未払い残業代を請求する場合の流れと注意点を解説!

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未払い残業代請求方法は?

「毎日のように残業をしているのに残業代が出ない」
「当たり前のようにサービス残業をさせられている」

在職中で会社から不利益に扱われるのが怖かったり、周りも残業代を請求していなかったりすることから、未払い残業代の請求をためらっている方は多いと思います。

残業も労働であることに変わりはないため、会社は労働の対価として、労働者に残業代を支払う義務があります。

労働者は、残業代を支払ってもらう正当な権利をもっているのです。

この記事では、未払いの残業代を請求する場合の流れや請求方法について解説します。未払いの残業代に関してお悩みの方は、是非参考にしてみてください。

未払い残業代を請求できるケースか確認する

まず、未払い残業代を請求できるケースかどうかを確認することが大切です。

現在では、雇用形態もさまざまであり、通常の雇用契約だけでなく、フレックスタイム制や固定残業代制度を採用している会社も少なくありません。

たとえば、フレックスタイム制では、労働時間を一定期間(1か月以内)で管理するため、法定労働時間を超えて働いたとしても、直ちに残業代が発生しているとは限りません。

また、固定残業代制では、実際の残業時間にかかわらず、毎月支払われる賃金の中に一定の残業代が含まれています。固定支給分を超える残業代が発生していない限りは、未払い残業代は発生しません。

このように、雇用形態によっては、残業代そのものが発生しておらず、未払い残業代を請求できないケースもあります。

そのため、まずは、雇用形態をきちんと確認したうえで、残業代が発生しているかどうか、発生している場合には残業代が未払いとなっているかを確認する必要があります。

ご自身の雇用契約書や、会社の就業規則などを確認してみましょう。

未払い残業代を請求する場合の流れ

未払い残業代を請求する場合には、未払いの根拠を会社に示す必要があります。

実際に、未払い残業代を請求する場合の流れは、以下のようになります。

未払い残業代を請求する流れ

  • 残業代未払いの証拠を収集する
  • 未払いとなっている残業代の額を正確に算出する
  • 会社との交渉

それぞれ詳しく解説します。

残業代未払いの証拠を収集する

未払い残業代を請求するためには、残業代が未払いとなっていることを証明できる証拠が必要です。未払いの証拠がなければ、会社側に支払う必要性がないと判断される可能性もあります。

残業代の証拠になるものは、以下のようなものです。

残業代請求の証拠

  • 残業した事実と時間が分かるもの(タイムカード、パソコンのログの記録など)
  • 残業代を正確に計算するための資料(就業規則、雇用契約書)

代表的な証拠として挙げられるのは、「タイムカード」でしょう。タイムカードは、労働者の出勤および退勤を管理するものであるため、労働者の残業時間を証明することが可能です。

もっとも、現在では、パソコンやソフト、社員IDカードなどを使って労働者の出勤や退勤を管理している会社も多いです。これらも労働者の残業時間を証明する証拠となりえます。

また、雇用契約書や就業規則などに、残業代の計算方法が定められている場合があります。その場合には、雇用契約書や就業規則の写しが必要です。

残業代請求の証拠は多ければ多いほどいいです。未払い残業代を請求する場合には、どれだけの証拠を集められるかということが極めて重要になります。

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残業代請求で必要となる証拠を徹底解説!証拠がない場合の対処法は?

未払いとなっている残業代の額を正確に算出する

未払いとなっている残業代を正確に算出するためには、基礎賃金の額がいくらかを明らかにしなければなりません。給与明細書や源泉徴収票などによって、これらを明らかにすることができます。

基礎賃金の額を明らかにしたら、残業時間を証明できる証拠から残業時間を確定させます。

残業時間を確定したら、具体的に未払いとなっている残業代の額を計算します。

残業代の計算方法は、雇用契約書や就業規則において定められていることが一般的です。

定められた計算方法に基づいて、正確に算出しましょう。

なお、残業代計算は複雑なケースもあるため、正確な金額や残業代計算のルールを知りたい方は弁護士などの専門家に相談するといいでしょう。

請求可能な未払い残業代を大まかに知りたい方は、「残業代計算ツール」もご利用ください。

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残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!

会社との交渉

会社に請求する未払い残業代が確定すれば、実際に会社と交渉することになります。

未払い残業代の証拠が十分に揃っていれば、会社が支払ってくれる可能性はあります。

しかし、会社側が争う姿勢をみせ、請求した金額を支払わないケースや交渉自体に応じてくれないようなケースもあります。その場合は交渉による解決を諦めて、他の方法を検討することも必要です。

具体的には、労働審判手続を申し立てる、訴訟を起こすことがあげられます。

労働審判は訴訟よりも早期に解決する可能性が高いです。法的な効力もあるため、残業代をしっかりと受け取ることができるでしょう。

未払い残業代を請求する際の注意点

未払い残業代を請求する場合には3年の時効に注意

未払いとなっている残業代は、在職中・退職後にかからわらず請求可能ですが、時効があることに注意しなければなりません。

残業代請求の時効は3年です。時効が完成してしまうと、残業代を受け取ることができなくなります。

残業代の未払いやサービス残業が悪しき慣習として長年にわたり横行しているような場合には、とくに時効に気を付けなければなりません。

退職後は証拠の収集が難しくなる

未払い残業代の請求は、在職中でも退職後でも可能です。しかし、退職から期間が空いてしまうと、残業代の証拠の収集が難しくなるので注意が必要です。

在職中は、就業規則やタイムカードなど、残業代請求の証拠となる資料にアクセスしやすい環境にあります。

在職中の場合は、できる限り残業の証拠を収集しておくといいでしょう。

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残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説

未払い残業代の請求について相談したい場合は?

未払いとなっている残業代の問題をどのようにして解決したら良いか、すぐに行動に出るのではなく、まずは相談をしたうえで考えたいという方もいらっしゃると思います。

残業代の問題の相談を受け付けている窓口をご紹介します。

労働基準監督署

まず始めに挙げられるのは、労働基準監督署でしょう。

労働基準監督署は、企業や事業者などが労働関係の法律をきちんと守っているかどうかを監督する機関です。

企業において違法行為があれば、指導や勧告を行うこともあり、実際に労働基準監督署から勧告を受けて未払い残業代を支払う企業もあります。

労働局

労働局は、厚生労働省の出先機関であり、全国の都道府県に設置されています。

会社と労働者のトラブル解決を目的とする「あっせん手続き」は、労働局が両者の間に入って話を進めてくれます。

もっとも、あくまで当事者の話合いが前提となる手続きであるため、解決に至らない場合もあります。

労働組合

労働組合は、労働者で構成されており、日頃から労働条件の改善などを掲げて活動する団体です。

そのため、未払い残業代の問題を労働組合に相談することにより、労働組合が会社と交渉を行い、未払い残業代の支払いを求めてくれる場合もあります。

もっとも、会社によっては社内に労働組合がない場合もあり、その場合には、「ユニオン(社外の労働組合)」に相談してみることもひとつの選択肢です。

弁護士

弁護士も相談先の一つです。弁護士は法律の専門家であり、労働問題に実績のある弁護士であれば、証拠の集め方や交渉の進め方をアドバイスしてくれます。

未払い残業代でお悩みの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談するメリットは、他の相談先とは異なり、労働審判や訴訟を視野に入れた回答をもらえることができる点です。現状の自身の立ち位置や、今後の対処法などを詳しく知ることができるでしょう。

また、弁護士に依頼することで、労働者の代理人として会社と交渉を行ってくれ、状況によっては、労働審判や訴訟を起こすこともできます。

まとめ

未払い残業代を請求する場合の流れや注意点を解説しました。

未払い残業代の請求には、複雑な残業代計算や法的トラブルに発展するおそれなどがあります。残業代請求をお考えの場合は弁護士に相談することをおすすめします。

相談料は弁護士事務所によって異なりますが、無料相談を受け付けている事務所もあります。弁護士への相談料がご心配な方は無料相談を活用し、問題解決の糸口にしてください。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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