後遺障害12級13号とは?むちうちで12級に認定される条件
交通事故によるむちうちなどが原因で痛みやしびれといった神経症状が残った場合、後遺障害12級13号に認定される可能性があります。
後遺障害12級13号は、14級9号とともに神経症状に関する後遺障害等級です。
後遺障害12級13号の後遺障害慰謝料の相場は、290万円です。
後遺障害12級13号に認定されるためには、後遺障害の存在を医学的に証明しなければいけません。
今回は、神経症状の原因のひとつであるむちうちの症状とともに、後遺障害12級13号の認定基準や慰謝料相場、後遺障害申請の方法、認定のポイントを解説いたします。
目次
後遺障害12級13号の認定基準|14級9号との違い
後遺障害12級13号の認定基準は、局部に頑固な神経症状を残すものです。
後遺障害12級13号の神経症状とは?
後遺障害12級13号の「神経症状」とは、交通事故によって痛みやしびれなどが残った状態を指します。
神経症状には以下のような症状がみられます。
- 首、手足などの体の痛みや痺れ
- めまい
- 吐き気
- 関節痛
- 頭痛
- 耳鳴り
後遺障害12級13号の認定に必要な条件
12級13号の認定の要件は、障害の存在が他覚的にわかることです。
具体的には、CTやMRIなどの画像診断でむちうち症の後遺症の存在が医学的に証明されたことを指します。
後遺障害12級13号と14級9号の違い
後遺障害12級13号と同じく、14級9号も交通事故により神経症状が残った場合に認定される等級です。
12級13号と14級9号の違いは、以下の通りです。
12級13号 | 14級9号 | |
---|---|---|
基準 | 局部に頑固な神経症状を残すもの | 局部に神経症状を残すもの |
治療期間 | およそ6ヶ月以上 | およそ6ヶ月以上 |
神経学的検査 | 異常あり | 異常なしでも可 |
画像検査 | 異常あり | 異常なしでも可 |
後遺障害慰謝料 | 290万円 | 110万円 |
労働能力喪失率 | 14%程度 | 5%程度 |
※後遺障害慰謝料は裁判や弁護士による交渉の基準額
12級13号の方が14級9号よりも症状の程度が重いことから、慰謝料額も高くなっています。
その分、12級13号の方が認定のハードルが高いです。
12級13号に認定されるためには、レントゲン写真やMRI画像に異常が写っているなど神経学的検査や画像検査の結果で神経症状が客観的に明らかである必要があります。
画像所見の有無が違う
12級13号と14級9号の認定条件の違いは、画像所見によって神経症状の存在が客観的に明らかかどうかです。
具体的には、レントゲン検査やMRI検査によって異常が写っていないかみていくことになります。
2つの検査で証明できることは、以下の通りです。
各検査 | 証明できること |
---|---|
レントゲン検査 | 脊柱管のずれ、首部分の骨の並び・曲がり方、骨棘などによる神経根の圧迫有無、骨傷の有無 |
MRI検査 | 神経組織の圧迫有無、椎間板ヘルニアの有無 |
画像検査で神経症状の存在が明らかにならなかったとしても、神経学検査の結果から痛みやしびれがあるといえる場合には14級9号に認定されます。
神経学的検査の例
神経学的検査とは、患部に刺激を与えて反射・反応を見る検査のこと。
- 深部腱反射検査
- 徒手筋力テスト(MMT)
- 感覚検査
- スパーリングテスト・ジャクソンテスト
後遺障害慰謝料の相場が違う
12級13号の後遺障害慰謝料の相場は290万円、14級9号の後遺障害慰謝料の相場は110万円です。
労働能力喪失の程度が違う
後遺障害認定を受けた場合、逸失利益を請求することができます。
逸失利益とは、不法行為がなければ本来得られたはずの利益のことを指します。
今回の場合は、不法行為である交通事故がなければ後遺症を負うことなく働いて得られたはずの収入が、逸失利益にあたります。
後遺障害認定については、各等級ごとにどの程度、後遺症によって労働能力が失われたか、労働能力喪失率が決まっています。
労働能力喪失率が大きければ逸失利益の金額も増額されます。
労働能力喪失率の違い
後遺障害12級では14%程度、労働能力が下がったと考えられます。しかし、後遺障害14級では5%にとどまります。そのため、後遺障害12級の方が逸失利益が高額になる可能性があります。
労働能力喪失期間の違い
原則として逸失利益は67歳までの年数分、請求できます。
しかし、むちうちなどによる神経症状はしだいに軽快していくと考えられているので、後遺障害12級13号では10年間、後遺障害14級9号では5年間の逸失利益になるという考え方が通常です。
そのため、後遺障害12級の方が逸失利益が高額になる可能性があります。
むちうち|12級認定が問題となる症状
後遺障害12級13号に認定される神経障害が生じる原因となるケガのひとつに、むちうちが考えられます。
むちうちとは、交通事故などで首が強く後屈される力がかかったことにより、様々な症状が発症している状態を指します。
むちうちの症状
むちうちの主な症状は、首の痛みや肩こりです。
他に難聴、めまい、頭痛や吐き気などの症状が伴う場合もあります。
交通事故直後で症状が出なくても、ある程度時間が経ってからむちうちによる症状が生じるケースもみられます。
なお、めまい、ふらつき、頭痛、疲労感といった症状は、むちうちを原因とする自律神経失調症状である「バレ・リュー症候群」の可能性もあります。
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むちうちの原因
むちうちの原因は、事故の衝撃による頸椎の筋肉や靭帯、関節包の損傷です。
むちうちの治療
むちうちの程度が軽度であれば、安静にしたり、湿布の貼付、鎮痛剤の服用などの保存療法で治療していきます。
症状に応じて、医師や理学療法士の指導のもと、理学療法としてストレッチや可動域訓練、項筋訓練が施される場合もあります。
多くの場合、3か月以内に症状は改善されますが、長引く場合もあります。
むちうちは14級認定されることが多い
むちうちで最も多い等級は後遺障害14級9号です。
むちうちによって頑固な神経症状が残っていることを証明できれば、12級13号に認定されることにより高額な慰謝料請求をすることができます。
しかし、神経学的検査や画像検査の結果によって神経症状を証明しなければならず、12級13号の認定基準は14級9号よりも厳しいです。
12級13号で認定されなくても14級9号で認定される可能性は十分にあるので、後遺障害認定を目指す際には14級9号も含めて認定が受けられないか検討しましょう。
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後遺障害12級13号の慰謝料はいくらもらえる?
後遺障害12級13号の後遺障害慰謝料相場は290万円
後遺障害12級13号の後遺障害慰謝料の相場は、290万円です。
後遺障害慰謝料は、後遺障害認定を受けることで請求できる金銭です。
ただし、この相場額は弁護士基準といわれる弁護士や裁判所で用いられる基準によって算定された金額です。
実際に任意保険会社から提示される金額は、弁護士が介入したケースと比べて低い傾向にあります。
後遺障害12級13号の入通院慰謝料相場|むちうちは通院6ヶ月が目安
交通事故によるむちうちなどを治療した場合、後遺障害認定の有無に関係なく、入通院慰謝料を請求することができます。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)は、交通事故によって入院や通院を余儀なくされるほどのケガを負ったことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料です。
入通院慰謝料は、治療期間の長さに基づいて金額が決定されます。
後遺障害12級13号認定には一定期間の治療期間、目安として6ヶ月の通院を要するとされています。
むちうちで6ヶ月通院をした場合、入通院慰謝料の相場は89万円です。
この入通院慰謝料は、たとえ後遺障害等級が認定されなくても請求することができます。
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後遺障害12級13号認定の方法|むちうちでも後遺障害申請できる
後遺障害12級13号認定までの流れ
後遺障害12級13号の認定までの流れは、以下のとおりです。
- ①症状固定の診断を受けたら、必要な書類を用意する
- ②「加害者側の任意保険会社」または「加害者側の自賠責保険会社」に書類を提出する
- ③加害者側の保険会社から審査機関に書類が渡り、審査が行われる
- ④審査結果が通知される
- ⑤結果に納得いかなければ異議申し立てにより再審査を受ける
後遺障害12級13号の認定に向けて被害者請求で申請しよう
後遺障害等級の申請には、被害者請求と事前請求という2つの方法があります。
14級9号でなく12級13号での認定を受けたいといった場合には、被害者請求で申請することをおすすめします。
被害者請求とは、後遺障害診断書や必要書類を自分で集めた上で相手方の自賠責保険会社に申請をする方法です。
一方で、相手方の任意保険会社に後遺障害診断書以外の書類を準備してもらう事前認定で申請することもできます。
しかし、より適切な等級で認定を受けるには必要となる書類を自分で用意できる被害者請求の方が有利に手続きを進められます。
弁護士に依頼すれば、書類の収集についても任せることもできるので、被害者請求であっても被害者側の負担を最小限にとどめることができます。
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むちうちによる後遺障害12級13号の認定を目指すためのポイント
後遺障害12級13号の認定をしやすくする方法は、以下のとおりです。
- 医療機関の受診は事故日から日をあけない
- 継続的な通院
- 後遺障害診断書の作成
医療機関の受診は事故日から日をあけない
交通事故発生日から日をあけず、早期に医療機関を受診するようにしましょう。
交通事故発生日から受診までの日が空いていると、本当に交通事故によって神経症状が生じたのか、因果関係で相手側と争いになるおそれがあります。
一方で、ケガの性質上、交通事故直後で症状が出なくても、ある程度時間が経ってからむちうちによる症状が生じるケースもみられます。
むちうちが疑わしい症状が出てきた際には、ためらわず、整形外科での診察など早期に医療機関を受診するようにしましょう。
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継続的な通院
継続的な通院も後遺障害12級13号の認定のためには重要なことです。
この際、適切な頻度で通院を継続するようにしましょう。
通院頻度が低すぎると、被害者が治療に消極的だったために後遺症が残ったとみられて後遺障害に認定されないおそれがあります。
また、通院頻度が高すぎる場合、過剰通院を疑われて慰謝料が減額されることもあります。
後遺障害認定を受けて妥当な金額の慰謝料を受け取るためにも、適切な頻度で通院を継続するようにしましょう。
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後遺障害診断書の作成
後遺障害認定の書類のなかでも後遺障害診断書は特に重要な書類となります。
後遺障害診断書は、交通事故で発生した傷害によって後遺症が残存したことを示す書類です。
症状固定と判断された場合のみ作成されるもので、後遺障害申請に必要な書類となっています。
被害者請求でも事前認定でも、被害者側が後遺障害診断書を用意することになっています。
医師のもと、どんな治療を続け、どんな症状が残っているのかを示さねばなりません。
後遺障害12級13号認定について弁護士に相談
後遺障害申請や示談交渉のサポートが受けられる
弁護士に相談すれば、後遺障害12級13号での認定、認定後の慰謝料請求について法的なサポートが受けられます。
むちうちの後遺障害認定では、12級13号・14級9号のいずれの等級認定が受けられるかが争点となり得ます。
より適切な等級での認定をめざすのであれば、被害者請求を弁護士に依頼することをおすすめします。
被害者側が書類を準備しなければいけない被害者請求であっても、弁護士に書類の提出や手続きを一任することで被害者側の負担も最小限にした上で、必要な書類を漏れなく揃えてもらえます。
また、後遺障害12級13号認定後の示談交渉も弁護士に任せることができます。
後遺障害等級の認定を受ければ、後遺障害慰謝料を請求することができます。
しかし、相手側の任意保険会社は相場よりも低い金額で示談するよう提示をしてくる傾向にあるので、提示された金額が適正な金額といえるか見極める必要があります。
弁護士に相談すれば、適正な金額で慰謝料を受け取れるよう保険会社と増額交渉をすることができます。
法律の専門家である弁護士であれば、法的な根拠に基づいた主張をすることができるため、慰謝料増額の可能性を上げることができます。
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金銭的な負担なく弁護士に依頼する方法
「弁護士費用特約」を利用すれば、金銭的な負担なく弁護士に相談、依頼することができます。
弁護士費用特約とは、被害者自身の保険についている特約のことをいいます。
基本的に特約は、法律相談料10万円、弁護士費用300万円を上限として、弁護士費用を代わりに支払ってもらえる内容になっています。
弁護士費用特約の上限額内でカバーでき、被害者が自己負担なく弁護士に依頼できるケースは多いです。
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むちうちは比較的軽傷ともいわれますが、その辛さはご本人にしか分からないものでもあります。適正な後遺障害認定を受けることと賠償金の獲得に向けて、弁護士への依頼も検討してみてください。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了