残業代請求で負ける5つのケース!敗訴を防ぐポイントを弁護士が解説

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残業代請求

「残業代請求で負けることはあるのか」
「未払い残業代を請求する裁判で敗訴したらどうなるのか」

未払いになっている残業代について会社に裁判を起こすとき、「訴えても負けたらどうしよう」と悩む方は多いと思います。

「残業代が一銭も支払われなかった」「残業代の一部は戻ってきたが、十分な額ではなかった」など、人によって「負け」と考えるケースはさまざまです。

今回は、残業代請求で負けてしまう主なケースや、残業代請求で負けないよう有利に進めるためのポイント、残業代請求で負けてしまったときに備えて知っておくべきことを解説します。

残業代請求で負けるケース

残業代を全く回収できなかった場合、「負け」と考える人がほとんどでしょう。残業代請求を回収できないケースとして、以下のようなものが挙げられます。

残業代請求で負けるケース

  • 残業時間を証明する証拠が不十分だった
  • 会社の残業禁止命令を無視して残業していた
  • 残業代請求の時効である3年が経過していた
  • 固定残業制で正しく残業代が支払われていた
  • 管理監督者だと判断された

残業時間を証明する証拠が不十分だった

残業代請求をするには、労働者側が実際にどれだけ残業をおこなったかを立証する必要があります。

有効な証拠がなければ、残業時間について立証できず、訴えが棄却されたり、請求が一部しか認められなかったりする場合があります。

有効な証拠としては、以下のようなものが挙げられます。

未払い残業代請求に有効な証拠

  • タイムカード等の勤怠記録
  • 就業規則
  • 雇用契約書
  • 業務用PCの使用時間の記録・ログイン時間の記録

残業代の計算をする際、直近1か月分の証拠しかないという状態であれば、残業代をさかのぼって計算することが難しいです。

そのため、証拠を集めるときには、できるだけ長期間にわたってさまざまな種類の証拠を集めておくことがポイントです。

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会社の残業禁止命令を無視して残業していた

「就業規則などで残業の禁止が明記され、広く社内で認識されていた」「禁止命令を破って残業をさせるような指示が無かった」

こういった場合には、残業代請求の訴えが退けられるケースがあります。

労働者側が会社側に残業代を請求できるのは、会社側から残業指示があった場合のみです。労働者側が独自の判断で残業をおこなった場合には、残業代請求が認められないおそれがあります。

もちろん、業務量や業務状況から、明らかに残業が必要であったと判断されれば、残業代請求が認められる余地はあります。

残業代請求の時効である3年が経過していた

残業代を請求する上で、未払いになっている残業代を請求できる時効が3年であるという点に注意をしておく必要があります(労働基準法115条)。

残業代請求の時効をストップさせたいという場合には、会社側に内容証明郵便を使用して請求書を送っておくなどの対処法が考えられます。

内容証明郵便を使用すれば、時効の期間を6か月間延長させることができますが、時効が過ぎた場合は残業代は請求できないので注意しましょう。

固定残業制で正しく残業代が支払われていた

みなし残業(固定残業)は、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度のことです(労働基準法38条)。

実際に支払われるべき残業代が固定支給額を超えない場合は、残業代の追加請求が認められないことになります。

しかし、みなし残業代については、通常の賃金部分と割増賃金部分が書面ではっきりと区別されていることや、固定手当が割増賃金の対価として支払われていることが必要となります。

こういった条件に反していれば、残業代請求について認められる可能性が高いため、会社で運用されている固定残業制が適正であるかどうかを確認することがポイントです。

管理監督者だと判断された

管理監督者に該当する職務の人には、残業代を支払わなくてもよいとされています(労働基準法41条2項)。管理監督者に該当する人には、以下のような条件があります。

管理監督者に該当する人

  • 経営や人事に関わるなど経営者と一体的立場にある
  • 労働時間による管理を受けていない
  • 基本給や手当などにおいて、その地位にふさわしい処遇を受けている

ただし、単に「管理職である」という理由だけで管理監督者として認定されるわけではなく、自分が会社内でどのような立ち位置であるかを確認しておく必要があります。

実際に、美容室を経営する会社の総店長として勤務していた従業員が、会社に対して残業代の請求を求めた際、従業員が「管理監督者にあたる」として残業代請求を棄却した判例があります(『ことぶき事件』東京高判平20.11.11)。

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残業代請求を有利に進めるポイント

残業代請求を有利に進めるためのポイントとして、以下のようなものが挙げられます。

残業代請求を有利に進めるポイント

  • 残業時間を証明する証拠を集めておく
  • 残業代請求に強い弁護士に依頼する

残業時間を証明する証拠を集めておく

残業代請求を有利に進めるための一番のポイントは、有効な証拠を集めておくことです。

残業代請求で必要となる証拠は、主に以下の3つに分類することができます。

  • 実際の残業時間を明らかにするもの
  • 残業に関する労働条件が記載されているもの
  • 支給された残業代を明らかにするもの

もし退職してしまっているなどの理由で証拠が集められないという場合には、会社に対して証拠の開示請求をしたり、裁判所や弁護士に手続きを依頼したりといった対処法をとることをおすすめします。

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残業代請求に強い弁護士に依頼する

残業代請求を有利に進めるためには、残業代に強い弁護士に依頼することも重要です。

弁護士に依頼すれば、会社との交渉を一任できることはもちろん、法的トラブルに発展した際にもスムーズに対応してもらえます。

残業代請求に強い弁護士を選ぶ際には、実際に相談した人の口コミなどから、弁護士の労働問題についての実績を確認しておくことがポイントとなります。

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残業代請求を弁護士に依頼する場合の費用相場は?弁護士に依頼するメリット5選!

残業代請求に負けたときに備えて知っておくべきこと

残業代請求の訴訟に負けてしまったときのデメリットについて心配される方も多いかもしれませんが、主なデメリットとしては費用についてのことがほとんどです。

残業代請求に負けたときに備えて、知っておくべきことは以下の3つが挙げられます。

  • 主なデメリットは費用
  • 会社から損害賠償請求されることは基本的にない
  • 転職先に訴訟した事実が伝わってしまうことも基本的にない

残業代請求のデメリットは費用

残業代請求の裁判で敗訴してしまった場合に考えられる一番のデメリットは、裁判にかかった弁護士費用などが無駄になってしまうことです。もちろん、請求が一部しか認められず、結果として弁護士費用のほうが多くかかってしまう場合もあるでしょう。

費用倒れのリスクを回避するためには、完全成功報酬制(依頼によって経済的利益が生じた場合にだけ弁護士費用が発生する)の弁護士に依頼するなどの対処法が考えられます。

会社から損害賠償請求されることは基本的にない

裁判に負けたとき、「逆に会社側から裁判にかかった費用を請求されるのでは?」と心配になる方もいるでしょう。

裁判を起こして敗訴してしまった場合には、訴訟費用(訴訟提起に必要な印紙代、証人に支払う日当など)は原則として敗訴した側が負担することになります(民事訴訟法61条)。

しかし、訴訟費用には該当しない費用(弁護士への依頼費用など)は依頼した側が負担するのであり、勝訴した側の損害として敗訴側に原則として請求できるものでもありません。

したがって、残業代請求で全面的に敗訴となってしまったとしても、会社側から損害賠償請求をされることは基本的にないといえるでしょう。

敗訴による負担は、訴訟費用にとどまります。

転職先に訴訟した事実が伝わってしまうことも基本的にない

残業代請求が認められなかったとき、「転職先の会社に訴訟したことをバラされてしまうのでは?」と不安になる方もいるかもしれません。

しかし、残業代を請求したという事実は、個人情報保護法や弁護士の守秘義務によって守られているので、転職先や新しい職場に伝わってしまうことは基本的にありません。

残業代を請求する上での勝率の考え方や、残業代を回収できるケースとポイントについて知りたい方は『残業代請求の勝率はどのくらい?残業代を回収できるケースとポイントを解説』もご覧ください。

まとめ

残業代請求について、「負け」と感じるパターンは人によってさまざまですが、残業代請求ではどれだけ有効な証拠を集めることができるかがポイントです。

残業代請求には時効もあり、迅速な対応が求められます。残業代請求を有利に進めるためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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