交通事故による耳鳴りの後遺障害|認定等級と慰謝料の相場

交通事故の後、耳鳴りの症状が出た方へ。
交通事故で耳鳴りになる原因は、内耳の障害のほか、むちうち、バレリュー症候群などがあります。頸椎の損傷によって頭痛・めまい・不眠・疲労感などの症状とあわせて、耳鳴りを発症することもあります。
交通事故での耳鳴りが後遺症として残った場合、後遺障害12級相当または14級相当に認定される可能性があり、後遺障害慰謝料の相場は110万円〜290万円となっています。
今回は、交通事故での耳鳴りの原因や治療方法、後遺障害認定基準、請求できる慰謝料や示談金について詳しく解説します。
目次
耳鳴りの症状・原因・治療
交通事故での耳鳴りの症状・原因

耳鳴りとは「ピーン」「キーン」といった高音や「ジー」という低音など、身体内部以外に音が鳴っていない状態で感じる音の感覚をいいます。
耳鳴りの原因には様々な疾患が考えられ、交通事故の場合、内耳での障害、むちうちなどがあげられます。
頸椎の損傷によって頭痛・めまい・耳鳴り・不眠・疲労感などが現れる症状は、バレリュー症候群と呼ばれています。
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交通事故での耳鳴りの治療
基本的には耳鳴りを引き起こしている原因となる疾患を治療することにななります。たとえば、むちうち・頸椎捻挫が原因で耳鳴りが生じているのであれば、治療方法もむちうちの場合に準じます。
具体的には、安静にしたり、湿布の貼付、ブロック注射、鎮痛剤の服用などの保存療法が中心です。
また耳鳴りが長期にわたって継続している場合には、カウンセリング、補聴器装用、音響療法、認知行動療法などによる耳鳴りそのものに対する治療も検討されます。
音響療法とは、耳鳴りよりも小さな音を聞き続けて、耳鳴りが気になるような静かな空間を作らないようにする治療方法です。
認知行動療法とは、耳鳴りに注意が向いてしまう原因となり得る、耳鳴りに対する不安や恐怖を緩和する治療方法です。
医師との相談や瞑想、日記をつけるなど、耳鳴りを客観的に捉えられるようにし、耳鳴りに対するネガティブなイメージを変えることで耳鳴りへの苦痛を和らげる治療方法です。
耳鳴りの後遺障害|等級認定基準と後遺障害慰謝料
耳鳴りで後遺障害申請する流れ
後遺障害等級の認定を受けた場合、各等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できるため、慰謝料を増額させることができます。
後遺障害等級が認定されるためには、後遺障害認定の申請を行い、各等級の認定基準を満たすとして審査機関による審査を通る必要があります。
後遺障害認定の手続きの流れ

- 事故発生:警察・保険会社へ連絡。症状が出たらすぐに病院を受診
- 入通院治療:必要かつ相当な期間、一定の頻度で、病院に通院
- 症状固定:これ以上治療を続けても回復しない状態。医師が診断する
- 診断書の作成:医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
- 認定の申請:保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
- 等級の認定:審査機関で審査され、保険会社から結果が通知される
後遺障害認定のためにも、各後遺症の内容、認定基準、認定に必要な検査や資料を把握しておきましょう。
耳鳴りの後遺障害認定基準
交通事故による耳鳴りの後遺症が残った場合、後遺障害12級相当または14級相当に認定される可能性があります。
交通事故での耳鳴りの後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜290万円です(弁護士基準)。
各等級 | 認定基準 | 慰謝料額 |
---|---|---|
12級相当 | 耳鳴に係る検査によって難聴に伴い著しい耳鳴が常時あると評価できるもの | 290万円 |
14級相当 | 難聴に伴い常時耳鳴があることが合理的に説明できるもの | 110万円 |
相手側の保険会社から提示される慰謝料額は、相場よりも低くなる可能性が高いです。相場より低く慰謝料を提示されている場合、弁護士に依頼することで増額する可能性があります。
慰謝料の提示額に疑問を持ったら、弁護士にまずは相談しましょう。
耳鳴りの後遺障害を認めてもらうために必要な検査
耳鳴りで後遺障害認定を受けるためには、後遺障害認定に必要な検査を受ける必要があります。耳鳴りで必要な検査は以下の通りです。
耳鳴りで必要な検査
- ピッチ・マッチ検査
- ラウドネス・バランス検査
主に耳鼻科でこれらの検査を受けることができます。耳鼻科での治療が受傷から半年程度経っても耳鳴りの症状が改善しなければ、後遺障害認定に必要な検査をお願いすることになるでしょう。
耳鳴りの後遺障害認定例・賠償例
後遺障害12級相当の認定基準
後遺障害12級相当の認定基準である「耳鳴に係る検査」とは、ピッチ・マッチ検査及びラウドネス・バランス検査をいいます。
ピッチマッチ検査では、耳鳴りがどの程度のピッチ・音の高さ(音色)なのか、聴力検査機器によって検査します。
ラウドネス・バランス検査では、ピッチマッチで分かった音の高さにおいて、耳鳴りがどの程度の大きさなのかを検査します。
交通事故による耳鳴りで後遺障害12級が認定された裁判例や、賠償例を紹介します。
東京地方裁判所令和4年7月12日判決/平成30年(ワ)第30835号
事案 | 踏切手前で停車中の原告(被害者・四輪車)に、被告の四輪車が追突。交通事故後、原告は、耳鳴症、めまい症、平衡機能障害、感音難聴、内耳障害、頸椎捻挫、うつ病(器質性うつ性障害)等と診断された。 |
後遺障害 | 併合11級 ・耳鳴り(12級相当) ・非器質性精神障害(12級13号) ・頸痛、後頭痛(14級9号) |
耳鳴りの判断 | 「原告の右耳の耳鳴症状については、本件事故による別表第二第12級相当の後遺障害であると認められる。」 ・耳鼻咽喉科を受診 ・事故直後、及び約2か月後に耳鳴検査(ラウドネス・バランス検査、ピッチ・マッチ検査)を実施 ・正規の耳鳴検査で30dB以上の難聴を伴う著しい耳鳴を常時残している ・耳鳴の自覚症状はほぼ継続して主訴 |
アトムの解決事例
傷病名 | 外傷性くも膜下出血、硬膜下血腫、頭蓋骨骨折、顔面麻痺、耳鳴り |
後遺障害等級 | 12級13号 |
最終回収金額 | 592万円 |
増額幅 | 6.1倍 |
ポイント | 弁護士の意見書やその他の医療関係の資料を添えて、異議申し立てを行った結果、後遺障害等級14級から12級にアップし、最終的に592万円まで増額 |
後遺障害14級相当の認定基準
後遺障害14級相当の「難聴に伴い常時耳鳴があることが合理的に説明できるもの」とは、耳鳴りがあると本人が訴えており、かつ耳鳴りがあることが外傷などから合理的に説明できる場合を指します。
交通事故による耳鳴りで後遺障害14級が認定された裁判例や、賠償例を紹介します。
東京地方裁判所平成17年12月21日判決平成16年(ワ)第11447号
事案 | 原告(被害者)が自転車に乗って横断歩道上を横断中、対向車線から右折進行しようとした被告の大型貨物自動車と衝突した。 原告は、交通事故により、左側頭骨骨折、頭蓋底骨折、急性硬膜外血腫、気脳症、左顔面神経麻痺、外傷性両感音性難聴等の傷害を負った。 |
後遺障害 | 併合8級相当 ・精神障害(9級10号) ・外貌醜状(12級14号 ・言語障害(10級2号) ・まぶたに著しい運動障害(12級2号) ・耳鳴り(14級) |
耳鳴りの判断 | 「耳鳴りについては、受傷態様などから一四級相当が認められる。」 ・交通事故後、病院に搬送。意識障害あり。頭部CTで硬膜外血腫が出現 ・耳鳴りの治療は、耳鼻咽喉科に通院 ・週に一~二度は頭痛、耳鳴り、目の痛みの為一日中横になっている ・日を変えて測定した両耳の平均純音聴力レベルは、いずれも約二〇デシベル未満(正常範囲) |
アトムの解決事例
傷病名 | 頚椎捻挫、腰椎捻挫、手首の捻挫、耳鳴り |
後遺障害等級 | 14級9号 |
最終回収金額 | 357万円 |
増額幅 | 2倍増額 |
ポイント | 当初の提示額は、171万円でしたが、適正な補償額まで増額されるよう弁護士が交渉した結果、増額に成功。 |
交通事故で耳鳴りを負ったら請求できる示談金
交通事故で耳鳴りの症状が出た場合、以下のような項目などについて賠償請求が可能です。
項目 | 条件 |
---|---|
後遺障害慰謝料 | 耳鳴りの後遺障害が認定された場合 |
後遺障害逸失利益 | 耳鳴りの後遺障害が認定された場合 |
入通院慰謝料 | 入通院期間に応じた慰謝料 |
治療関係費 | 必要かつ相当な実費 |
休業損害 | 耳鳴りの治療で休業し減収した場合 |
以下では、それぞれについて詳しく見ていきます。
交通事故での耳鳴りの後遺障害慰謝料の相場
交通事故での耳鳴りでの後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料(後遺障害が残った苦痛に対する慰謝料)を請求できます。
交通事故での耳鳴りの後遺障害慰謝料の相場(弁護士基準)は、110万円〜290万円です。
後遺障害慰謝料の相場
等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級 | 94万円 (93万円) | 290万円 |
14級 | 32万円 (32万円) | 110万円 |
()内の金額は2020年3月31日以前の事故に適用
しかし、相手側の保険会社から提示される慰謝料額は、相場よりも低い傾向にあります。
保険会社と弁護士では、慰謝料算定に用いる基準が異なるため、金額に差が出てしまいます。
慰謝料算定の3基準
- 自賠責基準
加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。 - 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。 - 弁護士基準(裁判基準)
弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。

自賠責基準による耳鳴りでの後遺障害の慰謝料額は、12級相当は94万円、14級相当は32万円であり、任意保険基準も自賠責基準での金額、あるいは少し上回る程度の金額になる傾向があります。
相場の金額で慰謝料を受け取るためには、相手側の保険会社と増額交渉をしていくことになります。
しかし、治療や職場復帰の準備をしながら、ふだんから多くの交通事故案件を扱う保険会社と交渉をすることは容易なことではありません。
弁護士に依頼すれば、法律の専門家である弁護士に増額交渉を一任できるため、自分は治療や職場復帰に専念でき、かつ増額の可能性を高められます。

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交通事故での耳鳴りの逸失利益
交通事故での耳鳴りの後遺障害が認定された場合、後遺障害慰謝料だけでなく逸失利益も賠償請求することができます。
逸失利益とは、交通事故での後遺症がなければ得ることができたはずの収入を指します。

逸失利益は、1年あたりの収入(基礎収入)、後遺症によって失った労働能力の割合(労働能力喪失率)、労働能力喪失期間や中間利息など様々な事情を考慮して算定します。
あくまでケースバイケースですが、むちうちで12級・14級が認定された場合の労働能力喪失率、および労働能力喪失期間については、以下が目安です。
後遺障害逸失利益の労働能力喪失率・期間(むちうちの場合)
等級 | 労働能力 喪失率 | 労働能力 喪失期間 |
---|---|---|
12級 | 14% | 10年 |
14級 | 5% | 5年 |
逸失利益は将来にわたる利益という性質上、非常に高額になるケースもみられるため、その分、負担が増えてしまう保険会社がなかなか支払いに応じないことも少なくありません。
後遺障害認定にあたっては慰謝料だけでなく、逸失利益についても相場の確認や増額交渉が必要不可欠となります。
交通事故での耳鳴りの入通院慰謝料
交通事故で耳鳴りを負った場合、後遺障害認定の有無にかかわらず、入通院慰謝料を請求できます。
入通院慰謝料とは、入院・通院を余儀なくされるほどの交通事故でのケガで受けた精神的苦痛に対する賠償金です。
入通院慰謝料は算定表に基づいて金額が算定されます。

軽症には、挫傷や打撲、むち打ちが含まれます。
たとえば、交通事故で負った軽症のケガを1ヶ月の入院と5ヶ月の通院で治療した場合、入院1ヶ月の縦の列と通院5ヶ月の横の列が交差する105万円が入通院慰謝料の相場です。
また、入院はせず、6ヶ月の通院のみで軽症のケガを治療した場合、入院0ヶ月の縦の列と通院6ヶ月の横の列が交差する89万円が入通院慰謝料の相場です。
交通事故での耳鳴りで請求できるその他の示談金
交通事故での耳鳴りで請求できるのは、慰謝料や逸失利益だけではありません。
病院での治療費用、交通事故で仕事を休んだ分の損害などの費用・損害を請求することができます。
交通事故での耳鳴りで請求できる示談金は、以下の通りです。
- 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
- 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
- その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
- 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など

相手側の保険会社から届く示談書(免責証書)には、各損害の内訳が記載されているので、示談金額だけでなく各損害額についても確認する必要があります。
弁護士に示談書を見せれば、各損害の算定根拠や適正な金額を明らかにしたうえで示談金の相場や増額の見込みもご確認いただけます。

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耳鳴りの後遺症は弁護士に相談!
交通事故による耳鳴りのまとめ
交通事故後、耳鳴りを発症することがあります。
原因としては、頭部の打撲等による内耳の障害、むちうち(別名:頚椎捻挫、外傷性頚部症候群など)、バレリュー症候群などです。
耳鳴りを発症したら、すぐに病院を受診し、交通事故で耳鳴りを発症したという診断をもらってください。整形外科に通院中の場合、耳鳴りの原因に応じて、脳神経外科や耳鼻科の紹介状をもらい、別途、耳鳴りの診察を受けます。
その際、この記事内で紹介した耳鳴りの検査を、医師に依頼しましょう。
また、その後は、耳鳴りの治療に専念し、まずは回復を目指してください。
万一、後遺障害が残ってしまったら、自覚症状、検査結果、医師の所見をまとめて後遺障害認定の申請をおこないます。
自賠責で後遺障害等級が認定されれば、後遺障害について慰謝料・逸失利益を請求できるようになります。
任意保険会社の支払い基準は、法的正当性のある水準に達しないことが多いです。示談金の交渉では、「弁護士基準」による増額交渉をおこないましょう。
耳鳴りの後遺症を弁護士に無料相談する
耳鳴りの後遺障害認定や慰謝料増額をご検討であれば、弁護士に相談してみましょう。
耳鳴りは他人からは知覚できないため、後遺障害が認定されるためには客観的な資料や検査結果の収集や説得力のある主張をする必要があります。
弁護士は後遺障害認定に向けて認定基準や対策を熟知しているので、耳鳴りの後遺障害申請手続きもスムーズに進めてくれます。
弁護士に依頼・相談することのメリットは、以下の通りです。
- 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、治療や職場復帰に専念できる
- 後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
- 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる
アトム法律事務所では、交通事故での耳鳴りを負った被害者の方向けに電話・LINEでの無料相談を受け付けております。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了