残業200時間は命の危険!過労死ラインと対処法について解説
「月の残業時間が200時間を超えており、会社を辞めたい」
「残業が200時間を超えてしまった。プライベートの時間が取れない」
月200時間の残業は、労働基準法で許容されている労働時間の倍以上の残業を強いられていることになり、きわめて危険です。
労働基準法では、法定労働時間を原則1日8時間、1週40時間と定めています(労働基準法32条)。
法定労働時間が1週40時間のところ、200時間の残業をおこなっているということは、残業時間だけで法定労働時間の5倍の時間残業していることになります。
今回は、月200時間におよぶ残業の異常性や、長時間におよぶ労働時間・未払い残業代の対処法について解説します。
目次
月200時間の残業時間は過労死ラインを超えている
過労死ラインとは、健康被害や精神障害が発生するリスクが高くなる残業時間の目安です。
2021年9月に労災認定基準が改正され、長時間の労働と過労死の関係性について、以下のような基準が設けられました。
労働の期間と時間 | 業務と発症との関連性 |
---|---|
発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない | 弱い |
発症前1~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められる場合 | 徐々に強まる |
発症前1か月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合 | 強い |
発症前2~6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合 | 強い |
参考:厚生労働省|血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について
基準からわかるように、「発症前1か月間におおむね100時間」あるいは「発症前2~6か月間にわたって1か月あたりおおむね80時間」を超える時間外労働がある場合は、業務と発症との関係性が強いとされています。
月に200時間残業しているということは、この過労死ラインを大幅に上回っており、きわめて危険な状態といえます。
そもそも月45時間を超える残業が続くと違法のおそれも
原則として、月45時間以上の残業が何か月も続く場合、違法とみなされるおそれがあります。
36協定の締結と届け出が必要
1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働者が働くときには、労使協定(いわゆる36協定)を結ぶ必要があります。
36協定を結んだだけで、労働基準監督署長に届け出ていない場合や、そもそも36協定を結んでいないという場合には、法定時間を超える残業は違法となります。
36協定があっても月45時間・年360時間を超える残業は違法
36協定を結んでいても、「月45時間・年360時間」を超える残業は、原則として違法となります。
臨時的な特別の事情がある場合は、特別条項付きの36協定を結ぶことで上限を超えた残業をさせられることがありますが、その場合でも残業時間は以下の範囲内で定められていなければなりません。
特別条項付き36協定の残業時間の上限
- 時間外労働が年720時間以内である
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満である
- 2か月、3か月、4か月、5か月、6か月のいずれの期間においても、時間外労働と休日労働を合わせて平均80時間以内にしなければならない
- 月45時間を超える時間外労働は、年6か月まで(1年に6回まで)
したがって、月45時間を超える残業が何か月も続いている場合は、違法と判断されることもあります。
つまり、36協定が締結されている場合でも、月200時間の残業は法定労働時間の4倍以上の時間残業していることになります。
月の残業が200時間に達しているというのは、きわめて異常な値であるといえます。
そのほかに残業が違法になるケース
36協定に関する規制以外で、違法な残業とみなされるケースもいくつか存在します。
そのほかに残業が違法となるケース
- 残業代が正しく計算されていない
- みなし残業制度が守られていない
- いわゆる「名ばかり管理職」になっている
残業代が正しく計算されていない
従業員が月60時間を超える残業をおこなった場合は、企業の規模にかかわらず50%以上の割増率で計算された割増賃金が支払われなければなりません。
適切な残業代が支払われていない場合は、違法な残業といえるでしょう。
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・残業代の正しい計算方法とは?基本から応用的な計算まで徹底解説!
長時間の残業が常態化しているなど、労働基準法の遵守がきちんとなされていないような企業では、残業代も未払いになっているおそれがあります。
200時間にもおよぶ残業をおこなっている場合、その分残業代も高額になるのがふつうです。
「適切な残業代が支払われていない」などといった場合には、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
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もちろん、残業代がきちんと支払われているという状況であったとしても、過労死のリスクを考えると、200時間にもおよぶ残業が常態化している会社からの退職や転職の検討をおすすめします。
みなし残業制度が守られていない
みなし残業(固定残業)とは、実際の残業時間にかからわず、あらかじめ決められた一定時間の残業代を給与に含めて支払う制度です。
一定時間を超えて残業しているのにもかかわらず、超過分の残業代が支払われていないケースは違法といえます。
こちらの内容について詳しく知りたい方は『会社から突然解雇されたらどうする?違法な解雇への対処法や相談先は?』の記事をご覧ください。
いわゆる「名ばかり管理職」になっている
労働基準法では、管理監督者に該当する管理職であれば、労働時間、休憩および休日に関する規定は適用されないと定められています(労働基準法41条2号)。
しかし、すべての管理職が管理監督者に該当するわけではありません。
労働基準法上の「管理監督者」に該当するかどうかは、「責任や権限」「職務内容」「待遇面」などによって判断されることになります。
いわゆる「名ばかり管理職」に該当しており、残業代が支払われない場合は、違法といえます。
こちらの内容について詳しく知りたい方は『管理職は残業代が出ない?残業代がもらえるケースや基準を解説』の記事をご覧ください。
長時間の残業や未払い残業代の対処法
200時間におよぶ残業や、残業代が未払いになっているということでお悩みの方は、すぐに以下のような対処法をとることをおすすめします。
長時間の残業や未払い残業代の対処法
- 退職・転職する
- 労働組合や労働基準監督署に相談する
- 弁護士に相談する
退職・転職する
長時間におよぶ残業が常態化している状況では、過労死のリスクが非常に高くなり、命の危険があります。
会社側の改善が見込めそうにないという場合には、健康なうちに会社を退職したり、転職したりすることをおすすめします。
未払いの残業代が残っているというケースでも、退職後に残業代を請求することはできるので安心してください。
ただし、在職中であれば、未払い残業代の証拠を集めやすいというポイントもあります。
こちらの内容について詳しく知りたい方は『残業代請求は退職後でも可能!注意点や退職後の証拠の集め方を解説』の記事をご覧ください。
労働組合や労働基準監督署に相談する
個人で対処することが難しいという場合には、労働組合や労働基準監督署に相談することで、状況の改善が見込めることもあります。
残業によって健康被害が生じているという際には、労災が認められることもあるので、労働基準監督署に相談してみることをおすすめします。
弁護士に相談する
「残業代が未払いのままで困っている」という場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、代理で会社と交渉を進められます。
健康被害を受けているという場合には、労災保険の申請について、弁護士がアドバイスをしてくれるというメリットもあります。
200時間を超える残業時間や退職については弁護士に相談
月200時間の残業は、残業時間の上限を超える異常な数値です。
仮に残業代をきちんと支払われていたとしても、すぐにでも退職や転職を考えることをおすすめします。
残業時間や労災申請について話を聞いてもらいたいという方は、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
弁護士に相談すれば、「未払い残業代があるかどうか判断してもらえる」「会社に対して未払い残業代を代理でおこなってくれる」「労働審判などの法的対応をスムーズに任せられる」といったメリットがあります。
無料相談を受け付けている弁護士事務所もありますので、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了