土地の贈与税はいくら?評価額の計算方法と税率をわかりやすく解説

「親から土地を譲り受けたいが、贈与税はいくらかかるのか分からない」
「評価額ってどうやって計算するの?110万円までは本当に非課税?」
土地の贈与税は、一律の金額が決まっているわけではありません。
まず土地の評価額を算出し、どの課税制度を選ぶかによって税額が変わります。
さらに2024年の改正により、暦年課税の持ち戻し期間が最終的に「7年」へ延長されるなど、制度の理解も欠かせません。
本記事では、土地の評価方法から贈与税の計算手順、税率の違い、そして判断のポイントまでを分かりやすく整理します。
目次
土地の贈与税はいくら?税率や非課税枠の早見表
土地の贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、どちらを選ぶかで非課税になるラインや税率が変わります。
暦年課税
| 贈与 | 税率 |
|---|---|
| 毎年110万円まで | 非課税 |
| 110万円を超える分 | 10~55%(控除額あり) |
相続時精算課税
| 贈与 | 税率 |
|---|---|
| 特別控除(最大2,500万円)まで | 非課税* |
| 特別控除を超える分 | 20% |
土地の評価額が基礎控除や特別控除を下回れば、贈与税はかかりません。
超えた場合は、評価額に所定の税率をかけます。ただし、特例等により税額が変動するケースもあります。
土地の評価額の計算方法
まずは、土地の贈与税を考える際の基礎となる、評価額を確認しましょう。
贈与において土地の評価額は、実際の売買価格(いわゆる時価)ではなく、「路線価方式」または「倍率方式」という方法に沿って算定されます。
それぞれの方式について見ていきましょう。
評価額をどちらの方式で計算すべきかは、「財産評価基準書」から確認できます。
詳しくは関連記事『財産評価基準書とは?読み方と土地の評価方法(路線価方式・倍率方式)を解説』にてご確認ください。
(1)路線価方式
主に市街地にある土地は「路線価方式」で評価します。
計算式は次のとおりです。
路線価方式の評価額
路線価(1㎡あたりの価格)× 各種補正率 × 土地面積
路線価は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で確認できます。
道路ごとに1㎡あたりの価格が設定されており、その価格に面積を掛けて評価額を算出します。
たとえば、路線価が1㎡あたり20万円で、土地面積が100㎡の場合、20万円 × 100㎡ = 2,000万円が評価額のベースとなります(※補正率を考慮しない単純計算)。
実際には、土地の形状や立地条件に応じて補正率が適用されるため、評価額は増減する可能性があります。
(2)倍率方式
路線価が設定されていない地域では、「倍率方式」で評価します。
計算式は次のとおりです。
倍率方式の評価額
固定資産税評価額 × 評価倍率
固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税納税通知書で確認できます。
評価倍率は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」に掲載されています。
たとえば、固定資産税評価額が1,200万円で、評価倍率が1.1倍の場合、1,200万円 × 1.1 = 1,320万円が贈与税の評価額となります。
補正率で評価額が下がるケース
路線価方式では、土地の形状や立地条件に応じて補正率が適用されます。
たとえば、以下の場合は評価額が減額される可能性があります。
- 奥行きが極端に長い土地
- 不整形地(いびつな形の土地)
- 間口が狭い土地
こうした補正を正しく適用できるかどうかで、贈与税の金額が大きく変わることもあります。
ただし、詳しい判断は難しいケースが多いので、税理士などに相談することがおすすめです。
贈与税の2つの課税制度|非課税枠やルールが違う
土地の贈与税は、どの課税制度を選ぶかによって税額や将来の相続税への影響が大きく変わります。
主な制度は次の2つです。
- 暦年課税
- 相続時精算課税
それぞれの仕組みを確認していきましょう。
(1)暦年課税
暦年課税は、1年間(1月1日〜12月31日)の贈与額に対して毎年課税する、もっとも一般的な制度です。
毎年110万円の基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません。
そのため、土地を一度に贈与するのではなく、持分を分けて少しずつ贈与する方法(持分贈与)に向いています。
基礎控除を超える分については、10~55%の税率がかかりますが、税率に応じて一定の税額を控除できる場合もあります。
| 贈与 | 税率 |
|---|---|
| 毎年110万円まで | 非課税 |
| 110万円を超える分 | 10~55%(控除額あり) |
具体的な税率・控除額は特例贈与にあたるか一般贈与にあたるかにより異なるため、本記事内「親子・祖父母間の贈与は税率が優遇される」にて詳しく解説します。
7年ルールで贈与の一部が相続税の対象になることがある
暦年課税で贈与した財産は、原則として贈与時に課税関係が完結します。
しかし、贈与者が亡くなる前7年以内に行われた贈与については、相続時に「相続財産に持ち戻して」相続税の対象とされます。
もともとは「3年以内」でしたが、改正により2024年(令和6年)の贈与から段階的に、「7年以内」に延長されます。完全に7年前まで遡ることになるのは2031年1月以降の相続からです。
| 被相続人の死亡日 | 遡る期間 |
|---|---|
| 〜2026年12月31日 | 死亡日前3年間 |
| 2027年1月〜2030年12月 | 2024年1月1日以降に受けた贈与すべて |
| 2031年1月1日〜 | 死亡日前7年間 |
ただし、延長された4年間(相続開始前3〜7年前)の贈与については、その4年間の贈与の合計100万円までは持ち戻しの対象外です。
つまり、暦年課税は「毎年コツコツ贈与できる」一方で、亡くなる直前の贈与は相続税の計算に影響する点に注意が必要です。
配偶者への贈与(おしどり贈与)
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産を贈与する場合は、基礎控除とあわせて最大2,110万円まで非課税となります。
自宅の名義を配偶者へ移したい場合に有効な制度です。
ただし、以下は課税されます。
- 不動産取得税(原則約3%)
- 登録免許税(約2%)
また、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産に贈与を受けた人が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであることが要件となります。
なお、この制度を使えるのは一生に一度のみで、同じ配偶者間での再適用はできません。
また、贈与税が発生しない場合でも、おしどり贈与(配偶者控除)の適用を受けるには贈与税の申告が必要です。
(2)相続時精算課税
相続時精算課税は、「贈与時には課税を軽くし、その代わり相続時に相続財産に加算される=相続税の対象になる」という制度です。
原則として60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫への贈与で選択でき、最大2,500万円まで贈与税がかかりません。ただし、2,500万円の特別控除を超えた部分は一律20%で課税されます。
| 贈与 | 税率 |
|---|---|
| 特別控除(最大2,500万円)まで | 非課税* |
| 特別控除を超える分 | 20% |
*贈与税は非課税。基礎控除を超える分については、相続時に相続税の対象となる。
なお、2024年の改正により、2,500万円の特別控除とはべつに、毎年110万円の基礎控除が新設されました。この110万円分は相続時に持ち戻す必要がありません。
相続税発生時の注意点
相続時精算課税を選択する場合、初年度は「相続時精算課税選択届出書」の提出が必要です。
ただし、年間の贈与額が110万円以下であれば、贈与税の申告書の提出は不要です。
110万円を超える場合は、贈与税の申告が必要となります。
親子・祖父母間の贈与は税率が優遇される
暦年贈与における土地の贈与税は、誰から誰へ贈与するかによって適用される税率が変わります。
特に、親や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する場合は、通常よりも税率が低い「特例税率」が適用されます。
同じ金額の贈与でも、税額に大きな差が生じることがあるということです。
特例贈与と一般贈与の違い
贈与税の税率は、受贈者の年齢と贈与者との関係によって区分されます。
- 特例贈与(有利):
贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の子や孫が、直系尊属(父母・祖父母)から受ける贈与 - 一般贈与:
兄弟間、夫婦間、知人間、または18歳未満の子への贈与
たとえば、子どもがいない場合に兄弟へ土地を贈与すると、「特例税率」は適用されず、「一般税率」が適用されます。
そのため、親子間の贈与(子は18歳以上)よりも税負担が重くなる傾向があります。
特例贈与・一般贈与の贈与税速算表
贈与税は、土地の評価額から基礎控除110万円を差し引いた後の「課税価格」に、次の税率を適用して計算します。
| 基礎控除後の課税価格 | 特例税率(控除額) | 一般税率(控除額) |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10%(0円) | 10%(0円) |
| 300万円以下 | 15%(10万円) | 15%(10万円) |
| 400万円以下 | 15%(10万円) | 20%(25万円) |
| 600万円以下 | 20%(30万円) | 30%(65万円) |
| 1,000万円以下 | 30%(90万円) | 40%(125万円) |
| 1,500万円以下 | 40%(190万円) | 45%(175万円) |
| 3,000万円以下 | 45%(265万円) | 50%(250万円) |
| 4,500万円以下 | 50%(415万円) | 55%(400万円) |
| 4,500万円超 | 55%(640万円) | 55%(400万円) |
親から18歳以上の子へ、評価額1,000万円の土地を贈与したケース(特例税率)を考えてみましょう。
- 1,000万円 − 110万円(基礎控除)= 890万円
- 890万円は「1,000万円以下」の区分に該当するので、計算は以下の通り
890万円 × 30% − 90万円 = 177万円
よってこの場合、贈与税は約177万円となります。
※実際の税額は、適用制度や他の贈与の有無によって変わります。
贈与税以外にかかる費用
土地の所有権を移す際には、贈与税以外にもさまざまな費用がかかります。
特に注意したいのは、相続する場合よりも税率が高い税金がある点です。
登録免許税(相続との違い)
登録免許税は、不動産の名義変更(所有権移転登記)を行う際にかかる税金です。
税率は取得原因によって異なります。(※遺贈など取得原因によっても税率が異なる場合があります。)
- 相続:固定資産税評価額の 0.4%
- 贈与:固定資産税評価額の 2.0%
贈与の場合は、相続の5倍の税率となります。
たとえば、評価額2,000万円の土地を贈与した場合、2,000万円 × 2% = 40万円の登録免許税がかかります。
相続であれば、2,000万円 × 0.4% = 8万円となり、大きな差が生じます。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得した際に都道府県から課税される税金です。
- 相続:原則非課税
- 贈与:原則課税(標準税率は3%など)
評価額2,000万円の土地であれば、贈与による不動産取得税は、2,000万円 × 1/2 × 3% = 30万円程度かかる可能性があります。
※不動産取得税の土地に対する課税標準は、令和9年(2027年)3月31日までの特例措置により固定資産税評価額の2分の1となります。
また、住宅用土地など一定の条件を満たす場合は軽減措置があります。
司法書士報酬などの実務コスト
贈与による名義変更では、登記手続きや贈与契約書の作成が必要になります。
そのため、以下のような実務コストも発生します。
- 司法書士報酬
- 契約書作成費用
報酬額はケースによって異なりますが、数万円〜十数万円程度が目安となります。
相続まで待つべき?実務的な判断基準
土地を今すぐ贈与すべきか、それとも相続まで待つべきかは、税額だけでなく「将来の相続税」まで含めて判断する必要があります。
特に重要なのは、次の3つの視点です。
小規模宅地等の特例が使えるか
最大の分かれ道は、相続時に「小規模宅地等の特例」が使えるかどうかです。
この特例が適用できると、自宅の土地などは評価額を最大80%減額できます。
そのため以下の場合は、小規模宅地等の特例が使えない生前贈与を選ぶよりも、相続まで待った方が、トータルの税負担が軽くなる可能性が高くなります。
- 同居している自宅
- 相続人が要件を満たしている
土地が値上がりする可能性
将来土地価格が大きく上昇する可能性がある場合は、生前贈与を検討する余地があります。
相続時精算課税を選択すれば、相続時、贈与時点の評価額で相続税が計算されます。
土地の価格が上がってから相続するよりも、値上がりする前に贈与したほうが相続税を抑えられる可能性があるのです。
ただし、贈与後に土地が値下がりすると不利になる可能性があります。さらに、相続税の課税状況(基礎控除内かどうかなど)によっては節税につながらない場合もあるため、慎重に判断しましょう。
二次相続まで含めた考え方
贈与か相続かを判断する際は、「二次相続」まで視野に入れることも重要です。
二次相続とは、たとえば父が亡くなって母が相続し、その後母が亡くなって子が相続するケースをいいます。
一次相続では配偶者の税額軽減が使えるため税額が抑えられることがありますが、二次相続では次のような不利な要素が生じます。
- 配偶者の税額軽減が使えない
- 法定相続人が減り、基礎控除額が小さくなる
- 財産が合算され、より高い税率が適用されやすい
そのため、「とりあえず配偶者に全額相続」とするよりも、家族全体の税負担を踏まえた分割や贈与を検討することが重要です。
まとめ|後悔しないための行動
土地の贈与税は、一律の金額が決まっているわけではありません。
税額は、以下の3点によって決まります。
- 土地の評価額
- 適用する課税制度(暦年課税か相続時精算課税か)
- 贈与者と受贈者の関係(暦年課税の場合)
上記を踏まえて贈与税を確認し、登録免許税や不動産取得税などの諸費用も含めて、総額で判断することが大切です。
評価方法や特例の適用可否によって税額が大きく変わることもあるため、不安がある場合は専門家への相談も検討するとよいでしょう。

監修者
高部孝之税理士事務所
税理士高部孝之
2019年税理士試験合格 2020年税理士登録
都内大手税理士法人にて約13年間勤務。資産税部門の責任者などを経て、2024年に独立し浅草にて資産税を強みとする税理士事務所を開業。
専門用語を用いず、平易な言葉で説明することを大切にしており、お客様が親しみやすく相談しやすい税理士を理想としています。
保有資格
税理士・FP技能士1級・相続診断士