路線価と実勢価格・公示価格の違いは?0.8の意味と評価額の計算方法

土地を相続することになったとき、多くの方が最初に疑問に思うのが「この土地はいくらの価値があるのか」という点です。
インターネットで調べると「路線価」という言葉が出てきますが、不動産会社のチラシに載っている売却価格(実勢価格)とは金額が異なるため、混乱してしまう方も少なくありません。
実は、路線価は相続税を計算するための基準価格であり、実勢価格とは目的が異なります。一般的に路線価は公示価格の約80%を目安に設定されているため、両者の間には一定の差が生じます。
この記事では、路線価と実勢価格の違いや「0.8」の意味、そして自分でおおよその評価額を計算する方法までをわかりやすく解説します。
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目次
路線価とは?実勢価格との違いをわかりやすく整理
土地の価値を調べる際に必ず目にするのが、「路線価」と「実勢価格」です。
どちらも土地の価格を示す言葉ですが、実は「誰が・何の目的で決めている価格か」が根本的に異なります。
相続税の計算で使われる価格と、実際に売れる価格は同じではありません。まずは、それぞれの意味と役割の違いを整理しておきましょう。
路線価は相続税・贈与税を計算するための基準価格
路線価とは、国税庁が相続税や贈与税を算出するために、道路(路線)ごとに設定した1㎡あたりの評価額のことです。
正式には「相続税路線価」と呼ばれ、毎年1月1日を評価時点として算定され、7月1日に公表されます。
路線価は、全国の土地をできるだけ公平に評価するための「税務上の基準価格」です。そのため、実際に市場で売買される価格と必ずしも一致するわけではありません。
一般的には、路線価は公示価格のおおむね80%(0.8倍)程度を目安に設定されているといわれています。
実勢価格は実際に売買される市場価格
実勢価格とは、不動産市場で実際に取引される価格のことです。「時価」と呼ばれることもあり、売り手と買い手の合意によって決まります。
エリアの人気や景気動向、土地の形状、接道状況、周辺環境など、さまざまな要因によって価格は変動します。
たとえば、同じ地域内でも角地や整形地であれば高くなりやすく、売却を急いでいる場合は相場より安くなることもあります。
このように、実勢価格は市場の需給を反映した価格であり、税務上の基準として定められた路線価とは性質が異なります。
土地には5つの価格がある【一物五価】
土地の価格には、実勢価格・公示価格・基準地価・路線価・固定資産税評価額があります。
同じ一つの土地であっても、目的ごとに複数の価格が存在することを指す言葉が、「一物五価(いちぶつごか)」です。
それぞれの価格はバラバラに決まっているわけではなく、公示価格を中心に一定の法則性をもって連動しています。
路線価・実勢価格・公示価格など5つの違い
5つの価格は「何のための価格か」が異なります。
- 実勢価格:実際に売買される市場価格
- 公示価格:土地取引の目安となる価格
- 基準地価:公示価格を補完する価格
- 路線価:相続税・贈与税を計算するための価格
- 固定資産税評価額:固定資産税を計算するための価格
つまり、同じ土地でも「目的」が違えば価格も違うのです。
それぞれの価格の「目的」と「目安」の比較表
それぞれの関係を整理すると、次のようになります。
| 価格の種類 | 目的 | 公表・管理元 | 評価の目安(公示価格=100%とした場合) |
|---|---|---|---|
| 公示価格 | 土地取引の指標 | 国土交通省 | 100% |
| 実勢価格 | 実際の売買価格 | 市場(不動産会社など) | 約100%(需給で変動) |
| 基準地価 | 公示価格の補完 | 都道府県 | 約100% |
| 路線価 | 相続税・贈与税の計算 | 国税庁 | 約80% |
| 固定資産税評価額 | 固定資産税の計算 | 市町村 | 約70% |
路線価は実勢価格の8割?0.8の意味を解説
路線価は実勢価格のおおむね80%が目安
路線価と実勢価格の大きな違いは、金額の水準にあります。
一般的に、路線価は公示価格(国土交通省が公表する土地取引の指標)の約80%になるように設定されています。
そして、公示価格と実勢価格は同水準となっている傾向にあります。
これが「路線価は0.8倍」「路線価は実勢価格の8割程度」と言われる根拠です。
ポイント
- 路線価 ≒ 公示価格 × 0.8(公示価格の8割程度)
- 公示価格 ≒ 実勢価格
ただし、実際の取引価格(実勢価格)は、エリアの人気や景気動向、土地の形状、売却事情などによって変動します。
そのため、実勢価格が必ずしも公示価格と同水準になるとは限らず、場合によっては「路線価は実勢価格の8割」とは言えないケースもあるでしょう。
路線価が低く設定されている理由
路線価が実勢価格より低めに設定されている理由は、地価の変動リスクに配慮しているためです。
もし路線価が実勢価格の100%、つまり実際の取引価格と同じ金額に設定されていたら、地価が下落したときに問題が生じます。
実際には売れないような高い価格を基準に相続税が課税されることになり、納税者の負担が過度に重くなるおそれがあるのです。
そこで、一定の安全余裕を持たせるために、公示価格の約80%という水準が採用されています。これは、相続人が不利益を被らないようにするための制度的な配慮といえます。
路線価から実勢価格を逆算する方法と計算例
持っている土地のおおよその市場価格を知りたい場合、路線価から概算することができます。
一般的な住宅地であれば、次のように考えるのが目安です。
実勢価格(目安)
実勢価格 ≒ 路線価 ÷ 0.8
これは、路線価が公示価格のおおむね80%を目安に設定されているためです。公示価格は実勢価格に近い水準とされていることから、逆算すると実勢価格を推測できます。
たとえば、路線価が1㎡あたり20万円の場合、「20万円 ÷ 0.8 = 約25万円」となり、実勢価格は1㎡あたり約25万円程度と考えられます。
ただし、これはあくまで概算です。人気エリアや再開発地域では実勢価格が大きく上回ることもあり、地方や取引が少ない地域では逆に下回ることもあります。
そのため、路線価から実勢価格を求める場合は「目安」として活用し、最終的な判断は取引事例なども参考にすることが重要です。
自分で土地の相続税評価額を計算する方法
相続税の申告が必要かどうかを判断するためには、まず路線価から土地の評価額を概算してみることが大切です。
相続財産の合計額が、次の基礎控除額を超える場合には、原則として相続税の申告が必要になります。
基礎控除
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例:配偶者と子供2人が相続人の場合
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
(1)地積(面積)を確認する
まずは土地の広さを確認します。
固定資産税の納税通知書に記載されている「地積(㎡)」が面積です。納税通知書は毎年4月〜6月頃に自治体から届きます。
(2)路線価を調べる
次に、国税庁の路線価図にアクセスし、該当する土地の道路に書かれた数字を確認します。
たとえば道路に「200D」と書かれている場合、以下を意味します。
- 200:1㎡あたり200,000円(千円単位)を意味します。
- D:借地権割合ですが、自用地(自分の土地)なら数字だけを使います。
路線価図に路線価が書いていなかった場合
路線価図に路線価が書いていない場合は、倍率方式を用いるか、特定路線価の申請が必要な可能性があります。
詳しくは以下の関連記事をご覧ください。
(3)路線価 × 地積で評価額を出す
土地の相続税評価額は、次の式で計算します。
評価額
土地の評価額 = 路線価 × 面積(㎡)
たとえば、路線価20万円、面積100㎡であれば、「20万円 × 100㎡ = 2,000万円」となります。
ただし、これはあくまで基本計算です。実際には土地の形状や条件によって補正が入ります。
不整形地・角地など補正が必要なケース
次のような土地では、評価額が増減することがあります。
不整形地・接道条件が悪い土地
土地の形がいびつだったり、道路に接する間口が狭かったりする場合は、減額補正が適用されることがあります。
路線価の補正については、関連記事『路線価から土地の相続税評価額を計算|補正のかけ方・路線価の調べ方』にて解説しています。
マンション(特にタワーマンション)
令和6年1月から、区分所有マンションには「区分所有補正率」が導入されました。特に高層階のタワーマンションでは、従来より評価額が高くなる可能性があります。
ただし、以下は適用除外となる場合があります。
- 総階数2階以下の低層集合住宅
- 事業用テナント物件
- 一棟所有マンション
- 二世帯住宅(居住用の専有部分が3室以下で、区分所有者とその親族のみが居住するもの) など
地積規模の大きな宅地
一定以上の広さがある土地は、「地積規模の大きな宅地」として評価額が大きく下がる場合があります。
共有で相続する場合
土地を兄弟などで共有する場合、評価額は持分割合に応じて按分されます。
ただし、共有状態のままでは将来の売却や活用が難しくなるため、遺産分割の段階で取得者を明確にしておくことが重要です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 土地を相続する際に活用できる代表的な節税策は?
代表的な節税策のひとつが「小規模宅地等の特例」です。
これは、亡くなった人が住んでいた自宅の土地を、配偶者や一定の要件を満たす同居親族が相続する場合に、土地の評価額を最大80%減額(限度面積330㎡)できる制度です。
たとえば、評価額1億円の土地であっても、この特例が適用されれば評価額は2,000万円になります。相続税は評価額を基準に計算されるため、税額を大きく抑えられる可能性があります。
ただし、適用には面積要件や居住要件など細かな条件があるため、事前の確認が重要です。
なお、被相続人と同居していなかった親族であっても、いわゆる「家なき子」の要件を満たせば特例を適用できる場合があります。
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Q.2 二次相続で税負担が増えることがあるのは本当?
はい、実際にそのようなケースは少なくありません。
相続では「配偶者の税額軽減」という制度があり、配偶者は1億6,000万円まで、または法定相続分までであれば相続税がかかりません。
そのため、一次相続(父の相続)で「とりあえず全財産を母が相続すれば税金はゼロ」と考えがちです。
しかし、その後に母が亡くなった場合(二次相続)、子どもたちは母の財産をまとめて相続することになります。一次相続で子どもが何も取得していないと、基礎控除や税率の関係で、結果的にトータルの税負担が増えることがあるでしょう。
たとえば、一次相続で子どもが一定額を相続していれば抑えられたはずの税額が、二次相続では倍近くになるケースもあります。
Q3. 相続の分け方はどのように考えるべき?
相続の分け方は、家族の立場によって考え方が異なります。
子どもの目線では、母が今後の生活に困らない分を確保しつつ、自分たちの将来的な税負担を抑えられる分配を検討することがポイントになります。
一方、夫婦の目線では、「自分たちが二人とも亡くなった後に、子どもにどれだけ残せるか」という最終的な手残りを基準に考えることが重要です。目先の節税だけにとらわれず、トータル納税額を見据えて分配割合を決める必要があります。
まとめ|まずは路線価と実勢価格の関係を理解しよう
路線価は相続税を計算するための基準価格、実勢価格は実際に売買される市場価格です。一般的に、路線価は公示価格の約80%を目安に設定されているため、実勢価格との間には一定の差が生じます。
土地相続を考えるうえで大切なのは、売れる価格と税金計算の基準を混同しないことです。
まずは「実勢価格 ≒ 路線価 ÷ 0.8」を目安におおよその価値を把握し、そのうえで特例の適用や分け方を検討しましょう。
価格の仕組みを理解することが、適切な相続対策の第一歩になります。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士