M&Aの完全成功報酬はお得?相場・メリット・デメリットなどを解説
- M&Aの完全成功報酬制とは?手数料はどのくらい?
- 完全成功報酬制のメリットは?デメリットは?
- 完全成功報酬制のM&A仲介会社が向いているケースとは?
M&Aの完全成功報酬制とは、M&A仲介会社などに支払う手数料の料金体系(報酬体系)のひとつです。
完全成功報酬の場合、着手金や中間金(中間報酬)などは発生せず、M&Aが成約した時点ではじめてM&Aの成約(成功)に対する報酬が発生します。
完全成功報酬制のM&A仲介会社が向いているのは、どのような案件なのでしょうか。
この記事では、完全成功報酬制の概要、成功報酬の相場、メリット、デメリットなどについて徹底解説しています。
現在、M&Aによる事業承継をご検討中の経営者の方など、是非最後までお読みください。
目次
M&Aの完全成功報酬とは?相場は?
M&Aの完全成功報酬とは?
M&Aをおこなう場合に、仲介会社などを利用したときの手数料としては、着手金、月額報酬、中間報酬、成功報酬などの費用がかかります。
完全成功報酬制とは、着手金、月額報酬、中間報酬などを請求せずに、成功報酬のみ請求するという料金体系です。
各種手数料について
- 着手金*
仲介契約、FA契約の締結時に支払う - 月額報酬*
一定額を毎月支払う - 中間報酬
基本合意書の締結時など、案件完了前の一定の時点で支払う - デューデリジェンスの費用
買い手側が負担。M&A実施にともなうリスクの調査(買収監査)にかかる手数料 - 成功報酬
クロージングの際など、案件の完了のタイミングで支払う
*一定期間の継続的な業務に対して支払われる定額顧問料のことをリテイナーフィーということが多いが、単に着手金のみをさしてリテイナーフィーと呼ぶこともある。
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完全成功報酬を支払うのは誰か?
M&A仲介会社が売り手側、買い手側の双方の仲立ちとなるM&A仲介契約においては、M&Aの成約時に、売り手側、買い手側の双方がM&A仲介会社に対して、成功報酬を支払う例が多いでしょう。
ただし、なかには、売り手側は完全無料、買い手側にのみ成功報酬を請求するといった完全成功報酬制もあります。
M&A仲介会社ごとに料金体系が異なるので、確認を忘れないことが大切です。
M&Aが完全成功報酬の場合、手数料の相場は?
成功報酬の相場は、M&A仲介会社によって異なります。
着手金や中間金があるM&A仲介会社の仲介手数料と比べると、成功報酬の相場は、やや高額の料金設定になっているといわれています。
M&A仲介会社の料金体系では、M&Aの取引金額(売却価格)の何割かが成功報酬とされることが多いものです。
また、小規模のM&Aであっても、最低報酬金額として数百万円程度の支払いが必要になることがあるでしょう。
M&Aの成功報酬の算出方法(一例)
M&Aの成功報酬の算出方法のうち、代表的なものとしては「レーマン方式」でしょう。
M&Aのレーマン方式とは、取引金額(株式の譲渡金額、事業の譲渡金額などの売却価格のこと)などに応じて、報酬率をかけて、報酬を計算する方法です。
レーマン方式では、取引金額(売却価格)などが大きくなればなるほど、報酬率は下がっていきます。
業界標準といわれるレーマン方式による場合、M&Aの取引金額が5億円以下のときは、その5%である2500万円が成功報酬となります。
取引金額(売却価格) | 報酬率 |
---|---|
5億円以下 | 5% |
5億円超~10億円以下 | 4% |
10億円超~50億円以下 | 3% |
50億円超~100億円以下 | 2% |
100億円超 | 1% |
*こちらの表はあくまで一例です。 中小企業庁・経済産業省の「中小M&Aハンドブック 2024年2月9日版」の21ページを参考にしました。
事例:取引金額10億円の成功報酬
業界標準のレーマン方式による場合、取引金額が10億円のときの成功報酬は4500万円になります。
5億円以下の取引金額に対応する成功報酬が2500万円、5億円を超えて10億円までの成功報酬が2000万円となります。
5億円×5%=2500万円
(10億円-5億円)×4%=2000万円
2500万円+2000万円=4500万円
レーマン方式の注意点
M&A仲介会社によって、レーマン方式の基礎となる金額や報酬率が異なるなど、計算方法が異なる可能性があります。
また、計算結果にかかわらず、最低報酬金額が設けられていることもあるので注意が必要です。
なお、すべてのM&A仲介会社がレーマン方式を採用しているわけではありません。依頼をする前に必ず料金体系を確認してください。
M&Aが完全成功報酬制の場合のメリット
完全成功報酬のメリットの一例として、以下の3点をあげることができます。
メリット
- M&Aの初期費用をおさえられる
- M&A成約へのモチベーションが向上
- 費用を無駄にするリスクを回避
1.M&Aの初期費用をおさえられる
完全成功報酬制の場合、M&A成約まで報酬が発生しません。
着手金や中間金などの初期費用をおさえられるため、資金繰りなどを気にすることなく、M&Aに踏み切ることができます。
特に、中小企業やスタートアップ企業にとって、初期費用を抑えられる点は大きなメリットとなるものではないでしょうか。
2.M&A成約へのモチベーションが向上
完全成功報酬制の場合、仲介会社の収入は成功報酬のみになります。
そのため、M&A仲介会社の案件成立に対するモチベーションが高まる傾向があります。
売り手側としては、円滑なM&Aの成約を目指すことが期待できます。
3.費用を無駄にするリスクを回避
交渉決裂となるなどM&Aが失敗した場合には、M&A仲介会社に支払う費用がまったく発生しないため、費用が無駄になるリスクを回避できます。
これは、M&Aが初めてで不安な企業にとって安心材料となります。
M&Aが完全成功報酬制の場合のデメリット
完全成功報酬のデメリットは、M&Aの成約まで仲介会社の報酬がないことの弊害と言い換えることができるでしょう。
たとえば、完全成功報酬のデメリットについては、以下の3点があげられます。
デメリット
- M&Aの成功報酬が高額になりやすい
- M&Aの成約まで時間がかかることもある
- M&Aの成約に躍起になる・交渉が強引になる
1.M&Aの成功報酬が高額になりやすい
M&A仲介会社は、結果を出さない限りはまったく利益を手にすることができません。
そのため、結果を出したときの報酬金額は高く設定せざるを得ないという実情があります。
せっかく高額売却がかなったとしても、成功報酬が高額になると、売り手自身の手取りが少なくなってしまうというデメリットがあるでしょう。
売却価格を高額にすることができれば、成功報酬が高額になってもダメージを回避できる可能性があります。
会社を高く売るために企業価値向上に取り組んでおくと良いでしょう。
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2.M&Aの成約に至らない可能性もある
完全成功報酬制を採用しているということは、M&A成約の可能性が高く、高額売却が見込まれる案件のみを扱っている可能性が高いものでしょう。
そのような案件に該当しない場合、費用倒れのおそれがあるため、仲介会社の利用を断られることもあるでしょう。
また、成約の見込みが薄い案件の場合、登録はしたものの、なすすべなく買い手が現れるまで延々と待つことになる可能性があります。
とはいえ、売り手側としては、買い手探しのために様々な手段を用いることは重要です。
成約まで無料ならば、いったん相談や登録をしておき、他社と併用するなどの対応をとるのがおすすめです。
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3.M&Aの成約に躍起になる・交渉が強引になる
M&Aが成約に至らなければ報酬がでないため、仲介会社は成約に躍起になる可能性があります。
M&A成約にこだわり、売り手にとって不利な条件で強引な交渉を進めるM&A仲介会社も存在するので、注意が必要です。
完全成功報酬になることで、質の高いサービスの提供を受けられないおそれがある点はデメリットといえるでしょう。
譲れない条件や妥協できる点などについて、あらかじめ検討しておき、M&A仲介会社の担当者とよくコミュニケーションをとることが重要になります。
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完全成功報酬が向いているM&Aとは?
初期費用を抑えたい場合や、M&Aの経験が少ない経営者にとっては、完全成功報酬制がおすすめです。
とくに、会社売却をおこない、その後の生活資金や新規事業の立ち上げにあてたいとお考えの場合、無駄な出費をおさえることができるため、完全成功報酬は、非常に魅力的です。
ただし、完全成功報酬制の場合、M&Aが成約するまで仲介会社は報酬を手にすることができないので、M&Aの成約に躍起になるなどのおそれもあります。
完全成功報酬には一長一短ありますが、最後は自分の目で見極めるしかありません。
利用しやすく、信頼できるM&A支援機関を探すことが大切です。