膝の皿が割れる際の後遺症とは?膝蓋骨骨折・変形性膝関節症の解説
膝の皿が割れる膝蓋骨骨折の後遺症として、膝関節の可動域の制限、膝の痛み、膝の腫れ、膝の不安定感が残ることがあります。
また、変形性膝関節症は軟骨のすり減りによる痛みが特徴の疾患で、後遺症として痛みや膝の曲げづらさが残る可能性があります。
膝蓋骨骨折や変形性膝関節症の後遺障害慰謝料相場は、110万円〜1,000万円です。
今回は、膝の皿が割れる膝蓋骨骨折、変形性膝関節症の症状や治療、後遺症の内容、後遺障害認定基準、慰謝料相場、弁護士相談のメリットについて解説します。
目次
膝蓋骨骨折の症状・治療
膝蓋骨骨折の症状
交通事故で膝に強い衝撃が加わると、膝の皿が割れる膝蓋骨骨折を負うことがあります。
膝蓋骨(しつがいこつ)は膝関節の中心にある三角形の骨で、いわゆる「膝のお皿」にあたる部分です。関節の動きを助ける役割をしています。
つまり、膝の曲げ伸ばしを効率良く行う運動の中心を担っているのです。
また、膝蓋骨は、膝の腱が切れるのを防ぐ役割もしています。
膝蓋骨骨折により膝のお皿が割れてしまうと、膝が強く痛む、膝が腫れ上がる、自分の意思で動かせなくなるといった症状が生じます。
また、膝蓋骨骨折が重度の場合、膝蓋骨がずれてしまい、歩行が困難になるおそれがあるのです。
膝蓋骨骨折の治療
膝蓋骨骨折の治療は、骨折の程度によって異なります。
軽度の骨折では、ギプスや装具による固定で治療を行います。重度の骨折では、ワイヤーなどを使い受傷部位を固定する手術が必要になることもあるでしょう。
治療や手術後には、膝の可動域を広げたり、歩行のためのリハビリが必要です。
軽度 | 重度 | |
---|---|---|
症状 | 強い痛み、腫れ | 歩行が困難 |
治療 | ギブス・装具固定 | 手術が必要 |
膝蓋骨骨折の後遺症
膝蓋骨骨折の後遺症は、膝関節の可動域の制限、膝の痛み、膝の腫れ、膝の不安定感などがあげられるでしょう。
軽度の骨折では、膝の痛みや腫れなどの症状は数週間で改善する見込みです。一方重度の骨折では、膝の可動域制限や膝の痛みが後遺症として残ることがあります。
交通事故での変形性膝関節症の症状・治療
交通事故での変形性膝関節症の症状
交通事故で膝に強い衝撃が加わると、変形性膝関節症を負うことがあります。
変形性膝関節症とは、膝の関節にある軟骨がすり減ることで生じる疾患で、歩くたびに痛みが出るようになります。
交通事故により膝蓋骨骨折となると、膝の機能が衰えて事故前よりも膝に負担が掛かりやすくなり、変形性膝関節症が発症するおそれが増加することがあるのです。
変形性膝関節症の主な症状は膝の曲げ伸ばしや立ち上がり、歩行時に膝にかかる負担が増加し、関節炎を発症することで痛みが生じます。
また、膝が腫れて動かしづらさが残ることもあります。
交通事故での変形性膝関節症の治療
治療方法としては、薬物療法や運動療法となりますが、痛みが改善されない場合には手術が必要となることもあるでしょう。
交通事故での変形性膝関節症の後遺症
初期は自覚症状があまりなく、進行期になると日常生活に支障をきたすほどの症状に襲われるもので、完治は難しいともいわれています。
そのため、痛みや膝の曲げづらさが残る可能性があるでしょう。
変形性膝関節症の治療として人工膝関節置換術を受けた場合にも後遺障害として認定されます。
他の交通事故によって生ずる膝の痛みに関する症状については、関連記事をご覧ください
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膝の皿が割れる際の後遺症|膝蓋骨骨折の後遺症
膝の皿が割れる、膝蓋骨骨折の後遺症として膝関節の可動域の制限、神経症状、偽関節、動揺関節が残った場合、後遺障害等級に認定される可能性があります。
後遺障害等級に認定されれば、後遺障害慰謝料を請求できるため、慰謝料を増額することができます。
膝蓋骨骨折(膝の皿が割れる)の後遺症(1)可動域制限
骨折により膝関節の可動域が制限されるという運動障害が生じることがあります。
膝蓋骨骨折の後遺症として膝の可動域制限が残った場合、後遺障害8級7号、10級11号、12級7号のいずれかに認定される可能性があります。
膝蓋骨骨折の後遺症である可動域制限の慰謝料相場は、290万円〜830万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
8級7号 | 足関節が強直(固まって動かなくなる)した、または、完全弛緩性麻痺や人工関節・人工骨頭を挿入置換してケガをしていない足と比べて10%以下しか動かない 830万円 |
10級11号 | ケガをしていない足と比べて可動域が2分の1以下に制限されているか、人工関節・人工骨頭を挿入置換した 550万円 |
12級7号 | ケガをしていない足と比べて可動域が4分の3以下に制限されている 290万円 |
人工膝関節置換術を受けて人工関節・人工骨頭が挿入された際は、その事実をもって後遺障害10級11号に認定されます。
人工関節や人工骨頭が挿入されたうえで膝の可動域制限が残った場合は、後遺障害8級7号に認定されます。
また、人工膝関節置換術を受けていない場合、関節の可動域制限の程度によって、後遺障害8級7号、10級11号、12級7号のいずれかが認定されます。
膝蓋骨骨折(膝の皿が割れる)の後遺症(2)神経症状
骨折により膝に痛みが残るといった神経症状が生じることがあります。
膝蓋骨骨折の後遺症として神経症状が残った場合、後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。
膝蓋骨骨折の後遺症である神経症状の慰謝料相場は、110万円〜290万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
12級13号 | 痛みが残っていることが医学的に証明できる 290万円 |
14級9号 | 痛みが残っていることが医学的に説明できる 110万円 |
12級13号と14級9号の違いは、後遺症の存在が医学的に証明できるかどうかという点です。
12級13号に認定されるためには、レントゲン写真やMRI画像に異常が写っているなど神経学的検査や画像検査の結果で神経症状が客観的に明らかである必要があります。
12級13号の認知基準を満たさなくても、事故や症状の内容、治療経過などから痛みの残存を医学的に説明できるのであれば、14級9号に認定されます。
膝蓋骨骨折(膝の皿が割れる)の後遺症(3)偽関節
偽関節とは、骨がくっつく過程で変形してしまい、本来は関節ではない部分が関節のように動いてしまうことをいいます。
たとえば、膝蓋骨骨折で隣接している骨である脛骨と腓骨の骨幹部が骨折し、うまく骨が癒合しないと、偽関節ができてしまうのです。
膝蓋骨骨折の後遺症として偽関節が残った場合には、後遺障害7級10号または8級9号に認定される可能性があります。
膝蓋骨骨折の後遺症である偽関節の慰謝料相場は、830万円〜1,000万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
7級10号 | 大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具が必要 1,000万円 |
8級9号 | 大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要としない 830万円 |
膝蓋骨骨折(膝の皿が割れる)の後遺症(4)動揺関節
膝蓋骨骨折により隣接している膝の靱帯も損傷し、通常では曲がらない方向に曲がるなど膝関節の安定性を失うことがあります。
膝蓋骨骨折の後遺症として動揺関節が残った場合には、後遺障害8級7号、10級11号、12級7号のいずれかが認定される可能性があります。
動揺関節の慰謝料相場は、290万円〜830万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
8級7号 | 常に硬性補装具を必要とする 830万円 |
10級11号 | 時々硬性補装具を必要とする 550万円 |
12級7号 | 強度の労務の際に硬性補装具を必要とする 290万円 |
硬性補装具とは、布製のサポータータイプとは違ってプラスチックや金属製の支柱でできた補助器具のことです。
変形性膝関節症の後遺障害等級
変形性膝関節症の後遺症として膝関節の可動域の制限、神経症状が残った場合、後遺障害等級に認定される可能性があります。
変形性膝関節症の後遺障害(1)膝の可動域制限
変形性膝関節症により膝関節の可動域が制限されるという運動障害が生じることがあります。
変形性膝関節症の後遺症として膝の可動域制限が残った場合、後遺障害8級7号、10級11号、12級7号に認定される可能性があります。
変形性膝関節症の可動域制限の慰謝料相場は、290万円〜830万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
8級7号 | 足関節が強直(固まって動かなくなる)した、または、完全弛緩性麻痺や人工関節・人工骨頭を挿入置換してケガをしていない足と比べて10%以下しか動かない 830万円 |
10級11号 | ケガをしていない足と比べて可動域が2分の1以下に制限されているか、人工関節・人工骨頭を挿入置換した 550万円 |
12級7号 | ケガをしていない足と比べて可動域が4分の3以下に制限されている 290万円 |
人工膝関節置換術を受けて人工関節・人工骨頭が挿入された際は後遺障害10級11号、そのうえ可動域制限が残った場合は、後遺障害8級7号に認定されます。
変形性膝関節症の後遺障害(2)神経症状
変形性膝関節症により膝に痛みが残るといった神経症状が生じることがあります。
変形性膝関節症の後遺症として神経症状が残った場合、後遺障害12級13号または14級9号に認定される可能性があります。
神経症状の慰謝料相場は、110万円〜290万円です。
等級 | 認定基準 慰謝料額 |
---|---|
12級13号 | 痛みが残っていることが医学的に証明できる 290万円 |
14級9号 | 痛みが残っていることが医学的に説明できる 110万円 |
膝の皿が割れて後遺症が残った場合の後遺障害認定
膝の皿が割れて後遺症が残った場合の後遺障害申請
膝蓋骨骨折や変形性膝関節症の後遺症が残った場合の後遺障害慰謝料の相場は、110万円〜1,000万円です。
後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に認定されれば請求することができます。
後遺障害は、後遺障害申請を行い、各等級の認定基準にあてはまるとして審査を通過することで認定されます。
弁護士に依頼することで、後遺障害申請手続き、等級認定後の増額交渉を有利に進めることができます。
後遺障害認定の手続きの流れ
- 入通院治療後、医師から症状固定と診断される
- 医師に依頼して後遺障害診断書を作成してもらう
- 保険会社を通じて、審査機関に申請書類を提出する
- 審査機関で審査が行われ、保険会社を通じて結果が通知される
後遺障害が認定されるためには、後遺症に合った適切な内容が記載されている後遺障害診断書、後遺症の存在と影響を示すために必要な書類の提出が不可欠です。
弁護士であれば、どのような書類が必要か、どう書類に記載すれば有利に審査を進められるか、見極めて申請手続きを進めてもらえます。
膝の皿が割れて後遺症が残った際の後遺障害慰謝料請求
また、後遺障害等級の認定後、相手側の保険会社が相場の金額での支払いを拒んだ場合には、保険会社との増額交渉を弁護士に依頼することができます。
弁護士は、弁護士や裁判所が用いる弁護士基準で算定した、適正な金額での慰謝料がもらえるよう交渉をしてくれます。
慰謝料算定の3基準
- 自賠責基準
加害者側の自賠責保険から支払われる慰謝料の算定基準。自賠責保険会社は最低限の補償をするので、最低限の金額となる。 - 任意保険基準
加害者側の任意保険会社が用いる慰謝料の算定基準。自賠責基準に少し上乗せした程度であることが多い。 - 弁護士基準(裁判基準)
弁護士や裁判所が用いる慰謝料の算定基準。過去の判例にもとづいた法的正当性の高い基準。
後遺障害等級が認定された場合、保険会社はなるべく保管会社側の負担を減らそうと、任意保険基準で算定した金額で慰謝料を支払うと提示してきます。
弁護士に依頼すれば、この提示額と相場金額である弁護士基準での算定額との差額分を増額するための交渉を任せることができます。
判例を熟知し、多くの交通事故案件を経験した弁護士であれば、状況に見合った相場や増額の見込みから、より有利に交渉を進めることが期待できます。
無料相談
膝の皿が割れて後遺症が残った際の示談金の内訳
交通事故の膝蓋骨骨折・変形性膝関節症の入通院慰謝料
交通事故で負った膝蓋骨骨折や変形性膝関節症を入院・通院を経て治療した場合、後遺障害の認定にかかわらず、入通院慰謝料を請求することができます。
入通院慰謝料とは、入通院を余儀なくされるほど重い交通事故によるケガで負った精神的苦痛に対する賠償金です。
入通院慰謝料は、以下のような算定表に基づいて算定されます。
症状の程度に合わせて2つの算定表を使い分けます。
どちらの算定表も治療期間が長ければ、慰謝料もその分、増額されます。
また、同じ治療期間でも入院をしていないケースに比べて入院をして治療したケースの方が慰謝料額も高額となります。
交通事故の膝蓋骨骨折・変形性膝関節症の示談金の内訳
交通事故で膝蓋骨骨折や変形性膝関節症を負った場合、慰謝料以外にも請求できる費用や損害があります。
示談金として請求できる費用・損害の内訳は、以下の通りです。
- 治療費:治療のために必要となった投薬代・手術代・入院費用など
- 休業損害:治療のために仕事を休んだことで生じる減収に対する補償
- その他:治療のために必要であった交通費、付添費用など
- 逸失利益:後遺障害により減収することとなる将来の収入に対する補償
- 物的損害:自動車や自転車の修理代、代車費用など
相手側の保険会社から送られてくる示談書(免責証書)では支払い予定の示談金の内訳として各損害の金額も記載されています。
提示額は被害者が受け取れる相場よりも低い傾向にあるので、示談書に記載されている損害に漏れがないか、各金額が適正といえるか、算定根拠に照らし合わせて確認する必要があります。
示談書を弁護士に見せれば、事故の状況や症状の程度に合わせて、被害者として受け取れる相場がいくらか、どのくらいまで増額の見込みがあるかといった点を確認することができます。
無料相談
膝蓋骨骨折・変形性膝関節症の後遺症は弁護士に相談
弁護士に相談するメリット
交通事故で何らかの後遺症が残った場合、弁護士に相談すると以下のメリットがあります。
- 加害者側の保険会社との連絡を一任できるので、治療や職場復帰に専念できる
- 後遺障害等級の認定に向けて必要な資料の収集や申請手続き、十分な対策を立ててもらえる
- 法的な根拠に基づく説得力のある主張ができるので、慰謝料・示談金の交渉を有利に進めてもらえる
弁護士事務所によっては無料相談を受け付けているので、最初の相談の段階でどのようなサポートが受けられるか、弁護士相談のメリットをご確認いただけます。
アトム法律事務所では、交通事故の被害者の方向けに電話・LINEでの無料相談を受け付けております。
無料相談やセカンドオピニオンだけの利用でも問題ありません。
依頼の必要性が高いか、ご自身の状況に見合ったサービスが受けられるか、ぜひご確認ください。
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弁護士費用特約で費用の負担を抑えられる
弁護士に相談・依頼するデメリットのひとつとして、弁護士費用の負担が大きくなって費用倒れになってしまわないか、ご不安に思われる方も少なくありません。
しかし、弁護士費用特約を利用すれば費用を払わずに弁護士に依頼・相談できます。
弁護士費用特約とは?
弁護士費用特約とは、弁護士に支払う相談料や費用について、保険会社が代わりに負担してくれるという特約です。
負担額には上限が設定されていますが、多くのケースで生じる相談料や費用は上限の範囲内に収まるため、金銭的な負担なく弁護士への相談や依頼が可能となります。
ご相談される際は、ご自身が契約されている保険に弁護士費用特約が付帯していないか、確認してみましょう。
たとえ、弁護士費用特約がなくても無料相談の段階で弁護士費用がどのくらいかかるのか、確認していただけるので、回収見込み額と照らしあわせて正式に依頼すべきかご検討いただけます。
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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了