会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?

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突然解雇されたら

「社長に呼び出され明日から来なくて良いと言われた」
「クビ宣告されたが、違法ではないのか」

会社から突然解雇された方の中には、解雇に納得がいかない方も多いのではないでしょうか。

使用者(会社)は、労働者を自由に解雇することはできません。突然の解雇には法律上多くの問題があるため、違法となる可能性が非常に高いです。

そのため、突然解雇された場合は、解雇の違法性を主張するための行動を起こすことが大切です。

この記事では、会社が労働者を解雇できる要件について説明し、解雇が不当と感じる場合に取るべき対処法と相談窓口を解説します。

突然の解雇は基本的に違法!解雇の要件とは

解雇の要件とは

解雇とは、使用者が一方的に労働者との労働契約を解消することを指します。

解雇が自由に認められてしまうと、労働者はいつ契約を切られるかわからず、非常に不安定な状態になります。

そのため、使用者が労働者を解雇するためには、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要であると規定されています(労働契約法16条)。

正当な解雇とみなされるハードルは高く、「身勝手な理由による解雇は許されない」イメージです。

改善の機会が与えられない解雇は違法となりやすい

解雇の理由(客観的に合理的な理由)の典型例は、勤務態度の問題(無断欠勤など)、労働者の能力不足や勤務成績の不良といった事情がある場合です。

しかし、そのような事情があるだけで解雇が認められることはあまりなく、その状態を改善するために使用者がどのような対策を取ったかが問われます。

つまり、使用者側の行動も踏まえて、解雇がやむを得ないか(社会通念上相当かどうか)が判断されるということです。

たとえば、営業部署で成績不良であっても、それだけを理由に突然解雇することは認められず、使用者には適性に合った職種への転換などが求められます。

実際の裁判例でも、成績不良を理由に解雇された事案につき、さらなる業務改善の機会の付与が必要であったこと等を理由に、解雇を違法・無効と判断したものがあります(日本アイ・ビー・エム事件東京地判平成28年3月28日)。

解雇は事前に予告しなければ違法となる

解雇の要件である①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性がある場合でも、使用者が労働者を解雇する場合には「解雇予告」という手続きをとらなければなりません。

使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前にその予告をする必要があります(労働基準法20条1項本文)。

つまり、基本的に解雇される30日前には事前に予告されるはずであり、突然の解雇は、例外的な場合を除き、手続きにおいても違法となるということです。

突然の解雇でも違法にならないことはある?

突然の解雇は違法となる場合が多いですが、例外的に違法とならないこともあります。

例外的に違法とならないのは、以下のケースです。

突然の解雇が違法とならないケース

  • 解雇予告手当が支払われている
  • 事業の継続が不可能となった場合
  • 労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合
  • 特定の労働者に該当する

解雇予告手当が支払われている場合

会社から解雇予告手当が支払われる場合は、突然の解雇であっても違法にはなりません。

解雇予告に関して規定している労働基準法20条1項には、「30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と定められています。

つまり、30日分の平均賃金を支払えば30日前の予告は不要ということです。これにより、突然の解雇も手続きとして可能となります。

なお、解雇予告と解雇予告手当の組み合わせも許されており、平均賃金を支払えばその分解雇予告の日数を短縮できるとされています(労働基準法20条2項)。

たとえば、15日前に解雇予告をし、15日分の解雇予告手当を支払うという手続きも可能です。

事業の継続が不可能となった場合

会社が地震・火災などの天変地異で事業の継続が困難になった場合は、突然解雇しても違法にはなりません。

従業員を解雇するには、労働基準監督署長の認定を受ける必要があります。

労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合

分かりやすく言うと、労働者に重大な責任がある場合です。

たとえば、職場での横領・殺人などの犯罪行為、高卒の人が大卒と詐称して入社するなど経歴詐称などが挙げられます。

特定の労働者に該当する場合

特定の労働者

  • 日雇い労働者(継続期間が1か月未満)
  • 契約期間が2か月以内の者
  • 4か月以内の季節労働者
  • 試用期間中の者(14日未満)

期間を超えて働いていた場合は、解雇予告手当をもらうことができます。

突然の解雇でも社会通念上相当と認められる場合

以上のように、手続き上は例外的な場合も存在します。

しかし、その場合でも、「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められない限り解雇は無効となる」という規制は及びます。

そのため、改善の機会を与えなくとも構わないと認められるような事情がある場合を除き、やはり突然の解雇は違法と判断されることとなります。

もっとも、いわゆる「懲戒解雇」の場合には突然の解雇もやむを得ないとされることがあります。

懲戒解雇の場合

懲戒解雇は懲戒処分として行われる解雇のことで、単なる能力不足等を理由にするものではなく、職場規律や秩序への重大な違反に対して制裁として行われます。

そのため、懲戒解雇は「労働者の責めに帰すべき事由」による解雇として労働基準監督署長の認定を受けたうえで、解雇予告・解雇予告手当の支払いといった手続きをとらずに解雇されることが多くあります。

もっとも、懲戒処分にも「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められない限り無効となる」というルールがあります(労働契約法15条)。

懲戒解雇には、懲戒に関するこの規制と解雇に関する規制の両方がかかるため、普通の解雇よりも有効性が厳しく判断されます。

したがって、懲戒解雇の場合も、始末書等の軽い懲戒処分から行われ、改善されなければ段階的に重い処分となり、最終的に懲戒解雇に至ることが一般的です。

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突然解雇されたときの対処法

突然の解雇について金銭の支払いを求める

解雇が違法・無効となれば、その解雇はなかったことになり、職場に復帰することができますが、加えて、会社に対して慰謝料などの損害賠償を請求することができます。

ただし、違法な解雇でも慰謝料の請求が認められない例も多く、慰謝料額についても明確な基準はありません。請求するのであれば、専門家に依頼することが最適でしょう。

また、解雇予告がされていない場合については、解雇予告手当の支払いを求めることもできます。この場合、労働基準監督署に相談することが、費用もかからず比較的迅速な解決も望めるため有効と言えます。

もっとも、解雇が無効であるとの主張は難しくなるため、慎重な検討が必要だと言えます。できれば、まずは専門家に、解雇の有効性について相談することをおすすめします。

突然の解雇は無効となりやすく、手続きにおいても違反が起きやすいものです。

しかし、違法とならない場合もあり、迅速な行動も求められるため、突然の解雇に遭った場合には、解雇理由を確認したうえで専門家に相談しましょう。

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突然解雇されたら解雇理由証明書の交付を請求する

突然の解雇に納得がいかない場合は、解雇理由の確認のため、会社に解雇理由証明書の交付を請求してください。

解雇理由証明書は、その名の通り解雇の理由が記された書面であり、労働者が請求すれば、使用者には交付の義務があります(労働基準法22条1項)。

口頭で解雇理由を聞かされていた場合でも、解雇理由証明書を請求し、解雇理由を明らかにしましょう。

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突然の解雇が違法かどうか検討する

受け取った解雇理由証明書から、解雇理由が違法かどうか検討しましょう。

なお、使用者から解雇理由証明書の交付を受けたとしても、詳細な理由が記載されているとは限りません。

たとえば、「就業規則の第○条に該当したため」といったように、就業規則の該当条文が書かれているだけということもあります。

解雇理由に①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性がない場合は、違法である可能性が高まります。

突然の解雇について違法性を争う場合の相談窓口は?

突然解雇され、違法性を争うことをお考えの方は、弁護士や労働組合などの専門家へ相談・依頼することが効果的です。

弁護士

弁護士は突然の解雇について、その違法性を整理し法的にまとめたうえで、労働者の権利を主張するために活動します。

無料相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、探してみるといいでしょう。

弁護士に相談するメリットは、労働審判や裁判での勝率も視野に入れた相談ができることです。

加えて、弁護士から解雇の違法性を主張することで、自分自身で対応するよりも解雇を撤回してもらえる可能性が高まります。

解雇の違法・無効を主張し、権利を実現することを主眼に置くのであれば、適した相談先と言えるでしょう。

ただ、あくまで解雇の法的な問題点を追求していくため、解雇が無効となり職場復帰をしたあとのことまで見越した活動は難しい面があります。

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労働組合

職場復帰を望むのであれば、労働組合に相談するという選択肢もあります。

労働組合は労働者の処遇の向上のために使用者に対して働きかけを行う団体で、主な活動は「団体交渉」と呼ばれる使用者との交渉です。

団体交渉には憲法・労働組合法上の裏付けがあり、一定の法的な効力があります。また、解雇の違法性のほか、職場復帰したあとの条件等まで含めて交渉することができ、柔軟な解決が期待できます。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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