特定路線価とは?申請が必要なケース・申請方法・注意点を解説

特定路線価とは、路線価が付いていない(路線価図で白抜きの)道路にしか接していない宅地を評価するために、税務署が個別に設定する路線価です(財産評価基本通達14-3)。ただし、白抜きの道路に接する土地でも、すべてが特定路線価の設定対象になるわけではありません。
設定対象になるには、評価に使う年分の路線価が公開された後で、相続税・贈与税の申告に必要な場合であること、対象地が路線価方式の地域にあること、路線価の付いた道路に接していないことなど、原則として6つの条件をすべて満たす必要があります。なお、条件を満たしていても、既存の路線価を基に補正して実態に合った評価ができる場合は、特定路線価は設定されません。
また、特定路線価は評価額を下げるための制度ではありません。税務署が個別に評定する価格のため、申請しても評価額が下がるとは限らず、想定より高く設定されることもあります。迷う場合は、税務署や税理士に相談しましょう。申請する場合は、税務署の回答(設定された価格)が出るまで1~2か月程度が目安のため、相続税の申告期限(原則10か月以内)から逆算して早めに動きましょう。
本記事では、白抜きになる土地の種類(私道・旗竿地など)、設定できる6つの条件、申請しない場合の評価、必要書類と申請の流れ、デメリットとチェックポイントまでを解説します。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください
目次
特定路線価とは何か?
路線価図が「白抜き」の場合に検討される制度
相続税を計算する際、土地の評価方法には原則として「路線価方式」または「倍率方式」のいずれかが用いられます。
- 路線価方式:道路に設定された1㎡あたりの価格(路線価)に土地の面積をかけて評価する方法
- 倍率方式:固定資産税評価額に国税庁が定めた一定の倍率をかけて評価する方法
都市部などの「路線価地域」では、通常は路線価方式で土地を評価します。
しかし、路線価地域であるにもかかわらず、特定の道路にだけ路線価が設定されていない(白抜き)ケースがあるのです。
このように、「路線価が付されていない道路にのみ接している土地」を評価する必要がある場合に、税務署へ申請して個別に設定してもらう価格を「特定路線価」といいます。
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白抜きになっている土地の種類
路線価が設定されておらず、白抜きになっている土地としては、以下のようなものがあります。
私道にのみ接している土地
公道から入った私道に路線価が設定されておらず、評価対象地がその私道にしか接していない場合、特定路線価の申請を検討することがあります。
旗竿地(敷地延長)
旗竿地において、竿部分(通路)が接している外部の道路に路線価が設定されていない(白抜き)場合には、その外部の道路について特定路線価の設定を検討します。
設定された道路の価格を基準に、旗部分と竿部分を含めた土地全体を一体として評価します。
位置指定道路や二項道路など
建築基準法上は道路に該当するものの、路線価図では価格が設定されていない道路に接している場合も、特定路線価の対象となる可能性があります。
特定路線価を設定する土地の条件
特定路線価を設定する土地の条件について解説を行います。
「国税庁のチェックシート」を利用して、条件を有しているかどうかの確認をすることも可能です。
(1)評価対象年の路線価がすでに公開されている
特定路線価は、その年分の路線価が公開された後に設定されます。
例えば、2026年分の相続税評価額を計算するために特定路線価を設定したい場合は、原則として2026年分の路線価が公開された後に申請します。
路線価は毎年7月頃に国税庁から公開されるため、それ以前は特定路線価の設定も行われません。
(2)相続税または贈与税の申告のために必要である
特定路線価は、相続税や贈与税の申告に必要な場合に限って設定される制度です。
そのため、「将来相続が発生したときの参考にしたい」「土地の売買価格を知りたい」といった目的では申請できません。
実際に相続や贈与が発生し、評価額を算定する必要がある場合に利用できる制度と考えておきましょう。
(3)評価対象地が路線価方式の地域にある
特定路線価を設定できるのは、路線価方式で土地を評価する地域にある土地です。
相続税評価では、土地の所在地によって「路線価方式」と「倍率方式」のいずれかで評価します。
倍率方式の地域では特定路線価の制度は利用できず、固定資産税評価額に倍率を掛けて評価額を算定します。
まずは「国税庁の路線価図」で対象地が路線価地域にあるかを確認しましょう。
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(4)路線価が設定された道路に接していない
特定路線価の設定対象となるのは、路線価が設定されていない道路のみに接している土地です。
例えば、土地が白抜きの道路と路線価が付された道路の両方に接している場合は、原則として路線価が付された道路の路線価を基に画地調整等を行って評価するため、特定路線価は設定できません。
特定路線価は、既存の路線価では評価できないケースを補うための制度です。
(5)評価対象地の利用者以外の人も利用する道路
特定路線価の設定対象となるのは、その土地の利用者だけでなく、他の人も利用する道路です。
例えば、特定の土地所有者だけが利用する専用通路や私有地内の通路については、原則として特定路線価は設定されません。
このような専用通路は、評価対象地の一部として評価します。
(6)建物の建築が可能な道路である
対象となる道路は、建築基準法上の道路など、建物の建築が可能な道路であることが原則とされています。
これは、その道路に接する土地が宅地として利用できることを前提として評価を行うためです。
位置指定道路や二項道路などが該当するケースがありますが、実際に特定路線価を設定できるかどうかは個別の状況によって異なります。
実際に要件を満たすかどうかは、税務署が個別に判断します。
白抜きでも特定路線価を使わないことがある
既存の路線価を援用して評価できるケース
路線価図で道路が白抜きになっていても、必ず特定路線価を申請しなければならないわけではありません。
路線価が設定されていない道路にのみ接している宅地でも、既存の路線価を基に画地調整等を行って合理的に評価できる場合は、特定路線価を設定しないことがあります。
なお、道路に接していない宅地や接道義務を満たしていない宅地に適用される「無道路地の評価」は、これとは別の評価方法です。
このように既存の路線価を用いて合理的に評価できる場合は、特定路線価の申請を行わずに評価することがあります。
特定路線価を申請するかの判断基準
路線価図で道路が白抜きになっている場合でも、他の方法で合理的な評価ができるのであれば、必ず特定路線価を申請しなければならないわけではありません。
実務上は、既存の路線価を援用して評価できるケースもあれば、特定路線価を設定した方が適切なケースもあります。
判断のポイントとなるのは、「どちらの評価額が低くなるか」ではなく、「どちらの評価方法が客観的かつ合理的か」という点です。
例えば、既存の路線価を援用する根拠を明確に説明できる場合は、特定路線価を申請しなくても問題ないことがあります。
一方で、援用した路線価との位置関係や利用状況に大きな違いがあり、評価の妥当性を説明しにくい場合は、特定路線価の申請を検討した方がよいでしょう。
例えば、既存の路線価を援用して評価した金額が、周囲の土地と比べて著しく低いといったケースでは、税務署から評価の妥当性を否認される可能性があります。
一度特定路線価の設定を申し出ると、税務署が個別に評定した価格を踏まえて評価することになります。申請前に、既存の路線価を援用できるか十分検討しておくことが大切です。
申請するか迷う場合は、税理士や所轄税務署へ相談し、評価方法の妥当性を確認することをおすすめします。
特定路線価の申請方法とスケジュール
相続税の申告期限は、「相続の開始があったこと(被相続人が死亡したこと)を知った日の翌日から10か月以内」です。
特定路線価を申請する場合、税務署からの回答を待って評価額を確定させる必要があるため、期限を意識した早めの対応が不可欠です。
必要書類
- 必ず提出する「申出書・明細書」
- 特定路線価設定申出書:手続きのメインとなる書類。
- 別紙(明細書):評価する土地の詳細や道路の状況を詳しく記載する書類。
- 状況を説明するための「添付参考資料」
道路や土地の具体的な状況を税務署が判断するために、以下の資料を添付します。- 物件案内図・地形図:住宅地図など、場所を特定できるもの。
- 道路の状況が分かる写真:現況を確認するために重要。
- 公図の写し・地積測量図:土地の形状や隣接道路との関係を詳細に示すために活用。
また、「特定路線価設定申出書の提出チェックシート」も、申出書に添付して提出する必要があります。
様式や取扱いは国税局ごとに異なるため、管轄の国税局のページで確認してください。
提出先
特定路線価設定申出書の提出先は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出先 | 原則として、納税地を所轄する税務署 |
| 納税地 | 相続税:被相続人の住所地 贈与税:贈与を受けた人の住所地 |
| 提出方法 | 持参または郵送 |
なお、国税庁のチェックシートでは、納税地を所轄する業務センターへ提出するよう案内されています。郵送する場合は、宛先を事前に所轄の税務署へ確認しましょう。
特定路線価の申請から回答までは1~2か月程度
特定路線価の回答は、対象の土地の評価を担当する税務署から届きます。申出書を提出した税務署とは異なる場合があります。
回答までの期間は案件や国税局によって異なりますが、国税庁は概ね1~2か月程度を要するとしています。
申告期限との兼ね合い
申告期限直前に申請すると、回答を待っている間に期限を迎えてしまうおそれがあります。
相続税の申告が期限を過ぎると、延滞税や加算税などのペナルティが発生する可能性があります。
そのため、特定路線価の申請が必要と見込まれる場合は、少なくとも申告期限の2~3か月前には動き出すことが望ましいでしょう。
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申告期限が迫っている場合の対応策
相続税の申告期限が迫っている場合は、税理士に相談のうえ、本当に特定路線価の申請が必要なのかを確認してみましょう。
また、特定路線価の申請が間に合いそうにない場合は、仮評価での申告や修正申告の要否を慎重に検討する必要があります。
いずれにしても、早めの段階で税理士に相談し、適切な対応を検討することが重要です。
特定路線価のデメリットと注意点
特定路線価は、路線価が設定されていない道路のみに接している土地を評価するための制度です。
評価額が想定より高く出る可能性がある|不服申立てはできない
特定路線価は、周辺の路線価や接続状況などをもとに税務署が個別に評定します。
そのため、「申請すれば評価額が下がる」という保証はありません。
むしろ、隣接する公道の路線価を基準に評定されることで、想定より高い価格が設定されることもあります。
また、税務署から届く特定路線価の回答書には、この回答は税法に規定する処分の通知ではないため、再調査の請求や審査請求の対象にならないという趣旨の注意書きがあります。そのため、設定された特定路線価そのものについて不服申立てをすることはできません。
有利・不利だけを理由に評価方法を変えることはできない
特定路線価は、税務署が個別に評定する価格です。
特定路線価が設定された後は、その特定路線価を基に評価する必要があり、有利・不利のみを理由に評価方法を変更することはできません。
そのため、以下のような使い方はできない点に注意しましょう。
- とりあえず申請してみる
- 有利な方を後から選ぶ
申請を迷ったときのチェックポイント
特定路線価の申請を検討する際は、次の点を確認しましょう。
- その土地は倍率地域ではなく、路線価地域にあるか
- 土地が接している道路に本当に路線価が設定されていないか(白抜きか)
- 既存の路線価を援用して合理的に評価できないか
- 申告期限(10か月以内)まで、少なくとも2~3か月の余裕があるか
- 小規模宅地等の特例を適用する予定があるか
特に、小規模宅地等の特例を適用する場合は、評価額の出し方が税額に大きく影響します。
特定路線価を設定するかどうかは、全体の税額シミュレーションを踏まえて判断することが重要です。
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特定路線価に関するよくある質問(Q&A)
Q. 路線価図が白抜きなら、必ず特定路線価を申請する必要がありますか?
いいえ、必ずしも必要とは限りません。
路線価図で道路が白抜きになっていても、他の方法によって合理的に評価できる場合があります。
ただし、評価方法の妥当性を説明できない場合は、特定路線価の申請を検討した方がよいでしょう。
Q. 特定路線価を申請すれば、評価額は必ず下がりますか?
いいえ、特定路線価を申請したからといって評価額が必ず下がるわけではありません。
特定路線価は節税のための制度ではなく、路線価が設定されていない道路の価格を適正に定めるための制度です。
税務署が周辺の路線価などを基に価格を設定するため、想定より高くなることもあります。
Q. 設定された特定路線価が想定より高かった場合、使わずに評価できますか?
いいえ、特定路線価が設定された場合は、その特定路線価を基に評価する必要があります。
評価額が想定より高かったことを理由に、既存の路線価を援用する方法などに切り替えることはできません。
そのため、「評価額が低くなりそうだから」といった理由だけで安易に申請するのは避けるべきです。
特定路線価を申請する前に、既存の路線価を援用できないか、申請するメリット・デメリットを十分に検討しておくことが大切です。
Q. 特定路線価設定の申出は電子申請で行える?
国税庁の案内では、特定路線価設定申出書の提出方法は持参または郵送とされています。
電子申請への対応状況については、所轄の税務署に確認してください。
特定路線価で迷ったら税理士へ相談を
土地の評価は、多くの場合、相続税額を大きく左右する要因のひとつです。
特定路線価を申請するか、あるいは他の手法で評価するかによって、税額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
特に旗竿地や私道が絡む複雑な土地の場合は、自己判断せず、一度相続専門の税理士にシミュレーションを依頼することをお勧めします。
「この土地の評価、自分では判断が難しいかも……」と思われた方は、まずはお近くの税務署への相談や、相続税に強い税理士への個別相談を検討してみてください。
アトム相続税理士法人では税理士に無料相談することが可能です。
相談予約は24時間いつでも受け付けているので、適切な土地の評価を行ったうえで相続税申告を行いたい方は、いつでもご連絡ください。
監修者情報
アトムグループ 協力税理士