香典に相続税はかかる?香典返し(香典返戻費用)は債務控除の対象?税務上の扱いを解説

親族が亡くなったときに遺族が受け取る香典は、被相続人の遺産ではないため、原則として相続税の課税対象にはなりません。
また、葬式費用は相続税において債務控除の対象になりますが、香典返し(香典返戻費用)は対象外です。
本記事では、相続税における香典や香典返しの扱いについてわかりやすく解説します。混同しやすい会葬御礼費用や弔慰金についても、違いや税務上の扱いを紹介するのでぜひ最後までご覧ください。
※本記事の情報は2026年時点の税制をもとに作成しています。税法は改正される場合があるため、実際の申告にあたっては税理士などの専門家にご相談ください。
目次
香典は原則として相続税の対象外
香典は原則として相続税の課税対象にはなりません。しかし、例外的に税金がかかることがあります。
また、受け取った香典を葬式費用の支払いに充てた場合でも、その葬式費用自体は相続税の債務控除の対象となるので、この点も合わせて確認していきましょう。
香典は遺族に対して渡されるものだから
香典に相続税がかからないのは、被相続人(亡くなった方)の遺産ではないからです。香典は、会葬者から喪主や遺族個人に対して贈られるものであり、被相続人から相続で受け取る財産とは別物です。
なお、「会葬者から贈られるもの」という点で贈与税がかかるのではと思われがちですが、社会通念上相当と認められる金額の香典については、贈与税の課税対象にもならないとされています。
これは、香典が葬儀という社会的な慣行に基づく相互扶助の性格を持つためです。
香典が課税対象になりうる例外的なケース
原則として香典に税金はかかりませんが、金額、支給の目的や経緯などから社会通念上相当と認められない場合は、支払者と金品の実質に応じて課税関係を個別に検討する必要があります。
- 個人から受け取った場合
贈与者との関係や金額などに照らして社会通念上相当と認められないときは、贈与税の課税関係を検討します。 - 取引先などの法人から受け取った場合
法人との関係や金額などに照らして社会通念上相当と認められないときは、所得税の課税関係を検討します。 - 被相続人の雇用主から受け取った場合
香典や弔慰金という名称でも、実質上退職手当金等に該当する部分は相続税の対象になることがあります。
「社会通念上相当」と認められるかどうかについて、一律の金額基準は定められていません。支払者、金額、被相続人との関係、支給の目的や経緯などを踏まえて判断します。
香典から支払った葬式費用は債務控除できる
葬式費用の支払原資が香典であるか、相続人自身の預貯金であるかによって、債務控除の可否が変わるわけではありません。
相続税では、一定の相続人や包括受遺者が実際に負担した支出のうち、相続税上の葬式費用に該当する金額を、原則としてその負担者の課税価格から控除できます。そのため、香典を受け取った後、その香典を原資として対象となる葬式費用を実際に負担した場合も、その葬式費用は控除対象となり得ます。
ただし、香典そのものは被相続人から取得した相続財産でも、相続税上の葬式費用でもないため、遺産総額から差し引くことはできません。控除できるのは、実際に負担した支出のうち、通夜、告別式、火葬などの葬式費用に該当する金額です。
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香典返し(香典返戻費用)は相続税の債務控除の対象になる?
先述の通り、葬式費用は相続税において債務控除の対象になります。
それなら葬式に関連した支出となる香典返し(香典返戻費用)も債務控除の対象になるのでは?と思われる方も多いですが、原則として香典返しは債務控除の対象にはなりません。
ただし、「会葬御礼」という名称だけで債務控除の可否が決まるわけではありません。支出の実質が通常葬式に欠かせない費用に該当する場合は控除対象となり得ますが、実質が香典返しであれば控除対象外です。以下で、それぞれの違いを解説します。
香典返戻費用は原則として債務控除の対象外
香典返戻費用は、原則として債務控除の対象外です。
香典返戻費用が債務控除の対象外となるのは、相続税上、遺産総額から差し引ける葬式費用に含まれないためです。香典返しは、香典を受け取ったことに対する遺族からの返礼であり、被相続人の葬式に通常欠かせない費用とは区別されます。
ただし、被相続人を弔うための葬式費用そのもの(通夜・告別式にかかる費用など)は債務控除の対象になります。香典返戻費用と葬式費用は別物として区別して管理しておくことが大切です。
混乱しやすいポイントをまとめると、次のようになります。
| 費用の種類 | 債務控除の可否 |
|---|---|
| 通夜・告別式の費用 | 控除できる |
| 火葬・埋葬費用 | 控除できる |
| 香典返し(香典返戻費用) | 控除できない |
| 初七日・四十九日の法要費用 | 控除できない |
| 墓地・墓石の購入費用 | 控除できない |
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会葬御礼費用は支出の実質で判断する
会葬御礼費用は、名称だけで一律に債務控除の対象となるわけではありません。相続税で控除できるかどうかは、その支出が実質的に通常葬式に欠かせない費用に当たるか、香典返しに当たるかによって判断します。
香典返しと会葬御礼品は、一般に次のように区別されます。
- 香典返し:香典を受け取ったことに対する返礼品
- 会葬御礼品:香典の有無にかかわらず、葬儀への参列に対するお礼として渡す品物
香典の有無や金額に応じて渡す返礼品など、実質が香典返しである費用は債務控除の対象外です。
一方、香典の有無にかかわらず参列者へ一律に渡す品物などについては、通常葬式に欠かせない費用に該当すれば、債務控除の対象となる可能性があります。領収書の商品名だけでなく、渡した目的や対象者なども含めて判断する必要があります。
相続税申告の際、香典や香典返しはどのように処理する?
相続税の申告を行う際、香典や香典返戻費用はどのように処理すればよいでしょうか。実務上のポイントを整理します。
通常の香典や香典返戻費用は申告書に記載しない
社会通念上相当と認められる通常の香典は、被相続人の相続財産ではないため、相続税申告書に記載する必要はありません。
香典返戻費用も、相続税上の葬式費用には該当しないため、第13表「債務及び葬式費用の明細書」に記載して遺産総額から控除することはできません。
ただし、被相続人の雇用主から受け取った香典や弔慰金などの金品が、実質上退職手当金等に該当する場合は相続税の対象となり、相続税申告書への計上が必要です。
葬式費用に該当する会葬御礼費用は申告書に記載する
会葬御礼費用のうち、実質的に通常葬式に欠かせない費用に該当するものは、相続税申告書第13表「債務及び葬式費用の明細書」に記載します。実質が香典返しに当たるものは記載できません。
いつ、誰に、どのような目的で品物を渡したのかがわかるよう、領収書や明細書に加えて、配布方法や対象者を記録したメモも残しておきましょう。
葬式費用に該当すると判断した金額は、相続税の計算において遺産総額から差し引きます。判断が難しい場合は、税理士へ確認することをおすすめします。
香典と相続税の関係についてよくある質問
高額な香典を受け取った場合はどうすれば良い?
個人から受け取った香典は贈与税、法人から受け取った香典は所得税の対象となる可能性があります。
社会通念上相当と認められる範囲に一律の金額基準はないため、支払者、金額、関係性や地域の慣習から判断します。著しく高額な香典を受け取った場合は税理士へ確認することをおすすめします。
弔慰金は香典と何が違う?相続税はかかる?
弔慰金は、主に被相続人の雇用主などから遺族に支給される金品です。
名目が弔慰金でも、実質上退職手当金等に該当する部分と、普通給与を基準にした一定額を超える部分は相続税の対象になります。
香典と弔慰金の主な違いは以下のとおりです。
| 香典 | 弔慰金 | |
|---|---|---|
| 主な支払者 | 葬儀の参列者、知人、取引先などの個人・法人 | 被相続人の雇用主など |
| 法的性格 | 社会的慣行に基づく相互扶助 | 会社等が遺族に支給する見舞金 |
| 相続税の扱い | 原則として課税対象外 | 実質上退職手当金等に該当する部分と、一定の基準額を超える部分は課税対象 |
弔慰金という名称で支給されていても、実質上退職手当金等に該当する部分は相続税の対象になります。
実質上退職手当金等に該当する部分を除いた残額については、以下の基準額までが弔慰金等として取り扱われ、基準額を超える部分は退職手当金等として相続税の対象になります。
- 業務上で死亡した場合:普通給与の3年(36ヶ月)分の金額
- 業務外で死亡した場合:普通給与の半年(6ヶ月)分の金額
※普通給与とは、死亡した時点の俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額(賞与は含まれない)
死亡退職金として相続税の対象となる部分については、相続人が受け取った場合に限り、「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額が適用されます。相続放棄した人や相続人以外の人が受け取った死亡退職金には、この非課税限度額は適用されません。
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まとめ|香典や香典返しは原則として相続税とは無関係
香典は、会葬者から遺族に対して渡される金銭であり、被相続人の遺産ではないため、原則として相続税の課税対象にはなりません。社会通念上相当と認められる香典は、個人から受け取った場合は贈与税、法人から受け取った場合は所得税の課税対象外とされています。
また、香典返し(香典返戻費用)は、香典への返礼という性質から、相続税の債務控除の対象外です。通夜・告別式の費用など、通常葬式に欠かせない費用に該当するものは債務控除の対象になります。会葬御礼費用については、名称ではなく支出の実質によって判断します。
香典返しと会葬御礼費用は混同されやすいため、領収書や明細書に加えて、品物を渡した目的や対象者も記録しておくことが大切です。高額な香典を受け取った場合や、葬式費用として控除できるか判断が難しい場合は、税理士への相談も検討しましょう。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士
