前十字靭帯損傷・断裂の後遺症の解説
交通事故で膝に強い外力が加わることで、前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)損傷・断裂を負ってしまうことがあります。
こうした交通事故によるケガは、治療を続けても、痛みが残るという神経症状、関節が動かしづらくなるという機能障害などの後遺症が残る可能性があります。
そのため、後遺症が後遺障害に該当するかどうかの認定申請を行うなど、適切な対応を行い、相場の損害賠償金を得るべきです。
本記事では、交通事故により前十字靭帯損傷・断裂となった場合において生じる後遺症の内容や、後遺症が生じた場合に知っておくべき知識について解説を行っています。
前十字靭帯損傷・前十字靭帯断裂の症状と後遺症
前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)は、膝関節の内側にあり、太ももの骨と脛の骨をつなぐ靭帯です。関節を保護したり、安定性を維持する役割を担っています。
交通事故では強く膝をひねったり、強い力が加わることで断裂音と共に損傷、断裂してしまうことがあります。
前十字靭帯損傷・前十字靭帯断裂の症状
前十字靭帯を損傷すると、関節に腫れや痛みが生じます。
膝が不安定となり、激しい痛みで膝が動かせなくなることもあるでしょう。
また、関節で内出血が起こり、腫れや変色として表れることもあります。
治療としては自身の腱を移植するという手術を行い、リハビリにより歩行能力の回復を図ります。保存療法では十分な回復が見込めない恐れが高いため、手術による治療を行うことが多いでしょう。
前十字靭帯損傷・前十字靭帯断裂の後遺症
前十字靭帯の損傷や前十字靭帯の断裂は、膝が不安定で歩きづらい、痛みが残る、膝の曲げ伸ばしが十分にできないといった後遺症が残る可能性があります。
他の交通事故によって生ずる膝の痛みに関する症状については、関連記事をご覧ください
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前十字靭帯損傷の後遺障害等級
前十字靭帯損傷・断裂を原因とする後遺障害の症状と、症状に応じた後遺障害等級について解説します。
前十字靭帯損傷・前十字靭帯断裂によって生じる可能性のある後遺症は、膝関節の可動域の制限、神経症状、動揺関節です。
膝の可動域制限(膝の曲げ伸ばしがしづらい)
靭帯損傷により膝関節の可動域が制限されるという運動障害が生じることがあります。
膝の可動域制限により生じる可能性がある後遺障害等級は、8級7号、10級11号、12級7号です。
等級 | 症状 |
---|---|
8級7号 | 足関節が全く動かない、または、ケガをしていない足と比べて10%以下しか動かない |
10級11号 | ケガをしていない足と比べて可動域が2分の1以下に制限されている |
12級7号 | ケガをしていない足と比べて可動域が4分の3以下に制限されている |
神経症状(痛みが残っている)
靭帯損傷により膝に痛みが残るといった神経症状が生じることがあります。
神経症状により認定されうる後遺障害等級は12級13号または14級9号です。
等級 | 症状 |
---|---|
12級13号 | 痛みが残っていることが医学的に証明できる |
14級9号 | 痛みが残っていることが医学的に説明できる |
しかし、痛みが残る神経症状は本人でないと痛みの程度がわからないため、症状に関する客観的なデータや医師の診断書などを集めて、後遺障害を証明しなければなりません。
12級13号に該当すると認定を受けるには、レントゲンやMRIなどの画像検査結果から、痛みの残存を明らかにする必要があります。
14級9号については、画像検査の結果がない場合でも、事故や症状の内容、治療経過などから痛みの残存を医学的に説明できるのであれば、認定を受けられる可能性があるでしょう。
動揺関節(膝がぐらつく、不安定である)
靭帯損傷により隣接している膝の靱帯も損傷し、膝関節の安定性を失うことがあります。
このような動揺関節となった場合には、後遺障害8級7号、10級11号、12級7号認定の可能性があります。
等級 | 症状 |
---|---|
8級7号 | 常に硬性補装具を必要とする |
10級11号 | 時々硬性補装具を必要とする |
12級7号 | 強度の労務の際に硬性補装具を必要とする |
後遺障害等級の決定方法
後遺症の症状が後遺障害に該当すると判断されると、障害の程度に応じた後遺障害等級の認定がなされます。
この認定された等級に応じて、慰謝料や後遺障害逸失利益の請求をすることが可能となるのです。
後遺障害等級の認定を受けるには、後遺障害診断書を医師に作成してもらい、その他の必要な資料ととともに調査機関である自賠責保険会社へ書類を提出することとなります。
前十字靭帯損傷で後遺症が生じた場合の損害賠償
膝を負傷した場合の損害賠償金の内訳
交通事故の損害賠償金としては、入通院慰謝料、治療関係費、休業損害、物的損害などについても賠償請求ができます。
費目 | 内容 |
---|---|
入通院慰謝料 | 治療期間に応じて請求できる慰謝料 |
治療関係費 | 治療のために必要になった費用 |
休業損害 | 治療で仕事を休んだことで生じる減収 |
物的損害 | 自動車の修理代や代車費用など |
後遺障害が認められた場合の慰謝料相場額
後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益などの補償を受けられます。
後遺障害慰謝料は、後遺障害の症状によって生じる精神的苦痛を補償するための金銭です。後遺障害慰謝料の金額は、認定を受けた後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級ごとの後遺障害慰謝料相場額は以下の通りです。
等級 | 慰謝料額 |
---|---|
1級・要介護 | 2,800万円 |
2級・要介護 | 2,370万円 |
1級 | 2,800万円 |
2級 | 2,370万円 |
3級 | 1,990万円 |
4級 | 1,670万円 |
5級 | 1,400万円 |
6級 | 1,180万円 |
7級 | 1,000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
もっともこうした金額は弁護士基準という基準から算出された金額です。
裁判所や弁護士などの法律の専門家が損害算定時に用いる基準になりますが、相手の保険会社はもっと低水準での示談をせまってくるでしょう。
相手の保険会社が提示した金額のまま示談を受け入れず、まずは弁護士に相談して妥当性を確かめておく必要があります。
後遺障害が認められると慰謝料以外に請求できる損害
交通事故により生じた後遺症が後遺障害に該当すると認定された場合は、後遺障害慰謝料だけでなく、後遺障害逸失利益を請求することも可能となります。
後遺障害逸失利益は、ケガによって失われた将来の収入を補償するための金銭です。後遺障害逸失利益の金額は、後遺障害等級、年齢、職業、年収などによって異なります。
後遺障害逸失利益を計算するには様々な要素が必要となってくるので、相場額を知りたいのであれば、専門家である弁護士に相談するべきでしょう。
交通事故による前十字靭帯損傷・断裂は弁護士に相談
弁護士に相談するメリット
交通事故で何らかの後遺症が残った場合、弁護士に相談すると以下のメリットがあります。
- 後遺障害等級の認定を有利に進めることができる。
- 適切な金額の損害賠償金を請求することができる。
- 保険会社との示談交渉を代わりに行ってもらえる。
- 示談金の増額を図ることができる。
相場の金額を加害者側から得るには、弁護士に相談・依頼を行い、専門家である弁護士による適切な計算や請求が欠かせません。
そのため、まずは弁護士相談を行い、依頼の必要性や、依頼すべき弁護士であるかどうかの確認を行うべきでしょう。
弁護士費用特約で費用の負担を抑えられる
弁護士に相談・依頼する場合には、弁護士に支払う費用を気にする方が多いでしょう。
弁護士に相談・依頼することで生じる費用については、自身の保険に付帯している可能性のある、弁護士費用特約を利用することで負担を抑えることが可能です。
弁護士費用特約を利用すると、上限額まで弁護士に相談・依頼することで生じる費用を保険会社が負担してくれます。
実際に生じる負担額が上限額を超えることは多くないので、金銭的な負担を気にすることなく弁護士に相談・依頼することが可能となるでしょう。
弁護士に相談するタイミング
弁護士に相談するタイミングは、治療開始後が望ましいです。
治療開始した段階から弁護士に相談することで、治療中であっても慰謝料が減額されない通院方法についてのアドバイスや仕事を休んだ際の休業損害請求をしてもらえます。
治療が終了して症状固定したら、すぐに後遺障害認定の手続きや示談交渉をしてもらえます。
弁護士への相談を希望する場合は、交通事故の案件に精通した弁護士に相談しましょう。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了