退職代行で起こるトラブルとは?未然に防ぐ方法を弁護士が解説
「退職代行を利用しても退職が拒否されるのでは?」
「退職代行が失敗になることはないのか」
退職代行サービスとは、退職の手続きを自分の代わりに行ってくれるサービスです。
退職代行サービスを利用したいと考えている方の中には、退職代行によるトラブルや失敗するケースについて不安に思う方もいるのではないでしょうか。
退職代行を利用しても、基本的には退職が認められなかったり、会社から損害賠償を請求されたりすることはありません。
しかし、依頼する代行業者によっては、「法的トラブルに対応できない」「想定よりも費用がかかってしまう」といった事態に陥るおそれがあります。
そこで今回は、退職代行サービスを利用することで想定されるトラブルや、それを未然に防ぐ対策について弁護士が解説します。
退職代行で退職しても大丈夫!
退職は基本的に認められる
退職代行サービスの依頼先には、一般の退職代行業者や労働組合(退職代行ユニオン)、弁護士といったものが挙げられます。
いずれのサービスを利用しても、基本的に退職が認められないということはありません。
無期雇用の場合は、労働者は退職の意志を伝えれば退職できると法律で定められています(民法627条)。
したがって、退職代行サービスを使ったからといって、退職が認められないということはありません。
退職代行で損害賠償請求の危険性もまずない
「退職代行で会社を突然辞めると、損害賠償を請求されてしまうのではないか」と考える方もいるかもしれません。
損害賠償請求は、会社の権利を侵害された場合に限ります(民法709条)。
したがって、退職代行を利用したことで会社から損害賠償を請求されるリスクは小さいでしょう。
ただし、「必要な引き継ぎをせずに退職した結果、取引先との契約がなくなってしまった」など、会社に具体的な損害が発生している場合は、損害賠償を請求されるおそれがあるので注意しましょう。
退職代行で懲戒解雇となるリスクは非常に低い
「退職代行を利用すると懲戒解雇されてしまうのでは」と不安になる方もいるかもしれません。
退職代行を利用したことで懲戒解雇されるリスクは非常に低いです。
また、退職代行を利用したことで懲戒解雇をすることは、よほどの悪質性がないと違法であり、懲戒解雇は無効になります。
退職代行を利用することが、懲戒解雇に直接影響するわけではないといえます。
退職代行で想定されるトラブル
非弁業者に依頼してしまう
退職代行で失敗するケースとして、非弁業者に依頼してしまうということが挙げられます。
一般の退職代行業者は、会社に退職する意思を伝えることはできます。
しかし、会社と法的な交渉をおこなうことは非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)にあたるため、未払い残業代の請求といったアクションを起こすことはできません(弁護士法第72条)。
そのため、「有給を消化したい」「未払い残業代を支払ってほしい」といった要望を通すことができないというデメリットがあります。
業者に予想以上の金額を請求される
他の業者よりも極端に安い価格で退職代行サービスをおこなっている業者には注意が必要です。
当初予定されていた金額よりも多額のサービス料を請求されたり、サービスの質が悪かったりするおそれがあります。
関連記事
・退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説
法的トラブルに対応できない
基本的に退職代行を使ったことで会社から損害賠償を請求されることはありませんが、仮に訴訟や法的トラブルに発展した場合、一般的な退職代行業者やユニオンでは対応が難しいです。
結局、依頼者自身が会社と直接交渉したり、別途で弁護士に依頼したりといった対応が必要になる可能性があります。
退職後に必要書類が送られてこない
「退職代行で退職できたものの、離職票といった書類が送られてこない」というケースがあります。
離職票や雇用保険被保険者証といった書類は、失業保険の申請手続きに必要です。
こういった書類が送られてこないという場合は、ハローワークに相談すれば、ハローワーク側から会社に書類を発行するように要請してもらえます。
退職代行のトラブルを防ぐ方法
退職代行を利用することで発生しうるトラブルは、どのようにすれば防げるのでしょうか。
顧問弁護士がいる業者に依頼する
退職代行業者に依頼する際に、顧問弁護士が存在しているかどうかをチェックすることが重要です。
顧問弁護士を設置している退職代行業者であれば、非弁行為のリスクが低いといえるでしょう。
もちろん、口コミや評判をチェックしておくことも重要です。
依頼前にサービスの範囲を確認する
退職代行業者に依頼する前に、業者がどのようなサービスまでおこなってくれるか、サービスの範囲について説明を受けておきましょう。
顧問弁護士を設置していない退職代行業者の場合は、サービスの範囲は「退職意思を代理で会社に伝える」にとどまります。
それにもかかわらず、「未払い残業代の交渉もできる」「有給消化の交渉も可能」などとうたっている場合は、非弁業者である可能性が高いといえます。
退職代行に相談する際のポイントは『退職代行の相談時に確認すべき内容や選び方を解説!』の記事で詳しくまとめています。ぜひご覧ください。
料金システムが明確な業者に依頼する
サービス内容と同じく、料金システムや価格体系が明確な業者に依頼するようにしましょう。
不明瞭な料金システムの業者に依頼すると、のちに金銭トラブルに発展してしまうリスクが高くなります。
引き継ぎ資料を残しておく
担当業務で引き継ぎが必要な場合は、引き継ぎ資料を残しておくようにしましょう。
引き継ぎ資料を残すことで、会社から「損失を受けた」という理由で損害賠償を請求されるリスクを小さくすることができます。
貸与物は返却し、私物は回収しておく
退職代行サービスを利用する際には、会社からの貸与物は返却し、会社に残っている私物については郵送してもらうことになります。
会社とのやり取りを減らすためにも、あらかじめ貸与品をまとめておいたり、私物を持ち帰ったりしておきましょう。
弁護士に依頼する
非弁のリスクを考えると、退職代行は弁護士に依頼することをおすすめします。
「有給を消化したい」「未払い残業代を請求したい」などについて会社と交渉することができるほか、訴訟問題に発展したとしてもスムーズに対応することができます。
弁護士に退職代行を依頼するメリット
先述のように、退職代行を弁護士に依頼すれば、トラブルに発展したとしてもスムーズに対応することができます。
未払いの残業代や給与を請求してもらえる
弁護士に退職代行を依頼することの大きなメリットとして、未払いになっている残業代や給与を退職代行と同時に請求できるということが挙げられます。
在職中に残業代を請求することが心理的に難しかったり、規程通りに退職金が支給されなかったりした場合でも、弁護士に依頼すれば代理で請求してもらうことができます。
非弁行為のリスクがない
先述のように、一般の退職代行業者が代行できるのはあくまで「退職の意思を告げること」だけです。それ以上に何らかの法的な交渉をおこなうと、トラブルに発展するおそれがあります。
一方、弁護士であれば非弁行為に該当するリスクはなく、有給休暇の取得や退職日の調整といったさまざまな事情を代理で交渉してもらうことができます。
退職に失敗するおそれが小さい
一般の退職代行業者では、退職する意思を告げたときに勤務先側から反論を受けたり、退職を認められなかったりした場合、法的な対応をとることができないというリスクが考えられます。
場合によっては、勤務先から損害賠償を請求されてしまうといった、トラブルに発展してしまうかもしれません。
弁護士に依頼すれば、勤務先側と法的な交渉をおこなうことができるため、そういったリスクを考えることなくスムーズにトラブルに対応することができます。
関連記事
・退職代行を弁護士に依頼するメリットは?費用・代行業者との違いまで完全解説!
まとめ
退職代行サービスを利用することで、退職が認められなかったり、会社から損害賠償を請求されたりすることは基本的にありません。
弁護士であれば、非弁のリスクを考えることなく退職代行を依頼できます。
ほかの事業者と比較して退職代行の費用は高くなりますが、退職代行をお考えの場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了