退職代行を使えば即日退職できる?法的な仕組みを解説

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退職代行と即日退職

「退職代行を使えば翌日から会社に行かずに済む?」
「仕事が限界なので、明日にでも退職したい」

退職を決意しても職場の人手不足や上司からの圧力などで、なかなか退職を告げることができない方は多いと思います。

なかでも、退職を告げてからのトラブルを防ぎたいとお考えの方は退職代行を検討しているかもしれません。

退職代行を使えば即日退職は可能です。しかし、退職代行で即日退職する方法はいくつかあり、即日退職することのリスクもあります。

この記事では、退職時の自身への負担を最小限に抑えたい方に向け、退職代行を使って即日退職する方法や注意点を詳しく解説します。

退職代行を使えば即日退職できる

退職代行を使えば、実質的に即日退職できます。

正社員などの無期契約の労働者は、退職日の2週間以上前に退職の意思を会社へ伝えるだけで、会社との雇用関係を解消できます。

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法627条1項

退職代行の使用も解約の申し入れです。

法的には、退職を申し入れてから2週間(14日)が経過しないと退職できないと記載されているため、退職代行を使用しても2週間は会社に行かなければならないと考えてしまうでしょう。

しかし、状況によっては会社に行かずに即日退職する方法があります。

退職代行で即日退職する方法

退職の意思を伝えた翌日が退職日になるわけではありません。退職代行を使用後、2週間会社へ行くことなく退職する方法をいくつか解説します。

14日分有給を消化する

最低でも14日分の有給休暇が残っていれば、即日退職できます。

ここでの「即日退職」とは、退職の意思を伝えた翌日から退職日まで会社へ行くことなく退職できることを意味します。

退職の意思を伝えた日の翌日から14日後を退職日とした場合、退職の意思を伝えた日の翌日から退職日までの14日間を有給休暇とすることで、退職日まで会社へ行く必要がなくなります。

有給を消化して会社へ行く必要がないまま退職日を迎えるため、実質的に即日退職できるというわけです。

退職する前に有給をまとめて使うことをご心配される方もいると思いますが、会社が有給休暇の取得を拒否することはできません(労働基準法39条)。

通常の場合であれば、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社には有給休暇を別の日に変更にさせる権利、時季変更権があります(労働基準法39条5項)。

しかし、退職を前提とした有給休暇の消化の場合、変更する日が退職日以降となるため、退職前の有給休暇の消化に対して時季変更権は利用できません。

つまり、溜まっていた有給は退職日までにすべて消化できるということです。

週休2日の会社であれば有給休暇が10日で即日退職できる

また、週休2日の会社であれば、有給休暇が10日しか残っていない場合でも、即日退職できます。

土日が公休の場合、月曜日から金曜日までの5日間を有給休暇消化し、土日は公休なので有給休暇を消化する必要はありません。

翌週も同様にすれば、14日間のうち10日間が有給休暇、土日の4日間は公休となり、会社に行くことなく退職日を迎えることになります。

退職日までの14日間を欠勤する

有給休暇が全く残っていない場合は、退職日までの14日間を欠勤することで、即日退職することが可能です。

ただし、無断欠勤など正当な理由がなく欠勤した場合には、就業規則に基づいて懲戒処分を受けたり、損害賠償請求されたりする可能性があります。

パワハラやセクハラなどで会社に行くことがどうしても困難な場合には、体調不良として欠勤の申請をしましょう。

即日退職するためだけの理由で退職日までの14日間を欠勤することは、リスクの高い行為と言えます。詳細は弁護士に相談してみましょう。

会社との合意のもと即日退職する

消化できる有給休暇がなく、即日退職するためだけに欠勤するのは心苦しいと思う場合でも、会社との合意があれば、即日退職は可能です。

期間の定めのない雇用の労働者は、退職の意思を伝えた後、2週間を経過する前に一方的に退職することはできません。会社は労働者の意に反して即日解雇も不可能です。

前者は労働者による雇用契約の一方的な解約であり、後者は会社による雇用契約の一方的な解約となります。

一方、労働者と会社が合意によって雇用契約を解約することは、合意解約です。

合意解約であれば、退職日までの14日間を有給休暇や欠勤で消化する必要はありません。

退職を申し入れてから2週間を有給休暇や欠勤で消化する実質的な即日退職と異なり、言葉通りの即日退職が可能です。合意解約が成立した時点で雇用契約は解消され、即日退職できます。

会社としては、14日間に欠勤後に退職する場合と合意解約で即日退職を認める場合では、業務に対する影響に差はありません。14日間欠勤してでも即日退職する覚悟があるのであれば、会社が合意解約を認めるかもしれません。

会社と合意解約をする場合には、会社との交渉が必要になります。会社との交渉ができる弁護士に退職代行を依頼しましょう。

やむを得ない事由がある

やむを得ない事由があれば、2週間経過しなくても即日退職が可能とされています。

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

民法628条

やむを得ない事由とは、心身の障害やパワハラ・セクハラなどと考えられていますが、明確に記載されているわけではありません。

ご自身のケースがやむを得ない事由に該当するかどうかは、弁護士に相談しましょう。

まずは退職代行業者に即日退職できるか確認

退職代行を使用して即日退職したい場合には、「即日退職」と記載されている退職代行業者かどうかを確認しましょう。

「即日退職」ではなく「即日対応」と記載されている退職代行業者もあります。

「即日対応」とは、依頼を受けた日から退職代行業務を行えることを意味したものであり、即日退職できるとは限りません。

即日退職を希望する場合には、「即日退職」と記載されている退職代行業者を選びましょう。

退職代行で即日退職するリスクとは?

会社から協議・交渉を申し入れられる可能性がある

退職代行業者を使用して即日退職する場合、会社から協議・交渉を申し入れられる可能性があります。

即日退職するということは、残務処理や業務引き継ぎ、後任を探す余裕もないからです。業務に多大な影響を与えることもあるでしょう。

会社としては業務への影響を最小限にするために、少しでも退職日を先延ばしにできないか協議・交渉を持ちかけるわけです。

退職代行業者によっては協議・交渉に対応できない場合がある

退職代行業者によっては協議・交渉に対応できない場合があります。

弁護士ではない退職代行業者が交渉などの法律事務を行えば非弁行為となります。弁護士と提携している退職代行業者であっても、弁護士が直接交渉を行わなければ非弁行為となることに変わりはありません。

会社が協議・交渉を持ちかけてきた場合、弁護士ではない退職代行業者だとかえって泥沼化する恐れがあります。

損害賠償請求されるおそれがある

退職代行で即日退職すると、損害賠償請求されるおそれがあります。損害賠償請求が認められる可能性は低いですが、法律上訴訟自体は誰でも提起することができ、対応を迫られるケースもあります。

弁護士ではない退職代行業者の場合、会社が損害賠償請求したり違法な対応をしたりしても、法的な対応ができません。

退職代行で即日退職したいときの注意点

退職代行で即日退職したいときの注意点は、以下の2点です。

即日退職する際の注意点

  • 社宅や寮に住んでいる場合、退職日までに退去できるようにする
  • 備品は必ず返す

社宅や寮に住んでいる場合、退職日までに退去できるようにする

社宅や寮に住んでいる場合、退職日までに退去できるようにしましょう。

会社が所有する社宅や社員寮にいつまで住めるのかについては、社内規定に書かれています。在職中は住んでいられますが、退職後はすぐに退去しなければいならないことが多いようです。

社内規定を確認し、退職日までに退去できるように準備しておきましょう。

備品は必ず返す

郵送でもいいので備品は必ず返しましょう。

在職中は備品を自由に使えますが、退職すると備品を使う権利はありません。名刺などを返却せずに持ったまま退職すると、トラブルが発生したときに会社から疑われるかもしれません。

即日退職するつもりであれば、事前に返却が必要な備品を整理しておき、忘れずに返却しましょう。

弁護士による退職代行がおすすめ

会社からの引き留めは弁護士による退職代行で対処する

退職代行業者を使用して即日退職する場合、会社からの引き止めが想定されます。

即日退職を希望する場合には、非弁行為になるおそれがなく、交渉の代理等もできる弁護士による退職代行がおすすめです。

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弁護士に退職代行を依頼するときの費用は?

弁護士に退職代行を依頼するときの費用は、退職代行だけの場合で5万程度です。

また、弁護士に退職代行を依頼すれば、退職代行以外に残業代請求なども同時に依頼することもできます。

退職代行以外に依頼したいことがある場合には、事前に費用面の相談をしておきましょう。退職代行に関する相談は、無料で対応してくれる弁護士事務所もあります。

退職代行でお悩みの方はまず弁護士に相談してみましょう。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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