住宅ローンの生前贈与・肩代わりは贈与税に注意|非課税制度の活用術

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子供の生活のためにローンが残っている住宅を生前贈与したり、子供の住宅ローンの返済を肩代わりすると、高額な贈与税が課される恐れがあります。

しかし、子供の将来や生活を助けてあげたいという親心から、支援を考える方は少なくありません。

住宅の贈与や住宅ローンの支援を行う場合は、非課税措置や課税方式、親子間の貸し借り、相続まで待つ方法などを比較し、事前に課税関係を確認することが重要です。

この記事では、住宅ローンの生前贈与や子供の住宅ローンの肩代わりにまつわるリスクと、損をしないための税法上の知識について、分かりやすく解説します。

住宅ローンの生前贈与・肩代わりを行う際の注意点

親が住宅ローンの残っている物件を子供へ生前贈与したり、子供の住宅ローンを肩代わりしたりすると、原則として贈与税の対象となります。

住宅ローン債務を引き受ける負担付贈与は税負担に注意

子供が住宅ローンなどの債務を負担することを条件に、住宅を贈与する方法を負担付贈与といいます。住宅ローンが残る住宅の名義を子供へ変更しただけでは、当然に負担付贈与となるわけではありません。

住宅の所有者を変更する手続きと、住宅ローンの債務者を変更する手続きは別です。

債務を子供へ引き継げるかどうかは、住宅ローンの契約内容や金融機関の審査によって異なります。名義変更や贈与を進める前に、借入先の金融機関へ確認しましょう。

土地や家屋を負担付贈与した場合、贈与税の課税価格は、原則として贈与時の通常の取引価額から、子供が負担する債務額を差し引いて計算します。通常の贈与や相続で用いる相続税評価額とは評価方法が異なるため、想定より贈与税が高くなることがあります。

不動産の相続税評価額は、土地の路線価や建物の固定資産税評価額、利用状況などを基に個別に計算します。市場価格に対する割合は物件ごとに異なり、一律に市場価格の約8割になるわけではありません。

負担付贈与では、贈与者が子供の負担する債務額で不動産を譲渡したものとして扱われます。譲渡益が生じた場合は、贈与者に所得税がかかる可能性もあります。

項目通常の不動産贈与土地・家屋の負担付贈与
贈与財産の評価原則として相続税評価額贈与時の通常の取引価額
贈与税の課税価格相続税評価額から基礎控除等を反映して計算通常の取引価額から子供が負担する債務額を控除して計算
その他の注意点贈与税のほか、登記費用などが発生親に譲渡所得税が生じる場合がある

住宅ローンの生前贈与は銀行の許可を得てから|無断名義変更はリスクあり

住宅ローンが残っている物件を銀行に無断で名義変更することは、多くのローン契約で契約違反とされています。

発覚した場合、残債の一括返済を求められるリスクがあるため、必ず事前に金融機関へ相談しましょう。

相続まで待つという選択肢|債務控除との比較

負担付贈与で住宅を贈与するよりも、自宅を相続させるという方法についても検討を行いましょう。

税務上のメリットを最大化するには、あえてローンを残したまま相続を迎えるという選択肢との比較が欠かせません。

特に、以下のような点については検討が必要でしょう。

  • 債務控除活用のメリット
  • 負担付贈与のデメリット
  • 基礎控除も含めた比較

債務控除活用のメリット

親が亡くなった時点で住宅ローンが残っており、被相続人の債務として確実と認められる場合は、その債務を負担する相続人などが、相続税の課税価格を計算する際にローン残高を差し引けます。この仕組みを債務控除といいます。

相続した住宅は、土地の路線価や建物の固定資産税評価額、利用状況などを基に相続税評価額を計算します。住宅ローン残高を不動産の評価額から直接差し引くわけではありません。 また、市場価格と相続税評価額の関係は物件ごとに異なるため、住宅ローンを残せば必ず相続税が少なくなるとは限りません。

団体信用生命保険によって親の死亡時に住宅ローンが完済される場合は、相続人が引き継ぐ債務が残りません。そのため、完済された住宅ローンは債務控除の対象外です。

負担付贈与のデメリット

子供が住宅ローン債務を負担することを条件として土地や家屋を贈与した場合は、通常の取引価額から子供が負担する債務額を差し引いて、贈与税の課税価格を計算します。

通常の贈与とは評価方法が異なるほか、親に譲渡所得税が生じる場合もあるため、相続と比べて税負担が重くなる可能性があります。

負担付贈与のリスクに関して詳しく知りたい方は『負担付き贈与とは?贈与税・譲渡所得税の仕組みと住宅ローン付き物件の注意点』の記事をご覧ください。

基礎控除も含めた検討

相続税では、課税遺産総額を計算する際に、遺産額から「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算した基礎控除額を差し引きます。

基礎控除を超える遺産が見込まれる場合でも、住宅ローンを繰り上げ返済するか、相続時まで残すかは、団体信用生命保険の有無、不動産の相続税評価額、ローン残高、家族の資金状況などを踏まえて比較する必要があります。

住宅ローンの肩代わりは「贈与」とみなされる

子供のローン引き落とし口座に親がお金を入れたり、親の資金で一括返済したりすると、原則として、肩代わりした金額が子供への贈与とみなされます。子供が住宅ローンの返済義務を免れるという経済的利益を受けるためです。

ただし、子供が資力を喪失して住宅ローンを返済することが困難であり、扶養義務者である親が返済した場合は、返済が困難な部分について贈与とみなされないことがあります。単に返済負担が重い場合や、親が余裕資金から援助する場合に当然に適用される例外ではありません。

暦年課税における贈与税の基礎知識

暦年課税では、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額から、基礎控除110万円を差し引いて贈与税を計算します。基礎控除後の金額がある場合は、原則として贈与税の申告が必要です。

  • 基礎控除額:年間110万円
  • 申告時期:贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで

例えば、親が子供の住宅ローン500万円を肩代わりし、その年にほかの贈与がなかったとします。贈与を受けた年の1月1日時点で子供が18歳以上であれば、特例贈与財産として計算され、贈与税額は48万5,000円です。

計算式は「(500万円-基礎控除110万円)×15%-10万円=48万5,000円」です。子供が同日時点で18歳未満の場合は一般税率が適用され、贈与税額は53万円となります。

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住宅の生前贈与は非課税にできる?資金贈与の非課税制度と注意点

住宅ローンに関する贈与税を抑えるための方法

住宅の取得や住宅ローンの返済を支援する方法には、以下のようなものがあります。ただし、住宅取得等資金贈与の非課税措置は、新たな住宅の取得や一定の増改築等に充てる資金が対象であり、取得済み住宅のローン返済には利用できません。

  1. 住宅取得等資金贈与の非課税措置
  2. 相続時精算課税制度
  3. 暦年贈与による資金援助
  4. 贈与でなく親からお金を借りる

①住宅取得等資金贈与の非課税措置

住宅取得等資金贈与の非課税措置とは、父母や祖父母などの直系尊属から、住宅の購入、新築または一定の増改築に充てる資金の贈与を受けた場合に、一定額まで贈与税が非課税となる制度です。取得済み住宅のローン返済や繰り上げ返済には利用できません。

非課税限度額は、省エネ等住宅が最大1,000万円、その他の住宅が最大500万円です。非課税措置を適用した後の残額には、選択している課税方式に応じて年間110万円の基礎控除を適用できます。

適用を受けるには、受贈者の年齢や所得、住宅の床面積・性能、入居時期などの要件を満たす必要があります。具体的な要件や経過措置は、国税庁「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」をご確認ください。

贈与税が0円になる場合でも、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、必要書類を添えて贈与税の申告をする必要があります。

この非課税措置の対象期間は2026年12月31日までです。前述した省エネ等住宅1,000万円、その他の住宅500万円という非課税限度額は、2024年1月1日以後の贈与に適用されます。

利用を検討する場合は、贈与や住宅の契約前に税理士へ相談しましょう。

詳しい要件や利用する際の注意点は、関連記事『住宅購入資金に贈与税はかかる?非課税にする方法や親からの贈与について解説』をご覧ください。

②相続時精算課税制度

相続時精算課税制度では、2024年1月1日以後の贈与について、毎年110万円の基礎控除と、累計2,500万円までの特別控除を利用できます。これらの控除額を超えた部分には、一律20%の贈与税がかかります。

贈与者が死亡した場合、2024年1月1日以後に受けた贈与については、原則として、贈与時の価額から年間110万円の基礎控除を差し引いた金額を相続税の課税価格に加算します。納付済みの贈与税は相続税額から控除され、控除しきれない金額は還付を受けられます。

2024年1月1日以後の贈与で、年間の贈与額が110万円以下であれば、原則として贈与税はかからず、贈与税の申告も不要です。

この基礎控除の範囲内の金額は、贈与者の死亡時にも相続税の課税価格へ加算されません。ただし、相続時精算課税を初めて選択する場合は、贈与税の申告が不要でも、期限内に相続時精算課税選択届出書などを提出する必要があります。

一方、2023年12月31日以前に相続時精算課税を適用して受けた贈与には、年間110万円の基礎控除は適用されません。

まとまった住宅取得資金を子供へ贈与する場合などに、選択肢となる制度です。住宅取得等資金の贈与では、一定の要件を満たすと、贈与者が60歳未満でも相続時精算課税を選択できる特例があります。

なお、一度選択すると、その贈与者から受ける贈与について暦年課税へ戻すことはできません。 負担付贈与を含め、利用が適しているかどうかは財産の内容や将来の相続税額によって異なるため、税理士へ相談したうえで判断しましょう。

相続時精算課税制度のメリットやデメリットについては『相続時精算課税制度をわかりやすく解説!改正の変更点などもわかる』の記事で確認可能です。

③暦年贈与による資金援助

暦年贈与とは、暦年課税(1年間の贈与額に対して課税を行う制度)の対象となる贈与をいいます。

暦年贈与では、年間110万円までは贈与税がかかりません。

一度に大きな金額を渡すと税負担が重くなりますが、毎年の返済に充てる少額の援助であれば税金を抑えることが可能です。

ただし、贈与を受けた子供が、贈与者である親から相続や遺贈などによって財産を取得した場合、相続開始前の一定期間に受けた暦年贈与は、年間110万円以下の部分を含めて相続税の課税価格に加算されることがあります。

また、贈与契約書に「あらかじめ総額を決めて分割で渡す」といった記載があると、定期贈与と判断され、多額の課税を招くリスクがあります。

適切な援助を行うためには、毎年贈与額を決定した上で個別に契約書を作成して、手続きを進めるべきでしょう。

④贈与でなく親からお金を借りる

親から贈与を受けるのではなく、資金を借りる方法も考えられます。ただし、親子間で借用書を作成しただけでは、当然に借入れとして認められるわけではありません。

借入額、返済期限、返済方法、子供の返済能力、実際の返済状況などから、真実の金銭貸借と認められる必要があります。返済の実態がない場合は、借入金そのものが贈与として扱われる可能性があります。

また、無利子や著しく低い利率で貸し付けた場合は、利子相当額の利益が贈与として扱われることがあります。借用書を作成し、銀行振込などで返済実績を残しましょう。

なお、親が子供に対して有する貸付金は、親が亡くなった際の相続財産に含まれます。

住宅ローン控除との兼ね合いに注意

上述した方法などを利用して子供の住宅ローンに対して援助を行うと、子供が「住宅ローン控除」を受けている場合、結果的に子供の所得税(還付金)が減ってしまうことがあります。

住宅ローン控除は「年末のローン残高」に応じて税金が戻ってくる仕組みです。

親の援助で残高が大幅に減ると、その分控除できる金額も少なくなり、トータルの収支で損をすることがあります。

援助を行う前に、控除への影響について税理士に相談してシミュレーションすることをお勧めします。

シミュレーション例(控除率0.7%の場合)

親から資金援助を受ける前の住宅ローン年末残高が2,000万円の場合、年末残高に0.7%を掛けた控除可能額は、年間最大14万円です。

親から贈与された1,000万円で繰り上げ返済し、年末残高が1,000万円になった場合、控除可能額は年間最大7万円となります。単純計算では、繰り上げ返済の前後で年間7万円の差が生じます。

ただし、実際に控除される金額は、所得税額や住民税から控除できる上限額、住宅の種類、入居年などによって異なります。住宅ローン控除の適用要件を満たしていることも必要です。

親から受けた資金について贈与税がかかる一方で、繰り上げ返済により住宅ローン控除額が減る可能性もあります。

また、繰り上げ返済によって、当初の契約で定められた最初の返済月から、繰り上げ返済後の最終返済月までの通算期間が10年未満となった場合は、その年以後、住宅ローン控除を受けられません。

繰り上げ返済を検討する際は、利息の削減額、贈与税の負担、減少する住宅ローン控除額を比較して判断しましょう。

住宅ローンの肩代わりは相続のトラブルまで考慮すべき

特定の子供にだけ高額なローン援助を行うと、将来、親が亡くなった際に他の兄弟姉妹と揉める原因になります。

住宅ローンの肩代わりにより遺産分割でもめる恐れ

子供が複数いる家庭では、特定の子供だけに高額な援助を行っていると、相続の際の遺産分割でもめる恐れがあります。

親から受けた住宅ローン援助が、相続時の分け前を計算する際の「特別受益」に該当することがあります。ただし、相続人への援助がすべて特別受益になるわけではありません。

住宅ローン援助が「生計の資本としての贈与」に該当するかどうかは、援助の目的や金額、援助を受けた子供の生活状況、通常の扶養の範囲かどうかなどから個別に判断されます。

援助額や経緯を示す資料が残っていないと、ほかの相続人との間で認識が食い違い、遺産分割でもめる原因になることがあります。

遺産分割でもめないための対策

遺産分割でもめることを防ぐためには、以下のような対策を取りましょう。

  • 遺言書を作成し、援助の経緯や思いを書き留めておく。
  • 他の子供にも公平な配分になるよう、資産全体(生命保険の受取人指定など)でバランスを調整する。

二次相続(配偶者の老後)についても考慮しておく

親から子供へ過度な贈与を行うと、将来、親のどちらかが亡くなった後に、残された配偶者の生活資金が不足するおそれがあります。

相続税には「配偶者の税額軽減」があり、配偶者が実際に取得した正味の遺産額が、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額までであれば、この制度の適用によって配偶者の相続税はかかりません。

ただし、適用を受けるには相続税の申告書などを提出する必要があります。また、原則として申告期限までに遺産分割された財産が対象となります。制度の適用要件を確認したうえで、配偶者に残す財産を検討することが重要です。

目先の子供への贈与だけでなく、二次相続まで含めた家族全体の資産シミュレーションが必要です。

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まとめ|損をしないための行動指針

住宅ローンの生前贈与や肩代わりでは、贈与税だけでなく、所得税や住宅ローン契約への影響も確認する必要があります。

子供が住宅ローンなどの債務を引き受けて不動産の贈与を受ける場合は、負担付贈与に該当する可能性があります。贈与税の評価方法や親の所得税への影響を確認し、名義変更や贈与を進める前に金融機関へ相談しましょう。

親が子供の住宅ローン口座へ入金した場合や、ローンを一括返済した場合は、原則として贈与税の対象です。住宅取得等資金の非課税措置は、取得済み住宅のローン返済には利用できません。

新たに住宅を取得するための資金援助では、住宅取得等資金の非課税措置を利用できる場合があります。取得済み住宅のローン返済を支援する場合は、暦年課税や相続時精算課税による税負担も比較する必要があります。

一部の子供だけに多額の援助をすると、将来の遺産分割をめぐる争いにつながる可能性があります。援助の内容や親の意向を記録し、必要に応じて遺言書の作成なども検討しましょう。

適した方法は、贈与額や住宅ローン残高、親子の資産状況、将来の相続関係によって異なります。実行前に、相続税や贈与税に詳しい税理士へ相談することをおすすめします。

高部孝之税理士

監修者


高部孝之税理士事務所

税理士高部孝之

2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。

保有資格

税理士・FP技能士1級・相続診断士

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