変えられる?

交通事故慰謝料
無料相談

距骨骨折で認められる後遺障害の内容

距骨骨折の後遺症として、運動障害(機能障害)、神経障害を負ったとして後遺障害認定を受けることができる可能性があります。

後遺障害認定を受ければ、後遺障害慰謝料を加害者側に請求できます。

運動障害(機能障害)|足首が以前のように動かせない

距骨骨折の後遺症として運動障害(機能障害)を負った場合、後遺障害8級7号、10級11号、12級7号に認定される可能性があります。

運動障害(機能障害)とは、足首の可動域が制限されることで事故以前よりも足をうまく動かせず、歩行や階段をつかうことが困難になるような状態のことです。

距骨骨折による運動障害の認定基準

等級認定基準
8級7号ほとんど足首が動かせない
10級11号通常の足と比べて、半分しか動かせない
12級7号通常の足と比べて、4分の3しか動かせない

運動障害の後遺障害慰謝料の相場

等級慰謝料額
8級7号830万円
10級11号550万円
12級7号290万円

神経障害|痛みやしびれが残っている

距骨骨折の後遺症として神経障害を負った場合、後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。

神経障害とは、距骨の骨折に伴って周辺部の神経組織が損傷し、痛みやしびれが残る状態を指します。

距骨骨折による神経障害の認定基準

等級認定基準
12級13号医学的にその原因を説明できる画像所見がある
14級9号事故との因果関係が説明できる神経学的検査の結果がある

神経障害の後遺障害慰謝料の相場

等級慰謝料額
12級13号290万円
14級9号110万円

本来、痛みやしびれなどの神経障害は自分しか知覚することができない症状です。

そのような神経障害が画像所見でも確認できるほど重い症状であると判断された際に、12級13号に認定されます。

また、画像所見では明確でなくても、受傷の状況、症状、治療の経過、各種神経学的検査の結果を考慮して神経症状の残存が明らかになれば14級9号に認定されます。

逸失利益の請求も可能

距骨骨折による後遺障害認定を受けた場合、逸失利益も請求することができます。

逸失利益とは、不法行為がなければ本来得られたはずの利益のことを指します。

交通事故によって負傷したケースにおいては、交通事故がなければ後遺障害なく働いて得たはずの収入を指します。

逸失利益については、事故以前の1年間の収入である基礎年収や後遺障害によって失った労働能力喪失率、労働能力喪失が続くであろう期間などを考慮して金額を定めます。

距骨骨折の示談金|慰謝料・休業損害など

交通事故で距骨を骨折した場合、後遺障害認定の有無にかかわらず、慰謝料や休業損害などを請求することができます。

距骨骨折の治療による慰謝料

距骨骨折を負って治療を受けた場合、入通院慰謝料を請求することができます。

慰謝料とは、不法行為である交通事故によって受けた精神的損害に対する賠償金です。

入通院慰謝料は、治療期間に基づいて金額が算定されます。
たとえば、距骨の骨折により入院に1ヶ月、通院に6ヶ月かかったとき、入通院慰謝料の相場は149万円です。

入通院慰謝料の相場

通院月数入院1ヶ月
3ヶ月115万円
6ヶ月149万円
9ヶ月170万円

治療期間が長ければ長いほど、入通院慰謝料は増額されます。

また、通院だけで治療したケースと比べて、入院もしたうえで治療したケースの方が入通院慰謝料が高額になります。

交通事故慰謝料
無料相談

距骨骨折により慰謝料以外も請求できる損害がある

距骨骨折によって、慰謝料だけでなく、治療費用や休業損害などの財産的損害についても請求することができます。

交通事故で距骨骨折を負った場合、以下のような費用や損害を加害者側に請求することができます。

請求可能な損害

  • 治療費用
    治療のために必要となった投薬代・手術代・リハビリ代など
  • 休業損害
    治療のために仕事を休んだことで生じる損害に対する補償
  • 器具購入費用
    松葉づえや補助装具の購入費用。将来の買換え費用も請求が可能
  • 物的損害
    自動車や自転車の修理代金、代車費用など

距骨骨折の後遺症は弁護士に相談を

距骨骨折は完全に治癒できずに、後遺症が残ってしまうケースは少なくありません。

交通事故によって距骨骨折を負った場合には、弁護士に相談してみましょう。

法律の専門家である弁護士であれば、後遺障害認定や慰謝料の増額について適切なアドバイスを提供することができます。

加害者側から既に示談金の提示を受けて交渉中、という段階であっても相談することはできますので、示談金が適正な金額であるか弁護士に確認してみましょう。

また、相談料や示談交渉にかかる弁護士費用についても確認し、費用倒れにならないかどうかも確認することができます。

弁護士費用特約を利用して、実質的な金銭的負担を負うことなく弁護士を利用して示談金を増額できるケースも多いです。

弁護士費用は弁護士費用特約により軽減可能

弁護士費用特約とは、弁護士に支払う必要がある相談料や弁護士費用を保険会社が上限額まで代わりに負担してくれるという特約です。

利用しても基本的に保険料が変わらず、多くのケースで上限額内の負担となるので、積極的に利用しましょう。

アトム法律事務所では、無料の法律相談を行っております。
交通事故案件に積極的に取り組んでいるため、経験が豊富な弁護士に、無料で相談を受けることが可能です。

無料相談の受付は24時間対応で行っているので、いつでも気軽にご連絡ください。

交通事故慰謝料
無料相談
交通事故被害者の方に選ばれ続けた実績
アトムを選んだお客様の声
交通事故被害者の方に選ばれ続けた実績
アトムを選んだお客様の声
岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

アトム法律事務所の相談窓口

事故の慰謝料を相談