事業承継の失敗事例3選!成功事例を目指すための教訓とは…
- 事業承継の失敗事例は?
- 事業承継で成功事例を目指すためには?
この記事では、事業承継の失敗事例を紹介しながら、成功事例を目指すための教訓をまとめています。
近年、中小企業では、後継者不在による廃業が相次いでいます。ご子息・ご息女に会社を継がせたくてもそれが難しい場合などは、第三者への事業承継という方法もあります。
現在、後継者問題や事業承継でお悩みの方は、この記事を是非ご参考になさってください。
目次
1.事業承継の失敗事例①
失敗事例(後継者が見つからない)
事例
ある老舗の食品製造会社では、経営陣の高齢化により後継者問題が深刻化していた。
経営者のAさんは、長男に事業を継承するつもりでいたが、断られた。
次男には経営の資質がない。
従業員や取引先にも、後継者候補はいない。
Aさんは、M&Aによる事業承継を考えるようになった。友人にそのことを相談した矢先、Aさんは高齢のため他界した。
▼ ひとこと解説
後継者不在は、中小企業の事業承継における最大の課題の一つです。
中小企業の場合は、実子を後継者とする、有能な社員の中から後継者を指名する、後継者となるべき方を外部から会社に招くなどの対応をとることが多いでしょう。
しかし適任者がおらず、これらの対応ができない場合に、廃業を回避したいときは、M&Aによる第三者承継を検討する必要があります。
M&Aによる第三者承継の良いところは、後継者を育成するために長い時間をかけたり、多くの手間をかけたりする必要ないということです。
ですが、会社を買収してくれる相手を見つけるための、最低限の時間や手間がかかります。
早期に行動にうつさなければ、いつまで経っても事業承継の相手が見つからず、結局、事業承継が失敗に終わるというケースもあるでしょう。
成功事例にするには?失敗事例の教訓①
教訓
- 多数の後継者候補を育成する
- M&Aによる事業承継をおこなう場合でも、時間に余裕をもって買い手探しを始める
- M&Aによる事業承継をおこなう場合、M&A仲介をおこなう機関を活用し、効率よく買い手探しをおこなう
▼ 補足
後継者不在は事業承継の失敗を招く大きな原因となります。
後継者不在の問題を解消するには、まずは、早期に後継者の育成に取り組むことが重要です。
後継者の育成過程では、後継者候補の能力や意欲を把握し、適切な支援をおこないましょう。
また、後継者育成がうまくいかなかった場合は、代わりに後継者となる第三者を見つける必要があります。
2023年の統計では、80歳代でも後継者不在率が23.4%にのぼるという結果がでています(帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2023 年)」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p231108.pdf(2024.1.5現在))。
とくにご高齢の経営者の方の場合、病気などで現場で働くことができなくなってしまう可能性もあります。
万一の場合にそなえて、できるだけ早期に事業承継のプランを立てておく必要があるでしょう。
M&A仲介機関をうまく活用することで、事業承継の相手を、効率よく探していくことも大切です。
後継者候補が見つかった後は、事業承継の詳細条件についての話し合いが待っているので、出来る限りスピーディーに対応できるとよいでしょう。
関連記事
2.事業承継の失敗事例②
失敗事例(事業承継の交渉決裂)
事例
中小企業のA社の社長Xさんは、M&A仲介会社に相談したところ、譲渡先候補としてB社が見つかった。
しかし期待していたB社とのTOP面談では、財務状況ばかり質問されて不快になった。
Xさんは自分の大切な会社をB社に売却して良いのか不安を覚え、条件は絶対に譲歩したくないと思った。
その後、DDを経て、最終的な条件交渉に入ったが、やっぱり話がまとまらない。
結局、B社とは交渉決裂。A社の事業承継の相手探しは振り出しに。
▼ ひとこと解説
事業承継において、条件交渉は重要なポイントです。
譲渡価格、株式比率、事業計画、従業員の雇用維持など諸々の条件交渉がまとまらなければ、交渉決裂となり、M&Aは成約に至らず、事業承継に失敗することになります。
交渉とは、お互いに譲歩できる点を見出しながら話し合いを進めるもの。相手への配慮や、雰囲気作りも大切です。
成功事例にするには?失敗事例の教訓②
教訓
- 早い段階から、経営理念やビジョンの共有をおこなう
- 安く買いたたかれないよう、自社の企業価値を分析し、自社の強みをアピール
- 相手が重視している点を見極め、譲歩できるポイントを探す
▼ 補足
売り手と買い手との間で、経営理念やビジョンの共有が不足していたことも、交渉決裂の原因の一つになり得ます。
TOP面談では、細かい財務状況の確認よりも、お互いのビジョンや、どのようなシナジー効果が期待できるかといった点について、まずは話し合います。
ビジョンを共有できない相手だと分かったのであれば、その時点で、交渉をやめれば良いでしょう。
M&Aは、経営統合にかかわる重要な判断であり、相手を打ち負かすような交渉はご法度です。
信頼関係を構築しながら、お互いが重視している点、譲歩できる点などを見出して、条件交渉をおこなっていく必要があります。
関連記事
3.事業承継の失敗事例③
失敗事例(社員や取引先の反感を買う)
事例
A会社の社長であるXさんは、「廃業したら従業員や取引先に迷惑がかかる」と考え、第三者であるYさんに、会社を売却することにした。
しかし、自分の会社の社員や取引先には、きちんと説明しなかった。
そのせいか、社員や取引先は経営方針や処遇などに不安を感じ、反発を示した。
その後、取引先からは「経営者が変わったのであれば、取引は辞める」と言われてしまった。古参の社員は、多くが退職の意向を示した。
結局、M&Aのクロージングができず、会社売却はとん挫することに。
▼ ひとこと解説
これ以上会社を大きくできない、年齢的にもリタイアしたいといった場合、会社を廃業するという選択肢もあります。
しかし、それでは従業員の雇用が維持できません。また、取引先にも迷惑がかかることになります。
この場合の打開策としては、M&Aは有効です。
ただし、単にM&Aの成約に至ればよいというものではなく、従業員や取引先の納得を得ることが重要です。
この事案のような結末になってしまっては、本末転倒。
会社にとっても、M&Aによるシナジー効果で成長を遂げるどころか、業績悪化で赤字転落・廃業が危ぶまれる状況に陥ってしまうでしょう。
成功事例にするには?失敗事例の教訓③
教訓
- 社員や取引先は不安・不満を抱くものである
- 適切なタイミングで、社員に対して十分な説明をおこなう
- 適切なタイミングで、取引先からの理解を得る
▼ 補足
事業承継は、企業にとって大きな変化を伴うものです。
そのため、社員や取引先が不安や不満を取り除いてあげられるよう、手を尽くす必要があります。
社員や取引先に周知するタイミングが遅い場合、事業承継に対する不安や不満を十分に解消できない可能性があります。
事業承継を社員に知らせるタイミングについては、一般的には、M&A契約締結後、できる限り早いタイミングで事業承継の事実を公表すべきといわれています。
また、社員への公表については、社内の重要なポストにある古参社員から周知させていくなどの配慮が必要な場合もあるでしょう。
また、取引先に対しても、適切なタイミングで事業承継の事実を伝える必要があります。
事業承継をする売り手側の企業と、取引先との間で締結している契約のなかで、COC条項(会社の経営権が移動する場合に、取引先に通知する等の義務を定めた条項)がある場合は特に注意が必要です。
関連記事
事業承継で失敗したくない!成功事例になるには?
事業承継の失敗事例3選はいかがでしたでしょうか。
事業承継の成功事例を目指すために、最も大切だと思われる教訓について、最後に整理しておきましょう。
教訓3選
- 後継者を見つけるために早く行動をおこすこと
- 事業承継のビジョンを共有を共有すること
- 社員や取引先への説明もきちんとおこなうこと
ただし、これらは事業承継を成功させるための秘訣であって、これだけが全てではありません。
事業承継の成功事例の仲間入りを果たすためには、複雑な手続きや、事業承継の進め方のコツについて、もっと詳しく知ることが必須です。
ですが、それを自分一人で調べるのは、とても骨の折れる作業でしょう。
あなたが事業承継を成功させたい場合には、頼りになる専門家の助言を受けるのが近道といえます。
事業承継について無料相談をおこなっているM&A仲介会社などもあるので、まずは話を聞いてみるのはいかがでしょうか。
M&Aが成功した実例については、「M&Aの事例を紹介!会社売却(事業譲渡・株式譲渡)の成功事例とは」の記事もご覧ください。