交通事故のむちうち(首の痛み)の症状や治療方法を総まとめ
- 交通事故に遭ってから首に痛みがある
- むちうちかもしれないので症状が知りたい
- むちうちの治療内容や痛みを和らげる方法が知りたい
交通事故に遭った後、首や肩に痛みを感じる方は、「むちうち」になっている可能性が高いです。むちうちの症状は多岐に渡り、めまいや耳鳴り、倦怠感などが併発することもあります。
この記事では、むちうちの主な症状や治療方法について解説します。
また、自宅で首の痛みを和らげる方法や、むちうちの治療をするあたり知っておくべきことも紹介します。
あなたの首の痛みはむちうち?むちうち症状を解説
交通事故で首に痛みを感じている方は「むちうち」になっている可能性が高いです。
しかし、むちうちの症状は首の痛みだけでなく全身にさまざまな不調が現れるため、まずはこの章でセルフチェックしてみましょう。
むちうちとは?
むちうちは、交通事故の追突や衝突により、首が鞭のように激しく揺さぶられることで発症します。
急激な首の動きにより、首の筋肉や靭帯、神経などが損傷し、様々な症状が現れるのです。
医学的には「頚椎捻挫」や「外傷性頚部症候群」と呼ばれることが多く、病院での診断時には、このような正式名称が使われることが一般的です。
むちうちの代表的な症状例
むちうちの代表的な症状は以下のとおりです。
むちうちの代表的な症状
- 首や肩の痛み
- 首の動きにくさ
- 首から肩のこり
- 手や腕のしびれ
- 頭痛
- 腰痛
- めまい
- 耳鳴り
- 吐き気
- 倦怠感・疲労感 など
首の損傷は神経にも影響を与えるため、手や腕のしびれ、めまい、吐き気といった、一見むちうちとは関係ないように思える症状も引き起こすことがあります。
また、これらの症状は必ずしも事故直後から出るわけではありません。
事故の直後は体が緊張状態にあり、アドレナリンが分泌されているため、痛みを感じにくいことがあります。そのため、事故から数時間後や翌日以降になって、徐々に症状が出てくることも珍しくないのです。
むちうちの4つのタイプと症状の違い
ここからは、むちうちの症状をより詳しく解説していきます。
むちうちには大きく分けて4つのタイプがあり、それぞれ症状が異なります。
むちうちの4タイプ
- 頚椎捻挫型:首の筋肉や靭帯の損傷が主な症状
- 神経根損傷型:腕や手のしびれなど、神経圧迫による症状
- バレ・リュー型:めまいや耳鳴りなど、自律神経の乱れによる症状
- 脊髄損傷型:手足の麻痺や排泄傷害など、脊髄の損傷による重度の症状
なお、複数のタイプの症状が組み合わさって現れることもあるため、各タイプをしっかりとご確認ください。
(1)頚椎捻挫型
むちうちで最も多いタイプで、全体の約8割を占めるといわれています。
首の筋肉や靭帯が急激に伸ばされることで、首に痛みや動きの不自由さ、頭痛などの症状が現れます。
事故直後よりも翌日以降に痛みが強くなることが特徴ですが、ほとんどの場合は適切な治療を受けることで症状が改善していきます。
(2)神経根損傷型
事故の衝撃で首の椎間板が神経を圧迫することで、腕や手のしびれ、痛み、感覚の異常が症状として現れます。
特に首を動かしたときや、咳やくしゃみをした際に症状が強くなります。手に力が入りにくくなったり、物をつかむ力が弱くなったりすることもあります。
(3)バレ・リュー型
首にある自律神経(交感神経や副交感神経)が損傷を受けることで発症します。
首の痛みに加えて、めまい、耳鳴り、頭痛、吐き気などの症状が現れます。
また、睡眠障害や集中力の低下、倦怠感といった症状を訴える方も多くいます。他のタイプの症状に比べて慢性化しやすい傾向があるため注意が必要です。
(4)脊髄損傷型
4つのタイプの中で最も重症なケースです。
事故により脊髄そのものが損傷を受けた状態で、手足の感覚異常や運動障害が起こります。
歩行が困難になったり、排尿や排便に問題が生じたりすることもあります。首だけでなく足にも症状が出る点が、他のタイプとの大きな違いです。
むちうちの診察と治療方法
むちうちの初診は整形外科が基本
むちうちの診察・治療は、「整形外科」での受診を基本としてください。
交通事故での首の痛みは、骨や神経の損傷が疑われるためレントゲンやMRI検査が必要になることがあり、これらの検査ができる整形外科での受診が望ましいです。
基本的には、問診と画像検査により「むちうち」と診断されます。
なお、意識障害や吐き気、頭痛がある場合は脳への影響も考えられるため、脳神経外科の受診を勧められることもあります。
接骨院・整骨院に通うときの注意点
むちうちの治療で接骨院・整骨院への通院を考えている方は、以下のような理由からまずは整形外科を受診してください。
接骨院・整骨院では…
- むちうちの診断に必要な検査が受けられない
- 損害賠償請求で必要な診断書が作成できない
接骨院・整骨院での治療を希望する場合は、必ず整形外科の医師に相談し、許可を得てから通院を始めてください。
医師の許可なく接骨院・整骨院で治療を受けると、治療費が自己負担になる可能性があります。
むちうちの初期段階の治療
むちうちの治療は、一般的に保存療法が中心となり、ほとんどの場合で手術は必要ありません。
保存療法
手術で体の内部にある異常を取り除くのではなく、外部からの治療で症状改善を目指す治療のこと。
初期段階では、安静を保つことが基本です。首に強い痛みや違和感がある場合には、無理に動かさず、必要に応じて頚椎カラーという装具で首を固定することもあります。
また、炎症による痛みを抑えるために鎮痛剤や消炎剤が処方されることも多いです。
ただし、軽症のむちうちであれば、過度な安静を長期間続けることは推奨されません。
動くことを極端に避けてしまうと、筋肉や周辺組織が固まってしまい、かえって症状が長引く原因になることもあるからです。
そのため、医師の指導を受けながら、日常生活や仕事を可能な範囲で再開することが勧められます。
むちうちのリハビリ治療
むちうちの治療では、初期段階の痛みや炎症が落ち着いてくると、リハビリを通じて回復を目指します。
むちうちのリハビリ治療には主に、「物理療法」と「運動療法」という2つの治療法が用いられます。
物理療法
物理療法では、専用の医療機器を使用して筋肉の緊張を取り除き、血行促進や痛みの緩和を目指します。具体的な治療方法には以下のようなものがあります。
- 温熱療法
患部を温めることで筋肉をリラックスさせる治療法です。血行が良くなることで、硬くなった筋肉がほぐれ、体の動きがスムーズになります。 - 電気療法
低周波などの電気刺激を利用して痛みを抑える治療法です。これにより、首や肩が動かしやすくなり、日常生活での動作が徐々に楽になる効果が期待されます。
物理療法は、自宅でのケアでは届きにくい部分にも効果的にアプローチできる点が大きな特徴です。
運動療法
運動療法は、ストレッチや軽い筋力トレーニングを行い、筋肉を柔らかくしたり強くしたりすることで回復を促すリハビリ方法です。具体的な治療方法には以下のようなものがあります。
- ストレッチ
首や肩を無理のない範囲で動かし、硬くなってしまった筋肉や関節の柔軟性を回復させます。 - 軽いエクササイズ
筋力を徐々に高める運動が中心となります。
自宅でできる痛みの緩和方法|NG行動も解説
ここでは、病院に行くまでの間や診察後の自宅療養で痛みを緩和する方法や、症状が悪化する可能性のあるNG行動を解説します。
むちうちの痛みを緩和する方法
痛みが強いときは、患部を冷やすことが効果的です。炎症を抑え、痛みを和らげる効果が期待できます。
氷嚢を使用する場合は直接肌に当てず、必ずタオルで包んで使用してください。感覚がなくなってきたらすぐに中断しましょう。
お風呂に入ることで症状が楽になる場合は、温めても構いません。ただし、事故直後は長時間の入浴を避け、シャワーで済ませることをおすすめします。湯船につかると血行が良くなり、かえって炎症が悪化する可能性があるためです。
湿布は医師から処方されたものを、指示された使用方法で使ってください。市販の湿布を使用する場合も、温湿布・冷湿布の選択は自己判断せず、医師に相談することをおすすめします。
症状を悪化させるNG行動
以下の行動は、むちうちの症状を悪化させるおそれがあるため避けてください。
- 無理な首のマッサージやストレッチ
- 長時間同じ姿勢を続ける(デスクワーク等)
- 重いものを持つ
- 激しい運動
- 首に振動が伝わる作業
- 氷嚢の直接的な使用や長時間の冷却
- 患部を温めすぎる
- 自己判断での治療行為
中でも誤解されやすいのがマッサージやストレッチです。
「首や肩をもみほぐせば症状が緩和される」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、特に初期段階では症状の悪化につながってしまうことが多いです。
むちうちの症状は軽症から重症まで様々で、人によっても異なるので、自己流の対処は避けて必ず医師に相談しながら治療を進めましょう。
むちうちの治療で知っておきたいこと
むちうちの治療期間はどのくらい?
むちうちの症状は、一般的に2~3か月の治療期間で完治することが多いです。
もちろん治療の効果には個人差があるため、軽症の場合で1か月ほどで治ることもありますし、重症の場合は半年以上の治療を要することもあります。
例えば、以下のようなケースでは治療期間が長引く傾向があります。
- 事故の衝撃が強かった
- 治療の開始が遅かった
- 必要な安静が取れなかった
- 事故後に首に負担のかかる活動を続けた
むちうちの治療期間が長引いても焦らず、医師の指示に従い治療を続けましょう。
むちうちの治療で通院する頻度は?
一般的なむちうちの治療では、週に2~3回程度の通院が目安とされています。これは月に換算すると10日前後の通院回数になります。
この通院頻度には医学的な理由だけでなく、保険診療の観点からも重要な意味があります。
通院回数が少なすぎると、症状が軽微だと判断される可能性があり、加害者側の任意保険会社から治療費が打ち切られやすくなってしまいます。
一方で、毎日通院するなど、過度に頻繁な通院も好ましくありません。治療費が必要以上にかさむことで、保険会社から治療の妥当性を疑われてしまう可能性があるためです。
適切な通院頻度は症状によって異なりますので、担当医とよく相談しながら決めていきましょう。医師の指示に従って計画的に通院することで、着実な回復を目指すことができます。
むちうちは放っておいても治る?
むちうちは、放っておいて急激に症状が悪化することは稀です。
しかし、首の損傷で炎症が起きているため、適切な治療を受けないと症状が悪化し、慢性的な痛みに発展する可能性があります。
また、首のこりや頭痛、倦怠感などの症状が長期化し、後遺症として残ってしまうリスクも高まります。
さらに損害賠償の視点からも、むちうち症状の放置はおすすめできません。
交通事故が原因の場合、医師の診断書は非常に重要です。診断書がないと、以下のようなデメリットが起こる可能性があります。
- 物損事故で処理されている場合、人身事故に切り替えられない
- あとから治療を受けた際に治療費を支払ってもらえない
- 慰謝料や休業損害の支払いを受けられない
- 後遺症が残っても後遺障害に認定されない
交通事故に遭った場合は、たとえ首の痛みが軽微でも一度、整形外科を受診するようにしましょう。
むちうちの後遺症が残ることはある?
むちうちは、適切な治療を受けても後遺症が残ることがあります。
後遺症として残りやすいむちうちの症状には以下のようなものがあります。
- 首や肩の痛みと動きの制限
- 頭痛
- めまいや耳鳴り
- 手や腕のしびれや痛み
- 疲労感や倦怠感
これ以上治療を続けても症状が改善しないと医師が判断することを、「症状固定」といいます。症状固定と診断された段階で残存している症状を、後遺症といいます。
症状固定後は後遺障害認定の申請が行えるようになります。むちうちの後遺症が後遺障害認定されると、後遺障害慰謝料と逸失利益を受け取れるようになります。
むちうちの後遺障害認定について詳しくは、『外傷性頚部症候群(むちうち)は後遺障害認定される?認定のポイントや慰謝料相場』をお読みください。
むちうちの治療費は打ち切られやすい?
むちうちは、平均的な治療期間とされる3か月を超えると、治療費打ち切りを打診されやすい傾向にあります。
交通事故で負ったケガの治療費は、一般的に加害者側の保険会社から病院に直接支払われます。
しかし、治療期間が長引くと保険会社から「治療費の支払いを打ち切ります」と通知されることがあります。
治療費打ち切りの打診を受けても、すぐに治療を中止することは避けるべきです。治療を終えるタイミングは医師と相談して決めましょう。
治療費打ち切りの通知を受けた場合は、以下の対応を検討しましょう。
- 担当医に現在の症状と今後の治療必要性について確認する
- 医師の意見書をもとに、保険会社と治療継続の交渉を行う
- 必要な場合は弁護士に相談する
なお、過度な通院や、医師の許可のない接骨院・整骨院への通院は、治療費打ち切りの原因となりやすいので注意が必要です。
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交通事故のむちうちで請求できる損害賠償金
交通事故でむちうちを負った場合に、加害者側へ請求できる損害賠償金を解説します。
むちうちで請求できる損害賠償金一覧
むちうちで請求できる損害賠償金の一覧は、以下のとおりです。
- 治療費:投薬代・検査費用・入院費用など
- 休業損害:治療で仕事を休んだことによる減収の補てん
- 入通院慰謝料:ケガで入通院した精神的苦痛への補償
- その他:通院交通費や付添費用など
- 物的損害:自動車の修理代や代車費用など
また、むちうちの後遺症が後遺障害に認定された場合は、以下のような費目も請求できます。
- 後遺障害慰謝料:後遺症が残った精神的苦痛への補償
- 逸失利益:後遺症がなければ将来得られたであろう収入に対する補てん
むちうちで請求できる慰謝料相場
まずは、交通事故によるむちうちで入通院した方ならだれでも請求できる入通院慰謝料の相場です。
むちうちの入通院慰謝料相場(弁護士基準)
通院期間 | 慰謝料相場 |
---|---|
1ヶ月 | 19万円 |
2ヶ月 | 36万円 |
3ヶ月 | 53万円 |
4ヶ月 | 67万円 |
5ヶ月 | 79万円 |
6ヶ月 | 89万円 |
※1ヶ月を30日として計算する
※症状によっては金額が増減することもある
むちうちの後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、むちうちの後遺症が後遺障害等級に認定された場合のみ請求可能です。
後遺障害慰謝料は、後遺症の症状ごとに設定されている後遺障害等級によって相場が決まっています。
むちうちは後遺障害14級9号、または12級13号に認定される可能性があります。
むちうちの後遺障害慰謝料相場(弁護士基準)
後遺障害等級 | 慰謝料相場 |
---|---|
14級9号 | 290万円 |
12級13号 | 110万円 |
むちうちの慰謝料をより詳しく知りたい方は『相手保険からむちうちの示談金をいくらもらえる?慰謝料相場を通院期間ごとに解説』をお読みください。
【注意】提示される示談金は低額なことが多い
通常、むちうちの治療が終わると、加害者側の任意保険会社から示談金(損害賠償金)の提示があります。
ただし、ここで提示される示談金額は、相場よりも低いことがほとんどです。
なぜ相場と金額が異なるかというと、任意保険会社は独自の算定基準で示談金額を決めているからです。算定基準には以下の3つがあります。
算定基準 | 解説 |
---|---|
自賠責基準 | 国が定める最低限の基準 |
任意保険基準 | 任意保険会社ごとに定める基準 |
弁護士基準 | 過去の裁判結果に基づいた正当な基準 受けた被害に対する適正な金額相場 |
ただし、適正相場である「弁護士基準」に増額してほしいと、被害者自身が交渉しても叶わないことがほとんどです。
むちうちの治療が終わり、加害者側から提示された示談金額に疑問がある場合は、一度弁護士に相談してみましょう。
アトム法律事務所では無料で、弁護士基準で受け取れる金額の目安や、増額の見込みについてアドバイスを行っています。
無料相談
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了