相続時精算課税選択届出書の書き方・入手方法・提出期限などを解説

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相続時精算課税制度を使って贈与を受けることを決めたら、まず提出しなければならないのが「相続時精算課税選択届出書」です。

この届出書を期限内に提出しないと、制度を利用できなくなってしまいます。

この記事では、届出書をどこで入手するか、どのように記入するか、いつまでに・どこへ提出するかを、令和6年(2024年)の税制改正による変更点も踏まえながら、一つひとつ丁寧に解説します。

税理士に頼まず自分で手続きを進めようとしている方でも、この記事を読みながら作業を進められるよう、書類の記載方法なども分かるようになっています。

※本記事の情報は2026年(令和8年)3月時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。

目次

相続時精算課税制度とは?手続きの流れ

相続時精算課税制度とは?

相続時精算課税制度とは、生前に財産をまとまった金額で贈与しやすくする仕組みです。

相続時精算課税制度を使うと、通常の贈与よりも高額な控除(特別控除)を受けることができるため、贈与税負担を大幅に抑えながら財産を移すことができます。

ただし、贈与した財産は相続の際に相続税として計算し直す仕組みになっています。贈与税が完全にゼロになるわけではなく、相続時に「精算」されるイメージです。

相続時精算課税制度の概要やメリット・デメリットなどについて知りたい方は『相続時精算課税制度をわかりやすく解説!改正の変更点などもわかる』の記事をご覧ください。

相続時精算課税選択届出書はいつ必要?手続きの流れ

「相続時精算課税選択届出書」は、相続時精算課税制度を利用することを税務署に申告するための書類です。

この届出書は最初の贈与を受けた年に一度だけ提出すれば、翌年以降は同じ贈与者(親・祖父母など)からの贈与に対して継続して相続時精算課税制度が適用されます。

相続時精算課税制度を初めて利用する際の手続きの流れは、以下の通りです。

  1. 贈与を受ける
  2. 相続時精算課税選択届出書を作成
  3. 贈与税申告書(第一表・第二表)を作成
  4. 添付書類をそろえて提出

2回目以降の贈与では届出書の提出は不要です。一度選択すると取り消せないため、制度の特性をよく理解したうえで利用を判断してください。

届出書の入手方法(ダウンロード・税務署窓口)

相続時精算課税選択届出書の入手方法は大きく2つあります。

① 国税庁ウェブサイトからダウンロードする(推奨)

最も手軽な方法です。国税庁のウェブサイトで入手できます。

ダウンロードするための手順は、以下の通りです。

  1. 国税庁ウェブサイトにアクセス
  2. 検索欄に「相続時精算課税選択届出書」と入力
  3. 「相続時精算課税選択届出書(様式)」のページを開く
  4. PDFファイルをダウンロードして印刷する

国税庁サイトでは「相続時精算課税選択届出書」として掲載されている様式を使用します(年度により様式番号・様式名の表記が異なることがあります)。

検索の際は「相続時精算課税選択届出書」というキーワードをそのまま入力すると見つけやすくなります。

また、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面上で直接入力・印刷することも可能です。

② 税務署の窓口でもらう

最寄りの税務署の窓口に行けば、用紙をもらうことができます。

窓口での受け取り自体に予約は不要ですが、書き方の相談をしたい場合は、申告期間中(2〜3月)は混雑するため、事前に電話で確認するとスムーズです。

税務署はどこへ行けばよい? 贈与を受けた人(受贈者)の住所地を管轄する税務署です。自分の住所地の管轄税務署は、国税庁ウェブサイトの「税務署の所在地などを知りたい方」から検索できます。

相続時精算課税選択届出書の記入例・書き方

ここでは、届出書の各記入欄について、説明を行います。

各欄の書き方

【日付・提出する税務署】

提出年月日と、提出する税務署について記載します。

提出する税務署とは、贈与を受ける受贈者の住所を管轄している税務署になります。

【届出者(受贈者)の情報】

届け出を行う受贈者について、以下の情報を記入します。

欄名記入内容注意点
住所受贈者の住民票上の住所マンション名・部屋番号まで正確に
氏名受贈者の氏名フリガナも必要
生年月日受贈者の生年月日元号表記(昭和・平成・令和)で記入
特定贈与者との続柄受贈者の立場を記載例:子、孫

【贈与者の情報】

財産の贈与を行う贈与者について、以下の情報を記入します。

欄名記入内容注意点
住所贈与者の住所贈与時点の住所を記入
氏名贈与者の氏名フリガナも必要
生年月日贈与者の生年月日元号表記(昭和・平成・令和)で記入

【最初に贈与を受けた年】

相続時精算課税制度を初めて適用しようとする贈与を受けた年を記入します。

  • 記入例:「令和6年」

【年の途中で贈与をした人(特定贈与者)の推定相続人または孫となった場合】

年の途中で贈与した人(特定贈与者)の推定相続人または孫となった場合とは、年の途中で結婚・離婚・養子縁組・死亡などにより家族構成が変わったことで、贈与者の推定相続人や孫となったケースをいいます。

推定相続人となった原因や日付を記入してください。

該当しない場合なら記載は不要となります。

【相続時精算課税選択届出書の提出方法】

贈与税の申告書を提出せず、相続時精算課税選択届出書のみを単独で提出する場合(例:年間贈与額が基礎控除額110万円以下の場合など)にチェックします。

記入時の共通注意点

  • 黒のボールペンまたは黒いインクで記入する(消せるボールペンは不可)
  • 訂正する場合は二重線を引いて訂正印を押す
  • 受贈者(贈与を受けた人)が届出者となる

ただし、e-Taxによる場合はこの限りではありません。

相続時精算課税制度に必要な添付書類

相続時精算課税制度を利用するために必要となる書類(届出書及び添付書類)は、以下の通りです。

必要書類の一覧(令和6年以後の贈与)

書類備考
相続時精算課税選択届出書税務署・国税庁サイトで入手
贈与税申告書(第一表・第二表)贈与額が年110万円以下なら不要
受贈者の氏名、生年月日を証する書面戸籍謄本等(続柄まで証明できるもの)
※マイナンバーカード単体は不可
受贈者が贈与者の直系卑属である推定相続人または孫であることを証する書面同上

※マイナンバーカードや住民票の写しは続柄(推定相続人・孫であること)の証明には使用できません。戸籍謄本または戸籍抄本をご用意ください。

戸籍謄本の入手方法

戸籍謄本については、本籍地がある市区町村の窓口で直接請求したり、郵送を行ってもらうことで入手可能です。

また、マイナンバーカードを利用してコンビニで取得できる場合もあります。

2024年3月1日からは広域交付制度が導入されたため、本籍地以外の市区町村の窓口からでも取得が可能となっています。
ただし、利用できるのは本人・配偶者・父母・子や孫に限定されており、委任状による請求や第三者による請求は対象外となっている点に注意が必要です。

贈与税申告書(第一表・第二表)との同時提出

贈与額が年110万円を超えている場合には、贈与税申告書(第一表・第二表)を一緒に提出します。

書類役割
第一表贈与税の計算・納税額を申告する書類
第二表相続時精算課税制度の適用に関する明細を記載する書類

第二表は「相続時精算課税の計算明細書」とも呼ばれ、累積贈与額・基礎控除・特別控除の計算を記載します。第一表と第二表はセットで提出します。

届出書と同様に、国税庁のウェブサイトからダウンロードしたり、税務署の窓口で交付してもらうことが可能です。

また、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、画面の案内に沿って金額を入力することで申告書の作成や、e-Taxによる送信を行うことができます。

令和6年改正による変更|届出書や添付書類の要否について

令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から、相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が新設されました。

これにより、贈与額が110万円以下の場合は贈与税申告が不要になりましたが、届出書の提出は引き続き必要です(制度を初めて使う年は必ず提出します)。

令和6年改正後の添付書類について|添付不要のケース拡大

相続時精算課税選択届出書の添付書類は、近年の税制改正により簡素化が進んでいます。

平成30年度改正では戸籍謄本の原本提出が不要となりコピーでの提出が認められ、令和元年度改正(令和2年分以降適用)では受贈者の戸籍の附票や贈与者の住民票等の添付が不要となりました(相続税法施行令第5条、施行規則第11条関連)。

これにより、現在は受贈者の戸籍謄本(または抄本)のみで対応できる場合があります。必要書類は状況によって異なるため、個別に税務署または税理士に確認することを強く推奨します。

また、令和5年度税制改正(令和6年1月1日施行)により相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が創設され、基礎控除以下の贈与であれば贈与税の申告書自体が不要になりました(届出書と戸籍謄本等の提出は初回選択時に必要です)。

ただし、添付書類の取扱いは提出方法(e-Tax/書面)や個別の状況により異なり、続柄確認のために追加の書類提出を求められることもあります。

必ず最新の国税庁の手引きおよび管轄税務署の案内に従って準備してください。

提出期限——いつまでに出せばよいか

期限は「贈与を受けた年の翌年3月15日」

相続時精算課税選択届出書の提出期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで(贈与税申告書の提出期限と同じ)です。

贈与を受けた年提出期限
令和6年(2024年)中令和7年(2025年)3月15日
令和7年(2025年)中令和8年(2026年)3月15日

3月15日が土日・祝日の場合は、翌平日が期限になります。

期限を過ぎてしまったら?

届出書の提出期限は厳格で、期限を過ぎると、その年の贈与については相続時精算課税制度を適用できなくなり、通常の暦年課税として贈与税が計算されます。

多額の贈与を受けた場合、暦年課税では高い税率が適用されることがあります。期限を絶対に守ることが手続き上の最重要ポイントです。

提出方法(窓口持参・郵送・e-Tax)

提出方法は3つあります。いずれも提出期限内であれば有効です。

① 税務署の窓口に持参する

最も確実な方法です。受贈者の住所地を管轄する税務署の窓口に、届出書・贈与税申告書・添付書類をまとめて持参します。

  • メリット: その場で記載内容を確認してもらえる。書類の不備をその場で指摘してもらえることも
  • デメリット: 2〜3月の申告期間中は大変混雑する。平日のみの受付(一部税務署は土日対応あり)

② 郵送で提出する

税務署窓口に行けない場合は、郵送での提出も可能です。

郵送する際のポイント

  • 送付先は「受贈者の住所地を管轄する税務署」
  • 簡易書留や特定記録郵便など、記録が残る方法で送ることを強くお勧めします
  • 日本郵便での提出は通信日付印(消印)により期限内かどうか判定されるのが原則です。期限間際の場合は、郵便局の窓口で差し出して通信日付印が付く形で送付するか、不安な場合は窓口持参またはe-Taxを推奨します
  • 受付印を押してもらうため、返信用封筒(切手を貼り、自分の宛先を書いたもの)を同封すると良い

③ e-Tax(電子申告)で提出する

インターネットを使ってオンラインで提出する方法です。

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、必要な情報を入力するとことで提出することが可能です。

e-Taxを使う手順(贈与税申告書と同時に提出する場合)

  1. 国税庁「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
  2. 「贈与税の申告書」を選択する
  3. 相続時精算課税制度を選択し、届出書の情報を入力
  4. マイナンバーカードを使って本人確認・電子署名を行う
  5. 送信して完了

メリット: 税務署に行く必要がない。24時間(システムメンテナンス時間を除く)手続き可能。書類の郵送も不要。

準備するもの: マイナンバーカード、ICカードリーダーまたはスマートフォン(マイナポータルアプリ対応機種)

贈与税申告書と一緒に提出する場合は確定申告書等作成コーナーやe-Tax WEB版を利用できますが、相続時精算課税選択届出書のみを単独でe-Tax提出する場合は、ダウンロード型の「e-Taxソフト」をご利用ください(確定申告書等作成コーナー・e-Tax WEB版では届出書単独の作成・送信はできません)。

書面提出も可能です。

④税理士に依頼する

「書類の収集や作成を行っている時間がない」「贈与財産の計算を適切に行えているか不安」といった場合には、専門家である税理士に相談・依頼を行いましょう。

税理士に依頼すれば、贈与財産の計算や書類の収集・作成を適切かつスムーズに行ってくれます。

また、相続時精算課税制度を利用することで贈与税や相続税の節税となるのか、ほかに利用できる制度がないかどうかを確認することも可能でしょう。

相続時精算課税制度を利用すると、暦年贈与の方法をとることができなくなることからも、専門家に相談して慎重に判断することをおすすめします。

依頼の費用が気になる方は、相談の際に見積りを聞いておきましょう。

届出書の作成や申告は自分でできる?判断のポイント

相続時精算課税選択届出書の提出による相続時精算課税制度の利用手続きは、税理士に相談・依頼せずに可能かどうかの判断基準について紹介します。

自分で手続きしやすいケース

以下のような場合は、届出書の作成・提出を自分で行いやすいです。

  • 贈与財産が現金のみである
  • 贈与者が1人(父または母、祖父母の1人)だけである
  • 贈与者・受贈者ともに日本国内に住所がある
  • 他に相続・贈与に関する複雑な事情がない

税理士への相談を検討すべきケース

一方、以下のような場合は、税理士への相談を検討することをお勧めします。

  • 贈与財産に不動産や株式・非上場株式が含まれる(評価額の計算が複雑)
  • 贈与者が複数いる、または相続時精算課税と暦年贈与を組み合わせて使いたい
  • 将来の相続税も含めた全体的な節税計画を立てたい
  • 期限を過ぎたなど、通常とは異なる状況になっている
  • 贈与者・受贈者のどちらかが海外在住である

税理士への依頼費用は状況により異なりますが、手続きミスによるペナルティや税負担の増加を防ぐ意味でも、複雑なケースでは専門家のサポートを受けることが安心です。

よくある疑問Q&A

Q. 届出書を提出したら取り消せますか?

原則として取り消せません。

一度選択した相続時精算課税制度は、同じ贈与者との間では取り消すことができず、継続して適用されます。

Q. 受贈者が複数の贈与者から贈与を受けた場合は?

贈与者ごとに届出書を提出します。

例えば、父と祖父の両方から贈与を受けた場合は、それぞれについて届出書を作成・提出する必要があります。

Q. 郵送で提出した場合、控えを受け取る方法はありますか?

申告書・届出書のコピーと返信用封筒(切手貼付・宛先記載済み)を同封して送付すると、税務署が収受印を押した控えを返送してくれます。

必ず控えは手元に保管しておきましょう。

Q. 住所が変わった場合、届出書にいつの住所を記載すればよいですか?

届出書の住所欄には、提出時点の現住所(住民票上の住所)を記載してください。

申告書の住所欄も同様に提出時点の住所を記載します。詳細は所轄税務署にご確認すると良いでしょう。

Q.届け出の前に受贈者が死亡した場合はどうなりますか?

受贈者が贈与を受けた年の翌年の3月15日以前に死亡し、相続時精算課税選択届出書を提出していない場合は、受贈者が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に「相続時精算課税選択届出書」を受贈者の管轄税務署に提出すると、相続時精算課税制度を適用が可能です。

このようなケースでは、受贈者の相続人(贈与をした者を除く)全員が「相続時精算課税選択届出書付表」に連署し、亡くなった受贈者の納税地を管轄する税務署に提出を行います。

また、添付書類としてすべての相続人を明らかにする書類も必要です。

Q.「確定申告」の際に申告を行えばよいのか?

「相続時精算課税制度 確定申告」で検索する方も多いですが、贈与税の申告は、毎年2〜3月に行う所得税の確定申告とは全く別の手続きです。

項目贈与税申告所得税の確定申告
対象贈与を受けた財産1年間の所得(給与・事業収益など)
提出書類贈与税申告書(第一表・第二表)確定申告書(第一表・第二表)
提出期限翌年2月1日〜3月15日翌年2月16日〜3月15日
提出先受贈者の住所地の税務署納税者の住所地の税務署

提出時期が重なるため混同しやすいですが、手続きは全く別です。

会社員で給与所得のみの方は、通常、所得税の確定申告は不要ですが、贈与を受けた場合は別途、贈与税申告書の提出が必要になります。

まとめ

相続時精算課税選択届出書の手続きについて、重要なポイントをまとめます。

確認項目内容
入手方法国税庁ウェブサイトからPDFをダウンロード、または税務署窓口でもらう
提出期限贈与を受けた年の翌年3月15日(厳守・期限後は認められない)
提出先受贈者(もらった側)の住所地を管轄する税務署
提出方法窓口持参・郵送(記録が残る方法で)・e-Tax
添付書類提出方法・状況により異なる。最新の国税庁案内を確認(令和6年改正で省略可能となるケースが拡大)
申告書との関係贈与税申告書(第一表・第二表)と同時に提出
確定申告との違い贈与税申告は所得税の確定申告とは別の手続き
毎年の提出初回のみ。同一贈与者からの贈与は2年目以降不要

相続時精算課税制度を活用するための最初の一歩は、届出書を期限内に正確に提出することです。この記事を参考に、余裕をもって手続きを進めてください。不安な点がある場合は、早めに税務署や税理士に相談することをお勧めします。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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