M&Aのシナジー効果とは?シナジーの種類と分析まとめ

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  • M&Aのシナジー効果とは?
  • M&Aのシナジー効果の種類は?
  • M&Aのシナジー効果の分析方法は?

シナジー効果とは、M&Aによって得られるプラスの相乗効果のことです。

M&Aは、売り手企業と買い手企業を足すことで、事業の成果を1+1=2ではなく、3にも4にもできる可能性を秘めています。

この記事では、M&Aのシナジー効果の種類、分析方法などについて解説しています。

是非さいごまでご覧ください。

M&Aのシナジー効果の定義

M&Aのシナジー効果とは?

M&Aのシナジー効果とは、売り手企業と買い手企業が統合することで生まれる相乗効果のことです。

複数の企業が統合することで、それぞれの企業の技術、ノウハウ、販路などの経営資源を組み合わせることができ、その結果、1社単独では実現できないより大きな価値を生み出すことを指します。

シナジーが生まれるM&Aとは?

シナジー効果は、戦略的に計画されたM&Aによってのみ実現できます。

単に企業規模を拡大するだけでなく、事業ポートフォリオの補完や経営資源の有効活用など、明確な目的を持ったM&Aが重要です。

M&Aのアナジー効果とは?シナジーとの違い

M&Aの効果には、シナジー効果とアナジー効果の2種類があります。

シナジー効果はプラスの効果であす。

一方、アナジー効果はマイナスの効果です。

M&Aを成功させるためには、シナジー効果を最大化し、アナジー効果を最小限に抑えることが重要です。

M&Aのシナジー効果の種類

M&A(会社売却)のシナジー効果の例

M&A(会社売却)のシナジー効果には、事業シナジー(売上シナジー・コストシナジー・研究開発力アップ)、財務シナジー、組織シナジーといったシナジーがあります。

これらのシナジー効果について、解説していきましょう。

売上シナジー効果とは?

M&Aによって、買い手企業は、単独で営業していた頃と比べて売上が伸びた、コストを削減できた、財務状況が改善したなど、さまざまなシナジー効果を受けると思います。

M&Aのシナジー効果をとらえる切り口には様々なものがあります。

売上シナジーとは、M&Aによる経営統合により、単独で営業していた頃よりも、売上が伸びるという効果のことです。

売上シナジーは、クロスセリングなどをおこなうことで創出されます。

売上シナジーの創出(一例)

  • クロスセリング
  • 新製品の共同開発
  • ブランドの共同利用
  • 販路の拡大
    etc.

クロスセリング

クロスセリングとは、売り手企業と買い手企業の顧客を共有することです。

M&Aの実行によりクロスセリングが可能になった場合、それぞれの企業が単独で営業していた時よりも多くの顧客に商品やサービスを販売でき、売上が向上する効果を期待できます。

新製品の共同開発

M&Aの実行により、新製品の共同開発が可能になります。

お互いの技術資源を取り込むことができるので、単独では開発できなかったような革新的な新製品やサービスを開発することができ、売上が向上する効果が期待できます。

ブランドの共同利用

M&Aを実行することで、お互いのブランド力を活かして、商品やサービスの認知度が高まり、売上が向上することが期待できます。

ただし、M&Aによってブランドが統合されたことで、もとのブランドイメージが変わってしまい、顧客離れにつながるなどのアナジー効果のおそれもあります。

販路の拡大

M&Aを実行することで、店舗や通販など、販売チャンネルを拡大することができます。

その結果、より多くの顧客に商品やサービスを販売することができるようになり、売上が向上するといった効果が期待できます。

売上シナジーの注意点

売上シナジーの創出は顧客しだいです。

たしかにM&Aをおこなえば、クロスセリングや新製品の共同開発など、売上向上につながるチャンスをつかむことはできます。

しかし、実際に顧客が商品やサービスを購入してくれるかどうかは、お客様しだいです。

売上シナジーは、コストシナジーに比べて、実現するかどうかの予測が難しいものといえるでしょう。

コストシナジー効果とは?

コストシナジーとは、M&Aによる企業統合により、単独で営業していた頃よりも、会社運営にかかるコストを削減できるという効果のことです。

コストシナジーは、共同購買などをおこなうことで創出されます。

コストシナジーの創出(一例)

  • 共同購買・共同仕入れ
    まとめて発注をかけることで、有利な取引条件で購入でき、仕入れコストの削減につながる
  • 拠点の統廃合
    生産拠点や販売拠点を統廃合することで、維持費や修繕費などコスト削減、事業や組織の合理化につながる
  • 物流合理化
    物流拠点の集約により、管理や配送効率を向上させ、無駄な物流コストを削減できる

ビジネス視点の切り口とは?

M&Aのシナジー効果については、ビジネスにおける切り口からとらえた場合、事業シナジー、財務シナジー、組織シナジーといった分類が可能です。

ビジネスのシナジー効果

  • 事業シナジー
  • 財務シナジー
  • 組織シナジー

事業シナジー

複数の企業が経営統合することによって、事業運営において発揮されるシナジー効果のことを、事業シナジーといいます。

事業シナジーには、売上シナジー、コストシナジー、経営資源の有効活用といった効果が含まれます。

売上シナジーやコストシナジーについては、先ほどお伝えしたとおりです。

経営資源の有効活用については、スケールメリット(規模が大きくなることで経済効率が上がること)の拡大、研究開発の効率化、人材が増えることで適材適所が促進されるといった効果が期待できます。

財務シナジー

財務シナジーとは、M&Aによる企業統合により、単独で事業をおこなっていた頃よりも、財務状況が良くなるという効果のことです。

財務シナジーには、経営統合をしたグループ全体での資金の有効活用、節税、資金調達力の増強やコスト削減といった効果が含まれます。

たとえば、売り手企業の業績が好調で手元資金が厚い場合、買い手側は、M&Aによって売り手側企業の余剰資金を手にすることができ、投資に回すことができます。

また、財務状況が好調な企業は、金融機関からの信頼が厚く、金利削減につながる可能性もあります。

そのほか、M&Aの買い手側は、赤字企業を買収した後に利益をあげた場合、従前の赤字を繰越欠損金とすることで黒字の幅を縮小できるので、所得税を節税できる効果があります。

組織シナジー

組織シナジーとは、異なる企業文化やノウハウを持つ企業が統合することで、組織全体の活性化とイノベーションの促進につながる効果です。

組織シナジーは、以下の3つの要素から構成されます。

  • 人材の活性化
    異なる人材が交流することで、新たなアイデアや発想が生まれ、組織全体の活性化につながる。
  • ノウハウの共有
    それぞれの企業が持つノウハウを共有することで、業務効率化や新製品・サービスの開発につながる。
  • 企業文化の融合
    異なる企業文化が融合することで、新しい価値観や目標が生まれ、組織全体の成長につながる。

M&Aのシナジー効果の分析

バリューチェーンによるシナジー分析

バリューチェーンとは、原材料の調達から製品の販売まで、企業が顧客に価値を提供するために必要な一連の活動を体系的に分析するフレームワークです。

バリューチェーンは、主活動と支援活動に分類されます。

主活動とは、製品やサービスの価値を生み出す直接的な活動のことです。「購買物流→製造→出荷物流→販売・マーケティング→アフターサービス」といった流れが主活動になります。

支援活動とは、主活動を円滑に進めるための間接的な活動のことです。インフラ、人事・労務、技術開発、調達などは支援活動になります。支援活動は、主活動全体にかかわるものです。

事業の流れに沿って検討する場合、売上シナジー、コストシナジー、財務シナジー、組織シナジーの分析がしやすくなります。

たとえば、主活動の「製造」であれば、M&Aによって生産能力の拡大や、ノウハウの共有によって、売上シナジーが生まれることが期待できるでしょう。また、M&Aによって工場の統廃合や、外注作業の内製化ができれば、コストシナジーが生まれるでしょう。

また、支援活動の「技術開発」については、研究施設の統廃合によるコスト削減などのシナジー効果が期待できます。「調達」の場面では、M&Aによって企業の信用力が高まれば、金融機関から借り入れしやすくなるといった財務シナジーも期待できるでしょう。

買い手側は、バリューチェーンにのっとり、シナジー効果を想定するフレームワークによって、売り手企業とのM&Aが価値あるものかを検討しています。

売り手側としても、どの段階で、どのような価値を、買い手側企業に提供することができるのか、どの過程でどのような旨味があるのかを、説得的に伝えていくことが必要でしょう。

アンゾフの成長マトリックスによるシナジー分析

シナジー効果の分析の手法としては、上記のバリューチェーンにしたがう分析方法のほかに、アンゾフのマトリックスというものがあります。

アンゾフの成長マトリックスとは、経営戦略の父と呼ばれるイゴール・アンゾフが提唱したフレームワークです。

製品と市場をそれぞれ「既存」と「新規」に分類し、4つの象限で企業の成長戦略を分析します。

市場浸透戦略

市場浸透戦略は、既存の市場で既存の製品を販売することで、製品を浸透させて、売上を増加させる戦略です。

価格競争、販売促進、顧客サービスの向上などが、市場浸透戦略の主な施策となります。

販売エリアが異なる同業他社とのM&Aにより、販路拡大による売上シナジーが生まれる可能性があります。また、経営資源の統廃合、組織の合理化などを実現できれば、コストシナジーが生まれ、価格競争に強くなることが期待できます。

新製品開発

新製品開発戦略は、既存の市場において、新たなニーズを満たす製品を開発して販売することで売上を増加させる戦略です。

顧客ニーズの分析、新製品開発、市場調査などが、新製品開発戦略の主な施策となります。商品の差別化が鍵となる戦略です。

新市場開拓戦略

新市場開拓戦略は、既存の製品を、新たな市場に投入することで売上を増加させる戦略です。

新規市場への参入、販売チャネルの拡大、ブランド戦略などが、新市場開拓戦略の主な施策となります。売る力が試される戦略です。

多角化戦略

多角化戦略は、新たな市場で新たなニーズを満たす製品を開発することで、売上を増加させる戦略です。

ハイリスクハイリターンの戦略となります。新規事業の立ち上げ、経営資源の確保などコストがかかりますが、新しいビジネスチャンスを創出することができれば、リターンは大きいものとなります。

多角化戦略の内容についても、4つの分類ができます。

  • 水平型多角化戦略
    既存顧客に対して、新しい製品やサービスを投入する戦略です。
    顧客基盤や販売チャネルを活かせるため、比較的低リスクで展開可能です。
    新製品の開発、販売チャネルの構築などに投資が必要となります。
    例)電気メーカーがゲーム機を販売する
  • 垂直型多角化戦略
    既存事業の供給過程(川上)や販売過程(川下)に進出する戦略です。
    安定供給、品質向上、コスト削減などのメリットがある一方、設備投資、技術開発などのリスクもあります。
    例)繊維メーカーがアパレルブランドを作る
  • 集中型多角化戦略
    既存事業と技術的・マーケティング的に関連性のある分野に、新規参入する戦略です。
    メリットはシナジー効果による競争力強化にありますが、一方で市場調査、技術開発などのリスクもあります。
    例)製薬会社が化粧品を作る
  • 集成型多角化戦略
    既存事業との関連性のない分野に、新規参入する戦略です。
    集約型多角化は、コングロマリット型多角化ともよばれます。
    ブランド力、資金力などを盾にして、いままでとは全く異なる分野に進出するものです。
    多角化戦略の中で、もっともリスクの高い戦略であるといわれています。
    例)楽器メーカーが、オートバイ製造、バスタブ製造、英語教室運営などをおこなう

多角化戦略は、ほぼ未経験の市場で新製品を投入することになるため、かえってコストがかかり、シナジー効果の実現に時間を要するなどハイリスクな戦略です。

ですがその分、成功すれば、様々な分野で事業展開できることから、リスク分配ができ、大規模収益の安定化も図ることができるでしょう。

シナジー効果の高いM&Aを目指すには?

シナジー効果の評価はいくら?

M&Aの価格に、シナジー効果を反映させるには、M&Aによるシナジーを定量化して、企業価値評価をおこなう必要があります。

シナジーを定量化するにはまず、期待されるシナジー効果を分析・抽出します。そして、シナジーで生み出される利益の見込み金額と、実現のためのコストを洗い出します。その後、DCF法などを用いて、シナジー効果を反映させながら、企業価値評価をおこないます。

実現可能性が低いシナジー効果については、シナジーで生み出される予測金額がディスカウントされる可能性もあるでしょう。

なお、中小企業のM&Aにおいては、譲渡対象企業の簿価純資産に、営業利益の直近5年間分を加算した金額が、M&Aの価格相場になるともいわれています。

様々な計算方法を組み合わせて、売り手側と買い手側双方が交渉を重ねていき、最終的な売却価格を合意します。

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シナジー効果の高いM&Aを目指すには?

M&Aによるシナジー効果には様々な種類があり、分析の着眼点も色々ありました。

M&Aによるシナジー効果を高く評価してもらえれば、M&Aの価格も高額になり、売り手のメリットは大きいものとなります。

買い手に自社の魅力をうまく伝えて、シナジー効果を期待してもらえるよう、会社の魅力の磨き上げを十分におこなう必要があるでしょう。

磨き上げについて詳しく知りたい方は「事業承継型M&Aの磨き上げとは?磨き上げの目的や対象を解説!」の記事もご覧ください。

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