山林・原野の相続税評価方法は?区分別の評価方法と注意点

山林・原野の相続税評価額は、純山林・中間山林・純原野・中間原野なら倍率方式(固定資産税評価額×評価倍率)、市街地山林・市街地原野なら宅地比準方式(宅地としての評価額−宅地造成費等)または倍率方式で計算します。
どちらの方式が適用されるかは、国税庁の財産評価基準書(評価倍率表)で確認できます。
ただし、山林の区分を誤って判断したまま計算してしまうと、本来の評価額と異なる金額で申告することになりかねません。
この記事では、山林の区分の確認方法から実際の計算手順、利用価値のない山林を手放す方法まで、順を追って解説しています。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
山林・原野の相続税評価の基本的な考え方
基本の土地の相続税評価の考え方(路線価方式・倍率方式)
相続税における土地の評価方法には、大きく分けて路線価方式と倍率方式の2種類があります。
- 路線価方式:国税庁が公表する「路線価」(道路に面した土地1㎡当たりの価額(千円単位)で表示)をもとに、奥行価格補正等の補正を行って計算する方法
- 倍率方式:固定資産税評価額に、国税庁が定めた「評価倍率」を掛けて計算する方法
宅地の場合は路線価方式が基本ですが、山林・原野の多くは路線価が設定されていない地域に存在するため、倍率方式が使われることが一般的です。ただし、市街地に近い山林・原野には路線価が設定されている場合もあります。
路線価・倍率方式の仕組みや、土地の相続税評価全般の基礎知識について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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相続税評価額とは?土地や建物ごとの計算方法・調べ方と固定資産税評価額との違い
山林・原野の「種類」によって評価方法が変わる
山林と原野はそれぞれ複数の種類に分類され、それぞれに対応した評価方法が異なります。各評価方法の具体的な計算方法と土地区分の確認方法は、次章以降で詳しく解説します。
山林の分類
| 種類 | 特徴 | 主な評価方法 |
|---|---|---|
| 純山林 | 市街地から離れた一般的な山林 | 倍率方式 |
| 中間山林 | 市街地に近い山林 | 倍率方式 |
| 市街地山林 | 市街地内・近郊にある山林 | 宅地比準方式または倍率方式 |
原野の分類
| 種類 | 特徴 | 主な評価方法 |
|---|---|---|
| 純原野 | 市街地から離れた原野 | 倍率方式 |
| 中間原野 | 市街地に近い原野 | 倍率方式 |
| 市街地原野 | 市街地内・近郊にある原野 | 宅地比準方式または倍率方式 |
山林の相続税評価方法(純山林・中間山林・市街地山林)
前章でも述べた通り、山林の中でもどの分類に属するか、で相続税評価方法が変わります。
この章では、まず分類ごとの山林の違い、分類の確認方法、相続税評価方法の順で解説していきます。
純山林・中間山林・市街地山林の違い
山林は、市街地からの距離や宅地転用の可能性に応じて、次の3つに区分されます。
- 純山林:市街地の影響をほとんど受けない、山間部・農村地帯にある山林です。宅地転用の可能性が低く、木材生産などの林業利用を前提とした評価がなされます。
- 中間山林:純山林と市街地山林の中間に位置する山林です。市街地に一定程度近いものの、宅地転用が容易ではない山林が該当します。
- 市街地山林:市街地またはその近郊に存在する山林で、宅地への転用が見込める場合に該当します。都市部の周辺に位置し、宅地並みの評価が必要とされるケースが多いです。
山林の区分の確認方法
相続した山林が純山林・中間山林・市街地山林のどれに該当するかは、2段階で確認します。
①地目・現況の確認
まず登記簿(登記事項証明書)で、対象の土地を特定し、面積・所有権・権利関係を確認します。
そのうえで、実際の現況(樹木が生育し、建物や駐車場、宅地造成などがされていない状態か)を確認します。
登記簿上の地目と現況が異なる場合がありますが、相続税評価では現況が優先される点に注意しましょう。
②財産評価基準書(評価倍率表)での確認
地目が山林であることを確認したら、次に国税庁の「財産評価基準書(評価倍率表)」で、細かい区分と評価方法を確認します。
確認の手順は以下のとおりです。
- 国税庁ウェブサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」にアクセスする
- 相続した山林が所在する都道府県を選択する
- 該当市区町村の「評価倍率表(一般の土地等用)」を開く
- 地目「山林」の欄を確認し、適用される評価倍率または評価方式(宅地比準など)を確認する
倍率表に数値(例:1.10など)が記載されていれば倍率方式、「比準」と記載されていれば宅地比準方式が適用されます。
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財産評価基準書とは?読み方と土地の評価方法(路線価方式・倍率方式)を解説
純山林・中間山林の評価方法(倍率方式)
純山林・中間山林は、次の計算式で評価額を算出します。
純山林・中間山林の相続税評価額
相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
各数値の確認方法
- 固定資産税評価額:市区町村役所で取得できる「名寄帳」もしくは毎年送られてくる固定資産税・都市計画税の納税通知書(課税明細書)で確認できます
- 評価倍率:前述の国税庁「財産評価基準書(評価倍率表)」で確認できます
山林・原野は固定資産税が非課税(あるいは免税点以下)になっているケースも多く、その場合は毎年届く納税通知書(課税明細書)に記載がないため、名寄帳での確認が確実です。
※名寄帳に記載されるのは、その自治体内の不動産のみです。複数の市区町村にまたがって山林や原野を所有している場合は、該当するすべての自治体でそれぞれ名寄帳を取得しましょう。
純山林・中間山林の評価方法(倍率方式)の具体例
たとえば、次のような山林を相続した場合を考えてみましょう。
- 地目:山林(純山林)
- 固定資産税評価額:200,000円
- 評価倍率:1.10
この場合の計算は以下のとおりです。
200,000円 × 1.10 = 220,000円
相続税評価額は22万円となります。
一般的に純山林の評価倍率は低い水準に設定されていることが多く、固定資産税評価額自体も低いケースが多いため、相続税評価額が数万円〜数十万円程度にとどまる山林は珍しくありません。
市街地山林の評価方法(宅地比準方式)
市街地山林には、原則として宅地比準方式が適用されます。宅地比準方式とは、「その山林が宅地だったと仮定した場合の価額」から、宅地に転用するためにかかる造成費用を差し引いて評価する方法です。
市街地山林の相続税評価額
相続税評価額 = 宅地としての評価額 − 宅地造成費等
各数値の算出方法
- 宅地造成費等:財産評価基準書の中にある「宅地造成費の金額表」(国税局が都道府県ごと・年分ごとに公表)で確認できます。整地費・地盤改良費・土盛費・土止費など、必要に応じて伐採・抜根費等が含まれます。
- 宅地としての評価額:路線価方式または倍率方式で計算した宅地の評価額を使います。
市街地山林の評価(宅地比準方式)の具体例
たとえば以下の条件で考えてみます。
- 地目:山林(市街地山林)
- 面積:500㎡
- 路線価:80,000円/㎡(路線価方式の場合)
- 宅地造成費等:1,500円/㎡(国税局が公表する金額と仮定)
計算の流れは次のとおりです。
- 宅地としての評価額:80,000円 × 500㎡ = 40,000,000円
- 宅地造成費等の総額:1,500円 × 500㎡ = 750,000円
- 相続税評価額:40,000,000円 − 750,000円 = 39,250,000円
※ここでは計算の流れを示すための簡略化した例を示しています。実際の計算では、対象地の接道状況(複数の道路に接している場合の側方加算・二方加算等)や地区区分に応じた画地調整が別途必要になる場合があります。
実務では、評価額の補正や造成費の項目選定など、専門的な判断が必要になる場面が多くあります。そのため、市街地山林を相続する際には、税理士に確認することをおすすめします。
市街地山林でも宅地比準方式にならないケースがある
市街地山林は原則として宅地比準方式で評価しますが、最終的には財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)の指定内容と土地の実態に即して評価方法を確定します。
財産評価基本通達49では、次のいずれかに該当する場合、近隣の純山林の価額に比準して評価する旨が定められています。
- 急傾斜地であるなど、物理的に宅地造成が困難な場合
- 宅地比準方式で計算した評価額が、近隣の純山林の評価額を下回る場合
どちらに該当するかの判断には専門的な現地調査が必要となるため、税理士への相談を検討してください。
原野の相続税評価方法(純原野・中間原野・市街地原野)
純原野・中間原野・市街地原野の違い
原野とは、耕作されておらず、かつ山林・宅地などにも該当しない荒れ地・草地などのことを指します。相続税の評価においても、山林と同様に「純原野」「中間原野」「市街地原野」に区分されます。
- 純原野:市街地から離れた原野。倍率方式で評価
- 中間原野:純原野と市街地原野の中間に位置する原野です。市街地に一定程度近いものの、宅地転用が容易ではない原野が該当します。倍率方式で評価
- 市街地原野:市街地内・近郊にある原野。宅地比準方式または倍率方式で評価
区分の考え方・確認方法(財産評価基準書での確認手順)は山林の区分と共通です。詳しくは前章「山林の区分の確認方法」をご参照ください。
純原野・中間原野の評価方法
純原野・中間原野は、倍率方式で評価します。
純原野・中間原野の相続税評価額
相続税評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
- 固定資産税評価額:市区町村役所で取得できる「名寄帳」もしくは毎年送られてくる固定資産税・都市計画税の納税通知書(課税明細書)で確認できます
- 評価倍率:「財産評価基準書(評価倍率表)」の「原野」欄で確認できます
純原野・中間原野の評価方法の具体例
次のような原野を相続した場合を考えてみましょう。
- 地目:原野(純原野)
- 固定資産税評価額:150,000円
- 評価倍率:1.20
この場合の計算は以下のとおりです。
150,000円 × 1.20 = 180,000円
相続税評価額は18万円とわかります。
純原野も純山林と同様に評価倍率が低い水準に設定されていることが多く、相続税評価額が数万円〜数十万円程度にとどまるケースが珍しくありません。
市街地原野の評価方法
市街地原野は市街地山林と同様、原則として宅地比準方式が適用されます。実務では、原野は山林と異なり立木のない荒地や草地であるため、造成費の計算時に「伐採・抜根費」がかからないケースが多いという点で異なります。
市街地原野の相続税評価
相続税評価額 = 宅地としての評価額 − 宅地造成費等
宅地造成費の単価は、平坦地か傾斜地か、整地・土盛り・土止めなどの種類によって細かく定められています。また、実際にどの費目が適用されるかは個々の土地の状況によって異なるため、必ず現況を個別に確認してください。
実際の計算にあたっては、必ず財産評価基準書の中にある「宅地造成費の金額表」(国税局が都道府県ごと・年分ごとに公表)をご確認ください。
山林・原野の相続税評価に必要な資料と確認方法
山林・原野の相続税評価に必要な資料一覧
相続税申告のために山林・原野の評価を行う場合、以下の資料を準備しておく必要があります。
| 資料 | 確認・取得先 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税の課税明細書 | 毎年5〜6月に市区町村から送付される納税通知書に同封 |
| 固定資産評価証明書 | 市区町村の役所(固定資産税担当課)で取得 |
| 登記簿謄本(登記事項証明書) | 法務局(オンライン申請可) |
| 公図・地積測量図 | 法務局 |
| 財産評価基準書(評価倍率表) | 国税庁ウェブサイトで無料公開 |
| 路線価図 | 国税庁ウェブサイトで無料公開 |
山林・原野の相続税評価の手順
評価の流れをまとめると以下のようになります。
- 地目の確認:登記簿および現況で「山林」「原野」の地目を確認する。相続税評価では現況の地目が優先されるため、登記簿の記載と実際の利用状況が一致しているかを確認する
- 評価倍率表で評価方式を確認:評価倍率表で、その地域の山林・原野欄が倍率の数値か「比準」の記載かを確認する
- 固定資産税評価額の確認:課税明細書または固定資産評価証明書で確認
- 倍率方式の場合:固定資産税評価額 × 倍率で計算
- 宅地比準方式の場合:路線価または倍率で求めた宅地評価額から造成費等を控除して計算
なお、地目は登記簿上の地目と現況の地目が異なる場合があります。相続税評価では原則として現況の地目で評価するため、実際に現地の状況を確認しておくことが大切です。
山林・原野の相続税申告における注意点
固定資産税評価額がゼロや不明な場合
課税明細書の固定資産税評価額がゼロであったり、記載がない場合も注意が必要です。
固定資産税が非課税、あるいは免税点以下の山林や原野は、課税明細書に評価額が記載されないことがあります。これを「財産価値がないから申告しなくていい」と誤解してしまうと、申告漏れとなり、のちの税務調査で指摘を受けるリスクがあります。
固定資産税評価額の記載がないからといって、評価額そのものが存在しないわけではありません。市区町村役場で「名寄帳」や「固定資産評価証明書」を取得して金額を確認し、正しく申告に反映させましょう。
なお、保安林に指定されている山林は評価額自体が付されていないケースが多く、近隣の山林の価額をもとにした特殊な計算が必要になります(財産評価基本通達50)。心当たりがある場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
評価額が低くても申告漏れに注意
山林・原野は相続税評価額が低いことが多いため、「どうせ価値がないから申告しなくていいだろう」と誤解してしまう方もいます。
しかし、山林・原野だけでなく、他の財産と合算した正味の遺産額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合は、原則として相続財産を漏れなく申告する必要があります。
たとえ、山林・原野の評価額が数万円程度であっても、申告から漏れていれば税務調査で指摘を受けるリスクがあります。「評価額が低い=申告不要」ではないという点に十分注意しましょう。
「地積規模の大きな宅地の評価」は区分によって扱いが分かれる
特定の要件を満たした一定の広さ以上の宅地の相続税評価額を下げられる「地積規模の大きな宅地の評価」という特例があります。
宅地比準方式が適用される市街地山林・市街地原野は、要件を満たせばこの特例の対象になりますが、純山林・中間山林・純原野・中間原野には、この特例は適用されません。
対象の山林・原野の区分によって扱いが異なるため、混同しないよう注意が必要です。
利用価値が乏しい山林・原野を相続した後の手続きと対処法
利用価値がない・管理が難しいといった山林・原野を相続した場合、どのように対処すればよいのでしょうか。主な選択肢を整理します。
①相続放棄
相続財産を全て放棄する方法です。山林だけを選んで放棄することはできず、預貯金や建物なども含めたすべての相続財産をまとめて手放すことになります。
相続放棄をする場合には、原則として自分が相続人になったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
また、放棄後も、状況によっては相続財産の保存義務(民法940条)が生じる点に注意が必要です。具体的には、放棄した時点でその土地を実際に占有していたかどうか等によって義務の有無や範囲が変わるので個別の確認が必要です。
②売却
不動産会社や山林専門の業者に売却する方法です。
ただし、市街地から遠い山林・原野は買い手がつきにくく、売却が難しいケースが多いのが現状です。評価額より低い価格での売却になることも少なくありません。
③相続土地国庫帰属制度(2023年4月施行)
2023年4月に施行された、相続等(相続・相続人に対する包括遺贈など)によって取得した土地を国庫に帰属させることができる仕組みです。これにより、利用価値のない土地を手放すことが可能になりました。
主な要件と注意点は以下のとおりです。
主な要件
- 申請できるのは原則として相続または相続人に対する遺贈によって取得した土地であること(売買や生前贈与などで取得した土地や、相続人以外の人が遺贈によって取得した土地は対象外)
- 原則、建物が建っていない土地であること
- 担保権や使用収益権が設定されていないこと
- 通常の管理・処分を阻害する工作物・有害物質・土壌汚染がないこと
注意点
承認された場合、負担金の納付が必要です。負担金は、森林は面積に応じて算定され、原野は原則として面積に関わらず20万円となります。
山林や原野の処分の手段として大きく注目されている制度です。利用を検討する際は、法務局の特設サイトを確認するか、専門家に事前相談しておくことをおすすめします。
④寄付・贈与
自治体や財団、NPOなどに寄付する選択肢もありますが、実際に受け入れてもらえるかどうかは相手方の判断によります。
使い道のない山林や原野は、管理コストなどの面から寄付を断られるケースも多いのが実情です。
山林・原野の相続税評価は税理士への相談も検討しましょう
この記事では、山林・原野の相続税評価額の計算方法について解説しました。要点を整理します。
- 山林は「純山林・中間山林・市街地山林」に、原野は「純原野・中間原野・市街地原野」に区分される
- 純山林・中間山林・純原野・中間原野は倍率方式(固定資産税評価額 × 倍率)で計算する
- 市街地山林・市街地原野は原則として宅地比準方式(宅地評価額 − 造成費等)で計算する
- どの区分に該当するかは国税庁の「財産評価基準書(評価倍率表)」で確認できる
- 相続税の申告要否は正味の遺産額で判断する
- 相続税の申告を行う際は、山林・原野の評価額が低くても必ず相続財産として計上する
- 利用価値のない山林・原野を相続で引き継いだ際は、相続放棄・売却・相続土地国庫帰属制度などの対処法がある
山林・原野の評価は、宅地に比べて複雑で専門的な判断が求められる場面が多くあります。特に市街地山林の宅地比準方式の計算や、地目の現況判断、造成費等の適用などは誤りが生じやすい箇所です。
相続税申告の期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)を過ぎると延滞税などのペナルティが発生する可能性もあります。
不安な点がある場合は、早めに相続税に詳しい税理士などの専門家へご相談ください。
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監修者情報
アトムグループ 協力税理士
