派遣元や派遣先から解雇と言われた!対処法を弁護士が解説

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派遣会社に解雇

「派遣先からもう来なくていいと言われてしまった」
「派遣先で解雇といわれ、派遣元からも突然契約を解除された」

派遣先からクビと言われたり、派遣元から突然解雇されたりしてしまうと、収入源を失うために不安になると思います。

今回は、派遣社員が解雇されてしまうケースや、それが違法となるケース、対処法について解説します。

派遣元や派遣先から解雇されたとき

派遣元の企業から解雇された場合

派遣元の企業から解雇(契約解除)された場合は、直接雇用されている社員と同じように対応することが求められます。

こちらの内容について詳しく知りたい方は『会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?』の記事をご覧ください。

派遣先の企業からクビと言われた場合

派遣労働とは、派遣元の企業と労働契約を結び、派遣先の企業で派遣先の命令に従って業務をおこなうことを指します。

つまり、派遣労働者と派遣先の企業との間には労働契約は存在していないので、派遣先が派遣労働者を解雇することはできないことになります。

派遣先が派遣元との労働者派遣契約を解除したいという場合は、派遣元に対して損害賠償責任を負う必要があります。

この場合でも、派遣先は派遣労働者の新しい就業機会を保障し、それができない場合は派遣元に派遣労働者の休業で発生する休業手当などを支払わなければなりません。

参考:厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」

派遣先でクビと言われた場合には、派遣元の責任者に連絡を取ることが重要です。

仮に派遣元も対応してくれなかったという場合には、弁護士への相談をおすすめします。

労働契約期間中に解雇された場合

派遣先と派遣元の労働者派遣契約が解除されたことを理由に、派遣元が労働契約期間の途中で契約を解除するケースがあります。

原則として、労働契約期間の途中で契約を解除することは認められていません。

派遣元は、やむを得ない事由がなければ、派遣労働者に責任がないにもかかわらず契約途中で解雇することはできません(労働契約法17条)。

また、その事由が派遣元の過失により生じた場合は、損害賠償の責任を負うことになります(民法628条

それに加え、派遣労働者は派遣元に対して、契約期間の残りの賃金の全額の支払いを要求する権利があるのもポイントです(民法536条2項)。

労働者が休業する理由について派遣元に責任がある場合、派遣元は労働者に平均賃金の6割以上を休業手当として支払う必要もあります。そのため、突然契約を解除されたという場合には落ち着いて対応しましょう(労働基準法26条)。

派遣社員が解雇や派遣切りに遭う理由

派遣切りとは、派遣先企業や派遣会社に派遣契約を打ち切られたり、契約更新を拒否されたりすることをいいます。

派遣社員が解雇・派遣切りに遭う理由として、以下のような例が挙げられます。

派遣社員の解雇・派遣切りの理由

  • 能力不足や勤務態度の不良
  • 派遣先や派遣元の経営状態の悪化
  • 3年の派遣期間経過
  • 5年経過による無期転換の防止

社員側の能力不足や勤務態度の不良

派遣先でミスを繰り返したり、十分な成果を上げられなかったりした際は、能力不足とみなされて派遣切りに遭うおそれがあります。

また、「上司の命令を聞かなかった」「無断欠勤を繰り返した」など、勤務態度が悪いという場合にも派遣切りされるおそれがあります。

しかし、「注意や指摘などがない状態で突然契約を打ち切られた」といった場合では、違法性が認められるケースがあります。

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派遣先や派遣元の経営状態の悪化

会社が経営不振に陥った場合に、人件費を削減するために派遣元が派遣社員を解雇したり、派遣先の会社が契約解除を申し入れたりすることがあります。

派遣先の会社が整理解雇をおこなうということであれば、正社員より派遣社員を優先して辞めさせるという合理性が認められるかもしれません。

しかし、派遣元による解雇は厳しい要件で判断されます。

3年の派遣期間経過

派遣社員は、同一の職場で働ける期間は最長3年と定められています(労働者派遣法35条の3)。

3年を超えて同じ組織で働く場合は、派遣先の会社と直接雇用契約を結ぶか、派遣元で無期雇用契約に切り替える必要があります。

派遣先は人件費、派遣元はリスクの増大をおそれ派遣切りをおこなう可能性があります。

5年経過による無期転換の防止

契約更新を重ねて、通算雇用期間が5年を経過した場合は、会社に対して無期の労働契約を結ぶ(無期転換)ことができます(労働契約法18条)。

しかし、労働者と無機契約を結ぶことは、会社側にとって人件費の増大を意味するため、無期転換をおこなう前に派遣切りをおこなう場合があります。

派遣社員の解雇が無効とみなされるケース

派遣社員の解雇が無効とみなされるケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

派遣社員の解雇が無効とみなされるケース

  • 解雇事由が適切でないケース
  • 30日前に解雇を予告していないケース
  • 契約がこれまでに何度も更新されている・更新が期待できるケース

解雇事由が適切でないケース

無期雇用の派遣社員の場合

派遣元が無期雇用の派遣社員を解雇するには、解雇について客観的で合理的な理由があり、社会通念上相当であると判断される必要があります(労働契約法16条)。

たとえば、業績不振により整理解雇(リストラ)をおこなうといった場合には、以下のような要件が必要になると考えられます。

整理解雇(リストラ)をおこなう要件

  • 整理解雇が必要なほど業績不振であるかどうか
  • 解雇を回避する努力をおこなっていたかどうか
  • 解雇となる対象が解雇について納得のいく説明を受けているかどうか
  • 解雇となる対象と話し合う機会を設けたかどうか など

こういった要件に当てはまらない場合は、解雇が無効になるかもしれません。

リストラについて詳しく知りたい方は、『リストラに納得がいかない!リストラを弁護士に相談するメリットを解説』の記事をご覧ください。

有期雇用の派遣社員の場合

派遣元が有期雇用契約の派遣社員を契約途中で解雇する場合は、やむを得ない事由が必要です(労働契約法17条)。

やむを得ない事由については、「重大犯罪を起こした」「派遣先の会社のお金を横領した」などが該当すると考えられます。

30日前に解雇を予告していない・解雇予告手当を払っていないケース

有期雇用派遣の場合では、やむを得ない事由がない限り、契約期間中のクビは認められていません。

もし解雇する場合は、30日前にまでに解雇予告をしておく必要があります(労働基準法20条)。

また、解雇予告をおこなわない場合は、30日分の賃金(予告の日数が30日に満たない場合はその不足日数分の賃金)を解雇予告手当として支払わなければなりません。

ただし、2か月以内の短期派遣者や、日雇い労働者、季節労働者、試用期間中の労働者については、解雇予告についてのルールはないので注意が必要です。

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契約がこれまでに何度も更新されている・更新が期待できるケース

労働者が有期労働契約の終了後すみやかに契約更新の申し入れをした際、以下のケースに該当するときは、会社側は労働者の申し入れを拒否できなくなっています。

契約更新の申し入れを拒否できないケース

  • 有期労働契約や期間雇用が繰り返し更新されており、無期契約と実質的に異ならない場合
  • 上記の場合には当てはまらないものの、雇用関係の継続が見込まれる場合
  • 雇い止めに客観的で合理的な理由がなく、社会通念上相当でないと判断された場合

また、契約が3回以上更新されている場合や、1年以上継続勤務している場合に雇い止めをおこなう際には、労働者に30日前までに通達しなければならないと定められています。

参考:厚生労働省|有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について

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解雇の無効を請求するなら弁護士に相談

解雇の無効を請求するときは、弁護士に相談することをおすすめします。

解雇されたときの対処法として、解雇理由証明書の請求をしておくことが重要ですが、場合によっては会社が応じないこともあるかもしれません。

弁護士であれば、「解雇事由を確認できる」「会社と代理で交渉できる」「労働審判などを相談できる」というメリットがあります。

また、解雇を受け入れ退職するという場合でも、残業代請求や解雇予告手当の請求といった法的手続きを任せられます。

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まとめ

派遣先や派遣元に突然解雇を告げられた場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

会社から解雇を言い渡されると不安になるとは思いますが、無料相談をしている弁護士・法律事務所もあるため、探してみてはいかがでしょうか。

岡野武志弁護士

監修者


アトム法律事務所

代表弁護士岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了

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