退職後に給料が振り込まれない!未払い給料の請求方法や期限を解説
「退職後に未払いの給料を請求できる?」
「未払い給料の請求期限は?」
退職後に最後の給料が振り込まれているか確認すると、給料が支払われていなかったり、給料の額が少なかったりすることがあります。
退職したからといって、本来貰えたはずの給料が受け取れないのは納得できませんよね。
退職後に給料が振り込まれない場合には、未払い給料を会社に請求できます。
ただし、未払い給料の請求には時効があるため、できるだけ早く請求することが重要です。
この記事では、退職後に給料が振り込まれないことでお困りの方に向け、未払い給料の請求方法、期限などを詳しく解説します。
目次
退職後に給料が振り込まれない!請求できる?
退職後に給料が振り込まれない場合、退職後でも未払い給料の請求は可能です。
ただし、未払い給料の全額を回収したい場合には、時効を迎える前に請求する必要があります。
退職後の給料未払いは違法
退職後であっても、会社が未払い給料を支払わないことは違法です。
会社には、労働者へ給料を支払う義務があります(労働契約法6条)。あらかじめ決められた給料日に支払わない会社は労働基準法違反です(労働基準法11条、24条)。
給料を支払っていない会社には、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科されます(労働基準法120条)。
会社が給料を支払う義務を負うのは、雇用契約期間中だけではありません。給料は過去に行った労務に対して支払われるものであり、支払う義務は雇用契約解消後もそのままです。
つまり、退職後でも未払いの給料の請求は可能ということです。
退職後の未払い給料の時効は3年
退職後も未払い給料の請求は可能ですが、時効が3年であることに注意しましょう。
未払い給料の時効は、退職後からカウントが始まるわけではありません。時効期間のカウントが開始されるのは、本来賃金が支払われる予定だった給料日の翌日からです。
民法には「初日不算入の原則」があり、起算点はその翌日となります。
たとえば、月末締め、翌月20日払いの場合は、「給料日の翌日」である21日から時効期間がカウントされます。
時間が経つにつれて、過去の未払い給料に対する時効が成立し、請求できなくなっていく仕組みになっています。
退職後に未払い給料を請求する流れ
退職後に未払い給料を請求する流れは、以下の通りです。
退職後に未払い給料を請求する流れ
- 証拠から未払い給料の額を計算
- メールやLINE・内容証明郵便などで請求
- 労働基準監督署に相談する
- 弁護士に相談して法的手続きをとる
未払い給料を請求する方法については、『未払いの給料を請求する方法は?流れと注意点を弁護士が解説』の記事でさらに詳しく解説しています。併せてご覧いただくと理解が深まるでしょう。
証拠から未払い給料の額を計算
未払い給料を請求するために、証拠から未払い給料の額を計算します。
未払い給料を請求するためには、給料が未払いであることを証拠をもとに証明する必要があるからです。
給料が未払いであることを証明する証拠には、給与明細書、源泉徴収票、給与口座の履歴などがあります。
証拠を収集できたら、未払い給料の額を計算してください。
未払い給料の計算方法
- 締め日と退職日が一緒の場合
支払い額 = 総支給額(基本給+手当) - 控除額(社会保険料+税金+会社独自のもの) - 締め日前に退職する場合
基本給を日割りして計算。固定残業代がある場合には就業規則に応じて日割り・全額が支払われる
証拠がない場合の対処法などを詳しく知りたい方は、『給料未払いの証拠がない!対処法や請求をする際の手順を解説!』をご覧ください。
メールやLINE・内容証明郵便などで請求
未払い給料の計算を終えたら、会社に未払い給料を請求しましょう。
未払いの給料の請求は、直接会社に出向くか、メールやLINEでできます。労働者に給料を支払うことは会社の義務なので、遵法意識がある会社であれば、会社で給料の未払い額を計算し支払ってもらえます。
会社へ請求しても給料を支払ってもらえない場合には、内容証明郵便で未払い給料の請求を行いましょう。
内容証明郵便であれば、会社に未払い給料を請求した事実を証拠として残せるメリットがあります。
参考:日本郵便「内容証明」
会社側としては、内容証明郵便で請求されると無視しづらくなるため、未払い給料が受け取れる可能性が高くなります。
労働基準監督署に相談する
口頭やメール、LINEでの請求が無視され、内容証明郵便による請求でも未払い給料を受け取れなかった場合には、労働基準監督署へ相談しましょう。
労働基準監督署の総合労働相談コーナーでは、給料の未払いだけでなく、解雇・労働条件・募集・採用・いじめ・嫌がらせ・セクシュアルハラスメントなど、労働問題に関するさまざまな分野の相談が可能です。
ただし、労働基準監督署は、会社に対して未払い給料を支払うように強制することはできません。
法的な専門家の立場から、どうすべきかアドバイスが受けられるだけです。相談しても未払い給料が受け取れない可能性があることに注意しましょう。
弁護士に相談して法的手続きをとる
労働基準監督署に相談しても、事態が改善されない場合は弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談・依頼すれば、未払い給料の対処法についてアドバイスをもらえるだけではなく、弁護士から請求することで会社にプレッシャーを与えることができます。
また、会社との交渉がうまくいかずにトラブルに発展した場合でも、弁護士であれば、労働審判・訴訟などの法的手続きにスムーズに移行することが可能です。
弁護士への相談にあたって、費用相場や流れ、メリットなどを知りたい方は『未払い給料の請求を弁護士に依頼するメリットと費用|請求手順も解説』の記事をご覧ください。
会社が倒産していた場合も請求可能?
会社が倒産している場合や、実質的な倒産状態にある場合には、「未払賃金立替払制度」が利用できます。
未払賃金立替払制度とは、企業が倒産したことにより、給料が支払われないまま退職した労働者に対して、未払い給料の一部を立替払いする制度です。
退職してしまった会社が倒産してしまった方に向けて、未払賃金立替払制度を詳しく解説します。
未払賃金立替払制度の要件
未払賃金立替払制度を利用するための要件は、会社側と労働者側の両方にあります。
会社側の要件は以下の2つのいずれかです。
会社側の要件
- 勤務していた会社が1年以上事業を行っており、法律上の倒産状態にある場合
- 事業活動を行っておらず、支払い能力がない事実上の倒産状態にある場合
法律上の倒産とは、破産、特別清算、民事再生、会社更生のいずれかです。破産管財人等に倒産の事実を証明してもらう必要があります。
労働者側の要件は、以下の通りです。
労働者側の要件
倒産を裁判所に申し立てた日、あるいは事実上の倒産を労働基準監督署へ認定申請した日の6か月前の日から2年の間に退職したこと
立替払いされる給料の対象・割合は?
未払賃金立替払制度の対象となる未払い給料は、退職した日の6か月前から請求する前日までに支払日が来ているぶんとなります。
未払賃金立替払制度で受け取れるのは、上記の未払い給料の8割です。ただし、年齢に応じて上限が定められており、88万円~296万円の範囲が上限となります。
また、倒産寸前の会社で給料の未払いが続いている場合は、請求することで給料が受け取れる可能性があります。
労働者の給料は、他の一般債権者より優先して受け取る権利があります(民法第308条)。
ただし、抵当権や税金の方が給料より優先されるため、会社に給料を支払う資金が残っていない可能性もあります。
関連記事
・未払賃金立替制度はいつもらえる?利用条件や手続きの流れを解説
その他給料未払いの退職についてよくある疑問
上記の他、未払い給料と退職についてお悩みの方がよく抱いている疑問について解説します。
ばっくれた場合にも未払い給料は請求できる?
アルバイトによくある「ばっくれ」のように、給料を受け取る前に無断で退職した場合でも、未払い給料は請求できます。
ただし、正規の退職手続きを取らなかった場合は、無断欠勤を行ったと判断され、民法709条違反として会社から損害賠償請求される可能性もあります。
また、制服など会社からの貸与物を返却していない場合は、その分の費用を請求される可能性もあります。
ばっくれた後に未払い給料を請求すべきかどうかについては、未払いの額、会社に負わせた損害の程度などの情報から客観的に判断する必要があります。一度弁護士に相談することがおすすめです。
給料未払いを理由に退職した場合、会社都合退職になる?
給料未払いを理由に自分で退職した場合でも、会社都合退職になる可能性があります。
原則として、自分で退職を伝えた場合は自己都合退職になります。
ただし、以下のような場合には、自分から退職した場合でも特定受給資格者と認められます。
特別受給資格者となる条件
- 労働契約で締結した労働条件が事実と著しく異なることで退職した
- 給料の3分の1を超える額が、引き続き2か月以上給料日までに支払われなかった
- 給料の3分の1を超える額が支払われなかったことが、退職の直前6か月の間に3月あった
自己都合退職の場合は、失業手当の受給で不利になります。
一方、特定受給資格者と認められれば、失業給付日数や初回の支給などが有利になる可能性があります。
未払い給料を請求するつもりなら、退職せずに請求することもひとつの選択肢をして検討すべきです。
関連記事
・自己都合退職と会社都合退職の違いは?知らないと損する両者の違い
まとめ
この記事では、退職後に給料が振り込まれない場合に、未払い給料を請求できるのか、未払い給料の請求方法を解説しました。
退職後に給料が振り込まれない場合には泣き寝入りせず、未払い給料を会社に請求しましょう。
会社が倒産した場合には、未払賃金立替払制度も利用できます。
未払い給料の時効は3年です。時間が経つと証拠の収集なども難しくなるため、給料未払いが発覚した場合には、できる限り早めに対処することをおすすめします。
未払い給料の請求に関して、不明な点がある方は弁護士に相談してみてください。
高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。
保有資格
士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士
学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了