懲戒解雇されたら弁護士に相談!弁護士に相談すべき理由を解説

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懲戒解雇されたら弁護士に相談

懲戒解雇は、従業員が規律違反をしたことを理由に、制裁としてなされる解雇のことを指します。

従業員側に主たる解雇の理由があるという点で、普通解雇や整理解雇(人員整理のために行われる解雇)とは大きな違いがあります。

不当な懲戒解雇をされると不利益は大きいため、すぐに弁護士に相談することが重要です。

この記事では、懲戒解雇とはいったいどういうものか、懲戒解雇を弁護士に相談すべき理由を詳しく解説します。

懲戒解雇とは?懲戒解雇をされるとどうなる?

懲戒解雇とは?

懲戒解雇とは、就業規則上の懲戒事由に反したことを理由に、使用者(会社)が一方的に労働者との契約を解除することを指します。

解雇には、普通解雇・整理解雇(リストラ)・懲戒解雇の3つの種類がありますが、懲戒解雇は社内秩序を著しく害した労働者へのペナルティとして行われる解雇であり、普通解雇とは性質が異なります。

一般的には即日の解雇となり、解雇予告手当や退職金が一部または全部不支給となることも多くあります。

普通解雇や、退職金が割増されることもある整理解雇と比べると、労働者にとって不利になる可能性があります。

解雇の種類について詳しく知りたい方は『不当解雇とは?正当な解雇との違いや不当解雇の事例を解説』の記事もご覧ください。

懲戒解雇をされると転職・再就職が不利になる

懲戒解雇をされたことが発覚すると、転職・再就職にあたって不利になりうることは事実です。

懲戒解雇をされるほどの規律違反行為をしてしまったことを理由に、雇用に慎重になる企業は多くあります。

実際に懲戒解雇が新たな就職先に発覚してしまう経緯としては、以下のようなものがあります。

懲戒解雇が発覚してしまう経緯

  • 履歴書の賞罰欄から発覚する
  • 退職証明書の提出を要求される
  • 面接時に前企業の退職理由を質問される

履歴書の賞罰欄に記載する

履歴書には賞罰欄が記載されているタイプがあります。面接を受ける企業やエージェントから履歴書を指定され、賞罰欄が記載されていた場合には、記載しなければならない可能性もあります。

なお、賞罰欄に記載しなければならない「罰」とは刑法犯罪のことです。職場で発生しやすい罪は、業務上横領罪や窃盗罪などです。有罪判決を受けて懲戒解雇された場合には正直に記載しましょう。

なお、懲戒解雇された事実が入社後に発覚すると、経歴詐称として別個の懲戒事由となる可能性もあります。

退職証明書の提出を要求される

退職証明書は、退職する会社から必ず交付されるものではなく、労働者が交付を求めた場合に交付が義務づけられている書類です。

転職・再就職する企業によっては、退職証明書の提出を求めてくることがあります。懲戒解雇の旨が記載されていた場合は、懲戒解雇された事実が発覚してしまうでしょう。

面接時に前企業の退職理由を質問される

質問に対して懲戒解雇されたと回答すれば、当然ながら懲戒解雇が発覚します。

面接時の質問に対して「懲戒解雇されていない」と答えるのは経歴詐称になるので控えましょう。

懲戒解雇が違法となる条件とは?

就業規則に懲戒種別・事由の記載がない

使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則に懲戒の「種別」と「事由」を定めておく必要があります。

種別とは実際になされる懲戒処分の種類、事由とは実際にこのような非違行為をしたら懲戒処分がなされる、という具体的な行為のことです。

具体的には、就業規則に「無断欠勤●日以上をすると懲戒処分」という記載がない場合、無断欠勤したことを理由に懲戒処分をすることはできない、ということになります。

懲戒解雇が懲戒権の濫用にあたる

使用者の懲戒権の行使は、対象となる労働者の行為の性質・態様その他の事情に照らして、それが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。

一般に、懲戒権の濫用にあたるかどうかは以下の要素を考慮して判断されます。

  • 労働者の非違行為の性質、態様、程度
  • 就業規則の懲戒事由への該当性
  • 情状されるべき事情
  • 懲戒権の行使に至るまでの過程
  • 同様の事案における懲戒状況

「非違行為」とは、就業規則などの会社で定められているルールを違反する行為のことです。

たとえば、就業規則に記載のないような軽微な非違行為の場合は、その行為により企業秩序を乱したとまでは考えられず、懲戒解雇となる客観的に合理的な理由がないと言えます。

また非違行為を会社が認識しつつも一度も注意していなかったにもかかわらず、ある日突然懲戒解雇を告げてくるような場合は、その懲戒解雇は社会通念上相当ではないと判断されやすくなります。

懲戒解雇までの適正な手続きが踏まれていない

懲戒処分は、制裁罰としての性格を持つため、適正な手続きを踏む必要があります。

多くの企業では、懲戒委員会や労使協議会などでの検討を行う、当事者に弁明の機会を与えるなどの手続きを経た上で処分を決定するという運用を取っています。

懲戒解雇であるにもかかわらず、その理由や該当非違行為を告知されないなどの場合は、適正な手続きが踏まれておらず、懲戒処分は無効になる可能性があります。

実際に懲戒解雇になりうる懲戒解雇事由5選

①重要な経歴詐称

会社に入社する際に、学歴や職歴、犯罪歴などを偽った場合、懲戒解雇事由に該当する可能性があります。

ただし、使用者による能力や人物評価を妨げ、継続的な労働契約関係における信頼関係を損なうような重要な経歴の詐称があった場合にのみ、懲戒解雇事由に該当すると考えられています。

なお、経歴の詐称は、高く詐称するだけでなく、低く詐称する場合も懲戒事由に該当しうることになります。

②職場規律違反

会社物品の窃盗や、横領行為、セクハラ、暴行行為などは、職務規律違反行為として懲戒解雇事由に該当する可能性があります。

ただし、職場規律を違反している場合も、企業秩序がどの程度害されているのかを検討しなければなりません。

③無断欠席等

無断欠席等があった場合も、懲戒解雇事由に該当しうるといえます。

しかし、少しの遅刻や1回の欠席ですぐに懲戒解雇に該当するというわけではありません。

およそ2週間を超える無断欠勤、けん責や戒告を行っても欠勤が繰り返されるなど、企業秩序への影響の有無と程度を総合的に考慮して判断をすることになります。

④会社外での行為

まず、原則として使用者は、労働者の私生活まで管理する権限はありません。

就業時間外で何をしようとも労働者の自由であり、使用者から口出しをされることは基本的にないです。

しかし、企業の円滑な運用に支障をきたすおそれがあるなど、企業秩序に関係する事由の場合は、企業秩序維持のために懲戒解雇をすることも許されると考えられています。

勝手に人の家に入って住居侵入で罰金刑を受けた人に対する懲戒解雇に対し、懲戒解雇は無効であると判断した事例もあります。

⑤二重就職・兼業規制

現在は、本業の他に副業をしている方も数多くいると思います。

裁判例では、副業や兼業を懲戒事由にすることの相当性はかなり厳格に判断されます。

まず、二重就職・兼業を全面的に禁止する就業規則は合理性を欠くが、これを許可制にする場合は、合理性が認められると判断されています。

その上で、二重就職により、本業に対して具体的な支障が生じる場合や競合する会社への就職により、本業に対する背信行為と認められる場合に限定をして、懲戒事由に該当すると判断されます。

懲戒解雇をされたら弁護士に相談すべき?

懲戒解雇を弁護士に相談をする必要はある?

懲戒解雇をされた場合、退職金の支給が無い可能性が高く、その上、即時解雇になってしまえば、明日からの生活の維持もままならなくなります。

このような不利益の大きさに鑑みれば、弁護士に依頼をして、迅速な手続きをとってもらう必要性があります。

また、会社が労働者を懲戒解雇するためには、懲戒解雇事由が必要になります。

ご自身の受けた解雇が、あまりにも懲戒処分として重すぎる、懲戒権の濫用にあたるとお考えの場合は、弁護士に相談してください。

弁護士は、労働者が懲戒解雇された事由と置かれた状況と踏まえ、今後どのように対処するべきかのアドバイスをすることができます。

弁護士に相談する前に準備すること

弁護士に相談する前に、解雇理由証明書の発行と就業規則を確認しておきましょう。

解雇理由証明書には、文字通り解雇に至った理由の記載がかかれた書面です。

解雇された労働者が請求すれば、会社は解雇理由を証明する書類を発行することが法律で義務付けられています。弁護士としても、解雇理由が具体的にわかれば、懲戒事由の該当性を判断できます。

また、就業規則には懲戒事由等の記載が考えられます。

就業規則に懲戒種別・事由の記載がない場合は、懲戒解雇が違法となる可能性もあります。

懲戒事由が記載された部分の就業規則のコピーなどを取っておくといいでしょう。

どのような弁護士に懲戒解雇の相談をするべき?

弁護士を選ぶ際には、労働問題を専門的に扱っている弁護士に相談しましょう。

懲戒解雇に関しては、労働者側と企業側の双方の意見が対立することも多く、労働問題を専門的に扱っている弁護士でないと納得のいく解決が図れない可能性もあります。

無料で相談を受け付けている弁護士事務所もあるため、一度相談してみてはいかがでしょうか。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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