退職代行の流れは?手順を弁護士が徹底解説

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退職代行

「退職代行を依頼したい」
「退職代行の流れがわからない」

退職を考えており、なかなか退職の意思を切り出せないという方の中には、退職代行サービスへの依頼を検討している方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際に退職代行はどのような流れでおこなわれるのか、やり方がわからないと不安に思う方もいるでしょう。

今回は、退職代行サービスの流れや、利用する前にやっておくべきこと、利用後にやるべきことについて解説します。

退職代行を利用する前にやるべきこと

有給休暇の残り日数を確認しておく

退職代行サービスに依頼する前に、有給休暇の残り日数を確認しておきましょう。

有給休暇の残り日数は、給与明細に記載されているのが一般的です。

「退職するときに有給休暇をすべて消化できなかった」という事態を避けるために、必ず確認しておくようにしましょう。

会社の備品などの返却を準備しておく

会社からパソコンやスマホ、制服などの備品を借りている場合は、退職時に返却する必要があるため、返却する準備をしておくようにしましょう。

会社に預けているものがあるという場合は、退職代行サービスを依頼するときに、業者にその旨を伝えておくことが重要です。

退職金を確認しておく

基本的には、退職代行サービスを利用しても退職金を受け取れます。

そのため、会社に退職金制度はあるかどうか、就業規則や社内規程から確認しておきましょう。

引き継ぎ資料を作成しておく

法律上は、引き継ぎをしなくても基本的には問題ありません。

しかし、「就業規則で引き継ぎが義務化されている」「引き継ぎがないことで会社に大きな影響を与える」といった場合には、引き継ぎが必要とされる可能性があります。

上記のようなケースに該当する場合は、引き継ぎ資料を作成しておきましょう。

社宅や寮の場合は引っ越しの準備をしておく

社宅や寮に住んでいるという場合は、退職と同時に出ていく必要があります。

退職代行サービスを依頼する前に、引っ越し先を探したり、部屋の片づけをしたりしておきましょう。

また、配達物などの住居変更を忘れてしまうと、会社や社宅、寮に取りにいかなければならなくなるおそれがあるため、注意が必要です。

退職代行の流れ

退職代行業者に相談する

退職代行サービス事業者は大きく「一般の退職代行業者」「退職代行ユニオン(労働組合)」「弁護士」の3種類があります。

依頼先によって相場や対応してくれる内容が異なるので、自分に合った業者を選ぶようにしましょう。

こちらの内容について詳しく知りたい方は「退職代行サービスの金額相場はいくら?3つの相談先と対応の違いを解説」の記事をご覧ください。

相談方法については大きく「メール」「電話」「LINE」の3種類があります。

相談する際は、以下の点について質問しておくことが重要です。

相談時にしておくべき質問

  • 追加料金が発生するかどうか、料金システム
  • 決済方法
  • 即日対応はできるか
  • 備品の返却や私物の回収の方法
  • 退職後の書類の受け取り方法 など

料金を支払う

依頼する退職代行業者を決めたら、料金を支払いましょう。

退職代行は銀行振り込みによる前払い制を採用している業者がほとんどですが、中にはクレジットカードなどでのキャッシュレス決済や、後払い制を採用している業者もあります。

すぐに退職代行を利用したいという場合は、時間帯に左右されないクレジットカード払いの業者を利用するのがおすすめです。

利用者の情報を記入して打ち合わせをする

退職代行業者への相談と料金の支払いが終わったら、希望退職日や依頼者情報のヒアリングがおこなわれます。

ヒアリングで聞かれる個人情報には、以下のようなものがあります。

必要な個人情報

  • 氏名や生年月日、住所、電話番号
  • 雇用形態や勤続年数
  • 会社名や部署の情報
  • 退職理由や退職希望日
  • 有給休暇の残り日数
  • 退職金や未払い残業代の有無 など

会社に退職の意思を連絡してほしい日時があったり、なにか会社に対して伝えてほしい内容があったりする場合には、この時点で打ち合わせをしておくようにしましょう。

退職代行業者が会社に退職の連絡をする

ヒアリングした情報をもとに、退職代行業者が会社へ退職の意思を伝えます。

依頼者が会社と直接連絡を取る必要は一切ありません。

有給休暇や未払い残業代など、会社に対して何か交渉が必要な場合は、退職代行ユニオン(労働組合)や弁護士による退職代行であれば代行業者に任せることが可能です。

備品を返却したり退職書類を受け取ったりする

退職代行業者と会社との間で話し合いや交渉がまとまれば、退職代行業者から依頼主に報告があるはずです。

その後、会社に対して退職届を提出し、会社からの貸与品や備品を郵送すれば退職が完了することになります。

退職から2週間程度すれば、「離職票」「雇用保険被保険者証」「雇用保険被保険者証」「年金手帳」といった書類が会社から送られてきます。

これらの書類は転職するときや失業保険を受け取るときに必要な書類であるため、届かないという場合は代行業者に早めに相談しましょう。

退職代行をした後にやるべきこと

失業手当の手続き

退職先から必要な書類をもらった後は、ハローワークで失業保険の申請をおこなうことが重要です。

失業保険の申請が通れば、退職してから1年間は、前職の給与の5割~8割程度の基本手当が受け取れます。

ハローワークへの申請手続きが遅れた場合、基本手当の受け取り開始日も遅れてしまうので、必要な書類が用意できた時点で手続きを進めておきましょう。

以下の条件を満たしていれば、失業保険を受け取れます。

失業保険を受け取れる条件

  • 転職活動をしているものの、就業できない失業状態が続いていること
  • 離職日以前の2年間で、雇用保険への加入期間が12か月以上あること

退職代行を利用した退職の場合は、自己都合退職とみなされるため、退職から失業保険が給付されるまでは、およそ2か月かかるという点に注意が必要です。

国民健康保険の手続き

退職日以降は健康保険が適用されなくなるため、健康保険の切り替えを忘れずにおこないましょう。

すぐに転職先が決まらないという場合は、「家族の扶養に入る」「前職の健康保険を任意で継続する」「国民健康保険に加入する」といった対応が必要です。

国民健康保険に加入する場合は、退職日の翌日から14日以内に役所で加入手続きをおこなわなければなりません。

手続きをする際には、「健康保険の資格喪失証明書」が必要であることに注意しておきましょう。

国民年金の手続き

年金の切り替えが遅れると年金未払いとなってしまうため、年金の切り替え手続きも忘れずにおこないましょう。

退職から転職までの期間が空く場合は、「家族の扶養に入る」「国民年金に切り替える」といった対応が必要です。

国民年金に加入する場合は、退職から14日以内に市区町村の国民年金窓口で加入手続きをおこなわなければなりません。

手続きをする際には、「年金手帳(基礎年金番号通知書)あるいはマイナンバー」「離職票」が必要であることに注意しておきましょう。

離職票が届かなったり、何らかの事情で手続きができなかったりする場合には、所轄の年金事務所に相談する必要があります。

所得税・住民税の手続き

年明け以降に転職する場合や、転職しない場合は、確定申告が必要であることに注意しましょう。

また、在職中に天引きされていた住民税は、退職する月によって支払い方法が異なります。

月によって異なる住民税の支払い

1月~5月に退職する場合……役所から送付される納税通知書に従い、分納する

6月~12月に退職する場合……最後の給与や退職金から一括で天引きしてもらう

住民税の支払いに関しては、居住する市区町村によって納付方法が異なる場合があるため、各自治体に確認しておきましょう。

退職代行で依頼主がすることは4つだけ

退職代行業者へ依頼すること

「退職代行サービスを利用しよう」と決めたら、退職代行業者に問い合わせてみましょう。

相談自体は無料でおこなっている業者が多いので、「話を聞いてほしい」という気持ちで連絡してみることもおすすめします。

有給の消化や退職希望日といった、疑問や要望を相談し、内容に納得してから依頼するようにしましょう。

依頼料金を支払うこと

退職代行業者の多くは前払い制を採用しています。

退職代行業者が入金を確認してから退職代行が始まる点に注意しておきましょう。

また、料金に関するトラブルを回避するためにも、最終的にかかる料金や費用の内訳について、相談する際に詳しく確認しておくことが重要です。

退職届の作成や備品の郵送

退職代行サービスは本人に代わって会社に退職の意思を伝えてくれますが、「退職届」などの退職に必要な書類は依頼者本人が執筆する必要があります。

また、作成した書類や、会社からの貸与品や備品は依頼者本人が会社に郵送する必要があります。

原則として郵送という形になるため、依頼者が直接出社する必要はありません。

また、私物を郵送してもらいたいという場合も、代行業者が間に入ってくれるため、依頼者が直接会社とやり取りする必要はないところがポイントです。

退職書類や私物を受け取ること

無事に退職手続きが終われば、会社側から書類や私物が依頼者の自宅に郵送されます。

私物の郵送が必要な場合は、「何を送ってほしいのか」「どこに置いてあるか」といった情報を代行業者に伝えておきましょう。

退職代行で業者がしてくれること

会社に退職の意思を伝えること

退職代行を依頼すれば、自分に代わって会社に退職の意思を伝えてくれます。

業者によっては、依頼した当日に退職できる即日退職に対応しているところもあります。

すぐにでも退職したいという方は、即日退職に対応した業者を探してみることをおすすめします。

退職手続きや会社とのやりとりのサポート

退職する際には、書類の提出、貸与品や備品の返却といったさまざまな手続きが必要です。

退職代行に依頼すれば、面倒な手続きややり取りをサポートしてくれるため、心理的負担を軽くできるというメリットがあります。

退職代行ユニオンや弁護士は会社と交渉できる

一般の退職代行業者が会社と法的な交渉をおこなうことは、非弁行為(弁護士資格をもたない者が、報酬を目的に弁護士業務をおこなう違法行為)にあたるため、残業代の請求などといったアクションを起こすことはできません弁護士法第72条)。

退職代行ユニオンや弁護士に退職代行を依頼すれば、有給消化や退職日の決定など、さまざまな交渉ができます。

また、弁護士であれば、未払い残業代やハラスメントなどの慰謝料請求といった法的な対応を依頼できます。

もし会社と何らかのトラブルを抱えており、そのうえで退職代行を依頼したいという場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

退職代行のポイント

退職日の2週間前に退職の意思を伝えよう

仕事を辞める場合、少なくとも退職希望日の2週間前までに会社や上司に伝える必要があります(民法627条)。

したがって、退職希望日から2週間前には退職代行業者に相談しておきましょう。

もちろん、退職代行サービスに依頼したその日から有給を取得すれば、退職希望日まで出社せずに退職日を迎えることもできる可能性があります。

また、有給休暇の残り日数が少ないという場合でも、以下のようなやむを得ない事由があるケースでは即日退職が認められる可能性があります(民法628条)。

やむを得ない事由と認められるケース

  • パワハラなどハラスメントやいじめなどで強いストレスを感じている
  • 従業員本人が精神疾患を患っている
  • 長時間に及ぶ過度な残業など違法行為が認められる など

自分のケースが即日退職できるケースかわからないという方は、弁護士事務所に相談することをおすすめします。

転職先にバレることは基本的にない

「自分が退職代行サービスを使ったことが転職先にバレてしまうのではないか」と不安になる方もいるかもしれません。

しかし、退職代行サービスを利用して会社を退職したとしても、転職先にバレてしまうリスクは低いといえます。

というのも、企業が退職した従業員の個人情報を外部に提供する行為や、以前勤務していた会社を調べる行為は、個人情報保護法で禁止されています(個人情報保護法27条)。

また、退職代行業者もプライバシー保護を徹底しているため、その点でもバレてしまうリスクは低いでしょう。

弁護士はトラブルにも対応がスムーズ

退職代行サービスを利用して企業に退職を申し出た場合でも、企業が退職を認めず訴訟問題といった法的トラブルに発展するおそれがあります。

その場合、一般の退職代行業者や退職代行ユニオンでは、うまく対処することが難しいというデメリットがあります。

しかし、弁護士であれば、法的な専門知識を背景に、法的トラブルに発展した場合でもスムーズに対処できるというメリットがあります。

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まとめ

退職代行サービスを利用すれば、会社に対して代理で退職の意思を伝えてもらえ、心理的な負担を軽くできるというメリットがあります。

退職に関してお悩みの方は、一度利用を検討してみてはいかがでしょうか。

また、退職代行サービスを利用したいという方は、弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士であれば、未払い残業代請求や退職希望日の交渉ができるほか、法的トラブルに発展した際の対応をスムーズにおこなえます。

無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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